文学部のひと

 

文学部とは、人が人について考える場所です。

ここでは、さまざまな人がさまざまな問題に取り組んでいます。

その多様性あふれる世界を、「文学部のひと」として、随時ご紹介します。

編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル、

ひとつは「今、あなたは何に夢中ですか?」、

そして、もうひとつは「それを、学生にどのように伝えていますか?」。

 

芳賀 京子 准教授(次世代人文学開発センター)

第1の答え

大理石が好きです。そういうと、床や壁の化粧仕上げにもちいられるマーブル模様を思い浮かべられるかもしれませんが、私が好きなのは模様がほとんど無く、白色が柔らかで結晶が透き通っているものです。エーゲ海のナクソス島やパロス島の白大理石の美しさは、古代において最高級品とされただけあってやはり格別です。古代ギリシアで彫刻が発達したのは、この石があったからこそなのでしょう。

大理石そのものの美しさを直に見せてくれるのは、クーロスやコレーと呼ばれるアルカイック時代(紀元前6世紀)の男女の像です。一方、クラシック後期(紀元前4世紀)の彫刻の表面は、滑らかでてかりのない肌の質感を見事に表現していて、まさにギリシア彫刻の白眉といえるでしょう。紀元前100年前後に流行した、透明感と艶のある石肌もたまりません。ローマ時代には大雑把な彫りが増えますが、2世紀後半の皇帝肖像に見られるような、硬質な光沢を放つ白い肌と深いドリルの溝が生み出す光と影のコントラストはなかなかのものです。

 

第2の答え

ここのところのギリシア・ローマ美術の研究は、遺構全体や社会的枠組みといった広いコンテクストのなかで美術作品を考察することが主流となり、美術史研究者も発掘報告書を調べたり歴史的文献や碑文を読んだりといった作品観察以外のことに長い時間を費やすようになりました。作品自体に向き合うにしても、素材分析や3Dデータの比較などの新データの取得と分析が脚光を浴びています。授業ではもちろんこうした新しい研究動向や新手法も紹介しますが、それ以前に、美術作品そのものの面白さを知ってもらいたいと考えています。自分で撮ったたくさんの写真をプロジェクタで映し、作品の面白さを言葉にして伝えることで、地中海の遺跡や美術を自分の目で見たいと思う学生がひとりでも多く出てくることを願っています。

 

芳賀京子
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