鈴木　啓太

能力観が状況・環境・文化とどのように相互作用し、私たちの課題の取り組み方や他者への認知に影響を与えるのかを研究している。教育心理学や学習心理学の領域では、「能力は可変的で努力によって成長する」という能力観を持つことの望ましさが主張されてきた。そういった研究文脈に対して、能力観の望ましさを規定する境界条件を明らかにすることを目指している。具体的には、従来の研究では「与えられた課題に取り組む個人」に着目し、困難を克服する信念として可変的能力観の望ましさが実証されてきた。一方で、課題を自ら選択する場面や、他者と共同で課題に取り組む場面といった私たちの社会に遍在する状況においては、そういった可変的能力観が異なる帰結をもたらす可能性がある。これらの可能性の検討を通じて、従来の研究射程に社会心理学的な視点を導入し、可変的な能力観へのより包括的な理解を目指す。発展して、特定の能力観が獲得されるプロセスやある能力観を持つ個人同士が相互作用することでもたらされるマクロ的な帰結を明らかにするために研究を進めている。