日本語のアスペクトと関わる補助動詞についての研究

大場(西村) 美穂子

本論文では、テ形接続の補助動詞の中の、アスペクトと関わる「いる」「ある」「おく」「しまう」「いく」「くる」の6つについての記述的研究である。
第1部では、補助動詞「いる」の用法および研究史を述べている。
第1章では、「いる」の用法を検討した。「いる」の用法は、以下の3つである。

1.前接動詞の表す動きの過程と参照時が、同時的であることを表す
2.前接動詞の表す動きの完了後の状態が、参照時と同時的であることを表す
3.前接動詞の表す動きが、参照時には完了していることを表す(前接動詞の表す動きが参照時と継起的関係にあることを表す)

これら3つの用法は、先行研究において、1と2の関係が深いと言われることが多かったが、本動詞「いる」との関係で見た場合、1と2よりも、2と3の方が関係が深い。
第2章では、補助動詞「いる」の研究とアスペクト論との関係について検討し、日本語においては、アスペクトは意味的にしか規定できないということを述べた。
第3章では、上の1章2章の検討を踏まえ、アスペクト的意味と関わる補助動詞の意味記述の際に留意すべきことをまとめた。
次に、第2部では、その他の補助動詞「ある」「おく」「しまう」「いく」「くる」の5つを記述している。
それぞれ1章を設けて記述し、似た意味を表すもの同士は、それらの比較も試みた。
その結果、先行研究でアスペクト的意味とされてきたものは、おおよそ3つに分類可能であることが分かった。
1つは、「いる」に見られたような、「参照時と前接動詞が表す動きとの時間的関係」を表し分けるものである。これは、最も純粋に、時間展開の表し分けと関わる。
もう1つは、「ある」「おく」「しまう」の3つに見られるような、前接動詞の表す動きとその他の何らかの事象との関係を述べるものである。「ある」は、前接動詞の表す動きによって生じる結果を、前接動詞が表す動きとの関係で述べるものである。「おく」は、前接動詞が表す動きそのものを、その動きの結果生じる事象との関係で述べるものである。また、「しまう」は、前接動詞が表す動きをそれ以前の状況と結びつけて述べるものである。ただし、「ある」「おく」「しまう」の3者は、「時間的」関係を述べることが重要なのではない。
そして、最後の1つは、「いく」「くる」に見られた、前接動詞が表す動きが時間的にゆっくり進み、しかも、その動きをある一定の方向から認識するということを表すものである。上の2つのタイプのアスペクト的意味が、当該の事態と何かの関係を捉えるものであったのに対して、「いく」「くる」の表す漸次性という特徴は、当該の事態1つについて述べているという大きな違いがある。

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