文学部のひと

 

文学部とは、人が人について考える場所です。

ここでは、さまざまな人がさまざまな問題と取り組んでいます。

毎月ひとりずつ、「文学部のひと」をご紹介します。

編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル、

ひとつは「今、あなたは何に夢中ですか?」、

そして、もうひとつは「それを、学生にどのように伝えていますか?」。

 

牧原 成征准教授(日本史学研究室)

第1の答え

究極的に言えば、「この社会の成り立ち」を考えることでしょうか。

実際には日本近世史を専攻する一歴史研究者ですので、近世の古文書を読んで、当時の社会のありようについてあれこれ考えています。そこには、我々人類が築き上げてきた社会の成り立ちを考えるためのヒントが無数に潜んでいます。

16世紀末以降の日本近世には、世界史的にも稀有と言われる、膨大な数の古文書が日本全国の津々浦々に残されるようになり、それを読み解くことで、一般民衆のありようを含む社会の構造を詳細に復元することができます。日本でも戦国時代以前には、民衆のありようを示す史料はきわめて乏しいので、社会の基礎・底辺のレベルからこの社会の成り立ちを考えるためには、全国津々浦々に残された近世の地方文書をひもとくことに夢中になるしかないのです。

 

第2の答え

近世史料固有のレトリックを読み解き、そこから当時の社会に内在する論理を剔抉するには、それなりの勉強や訓練を必要とします。私の未熟な講義でそこまで伝授するのは難しいですが、演習では学生さんたちの研究報告を通して、その手ほどきをしているつもりです。その場で読んだ史料のおもしろさをどう引き出せるか、そこからどのような世界を描き出せるか、一研究者として楽しんでいますが、教師としての「教育的配慮」をすることは下手なので、後悔・反省することもあります。

また各地の地方文書の調査に出かけることをすすめています。とくに近世史は、膨大な史料の調査・整理という地道な営みの上に成り立っているのですが、迂遠に感じるのか、近年はかつてほど人気がなく、残念です。全国各地に残された膨大な地方文書とその調査や研究の蓄積、そうしたものの重みに耐えられる歴史像を粘り強く追及する姿勢を学んでほしいと思っています。

 


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