文学部のひと

 

文学部とは、人が人について考える場所です。

ここでは、さまざまな人がさまざまな問題と取り組んでいます。

毎月ひとりずつ、「文学部のひと」をご紹介します。

編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル、

ひとつは「今、あなたは何に夢中ですか?」、

そして、もうひとつは「それを、学生にどのように伝えていますか?」。

 

島田 竜登准教授(東洋史学研究室)

 

第1の答え

百年を超える日本の東洋史学は、西洋史学や日本史学が対象としない地域の歴史、すなわちアジア、さらにはアフリカの歴史を研究するものとされてきました。本来は様々な手法で東洋史の研究がなされてきましたが、現在では地域研究の一環として東洋史学をとらえる見方が一般的とされています。たとえば、ベトナム史ならベトナム地域研究のうちの歴史部門であるといった具合です。こうした一国や一地域の歴史分析を行うことが東洋史であるという考えは、いまでは非常に根強く、主流派を形成しているといってよいでしょう。

しかしながら、東洋史学という学問分野では、もうひとつ重要なテーマが存在してきました。それは東西交渉史です。ひねくれ者の私は主流派とは異なり、地域研究の持つ地理的範囲の狭さを飛び出し、東西交渉史がもつダイナミックな国際関係を描くことに夢中です。とはいえ、東西交渉史という若干、古臭いイメージがつきまといます。ヨーロッパとアジアという二項対立的なイメージです。この弱点を克服する見方として、歴史を地球規模で考えようとするグローバル・ヒストリー研究が近年、台頭してきています。歴史学研究の新たな一潮流を作り出す世界的な一翼となって、グローバルな視点からアジアの歴史を考えてゆこうと思っています。

 

 

第2の答え

東京大学文学部での私の講義や演習は基本的に東南アジア史や海域アジア史にかかわる授業ですが、世界史的視点から東南アジア史・海域アジア史を論じることに努めています。とりわけ東洋史学特殊講義は毎回準備に膨大な時間をかけています。毎年、トピックが変わりますが、どのようなトピックにしろ、自分自身の最新の研究を伝えてゆきたいと思います。なぜ、あるトピックが意義ある課題として設定できるのか、いかにして課題にアプローチするべきか、どのような史料が入手可能か、収集した史料やデータはどのように加工・分析できるのか、そして、分析結果は先行研究とどのように異なり、何が新しい貢献なのか。自分自身の研究の営みを開陳し、わからぬことはわからないと正直に伝えることで、歴史学の研究の方法と歓びを直に伝えることができればよいと考えています。

ちなみに、写真はタイのアユタヤにあるシェイフ・アフマドの聖廟の前で撮影したものです。彼は16世紀から17世紀にかけて生き、西南アジア出身のムスリムとして17世紀前半にアユタヤ朝の政治や国際商業で権勢を誇った人物でした。仏教国として知られるタイですが、彼の子孫は近代、そして現在にいたるまでタイの政治に大きな影響を与えます。タイ・アユタヤ朝のイスラーム史は近年の私の研究課題のひとつとなっています。

 

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