文学部のひと

 

文学部とは、人が人について考える場所です。

ここでは、さまざまな人がさまざまな問題と取り組んでいます。

毎月ひとりずつ、「文学部のひと」をご紹介します。

編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル、

ひとつは「今、あなたは何に夢中ですか?」、

そして、もうひとつは「それを、学生にどのように伝えていますか?」。

 

小林 真理准教授(文化資源学研究室)

第1の答え

今、この原稿を書いている時という限定付きになってしまうかもしれませんが、ドイツの都市において公共劇場なるものがどのように誕生して、育まれてきたか、そして現在何が課題となっているのかということに関心を持っています。というのも、2010年10月から特別研究期間(研究に専念をしていいという期間)を半年いただいていて、ミュンヘンに滞在しているからです。ドイツの場合、劇場と都市の自治という思想が強く結びついてきました。各地の公共劇場を訪ねて、その手がかりを探っています。なぜ劇場なのかということについては、私が学生の時から持ち続けている関心とつながっています。日本では1980年代後半以降に、地方自治体が劇場やコンサートホール機能を持つ文化会館を無数建設してきました。それらの建設のされ方、使われ方に疑問を持ってきたからです。それはとりもなおさず、行政が文化に関わるということはどういうことか、文化を振興したり、阻害したりする制度とはどのようなものかという問題意識につながり現在に至っています。

 

第2の答え

今夢中になっていることをどのように学生に伝えているかという問いは、伝えるかどうかも含めて検討中としか言えません。というのもこれまでの授業では基本的に日本の問題を扱ってきているからです。私が研究している文化政策という分野を現代的な視点で見ると、いかにそれを現実の社会の中で実践するのかという問題にぶつかります。文学部や文化資源学に入学してくる学生は、いわゆる芸術や文化の持つ潜在能力や可能性を盲目的に信じている人が多いのですが、それはそれとして、芸術・文化活動がどのように現代の社会で成り立っているのかを知る必要があると思っています。とくに政策として文化政策を行うことは、芸術や文化に理解のあるパトロンを見つけるよりも、多くの困難や調整が待ち受けています。文化政策はいつでも芸術・文化にとって善であるとは限りません。行政は、ひところに比べて財政力が劣ってきているとはいえ、圧倒的な「力」を持っています。そのことを知り、行政の一般的な論理に飲み込まれることなく、勇気をもって文化政策の実践に関わっていくために必要な知識とはどのようなものなのか。具体的な地方自治体の文化政策の現場と協力することによって、これらを多面的に考える機会を与えたいといつも思っています。

 


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