東京大学大学院人文社会系研究科の李琦助教、中島亮一助教、横澤一彦教授は、画面を複数の領域に小分けにするだけで、数量判断が効率的になることを発見した。人間の数量判断能力として、大きな数量の判断では、時間がかかる上に正確さも低くなることが知られている。一方で、数量判断がどのような状況でよくなるかという視点の研究はほとんどなかった。特に、日常場面でありうる、数量を判断したい対象以外のもの(例えば、教室内の学生の人数を知りたい場合の長机)が数量判断に影響を与えるかは分かっていなかった。そこで本研究では、実験協力者に、画面に表示される円形の数え上げ課題(円形の数をなるべく早くかつ正確に答える)、短時間表示される円形の数推定課題(限られた短い時間で円形の数をなるべく正確に見積もる)を課した。その際、円形の数とは無関係に、円形の表示領域を区切り枠によって分割した画面を提示した。その結果、数え上げ、数推定課題いずれの場合でも、区切り枠の存在によって、数量判断の成績が上昇した(図1、2参照)。これは、本来数量判断とは無関係と思われる情報が、数量判断を促進することを示している。今後本研究成果は、数量の判断の際に起こりがちな二重カウントや見逃しなどの間違いを防ぎ、緊急時・避難時の人数把握など社会的な場面での有効活用につながることが期待される。

 

図1:画面に表示された円形の個数を数えるのにかかった時間。
領域を小分けにすると、約10~40%時間が短縮する。また、小分けの場合のほうが、答えた個数の正答率も高かった。

 

図2:画面に表示された円形の個数を推定したときの誤差(41個の場合)。
マイナスの値は、数量を実際よりも少なく見積もっていることを示す。領域を小分けにすると、過少見積もり量が半減し、推定値が正しい値に近づく。

 

詳細については、こちらのプレスリリース(PDF)をご覧ください。