研究科長からのメッセージ

グローバル化、高度情報化、少子高齢化社会、生命倫理等、現代日本社会が直面する諸課題に対する人文学からの対応や、流動する社会を見据えつつ新たな領域形成を担う人材の育成を目指して、国際卓越大学院次世代育成プログラムが開設されました。しかし、世の中がどのように変わろうとも、それを作り出すのは人間であることに変わりはありません。人文社会系研究科には人と社会の本質を多方面から探究する約30の専門分野が置かれています。本プログラムは、それらのディシプリンの習得を基礎として、その上に分野横断的、国際的な展開を目指すものです。

いつの世にも新しい創造はあったはずです。しかし『旧約聖書』はなぜ「日の下に新しきものなし」という言葉を記したのでしょうか。この言葉を脳裏の片隅に置きつつ、人文学から未来社会への貢献を目指したいと思います。

大西克也 文学部長・研究科長

コーディネーターからのメッセージ

平成30年4月、「国際卓越大学院 人文社会系研究科 次世代育成プログラム」が開設されました。本プログラムは、研究科各専門分野において蓄積された人文知の基礎の上に立ち、かつてない規模と速度で変化し複雑化する価値観に柔軟に対応しつつ、人類の健全な発展に寄与しうる博士人材の育成を目的としています。本研究科諸学における基礎的な研究能力の修得を目的とする専攻・専門分野のプログラムに加えて、新たな研究領域開拓や国際発信等を旨とした本プログラムを履修する二層構造になっているのが特徴です。

本プログラムは、修士課程から実践的な研究活動を促進するための「学術活動課題演習」、博士課程ではこれに加えて違う専門分野の学生との共同作業力を培うための「異分野共同研究演習」を必修科目としています。また、「新領域開発」と「国際発信系」の2つの群に分けたいくつかの選択必修科目を用意しています。このカリキュラムにより、様々な事象を俯瞰的に見渡し、多様な人々の声に耳を傾け発信する能力を養うことを意図しているのです。毎月一定金額の奨励金(修士課程については令和2年度入学者から卓越RA制度に変わる予定)を支給し、研究に専念して生活できるようにしています。博士課程では国内外での研究活動を支援する仕組みも設けています。学部・修士・博士連携プログラムであるため、学部プログラムからの一貫した履修が原則ですが、修士からの履修も可能です。

本プログラムは、ある特定の所与の分野を卓越したものとして研究を推奨するものではありません。人文学は長期間に及ぶ修得期間を要する学術分野であり、またその研究成果も永く価値を維持し参照されつづけます。したがって、最先端とされる分野に集中的に注力するのは必ずしも好ましいことではないのです。今ここにいる自己を悠久の歴史と多様な文化の中に位置付けることで相対化し、常にその意味を確認する作業が人文学には欠かせません。時流に迎合ぜず確固とした立ち位置を保持する(sustain)には、一時の毀誉褒貶に自分を見失わない精神的なタフさも必要でしょう。本プログラムの履修者が、重厚な知の伝統と今日的な諸課題との均衡の取れた学修・研究の中から、卓越した新たな叡智を生み出す力を身につけていくことを期待しています。

小島 毅 卓越大学院運営委員長




※本ページはプログラム開始時の学部長・研究科長及びコーディネーターからのメッセージとなります。