第41回心理学研究室セミナー(柴田和久先生) 2018年11月8日開催


文学部心理学研究室では,第41回心理学研究室セミナーとして以下のような講演会を開催しますので,ふるってご参加下さい。なお,講演内容は大学院生以上を想定しております。


第41回心理学研究室セミナー

日時:2018年11月8日(木) 午後5時から

場所:法文1号館3階 312教室

【講師】 柴田和久 (放射線医学総合研究所)


【演題】 「興奮と抑制の比率が知覚学習の安定性を制御する」

【要旨】

記憶の形成や技能の獲得は、脳の可塑的な変化によって実現されています。一方で、既存の記憶や技能を安定的に保持するために、脳は適度に安定的である必要もあります。可塑性と安定性のジレンマと呼ばれるこの古くて新しい問題を、脳はどのように解決しているのでしょうか。 本トークでは、視覚知覚学習を例に、視覚技能の安定性に視覚野の興奮と抑制の比率が関わることを 示した一連の研究を紹介します。ひとつ目の研究(Shibata et al., Nat Neurosci, 2017)では、視覚訓練の直前、直後、数時間後に、磁気共鳴分光法(MRS)を用い、興奮性の神経修飾物質で あるグルタミン酸と抑制性の神経修飾物質である GABA の濃度比率(興奮抑制比率)を測定しました。その結果、知覚学習が不安定な状態では視覚野の興奮抑制比率が高まり、安定的な状態ではその比率が低くなる、つまりより抑制的な状態になることがわかりました。ふたつ目の研究 (Bang, Shibata et al., Nat Hum Behav, 2018)では、知覚学習の安定化が一度起こったあと、さらに再活性された状態の視覚野における興奮抑制比率を測定しました。一度安定化された知覚学習が再活性によって再び不安定になると、視覚野の興奮性が上昇することがわかりました。このふたつの研究結果は、知覚学習の安定性は興奮抑制比率によって制御されていることを示唆しています。