開催日 2015年6月3日

文学部心理学研究室では,第26回心理学研究室セミナーとして以下のような講演会を開催しますので,ふるってご参加下さい。なお,講演内容は大学院生以上を想定しております。


第26回心理学研究室セミナー

日時:2015年6月3日(水) 17:00~18:30
場所:法文1号館 1階112教室

 

◆E. Zimmermannと東大に残る心理学古典的実験機器の特徴
吉村浩一(法政大学文学部)

当日はまず,わが国に輸入された古典的実験器のうち今日まで残っているもののリストをお渡しします。それを見ると,E. Zimmermannのものが圧倒的に多いことがわかります。ほかに会社があったのに,なぜそうなったのでしょう。E. Zimmermann社がどのような会社だったかをお話しすることを通して,その事情を説明します。

 東大には,残念ながらそれほど多くの古典的機器が残っていません。震災や戦災に加え,疎開地が空襲に遭うなどの不運が重なったためと思われます。現在,日本心理学会の資料保存小委員会で行っている「現存する心理学古典的機器調査」でわかったことで,東京大学に関して最も驚いたことをお話しします。大山・佐藤(1999)はじめ,これまでの誤った理解というか騙されていたことを正します。どう騙されていたかは当日のお楽しみとし,問題の品物が1907年(明治40年)購入の分類番号R8「筆度計(Feder-Signal)」であることはあらかじめお伝えしておきます。

 

◆東京帝国大学航空心理部と戦間期・戦時期の応用心理学
新美亮輔(東京大学文学部心理学研究室)

日本で応用心理学が本格的に実践され始めたのは大正時代のことです。その頃の応用心理学の拠点のひとつに,東京帝国大学航空研究所の心理学部門である航空心理部(1920~1945)がありました。文学部の心理学研究室に隣接していたので,現在の東大文学部心理学研究室には航空心理部に由来する品々が残されています。航空心理部は当時の心理学界の重鎮・松本亦太郎が創設し,淡路円治郎をはじめとする戦後の高度成長期の産業心理学を支えた心理学者たちを輩出しました。航空員の適性検査や,低酸素などの飛行環境の心身への影響,航空産業における能率増進などが研究されたほか,戦争末期には高空用気密服の開発も行なわれていました。この講演では,現存する論文等の資料からわかる航空心理部の人員と研究内容の変遷を追うことでその歴史を紹介し,心理学が役に立つとはどういうことかを考える一助としたいと思います。