開催日 2011年6月16日

文学部の心理学研究室では、6月16日(木)に服部雅史先生(立命館大学)の講演会を行います。思考の研究に興味をお持ちの方は、是非、ご参加ください。なお、講演内容は大学院生以上を対象としております。

服部先生は、思考の分野で独創性の高い研究を次々に発表してこられた研究者です。今回の講演では、以下のような内容でお話をしてくださることになっています。

日時:2011年6月16日(木) 午後5時から
場所:法文1号館1階 113教室

【講師】 服部雅史先生(立命館大学)
【演題】 思考の対称性と因果性の認知

【要旨】人間の思考研究は,心理学の中で比較的長い歴史を持つが,この分野は,その特徴を浮き彫りにするよう考案されたさまざまな巧妙な課題によって発展してきた.しかし同時に,課題の正解(規範解)とパフォーマンスを比較するアプローチは,研究上の一定のバイアスを生みやすい.たとえば,推論については伝統的に論理(学)が規範とされてきたが,それは,数々の非合理的バイアスを持つ人間像を強調することになった.論理は,推論の心理学の計算論的水準の理論として適切ではない.確率的アプローチは,思考心理学のさまざまな下位領域(演繹,帰納,確率判断,意思決定など)で取り上げられてきた現象を扱うことが可能で,これまで個別に同定されてきたさまざまなバイアスを統一的に見直す可能性を拓く.本講演では,確証バイアス,錯誤相関,基準率錯誤,擬診断性など,思考心理学で知られている多様な現象の背後に共通の特性(思考の対称性)が関係していることを示し,その生態学的合理性,系統発生的位置づけ,因果性の認知との関係について論じる.