文学部とは、人が人について考える場所です。
ここでは、さまざまな人がさまざまな問題に取り組んでいます。
その多様性あふれる世界を、「文学部のひと」として、随時ご紹介します。
編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル
「ご自身の研究の魅力を学生に伝えてくださいませんか」。
ここでは、さまざまな人がさまざまな問題に取り組んでいます。
その多様性あふれる世界を、「文学部のひと」として、随時ご紹介します。
編集部が投げかけた質問はきわめてシンプル
「ご自身の研究の魅力を学生に伝えてくださいませんか」。
大向 一輝 准教授(次世代人文学開発センター)
もともとは情報学を専門としていましたが、縁あっていまは文学部に所属し、デジタル人文学と呼ばれる分野で研究と教育に携わっています。デジタル人文学について、ひとまず定義をするならば、資料や文献のデジタル化・共有が世界的に進む中で、それらを情報技術によって処理し、これまでは見えなかった傾向や関係性を見出そうとする学問です。ただ、この一言で片付けてしまうと、私の日常とはずいぶん距離があるように感じられます。現場では、学生や若手研究者と一緒に個別の研究を進めるだけでなく、技術を介して人と人とをつなぐという営みを重視しています。
東京大学文学部・大学院人文社会系研究科は30の研究室からなる広大なフィールドであり、教員や学生の研究テーマは多様という表現では足りません。そこにデジタル人文学のアプローチを導入するとして、用いることのできる技術もまた数多くあります。テーマと技術を掛け合わせると無数のパターンになってしまい、とても個人の手に負えるものではありません。
豊かな知が息づくこの環境で、情報学出身の私に何ができるのか。多くの方々と議論する過程で、単に技術を教えるのではなく、人々が出会い、対話する共通の場を立ち上げることだと考えるようになりました。対象も手段も異なる研究者たちが、たまさか同じ道具を使っているとき、そこにコミュニケーションが成立する可能性があります。たとえばテキストデータの扱い方、可視化の手法、データベースといった具体的な技術が媒介となり、専門の壁を越えた会話が生まれます。古典文学を研究する人と考古学を研究する人が、画像認識の精度について意見を交わす。社会調査のデータ整備を行ってきた人が、歴史資料のメタデータ設計に協力する。デジタルアーカイブの構築が新資料の発見のきっかけとなったこともありました。こうした予期せぬ出会いは狙って起こせるものではありませんが、場をつくり、人々をつなぎ、新たな風を呼び込み続けることで、何かが始まる瞬間に立ち会えるのがこの仕事の醍醐味です。
共通の場には、各人の固有性を浮かび上がらせるという、もうひとつの機能があります。固有であることと、孤立していることは違います。自身の研究と他者の研究とを見比べて、何が共有されており、どこからが独自の道であるかを自他ともに認識できる機会として、デジタル人文学を捉えてもらえればと思います。この「文学部のひと」というシリーズそのものも、共通の場のひとつかもしれません。各分野の先生方から寄せられたこのテキスト群に、デジタル人文学の手法で向き合ってみました。公開中のすべてのテキストから名詞を抽出し、頻出語を集めたワードクラウドには、人文学の主要な関心が現れています。一方、出現回数が2回から5回の語だけを集めてみると、風景は一変し、それぞれの研究者が取り組んできたかけがえのない固有の世界が広がります。共通性と固有性、文学部に内在するこの二つの層を、技術の力を借りて同時に一望できることが、デジタル人文学の面白さのひとつです。この可視化は単純なものですが、学問の中の人文学、あるいは社会の中の人文学の位置づけを考えるきっかけにすることもできそうです。

「文学部のひと」頻出語(名詞)のワードクラウド
デジタル人文学の関心は情報技術自体にも及びます。先ほど「技術の力を借りて」と書きましたが、情報技術は必要なときに手に取り、用が済めば置いておけるという都合の良い道具でしょうか。道具が研究対象の内実を変えたり、研究の主体をも変容させることはないのでしょうか。コンピュータ、インターネット、そしてAIと、わずか数十年の間に社会を根底から揺さぶる技術が幾度か登場しました。ことばを地球の裏側へ瞬時に届ける技術。膨大なテキストから意味を汲み上げ、ことばを自動的に生み出す技術。ことばによって機械を操り、外界に働きかける技術。いずれもことばと深く関わっています。そもそも、ことばそのものが人類が手にした最も強力なテクノロジーのひとつです。新たな技術がことばと結びつくとき、私たちのものの見方や考え方もまた静かに、しかし確実に変わっていきます。ことばを扱い、ことばについて考え、ことばによって世界を理解しようとしてきた文学部から、この変容について考え続けていきたいと思っています。
東京大学文学部・大学院人文社会系研究科は30の研究室からなる広大なフィールドであり、教員や学生の研究テーマは多様という表現では足りません。そこにデジタル人文学のアプローチを導入するとして、用いることのできる技術もまた数多くあります。テーマと技術を掛け合わせると無数のパターンになってしまい、とても個人の手に負えるものではありません。
豊かな知が息づくこの環境で、情報学出身の私に何ができるのか。多くの方々と議論する過程で、単に技術を教えるのではなく、人々が出会い、対話する共通の場を立ち上げることだと考えるようになりました。対象も手段も異なる研究者たちが、たまさか同じ道具を使っているとき、そこにコミュニケーションが成立する可能性があります。たとえばテキストデータの扱い方、可視化の手法、データベースといった具体的な技術が媒介となり、専門の壁を越えた会話が生まれます。古典文学を研究する人と考古学を研究する人が、画像認識の精度について意見を交わす。社会調査のデータ整備を行ってきた人が、歴史資料のメタデータ設計に協力する。デジタルアーカイブの構築が新資料の発見のきっかけとなったこともありました。こうした予期せぬ出会いは狙って起こせるものではありませんが、場をつくり、人々をつなぎ、新たな風を呼び込み続けることで、何かが始まる瞬間に立ち会えるのがこの仕事の醍醐味です。
共通の場には、各人の固有性を浮かび上がらせるという、もうひとつの機能があります。固有であることと、孤立していることは違います。自身の研究と他者の研究とを見比べて、何が共有されており、どこからが独自の道であるかを自他ともに認識できる機会として、デジタル人文学を捉えてもらえればと思います。この「文学部のひと」というシリーズそのものも、共通の場のひとつかもしれません。各分野の先生方から寄せられたこのテキスト群に、デジタル人文学の手法で向き合ってみました。公開中のすべてのテキストから名詞を抽出し、頻出語を集めたワードクラウドには、人文学の主要な関心が現れています。一方、出現回数が2回から5回の語だけを集めてみると、風景は一変し、それぞれの研究者が取り組んできたかけがえのない固有の世界が広がります。共通性と固有性、文学部に内在するこの二つの層を、技術の力を借りて同時に一望できることが、デジタル人文学の面白さのひとつです。この可視化は単純なものですが、学問の中の人文学、あるいは社会の中の人文学の位置づけを考えるきっかけにすることもできそうです。

「文学部のひと」頻出語(名詞)のワードクラウド

出現回数が2回~5回の人名・地名・概念名のワードクラウド
デジタル人文学の関心は情報技術自体にも及びます。先ほど「技術の力を借りて」と書きましたが、情報技術は必要なときに手に取り、用が済めば置いておけるという都合の良い道具でしょうか。道具が研究対象の内実を変えたり、研究の主体をも変容させることはないのでしょうか。コンピュータ、インターネット、そしてAIと、わずか数十年の間に社会を根底から揺さぶる技術が幾度か登場しました。ことばを地球の裏側へ瞬時に届ける技術。膨大なテキストから意味を汲み上げ、ことばを自動的に生み出す技術。ことばによって機械を操り、外界に働きかける技術。いずれもことばと深く関わっています。そもそも、ことばそのものが人類が手にした最も強力なテクノロジーのひとつです。新たな技術がことばと結びつくとき、私たちのものの見方や考え方もまた静かに、しかし確実に変わっていきます。ことばを扱い、ことばについて考え、ことばによって世界を理解しようとしてきた文学部から、この変容について考え続けていきたいと思っています。
大向 一輝 准教授(次世代人文学開発センター)
東京大学・教員紹介ページ
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/people/k0001_02785.html
文学部・教員紹介ページ
https://www.l.u-tokyo.ac.jp/teacher/database/9555.html
東京大学・教員紹介ページ
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/people/k0001_02785.html
文学部・教員紹介ページ
https://www.l.u-tokyo.ac.jp/teacher/database/9555.html