「原典を読む」は、東京大学の全ての学部(駒場の前期課程も含みます)の学生を対象に、日頃から関心は持ってはいてもなかなか紐解く機会のない、古今東西の古典や重要文献を講読形式で味読することを目的に開かれています。これを機に、一行一行をじっくり解釈しながら読み解いていく快楽を味わってみて下さい。
この科目は、もともとは2001年度までの「外国文学講読」を発展させたもので、文学部が専門課程における教養教育の一環を積極的に担うこと、具体的には理科系ないし社会科学系の学部に在籍する学生諸君に、外国文学の講読を通じて幅広い人間教育を行うことを目的にしていました。もちろん、文学部の学問は、外国文学だけに限られているわけではありません。哲学、思想、歴史、社会学や心理学などの幅広い分野が研究対象です。しかも、そこに共通するのは、それらの学問の基本が広義の文献学、すなわちテキストの解読であることです。そこで、2002年度からこの科目の開設を文学部全体に広げ、名称も「原典を読む」に改めることにしました。したがってここに言う「原典」とは外国語文献だけでなく、日本語文献や時には翻訳文献も含まれることになります。
テキストの解読は決してたやすいことではありません。日本語文献であっても、「日本語なのだから、読めばわかるだろう」式の安易な姿勢で接すると、大きな間違いをしでかします。テキストを解読するには、一定の方法に従いながら、きちんと筋道を立て、その上で内容を解釈していく地道な作業が求められます。そうした作業を実践的に学んでいくことが、ここでの目標になります。慣れないうちは面倒と感じるかもしれませんが、はまり込むとそれが愉悦に変わります。文学部の学問の楽しさはそこにあります。教員との人間的な触れあいが得られるのも、この科目の魅力といえます。担当するのは、すべて文学部の専任教員です。少人数向けというのが原則ですから、ずいぶんと贅沢なことかもしれません。マスプロ授業の経験しかない諸君は、ぜひ一度こうした手作りの授業を味わってみて下さい。
2024年度の「原典を読む」開講科目は、以下の通りです。
原典を読む1 | 宮田 眞治(ドイツ語ドイツ文学) | ヘルマン・ヘッセの『メルヒェン』を読む |
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原典を読む2 | 柳原 孝敦(現代文芸論) | ガブリエル・ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』を読む |