開催日 | 2015年3月6日 |
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◆日時:2015年3月6日(金)13:00-18:00
◆場所:東京大学本郷キャンパス 法文2号館2階 教員談話室
キャンパスマップ:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_02_j.html
*法文2号館は、正門からまっすぐ安田講堂に向かう銀杏並木の右側の建物です。
アーケード内を進むと東西に入口がありますので、東側(安田講堂側)の
入口から階段をお上がりください。
◆講演者1:辻本 昌弘氏(東北大学)
題目:「アルゼンチン日系人の歴史と生活史」
概要:アルゼンチン日系人の歴史と生活史について報告する。日本からアルゼンチン
への移住は20 世紀初頭から本格化し戦後まで続いた。徒手空拳で海を渡った移民は、
商業や農業などの自営業により社会上昇を図った。今回の発表では、日系社会の
歴史や発表者が収集してきた生活史資料を紹介しながら、おもに以下の3点に
ついて論じる予定である。第一に、生業形態の確立や頼母子講による相互扶助など
にみられる適応プロセスについて考察する。第二に、個々人の日常生活体験や
インタビューでの人生の語り方といった細かい資料を、近代の時代性という大きな
枠組みのもとに考察することを試みる。第三に、時代・国家・文化といった抽象的観念を
具体的な生活場面にひきつけて調べる生活史研究の意義を考える。
◆講演者2:石井 敬子氏(神戸大学)
題目:「文化神経科学:最近の知見とそのインプリケーション」
概要:この20年間に及ぶ文化心理学の研究は、自己や推論、感情経験等の高次の心理プロセス
のみならず、知覚や注意といった低次の心理プロセスにも、当該の文化内で共有された
人間観、世界観の影響が及ぶことを明らかにしてきた。しかも、文化心理学に神経科学
の手法を取り入れた文化神経科学の研究が近年進みつつあり、このような文化の影響が
脳・生理レベルでも報告されている。また、社会・文化環境と遺伝子の共進化、
つまり、遺伝的な特性と文化的特性が相互作用し生態学的環境への適応が達成されている
という考え方も取り入れられてきている。本発表では、近年の文化神経科学の知見を
レビューし、これまで文化心理学があまり扱ってこなかった「文化の形成とその維持」
という問題に対し、このアプローチがどの程度切り込むことができるのかについて議論したい。
◆講演者3:清水 裕士氏(広島大学)
題目:「道徳の起源についての理論的考察 動学的相互依存性理論と制度分析アプローチ」
概要:本発表では、道徳規範がいかにして現代社会において成立しているのか、その問題について
理論的に考察します。Haidt(2001;2012)は道徳基盤理論において、道徳判断が論理的
というよりは直観的に行っており、またその判断の仕方が進化的な枠組みで獲得されている
ことを主張しています。しかし一方で,群淘汰などを安易に援用したその説明には、
多くの批判があります(例えばBarash, 2007)。そこで本発表では、道徳規範が個人の心の
問題だけではなく、社会制度と共に進化、あるいは発展してきた立場からその起源について
説明を試みます。理論的な背景として、Kelley & Thibaut (1978)の相互依存性理論を動学的
に発展させたモデルと、比較制度分析などの理論枠組みを援用します。データはなく、
ほとんどが机上の空論ですが、参加者のみなさまと道徳や規範について活発に議論できる
ネタが提供できればと思っています。厳しいご意見を期待しつつ、ご参加をお待ちしています。
◆お問い合わせ先:東京大学大学院人文社会系研究科 社会心理学研究室
E-mail: sphisho[at]l.u-tokyo.ac.jp