開催日 2014年7月1日

文学部心理学研究室では,第22回心理学研究室セミナーとして以下のような講演会を開催しますので,ふるってご参加下さい。なお,講演内容は大学院生以上を想定しております。


第22回心理学研究室セミナー

日時:2014年7月1日(火) 午後5時から
場所:法文1号館1階 113教室

【講師】 浅野 倫子 先生 (立教大学)
【演題】 知覚と言語をまたいでみる

【要旨】 

言語は人間に特有の能力である。その特殊性のせいか、言語処理は知覚処理など他の“非言語処理”と切り離されて研究されがちなのが現状である。しかし進化的に考えても、個人内での発達を考えても、言語処理能力は多くの非言語処理能力の後に生じ、熟達するものである。言語処理メカニズムの解明のためには、言語処理が非言語処理との相互作用の中に存在するという側面にもっと目を向けるべきである。
本講演では、講演者らがこれまでに行ってきた2つの研究を紹介し、言語処理と知覚処理との関係に焦点を当てる。1つは、(人口の一部の人において)文字を見ると、通常の文字の処理に加えて色の感覚も引き起こされる「色字共感覚」の研究である。個々の文字から喚起される色(共感覚色)の規定因について検討したところ、幼少期の文字の習得過程が深く関係する可能性が示唆された。もう1つは、「キピ」という無意味語に尖ったイメージを覚えるというような、音と知覚的イメージとの間の恣意的ではない結びつき(音象徴)と、乳児期の語意学習の関係についての研究である。語意学習の開始時期にあたる生後11カ月の乳児を対象とした脳波測定実験により、音象徴のような感覚間協応的な処理が、語意学習、すなわち言葉の音と意味の結びつけを手助けしている可能性が明らかになった。これらの研究を通して、知覚処理能力が言語処理の下支えをしている可能性について考える。