開催日 2024年4月26日

文学部心理学研究室では、第63回心理学研究室セミナーとして以下のような講演会を開催しますので、ふるってご参加ください。なお、講演内容は大学院生以上を想定しております。


第63回心理学研究室セミナー
日時:2024年4月26日(金)
午後5時から
場所:文学部3番大教室(国際学術総合研究棟1階)


【講師】 佐藤弥先生(理化学研究所)

【演題】 表情と主観感情の動的対応関係:心理学・fMRI研究

【要旨】

感情は表情と主観経験を含む複数の反応を喚起するが,表情と主観感情経験が対応関係を持つか,またどのような関係にあるかは,長く議論が続いている.本発表では,この問題を検討した我々の最近の研究を紹介する.研究1では,表情と主観経験が動的対応関係を持つかを,感情フィルムを視聴中に皺眉筋(眉)と大頬骨筋(頬)の表情筋筋電図を計測し,感情価・活性度の動的(連続)評定を査定して調べた.その結果,皺眉筋と大頬骨筋の筋電図活動はそれぞれ,感情価との負と正の対応関係を示した.研究2では,こうした結果が映像としても見出されるか,また他の表情筋も主観経験と対応するかを,表情をビデオ撮影して主観経験の動的評定を査定して調べた.眉・頬は筋電図の場合と同様に感情価に対応し,また他の部位でも感情価あるいは活性度との対応が示された.研究3では,こうした心的過程の神経メカニズムを調べるため,フィルムを視聴中のfMRIを撮像し,また表情をビデオ撮影し主観経験の動的評定を査定した.表情反応に対応して辺縁系・運動関連領域の活動が示され,主観経験に対応して側頭頭頂結合部・内側頭頂葉の活動が示された.独立成分分析から,表情あるいは主観経験に対応して活動する部位はそれぞれ機能ネットワークを形成することが示された.これらの独立成分を動的因果分析したところ,感覚処理は表情反応を喚起し,表情反応が主観経験を喚起するモデルが支持された.こうした知見から,表情が,感情の主観経験と動的な対応関係を持つこと,そして主観経験の基盤となっていることが示唆される.


(問い合わせ先)心理学研究室 shinri -at- L.u-tokyo.ac.jp  -at-@に変更)