八尾　史

専門分野は古代インドの仏教で、おもに扱っているのは「根本説一切有部律」と呼ばれる律蔵文献である。この文献は僧院生活のための法規集だが、その内容は規則だけではなく、開祖シャーキャムニ・ブッダやその弟子たちを登場人物とする説話をおびただしく含んでいる。さらにその中には、仏教の教義を説く聖典つまり「経典」に相当する記述も多数見られる。これらの「経典」を収集し、失われた経蔵の内容を復元することをめざしている。また律蔵と経蔵という一見かけはなれた内容をもつ二つの聖典集成が、どのように関係しあいながら今ある形になってきたのかという、聖典成立史の問題にも関心がある。

これまで経典との平行箇所を多く含む「薬の章」をチベット語訳から和訳、英訳したが、数年前から他の章に含まれる経典群にも手をひろげている。また7世紀のサンスクリット語「根本説一切有部律」写本断片の解読にもとりくんでいる。

主要業績

『根本説一切有部律薬事』連合出版、2013

「根本説一切有部律にもとづく阿含経典の復元：律の文脈の観点から」『対法雑誌』1, 2020. 91–117.