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本学におけるインド哲学仏教学研究(通称「印哲」)は、明治12(1879)年に原担山が和漢文学科の講師として仏書講義を開講したのに遡る。その後、西洋のサンスクリット語(梵語)研究や、英独に留学した研究者などの影響を受け、研究領域は、古典中国語を通じた仏教研究から、サンスクリット語やパーリ語原典を用いた研究、さらには仏教以外のインド哲学をも包含するまでに発展する。本学における印度哲学講座の創設は大正6(1917)年。
研究者としては、漢訳仏典の底本として国際的に名高い『大正新脩大蔵経』の編集に携わった高楠順次郎のほか、わが国のインド哲学仏教学研究の基礎を確立した宇井伯寿、精緻なインド哲学仏教を基礎に、広く比較思想にまで研究領域を拡げた中村元などの文化勲章受章者も輩出した。
現在のインド哲学仏教学研究室は、インド哲学、ならびに、インド仏教・チベット仏教・中国仏教・日本仏教などの仏教学を主要な研究領域としている。これらの諸領域は哲学・倫理学、歴史学、宗教学、中国哲学などの分野とも関わり、研究は自ずと学際的要素を含むことになる。本研究室は、先達の学風を継承し、一次資料である古典文献の解読を研究の基本に据えており、そのため学部教育においては、サンスクリット語、パーリ語、チベット語、中国語など、専門領域に応じた語学の習得が求められている。また、卒論に替え、サンスクリット語などの古典を原書で講読する特別演習を履修する者が多い。過半数は大学院に進学し、学部と大学院との連続性を重んじた教育を行っているのが特徴だ。
韓国、中国などのアジア諸国からの留学生が大学院学生のおよそ5分の1を占め、研究室は国際的雰囲気に包まれている。仏教の起源や思想、インド哲学諸派との論争を通した相互の思想展開、日本文化のルーツとしての仏教への関心、さらには宗教的な求道心など、学生たちの研究契機や関心事は多様だが、原典の綿密な読解を通じてテキスト内容を深く味わう基本姿勢を大切にしている。長い伝統に培われた宗教的、仏教的なものに触れる機会に溢れ、また難解なインド哲学文献や仏典などが自力で読めるようになる喜び・手ごたえは何ものにもかえがたく、この学問を進めていく上での大きな魅力になっている。