職名 | 助教 |
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専修課程 | 心理学専修課程 |
専門分野 | 心理学専門分野 |
研究室 | 心理学研究室 |
私たちが日々いきいきと生活する上で,「他でもない自分が,この身体を動かし,身の回りの世界に影響を与えているのだ」という感覚は非常に重要です。主体感(sense of agency)と呼ばれるこの感覚は,多くの人にとって当たり前すぎて,日頃省みることもないかもしれません。しかし意外にも,ヒトが実際どのようにして,自分が引き起こした結果と外的な要因によって生じたイベントを見分けているのか,そのメカニズムはよく分かっていません。私は実験心理学的手法や計算論的モデリングを用いて,主体感の処理過程の理解を目指しています。
私は,主体感の解明が社会にもたらす貢献は大きいと信じています。近年の研究は,主体感と精神の健康の関係を明らかにしてきました。身の回りの世界に対する自らの影響力を過小評価することは無力感や抑うつ的気分につながる一方,それを過大視することは妄想的な考えにつながります。また,工学的な応用価値も注目されています。遠隔操作,仮想現実(VR),メタバースなどの技術革新は,生まれ持った身体を超えて,見た目も動かし方も全く異なる道具を新たな手足として自在に操る能力を要求します。ここでも,いかに操作者の主体感を維持・増強するかが適応の成否を左右する鍵になります。信頼できる基礎的知見の提供を通して,これらの分野の発展を後押しできればと考えています。