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東京大学(当時の東京帝国大学文科大学)に、元良勇次郎教授によって日本最初の心理学実験場が開設されたのが1903年である。また本学において、心理学が哲学科心理学専修として独自の卒業論文規定を作った年、つまり、東京大学のみならず、日本において、心理学が独立したディシプリンとして旗揚げしたのがほぼ百年前の1904年である。世界的にみても、1879年のヴントによるライプツィヒ大学における世界最初の心理学実験室の開設や1883年のジョンズホプキンス大学における米国最初の心理学研究室の開設と比べてそれほど大きく後れたものではない。また元良教授による最初の精神物理学の講義は実験場開設を遡ること15年、1888年に行われている。
心理学は実に多くの領域と境を接している。心理学は人間の心的、知的な機能を探求するそれ自体独立した基礎的な学問である。また、一方で「こころ」とは何かということを考えると哲学と関わらなければならない。生物学的な諸領域、医学とも密接に関連している。さらに電子工学、情報工学など人間の使う機械を作り、また、人間の機能を代行する機械を作ろうとする領域とも関わっている。本研究室ではこうした幅広い領域に関わる心理学という学問を実験という実証的な手法で取り組む学風を持っており、知覚・注意・記憶・思考などの心理現象を精神物理学的手法・神経科学的手法・認知科学的手法によって研究している。また、文化認識や科学方法論などについても研究を行っている。したがって本研究室出身の研究者は心理学のみならず、先に述べたような幅広い隣接分野において活躍しているものも少なくない。
心理学専修課程に進学した学生は心理学概論により心理学の歴史、基礎的な知見を学び、心理学特殊講義により最新の成果を学習する。また、心理学演習において心理学の原著論文に対する読解力を養成し、内容に関して議論する訓練を行う。さらに心理学実験演習では学生自らが実験者や被験者になることで実験に必要な技術を習得するとともに論文にまとめる訓練を行う。卒業生は大学院に進学するもののほか、官公庁、サービス業、製造業など幅広い業種において活躍している。