撮影 上野則宏

本書の正式名称は『分類杜工部詩』で,全25巻からなり,1481年に活字(乙亥字)によって印刷刊行された。杜甫の詩を,成宗の命により柳允謙,僧義砧らが韓国語(朝鮮語)に翻訳して,できて間もないハングルを用いて表記し,もとの漢文とともに載せたものである。『杜詩諺解』は通称である。15世紀の中世韓国語を知るための貴重な資料となる。書誌学的には,乙亥字という1455年に新たに鋳造された金属活字を用いて印刷されている点に特徴がある。この『杜詩諺解』は現在全帙は伝わらず,各地に零本として所蔵されており,この小倉文庫本巻17もそうしたうちの1冊で,同じ巻17は韓国でも他には1冊しか確認されておらず貴重なものである。

韓国朝鮮文化・福井玲)