撮影 上野則宏

考古遺物には動物が表現されたものがある。対象となる動物は様々だが、北海道の先史文化の場合、最も多いのはクマの意匠である。写真の遺物は考古学研究室と常呂実習施設が北海道北見市の遺跡を発掘した際に出土したもので、古代の環オホーツク海南岸地域に展開した「オホーツク文化」(8~9世紀)の製品である。鹿角製で、先端部にクマの頭部が写実的に表現されている。オホーツク文化では様々な動物が儀礼の対象になっていたが、なかでもクマは頭骨が住居内の祭壇に置かれるなど、質量ともに特別な扱いを受けていた。アイヌ文化の「クマ送り儀礼」の起源などを解明する上でも重要な資料である。

常呂実習施設熊木俊朗