撮影 上野則宏

この本は高麗時代の著名な僧侶であった知訥(ちとつ,1158-1210)が書いた仏教者の心得である『修心訣』を,ハングルができて間もない時期に諺解したものである。「諺解」とは漢文からハングルを用いて翻訳することを指す。牧牛子は知訥の号である。刊記は「成化三年丁亥歳朝鮮國刊經都監奉教雕造」とあり,成化3年すなわち1467年に刊経都監で木版によって刊行したものである。「刊経都監」とは訓民正音(ハングル)を創制した世宗の息子の一人で第7代の王世祖が仏教の経典を刊行するために作らせた機関である。諺解は当時,世祖に信任されていた高僧信眉が行った。小倉文庫本は,朱で訓読記号と諺解部分の句切り点が施されているのが特徴で,この訓読記は朝鮮で古い時代に行なわれていた漢文訓読の様子を伝える貴重な資料になる。

韓国朝鮮文化・福井玲)