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中国語中国文学(中文)研究室の前身は、和漢文学科の創設、すなわち1877年の東京大学設立時まで遡ることができる。しかし、当初、その主たる講義は漢文訓読法であり、中国語による本格的な中文研究・教育の始まりは、20世紀初頭に塩谷温(しおのやおん)が教鞭をふるうまで待たねばならない。

20世紀初頭の中文研究・教育の発展は、変貌する中国、そしてそれに対する日本からの眼差しとともにあった。例えば、塩谷教授が清国留学中の1911年には辛亥革命が起こり、また塩谷の後任教授で、本学の中国語教育の礎を築いた倉石武四郎の学生時代は、文学革命(1917)の真っ只中であった。戦後の中国文学の翻訳・研究界の中心メンバーを輩出した中国文学研究会が設立されたのも、日中関係が大きな政治問題であった1934年である。同会の創設メンバーには作家の武田泰淳や近代中国論の竹内好などがいた。

現在の中文研究室も、国際色が豊かだ。大学院では中国・香港・台湾からの留学生が半数を占め、世界各国の外国人研究員が毎年二、三名は常駐している。そのためか研究室内では日本語のほかに、常時、中国語、英語が公用語のように飛び交う。

こうした雰囲気の中で研究意欲が醸成されるためか、卒業生で大学院に進学するものも多い。学部教育できめ細かい指導がなされているのも、その理由の一つであろう。また大学院には留学生のほか、他学科・他学部・他大学の出身者が多いことも特色といえよう。

研究・教育分野は、古典、現代文学、言語(文字・文法)の三つに大きく分けることができる。扱う範囲はそれぞれ非常に広い。研究室への進学動機も多様であるし、実際、甲骨文字から現代台湾映画まで、教員たちの関心分野も幅が広い。原則は、テクストの背景にある中国語圏文化の特徴を丁寧に調べていくということ。これは、ゼミの雰囲気が、「読む訓練」の学部を経て、「文化的・社会的背景の考察」を要求する大学院、となるように、中文研究室における教育の根幹にもなっている。

「外国語を読む」とは、言語表現の現場を明らかにする行為であり、文章を読むことの奥深さを知る作業でもある。現在の中国や世界各国の文学研究においても、古典文学、近現代文学ともに、各時代、各地域での「読まれ方」をめぐる研究が一つの主流になっている。中国語に触れながら、中国語圏の人々の情念に迫っていくことが、中文研究の大きなテーマであり、魅力なのだ。