本論文は,最も基本的な動詞述語である「動詞の分詞形+助動詞」という複合形,助動詞が動詞を伴わずに現れる場合,動詞が助動詞を伴わずに活用変化する単純について,分析・記述する.いずれも直説法を扱う.

第1章では,バスク語アスペイティア方言の音韻と文法の概要を示す.
第2章では,動詞述語の構造を概観し,助動詞の内部構造を認めるか否かについて論ずる.
第3章では「助動詞du活用が現れる複合形」を扱う.du活用は基本的に「能格と絶対格が考えられる場合」に現れるが,「能格しか考えられない場合」,「絶対格しか考えられない場合」,「能格も絶対格も考えられない場合」にも現れる.各々について分析・記述する.
第4章では「助動詞da活用が現れる複合形」を扱う.da活用は基本的に「絶対格のみが考えられる場合」に現れるが,「絶対格も能格も与格も考えられない場合」,「絶対格と与格が考えられる場合」にも現れる.各々について分析・記述し,また動詞の意味の問題にも触れる.
第5章では「助動詞diyo活用が現れる複合形」を扱う.diyo活用は基本的に「能格と絶対格と与格が考えられる場合」に現れるが,「能格と与格のみが考えられる場合」,「絶対格と与格のみが考えられる場合」,「与格のみが考えられる場合」,「能格と絶対格のみが考えられる場合」にも現れる.各々について分析・記述し,与格についても考察する.
第6章では「助動詞zako活用が現れる複合形」を扱う.zako活用は基本的に「絶対格と与格が考えられる場合」に現れるが,「与格のみが考えられる場合」にも現れる.各々について分析・記述する.
第7章では,助動詞が動詞を伴わずに現れて繋辞的な働きをする場合を扱う.「絶対格ともう一つの要素と助動詞da活用が現れる場合」,「能格と絶対格ともう一つの要素と助動詞du活用が現れる場合」,「能格,絶対格,与格と助動詞diyo活用が現れる場合」,「4系列の助動詞のどれもが現れ得る慣用句的表現」について分析・記述する.このような助動詞をどう捉えるかという問題も扱う.
第8章では動詞の単純形について分析・記述する.
なお,助動詞は,単独で現れるときのみならず,動詞を伴う場合にも,動詞と,そこに関わる能格,絶対格,与格(のうちの一つ/二つ/全て/ゼロ)で表されるものとを関連づけて「まとまった意味」を完成させる「繋ぎ」の働きをすると考えられる.