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行為の善悪や人間関係の理法について探求し、さらには現代社会の緊急の問題群の原理について考える、そういった様々な倫理学の課題に、本研究室は、古典的テクストの読解と思想史研究を踏まえてアプローチするところに、特色がある。第二次世界大戦前後、長く研究室の主任を務めた和辻哲郎は、西洋思想と東洋思想の融合および規範学としての倫理学と事実の学としての諸学の統合を目指し、独自の倫理学の体系を築き上げるとともに、広く人文科学一般の諸分野でも成果を挙げた。この多様な学問領野に開かれているという性格は、本研究室出身の研究者に脈々と受け継がれている。金子武蔵のドイツ観念論研究や相良亨の日本思想研究と並んで、湯浅泰雄の東西の諸学の統合が、そうした伝統を受け継ぐ。

 倫理をめぐる人類の思索の膨大な蓄積に分け入った対話を踏まえる限り、学生の研究対象の選択も各人の自由に任されており、実際、これまでの卒業生の研究テーマも、洋の東西を問わず、また古代から現代に至るまで、多彩である。2名の専任教員(古田徹也准教授、板東洋介准教授)と数名程度の非常勤講師による本研究室の講義・演習の対象領域は、西洋の倫理思想と日本のそれとに二大別される。倫理学がいち早く自覚的な形態をとった西洋の思想伝統を学ぶことは、日本倫理思想史を専攻しようとする学生にとっても欠かすことはできないが、他方、西洋の倫理学に関心を持つ者にとっても、自らが背負う日本の伝統との対話は必須となる。相異なる領域への幅広い目配りが求められるのも、本研究室の特色である。

 このように、倫理学研究室は、一方では古典的学問研究を尊重しつつも、他方では、西洋哲学、日本思想、さらには社会科学、宗教学等の諸学問に開かれた幅広い内容を持つ研究教育を目指している点で、思想文化学科/基礎文化研究のなかでも特徴を示していると言えるだろう。そのような条件をどう生かすかは、学生諸君の自発的研究に期待されている。なお、本研究室を卒業した後、大学院への進学を希望する者は少なくないが、近年では民間企業等に就職する者も多く、就職先は、広告・出版・マスコミ、金融、メーカー、官公庁等、多様である。