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インド亜大陸では3千年来数多くの言語が用いられ、それらの言語によって伝えられた文献も多様を極めている。そのうち、本研究室(略称「印文」)では、明治34(1901)年に本学で「梵文学講座」が開設されて以来、古典サンスクリット語を中軸とする古期・中期インド・アーリア語をもって著された文献の研究がなされてきた。さらに、平成8年度より、ドラヴィダ系のタミル語タミル文学の講座も設けられ、これにより、専門的なドラヴィタ系語学文学の研究に携ることが可能となった。サンスクリット語はインドの雅語として古典時代の宗教、文学、哲学、科学などあらゆる分野の文献に用いられたものであり、古典インド文化の精華はサンスクリット語によって伝えられたといっても過言ではない。当研究室がサンスクリット語の学習を必須とするのもこのためである。タミル語も紀元前に遡る文献をそなえ、その文学は長い歴史と豊かな内容を誇るものである。
インド語インド文学研究室では、インド文化の形成と発展にもっとも重要な役割を果たしてきた、これらの言語の初歩を学びながら原典研究を行い、あくまで文献に即して、広くアジア諸地域に伝播してゆくインド文化の精髄を探求することを目指している。したがって、研究室名のいちぶともなるインド文学とは、詩歌・戯曲・説話など狭義の文学作品だけでなく、ヴェーダ聖典、マヌ法典・実利論などの学術論書、仏教・ジャイナ教・ヒンドゥー教などの宗教文献なども含むものである。
語学の習得と原典講読には相当な時間を要するから、一見迂遠な方法に思えるかもしれない。しかし、広く浅く、場当たり的に多くの書物を読むことによって得られるものは少なく、ややもすると、大学という学問の場にいながら、学問するというかけがえのない経験をせずに大学を去ることになる。異文化理解にしろ自文化理解にしろ、一朝一夕でできるものではない。むしろそれらは、辞書を繰りつつ原典に向かい、個々の単語や行間に思いをはせるという、日々の地道な努力によって可能になるのである。
卒業後は大学院へ進学する者が多い。そのため、卒業に際しては、卒業論文の提出よりは、原典講読の基礎訓練となる特別演習をとる学生が多い。