2021-03-12
旧HPのコンテンツ②
※こちらに書かれている情報は最新ではありません。参照する際は注意してください。
ロシア語ロシア文学を学ぶ人のための
文献収集の手引き
以下の文章は、主に卒業論文を執筆する学部生や新しく大学院に入学してきた修士課程の院生を対象にし、当研究室の教官・大学院生らの協力を得て書かれたものです。図書館の利用案内などは東大の例に沿って書かれていますが、文献収集に関する一般的な情報も多数盛り込まれており、学外の方にもいろいろと参考になるのではないかと思います。またロシア語ロシア文学関係の文献を収集するために東大の図書館を利用しようと思っている人には、これは非常に役に立つ手引きとなるに違いありません。筆者が複数のため、文体の不統一が一部ありますがご了承ください。
なお文中で言及した機関・書店がインターネット上にホームページを持っている場合、リンクをはっておきました。ご活用ください。
(注) 東大(文学部)関係者以外の場合、学内(学部内)図書館の利用条件には制約がありますので、あらかじめご承知おき願います。
はじめに
語学文学を学ぶ過程では、多くの文献が必要になります。とはいえ、研究を始めたばかりの頃は、文献を入手しようとする際にとまどうことも多いかと思います。そんな困った時のために、文献を探す際に必要な最低限の知識をまとめてみることにしました。
(1)事典を利用する
論文やレポートを書こうとする時や、授業で発表をする時には、必要な文献を探すことになります。この時、やみくもに図書館の本棚を眺めたり、検索カードをひっくり返したりしている人は、いないでしょうか。そうする前にあらかじめ事典を引いておくと、色々な点でずいぶんと手間が省けます。
しっかりした文学事典には、各項目の末尾に参考文献が記されています。この文献表を利用すれば、すぐに必要な基本文献のリストを作ることができます。
また図書館には、同じ作品でも複数の版が収められています。初学者は、どの版をテキストに用いるべきか、結構迷うものです。こうした時にも、事典の文献表が役に立ちます。事典には普通、しっかりした版しか掲載されないものです。
東大の場合、文学部3号館7階の演習室や、総合図書館の参考室には、ロシア文学に関する事典が沢山あります。それぞれ個性のある事典なので、なるべく色々なものを引いて、その特徴を理解するようにしましょう。参考までに、以下に主な事典のタイトルを挙げておきます。
Kratkaja literaturnaja enciklopedija (M., 1962-1978).(この辞典はやや古いので、最近の文献は載っていません。新しい事典も引く必要があります。)
Literaturnaja enciklopedicheskij slovar' (M., 1987). (この事典では、簡略表示で文献が掲載されています。)
Russkie pisatel': bibliograficheskij slovar' (M., 1990).
Russkie pisatel' 1800-1917 (M., 1989-). (刊行継続中)
Enciklopedija russkoj zhizn'. rekomendatel'nyj bibliograficheskij spravochnik.
Handbook of Russian Literature (ed. by Viktor Terras; New Haven, 1985)
ソヴィエト文学を研究する場合には、以下の事典があります。
Dictionary of Russian Literature since 1917 (by Wolfgang Kasack; New York,1988). (文献を記載するのに、簡略表示を用いています。)
The Modern Encyclopedia of Russian and Soviet Literatures (ed. by Harry B. Weber) (1977-). (刊行継続中)
上に示した事典の中で「簡略表示」としたものでは、著者と刊行年だけで文献を示しています。これだけの情報でも、目指す本が身近な図書館にある場合には、検索カードやカタログを引くことでその本を手にできますが、時として、どうしてもタイトルが分からないこともあります。こうした時は、Ezhegodnik knigi SSSRや Library of Congress: Union Catalogなどのカタログを引くことで、必要なデータを知ることができるでしょう。これらのカタログは、東大の場合、総合図書館の参考室にあります。
ロシア語学を学ぶ場合には、以下の目録や事典が参考になるでしょう(東大の場合、いずれも、文学部3号館や8階のスラヴ文学研究室にあります)。
Bibliographie zur russischen Sprache (Symbolae Slavicae 8)(1980).
Bibliographie zur slavischen Sprachwissenschaft (symbolae Slavicae 1) (1977).
A Selected Bibliography of Slavic Linguistics 1,2(l966,1970).
Russkij jazyk; entsiklopedija (1979).
Lingvisticheskij enciklopedicheskij slovar' (1990).
語学の場合、文学に比べて図書館の蔵書が少ないため、こうした参考書を見るだけでなく、図書館の蔵書を一通り見ておくとよいでしょう。目次を見るだけでも、本のおおよその内容を知ることができます。
本格的な論文を書く場合には、事典に載っている文献だけでは不十分です。個々の文献についている参考文献のリストなどを参考にして、なるべく多くの文献を集めましょう。また、研究室で購入している雑誌は、なるべく目を通すようにしましょう。雑誌には、論文だけでなく、書評も掲載されています。各年の最終号の巻末に、その年に掲載された論文や記事の一覧がまとめられていることもあります。
こうして、関連するテーマの論文を収集し、その論文の参考文献リストからまた関連する文献を増やしていくわけですが(この際多くの文献を集めるためには、当然ながら、最新の文献からスタートするべきでしょう)、この過程で、あるテーマにおける基本文献、あるいはより影響力を持つ文献など、文献リストの<見取り図>を把握することができますし、そのテーマの扱われ方の傾向を知ることもできます。
文献に関する情報を集めた雑誌やシリーズ本もありますので、以下にいくつか挙げておきます。 Refarativnyj zhurnal; literaturavedenie.
Refarativnyj zhurnal: jazykoznanija.
Slavjanskoe jazykoznanie: bibliograficheskij ukazatel'
Astra Soviet and East European Bibliographies, East European Languages and Literatures(Compiled by Garth M.Terry)(英語圏の雑誌に掲載された論文の、著者、タイトルなどを、トピックごとにまとめた情報誌。)
(2)図書館を利用する
東大の図書館は、学内に分散しているため、他大学に比べて利用が面倒です。どこにどんな性格の図書室があるのか、手続きをどこですべきかを、各図書室で出している案内書などを利用して、きちんと把握しましょう。
1.東大文学部3号館図書室
必要な文献が分かったら、図書館を利用して本を探すことになります。探す文献が単行本の形をとった洋書である場合、まずもっとも身近な場所にある3号館図書室に行ってみましょう。スラヴ文学研究室で購入した書物は、主にこの3号館図書室に納められています。
2.東大文学部図書室(法文2号館)
研究室で購入している雑誌の古いナンバーは、文学部図書室に納められています。雑誌に載った論文を探すときには、まずここを利用することになります。なお雑誌の新しいナンバーは、8階の研究室に置かれています。
3.東大内の他の図書館
文学部の図書室に目指す文献がない場合、学内の他の図書館を利用することになります。総合図書館のOPAC(オンライン総合目録)には、全学の蔵書が登録されているため、探している文献が東大にあるのかどうか、東大のどこにあるのか、を知ることができます。
スラヴ文学科の学生・院生は、主に以下の図書館を多く利用することと思います。 総合図書館 教養学部図書館 教養学部外国語研究書庫(教養8号館)
教養学部図書館には、米川文庫があります。ここには、戦前に翻訳されたロシア文学の訳書が多く収められています。
事典などで、Diss. などと書いてある文献があります。これは、学位論文(dissertation)です。主要な学位論文は、スラヴ研究センター(北大)で購入しています(インターネット上で検索できます。)。東大の図書館(文学部3号館、教養学部ロシア語教室など)も多少は購入しています。
4.東大以外の図書館(大学)
目指す文献が東大になかった場合、学外の図書館を利用することになります。国立大学の院生は、国立大学ならばどの大学でも自由に閲覧することができます。
私立大学の図書館は、各大学によって利用資格が異なっていますが、おおむね所属大学の図書館の発行した紹介状が必要となる場合が多いようです。東大生(学部生含む)の場合、紹介状は、文学部3号館図書室で発行してもらえます。
東京周辺の大学でロシア文学関係の文献が充実しているのは、東京外国語大学、一橋大学、早稲田大学、上智大学(上智大学には、中央図書館の他にも、ロシア思想関係の本の多い聖三木図書館もあります)です。
インターネットを利用すれば、学術情報センターが提供するNACSIS(オンライン情報検索サービス)で検索を行って、図書や雑誌などの所在を知ることができます。
さて学外の図書館も近場であれば、自分の足で出かけることも可能ですが、遠方の大学の場合、それがかないません。国立大生はそうした場合でも、国立大学の蔵書であれば、文献を郵送で取り寄せて、閲覧することができます(図書館間相互貸借)。東大文学部生の場合、この手続きは文学部3号館図書室で行っています。
また遠くの大学にある雑誌論文や単行本の一部をコピーしてもらい、郵送で取り寄せることができます(学外図書館所属資料の文献複写)。これは、国立大学だけでなく、私立大学についても可能です。この手続きは同じく文学部3号館図書室で行っています。また、貸借・複写いずれも、東大OPACの「My OPAC」を利用して申し込むことができます。
5.東大以外の図書館(一般)
和書を探している場合、国会図書館に行けば、大抵、一発で解決します。国会図書館には国内で出版された全ての本を納入する、原則になっているからです。しかし、国会図書館の本は館外貸し出しをしてくれず、コピーにも枚数制限があります(しかも、コピー代が法外に高いです)。その上、閉架式で、司書が本を渡してくれるまでに、さんざん待たされます。だから、できることなら、国会図書館は利用しない方がよいでしょう。
意外と使えるのは、公立の図書館です。都立図書館の蔵書の数はかなりのものですし、区立の図書館も馬鹿にしたものではありません。とりあえずは、自宅の近所にある図書館や、東大生の場合は、大学に近い文京区立真砂図書館にでも行ってみてはいかがでしょうか。
朝日出版社から出ていた「ロシア文学案内」(1977、品切れ)は、巻末にロシア文学の主な翻訳書の一覧を掲載しています。手元においておくと、翻訳の有無をすぐに知ることができ便利です。図書館などには置かれていますので、一度見ておくとよいでしょう。
ロシア語の本を探している場合、忘れてはならないのが、日本ロシア語情報図書館です。これは、東京ロシア語学院の中にある小さな図書室ですが、よその図書館にはない文献が結構あります。年会費がやや高いですが、利用する価値はあります(住所:世田谷区経堂1‐11‐2;電話:03‐3429‐8239)。
日本ロシア語情報図書館の年会費は6000円。但し、非会員でも閲覧だけなら当日料金で利用できる(貸し出しは会員のみ)。コピーは一枚100円(非会員料金)。
6.海外の図書館
探している文献が日本国内にないという場合は、海外の図書館から取り寄せることもできます。東大の場合、この手続きは文学部3号館図書室の受付で行っています。ただし、手元に届くまでに、費用や日数が結構かかるようです。また、常に確実に届くというわけでもありません。
7.補遺・海外の図書館
取り寄せの手続きに入る前に必ず、その文献が日本国内に無いことを「NACSIS」等で確かめましょう。
A.ロシア国立図書館(旧レーニン図書館)の場合
ロシア版国立国会図書館であり、旧ソ連・ロシア国内で刊行された書籍は全て揃っている建前になっている。到着まで通例2か月程かかるようである。東大文学部図書室の場合、到着後の貸出期間は一週間なので、すぐにコピーするか、マイクロの場合はリーダーで紙におこす。とりよせの形態(現物、マイクロ、ゼロックスコピー)は申し込み時にリクエストできるが、常に希望どおりになるとは限らない。料金は、到着時に同封されているインヴォイス(送り状)の記載に応じて、「国際返信切手券(IRC)」を郵便局で買い、文学部図書室カウンターに支払う。インヴォイスが同封されていない場合は、とりあえず料金のことは無視してよい(たいてい後から送られてくる)。返送など面倒な手続きは文学部図書室のほうでやってくれる。料金は筆者の経験ではリーズナブルなものであった。コピーは法外に高額だという噂があったが、筆者の場合、十数枚(比較的新しい雑誌のコピー)が、送料込みで千円しなかったと記憶している。
「BLDSCサービス」によって取り寄せることになる。東大生の場合、文学部図書室でも代行してくれるが、ブリティッシュ・カウンシル(略称ブリカン)の会員になって個人で頼んだほうが到着が早いらしい。筆者は飯田橋のブリカン図書室(研究社英語センタービル内。東京理科大の隣り)で年会費4000円を払って入会し申し込んだところ、4か月で到着した。「BLDSCサービス」とは、ブリカンが British Library Document Supply Centre (BLDSC)から、1800年以降の出版物をとりよせてくれるというものである。通常、申込日から2-3週間で届く建前だが、実は半年かかるケースもある。現物貸し出しは一冊4800円、またフォトコピーはl0頁まで1000円で、それ以降は10頁ごとに1000円加算される。博士論文は長さに関係なくl件につきゼロックスコピー14000円、マイクロ8000円である。BLDSCに無い文献でも、申し込み時に申請すれば、英国内のバックアップ・ライブラリーからとりよせてくれる場合もある。なお、大英図書館蔵書目録「BLC」は、東大(総合図書館参考室)にもあるが、あまり信頼のおける目録ではない。
注意──書籍の種類によっては、「館外持ち出し不可」の指定が付されて送られてくることがある(バックアップ・ライブラリーからのは大抵そうらしい)。その場合は館内のコピー機を使うことになるが、一枚50円で、しかも英国著作権法により総頁数の20%しかコピーさせてくれない。筆者(ひっしゃ)は、ある作家のコンコーダンスを十日かけて筆写(ひっしゃ)するはめになった。東大文学部図書室経由で申し込むとこうした事態が回避できるかは定かでない。
3.書店を利用する
1.ロシア語の洋書を購入する
ロシア語の文献は、神保町の「ナウカ」や、本郷の「日ソ図書」で販売しています。ロシアで出版された本はなかなか再版されません。将来、必要になりそうな本は、当面いらない本でも、購入しておきましょう。又、この2店とも定期的にカタログを出していますから、必要な(必要となるかもしれない)本は注文しておきましょう。より確実に購入できます。
2.英語の洋書を購入する
英米の洋書を販売する店は、東京にいくつもあります。東大本郷の生協書籍部・洋書売り場では、洋書を組合員価格で販売しています(非組合員は定価)。店頭に置かれていない本でも、丸善に在庫があれば、短期間で取り寄せてもらえます。英米の洋書の場合、注文する前に Books in Print などのカタログを見れば、探している本が流通しているかどうかが分かります。こうしたカタログは、書店だけでなく図書館の参考室にも置いてあります。
海外の大学の紀要などは、書店のルートなどで購入することはなかなか困難です。こういう場合は、直接著者に依頼する方がよいようです。先生方に、連絡の方法を聞いてみるとよいでしょう。
3.学位論文を購入する
海外の大学に提出された学位論文を、購入することも可能です。紀伊国屋などいくつかの洋書店で、学位論文の注文を受け付けています。参考までに、雄松堂の連絡先を記しておきます。(雄松堂書店・学位論文センター/文京区大塚3-4 2-3/te1.03‐3943‐5891; fax.03‐3943‐9104)
4.古本屋の利用
絶版の和書を購入したい場合など、古本屋を利用することができます。古本屋には欲しい本がいつもあるというわけにはいきませんが、まめに通っていれば様々な本を発見できるでしょう。東京の古本屋は、神保町や早稲田に多くあります。早稲田には、ロシア文学関係の本が比較的多く売られているようです。古本屋は品揃えにそれぞれ特色がありますので、自分の足で回ってみてそれをつかんでおくとよいでしょう。
4.インターネットを利用する
インターネット上の書店「オゾン」(ロシア語書籍)、「アマゾン」(洋書)、「日本の古本屋」(和古書)などを通じて図書を購入することもできます。ただし、インターネットを使って買い物をするとき、注意しなければいけないのはセキュリティの問題です。クレジットカードの番号など他人に知られたくない情報を、ホームページ上のフォーム(プラウザから文字・数字を入力する欄)やEメールで無造作に知らせてはいけません。フォームやEメールで伝達される情報は、特にセキュリティ・システムが働いていない場合、第3者が内容を見ることも不可能なことではありません。手に取れば誰でも内容がわかるハガキと同じようなものだと考えてください。
書店以外にも、インターネット上にはさまざまなデータベースがあり、上手に利用すれば非常に便利です。ただし、著作権の保護にはくれぐれも留意してください。以下、いくつかの書店やデータベースを紹介します。
OZON
http://www.ozon.ru/ ロシアで最も有名なネット書店。多くの本が集められていますが、しかし品切れも非常に多いので、いざというときには使えないことがよくあります。
Alib
http://www.alib.ru/ ロシア語書籍のほとんどが手に入る、巨大なネット書店。OZONよりも遥かに品揃えが充実しています。なお、ロシアには他にもネット書店がありますが、「オゾン」と「アリブ」を押えていれば、基本的には用を賄えるはずです。
ГИЛЕЯ
http://hylaea.ru/ アヴァンギャルド関連の書籍の専門店。以前はモスクワ市内に実際に店舗を構えていましたが、現在は専らネット書店として機能しています。注文すれば日本への配送も可能です。
disserCat
http://www.dissercat.com/ ロシアの大学に提出された学術論文の電子図書館。無名の学生の論文から、著名な研究者の論文まで、幅広いジャンルに亘り数多くの論文が揃っています。一部は無料で閲覧可能ですが、全文を読むにはネット上で論文を購入する必要があります。購入手段は色々選ぶことができます。ロシア在住の場合は、ロシアの携帯電話を用いて購入するのが簡単。日本在住の場合は、Western Union というサービスを使って購入することができます。なお、disserCat のサイトによれば、クレジットカードでも決済できると書いてありますが、日本のカードは対応していないようです(2013年現在)。
Журнальный зал
http://magazines.russ.ru/ ロシアで刊行されている雑誌の多くを無料で閲覧できます。バックナンバーも揃っています。検索機能も当然あるので、とても便利です。
注)本文中に記載された価格や電話番号は、その後に変わっている場合があります。
初版文責:岩本和久
協力:長谷見一雄、清水道子、柳町裕子、斉藤毅、久野康彦
1997.7.増補改訂
増補改訂、電子テキスト化担当:久野康彦、三好俊介(以上敬称略)
2011.6一部改訂
2014.1一部改訂
2021-03-12
旧HPのコンテンツ①
※こちらに書かれている情報は最新ではありません。参照する際は注意してください。
ロシアの本屋案内
1. モスクワの本屋(1999年6月作成、2011年7月一部改訂、2014年1月全面改訂)
モスクワはロシアの首都だけあって新刊書も充実しています。Библио-ГлобусやМоскваなどの大手総合書店は、今や日本の地方の大手書店ぐらいの規模と品揃えがあると言えるでしょう。しかし、モスクワには小さめの専門書店にもよい店がいくつかあります。人でごった返した大手書店よりも、ゆっくり本を選べるという点でこれらの専門書店の方が好ましいと思う人もいるに違いありません。
大手総合書店ベスト3
本(古本も含む)だけでなくCDや文具も取りそろえた大規模な総合書店です。一般的な新刊書を探す場合は、これらの書店にまず足を運ぶのがよいでしょう。 品揃えにはそれぞれムラがあり、あるところに在庫がなくても別のところで見つかるということは頻繁にあります。
Библио-Глобус (Мясницкая ул., 6; Метро Лубянка)
地下鉄Лубянка駅からすぐ。地下歩道に出口表示あり。 Москва (Тверская ул., 8; Метро Пушкинская, Тверская)
地下鉄Охотный ряд駅とПушкинская駅の中間ぐらい。 Московский Дом книги (Новый Арбат ул., 8; Метро Арбатская)
地下鉄Арбатская駅から、Новый Арбат通りを西に10分弱歩いたところ。
小さめの専門書店
(以下の専門書店は栄枯盛衰が激しく、移転・閉店の可能性があるので、モスクワ在住者から最新の情報を確認しておくのが望ましい)
トヴェルスカヤ界隈
Театральные книги (Страстной бульвар, д. 10/34. строение 1; М. "Чеховская")
http://www.art1990.ru/shop.html 演劇関連の専門書店。新刊書と古書が両方あります。それほど豊富に資料が揃っているわけではありませんが、演劇関係に興味のある方は一見の価値あり。価格も良心的。ただし、少し分かりにくいところに書店があるため、以下詳しく案内します。まず、住所はСтрастной бульвар となっていますが、実際には ул. Б. Дмитровка 沿いにあります。しかも書店が単独で存在しているのではなく、Центральная научная библиотека Союза театральных деятелей РФ (ЦНБ СТД РФ) という図書館の中に位置しています。行き方は、最寄りの Чеховская 駅から出たら右に進み、横断歩道を渡ります。すると目の前にЦНБ СТД РФ があるので、そのまま Страстной бульвар を直進せずに(すぐ左側に並木のある大通りが走っていますが、これがСтрастной бульвар です)、右折して ул. Б. Дмитровка 沿いを歩いて、この図書館の中に入ります。すると右手に扉があるので、それを開けると図書館の入り口です。閲覧室には入らずに、部屋の奥の扉を開けた先が書店です。 ちなみに、この図書館の斜向かいにも書店がありますが、そこは主に英語の教科書を扱う書店で、あまり見るべきものはありません。 Русская деревня (Глинищевский переулок, дом 6; М. "Пушкинская", "Чеховская", "Тверская")
http://www.hamlet.ru/ 地方で出版されたりした少部数の本を中心に扱っている書店。新刊書も古書もあり。文学の他にも様々なジャンルの本が置いてあります。また、学術論文のレジュメ(紹介論文)も販売されています。背表紙に何も書かれていない小冊子が多く書棚に並んでおり、見過ごしてしまいそうですが、中には貴重な冊子もあるので要確認。なお、この書店は有名な『モスクワ書店』の裏側に位置し、発見しやすそうですが、やはり探し出すのは困難です。Глинищевский переулок 沿いに建っている水色の建物にアーチ型の入り口があるので、その扉を開けて中に入ります。すると目の前に広々としたホールが開けていますが、そこへは進まず、すぐ右に折れます。暗い廊下には3つのドアが並んでいますが、その一番手前のドア、「26番」のドアの中が書店です。看板や表示は一切ありません。 Фаланстер (М. Гнездниковский пер., д. 12/27, стр. 2-3; М. "Тверская")
http://falanster.su/ トヴェルスカヤ界隈では人文社会系の書籍が恐らく一番充実しています。新刊書も古書もあり。店内は広々としており、本も探しやすいです。場所は少々分かりにくいですが、薄暗いアーケードの中に扉があり、そこを開けて入った2階です。アーケードの外には日焼けサロンの看板がいつも出ているので(少なくとも2011年夏~2013年夏まではいつも出ていました)、それを目印にするとよいでしょう。 Акция Лт (Антикварная лавка) (Б.Никитская, д. 21/18; М. "Арбатская", "Тверская")
http://www.akcia-antique.ru/ かなり年代物の古書を扱っている書店。1階ではイコンが、2階ではアンティーク雑貨が中心に販売されていますが、2階の奥に古書店があります。芸術関係、文学関係の古書が充実しており、多巻物の著作集もあります。初版本に興味のある方は足を運んでみる価値があるでしょう。なお住所とは異なり、実際には калашный переулок 沿いに入口があります(二つの通りが交差する辺りに書店は位置しています)。 ちなみに、Б.Никитская 通りを挟んで斜向かいにも書店がありますが、ここは主に宗教及び音楽関連の書籍が中心です。ただし、ごく少数ながらも文学関係の本も置かれており、文学にだけ関心のある人も余裕があったら見ておくとよいかもしれません。 Чук и Гик (Большой Палашевский пер. д. 9; М. "Пушкинская")
http://www.chookandgeek.ru/ マンガ専門店。ロシア語と英語のマンガ及びマンガ雑誌が置かれています。日本のマンガのロシア語訳もたくさんあります。一方でいわゆるバンド・デシネ型のマンガもあり、筆者は『巨匠とマルガリータ』のマンガを購入しました。他に、マンガの批評集やフィギュアなども僅かにあります。店内は狭く、充実した品揃えとは言い難いですが、モスクワでマンガ専門店は貴重な存在。
ルビャンカ界隈
Центральная книжная лавка писателей (Кузнецкий Мост, 18/7; М. "Кузнецкий Мост")
http://lavka-pisateley.msk.ru/ "Дом иностранной книги" という外国語専門の書店に隣接しています(なおこの書店は英語で書かれた一般書籍を中心に扱っており、品揃えはあまりよくありません)。2階建てで、文学関連の書籍は上階にあります。演劇、映画、絵画、文学等の研究書(主に古書)が充実しており、多巻物の作品集もあり。なお女店主(店員?)は親切で文学にも詳しく、探している本を尋ねると、それがお店にあればすぐに出して見せてくれます。価格も高くありません。とりわけ店先に陳列している多巻物は、極めて安価で売られています。 Циолковский (Новая площадь д.3/4 , подъезд 7д в здании Политехнического Музея; М. "Лубянка", "Китай-город", "Кузнецкий Мост")
http://www.primuzee.ru/ "Политехнический Музей" という大きな建物の中にある書店。入口が何箇所もありますが、正しいのは "подъезд 7" という入口。もっとも、大きな看板が出ているので間違える心配はありません。ここは "Фаланстер" のいわば姉妹店であり、それだけに人文社会系の書籍の品揃えは非常に充実しています。ルビャンカ界隈では恐らく一番でしょう。店内は広く、本を探しやすい造り。新刊書も古書もあり。 Гиперион (Хохловский переулок, дом 7-9, строение 3 (вход со двора); М. "Китай-Город")
http://www.hyperionbook.ru/ 一見スラムのような場所の奥に佇む、非常にユニークな書店。ロシア・アニメーションの百科事典からプラトーノフ作品集、碩学によるバレエの研究書、ペッペルシュテインの小説まで、非常に幅広いジャンルの書籍が揃っています。他所のお店ではちょっとお目に掛かれないようなものが多く、探している本があるならば一度は訪れてみる価値あり。雑貨や絵本も販売されています。
クロポトキンスカヤ~パールク・クリトゥールィ
Нина (Ул. Волхонка, д. 18/2, киоск в Институте русского языка им. В.В. Виноградова; М. "Кропоткинская")
http://www.kniginina.ru/ "Нина" 書店はパヴェレツカヤ駅にあった方(すでに閉店)が有名ですが、クロポトキンスカヤ駅近くにもあります。ただし、これは「ヴィノグラードフ名称ロシア語大学」内の書店です。大通りに面した扉を開けて中に入り、受付の女性に用件を言えば、書店に通してもらえます。もっとも、店内は狭く、それほど豊富に本が取り揃えられているわけではありません。語学・文学関係の新刊書が中心。 Букинист (Остоженка, 53/2, стр. 4; М. "Парк культуры") 駅のすぐ傍にある古書店。今時にしては珍しく、自分で本を手に取って吟味することができません。古書は全て展示ケースに入れられているか、あるいは手の届かない位置に配架されています。かなり年代物の古書ばかり集められており、そういったものに興味のある訪問者には有益かもしれません。
ノヴォクズネツカヤ~パヴェレツカヤ
Параграф (Ул. Пятницкая д. 3/4, строение 2, Торговый центр, Магазин по стрелке "Книги, букинистика"; М. "Новокузнецкая")
http://paragraf-book.ru/ Новокузнецкая 駅を出て右折し(2013年2月にオープンした丸亀製麺とは反対方向)、しばらく進むとアーケードがあるので、そこを潜ると、正面に "Книги, букинистика" の看板が掛かった小さなビルが見えます。この建物の階下のずっと奥の方に古書店があります。
多巻物の作品集/全集や児童書が特に充実しており、他に演劇関係や文学関係の研究書も置かれています。また、20世紀初頭に出版された古書が貴重書として販売されています。概して良心的な値段設定。
その他
Академкнига (Ул. Вавилова д. 55 / 7; М. "Академическая")
http://www.litras.ru/ モスクワ市内に幾つかの支店を持つ書店。例えば "Цветной бульвар" 駅の傍にも店を構えています。基本は新刊書店ですが、しかし古書の数も非常に多いです。文学、歴史、絵画、建築、音楽、数学…様々なジャンルの書籍が豊富に揃えられています。しかもかなりの低価格で販売。例えばチュコフスキーの『文学的回想』は150ルーブルでした。また、各国文学作品のロシア語訳も棚に並べられており、こちらも安く購入が可能。ちなみにモスクワ大学から歩いて20~30分程の所に位置しているため、モスクワ大学に来た折には是非活用してもらいたいところ。 Книга МАКСИМА (1-й корп. гум. фак. МГУ, 1 этаж, около библиотеки; М. "университет") モスクワ大学構内にある古書店。第一人文棟1階にひっそりと店を構えています。品揃えは平均点以上。店内にある本は恐らく全てリストアップされており、仮に目当ての本を自力で探し出せなくても、書名を言えば数日中に見つけてきてくれます。店内にない場合は注文も可能。ただし、一度に大量の本を注文すると断られるので、一回に頼む量は1-2冊程度が望ましいでしょう。また高価な本もなぜか断られる場合があります。
(この項文責・小澤裕之)
付録:中央郵便局
Московский почтамт (Мясницкая ул., 26; Метро Тургеневская, Чистые пруды) モスクワから日本に大量の本を送る場合、ここに持ち込んで船便で発送するのが最も安価で済む。ただし荷物の扱いは乱暴なことが多い。2013年現在、改築中で、 近隣の建物(Мясницкая通り沿いに駅から離れていく方向)に移転している。
2. モスクワ・ペテルブルグの図書館(2003年10月現在)
ロシア文学・文化を研究する以上、現地ロシアの図書館にある資料を利用することが非常に大きな意味を持つのは言うまでもありません。しかし、ロシアの図書館のほとんどは、図書が出てくるまでに長い時間待たされたり、所によってはコピーに数日を要したり、辞書など自分の本が持ち込めなかったり、出入りにいちいち手続きが必要だったり、国立図書館のみならず大学などでもほとんどの図書館が全て閉架式であったりするなど、日本の図書館に慣れてしまうと非常に使いづらいものであることも事実です。特に短期滞在でロシアに資料収集に来られる場合などは、そうしたことを念頭に置いて、余裕を持って日程を組まれることをお勧めします。
なお、本ページ執筆の際には、ターニャさん(日本人。ロシア史を専攻されています)のHP「ロシア雑記帳」(http://homepage2.nifty.com/~takako~tanya/index.html)の中の「ライブラリー」の項にある図書館案内を参照させていただきました。独自の視点から書かれている上、文句ばかり言っている私の紹介と違い、図書館に対する愛情の溢れた文章ですので、ぜひ併せてご覧ください。
モスクワの図書館
モスクワでは、「レーニン図書館の閉鎖」という半ば社会問題のような状況が数年間にわたって続き、他の様々な図書館が代替として利用されていたのですが、レーニン図書館復旧のめどがようやくついた今となっては、この図書館(およびその分館である書籍博物館、ヒムキ)を使えばとりあえずの用は足りる、という方向に向かっていくと思われます。他の図書館は、レーニン図書館にない資料及びまだ開いていない部分の資料が目当てである場合、あるいは何か掘り出し物を求めている場合など、「オプション」として利用すればいいでしょう。
ロシア国立図書館(通称:レーニン図書館)Российская государственная библиотека
ул. Воздвиженка, 3/5; Метро "Арбатская", "Александровский сад", "Боровицкая", "Библиотека им. В.И.Ленина"
Пн-Пт: 9-20, Сб: 9-19, 毎月最終月曜は清掃日のため休館
http://www.rsl.ru/
永久に続くのではないかと思われていた改装工事にもようやく一つのめどがついたようで、2003年10月より、かなりの蔵書が閲覧できるようになった(→http://www.rsl.ru/tot.asp?izm.htmを参照)。言うまでもなく、規模から言っても所蔵する資料の数から言ってもロシア最大の図書館。ただし、ロシア語文献、特に旧ソ連の文献に関しては相当数の蔵書を誇る一方、冷戦期の文化政策を反映してか、旧西側など外国の文献は必ずしもよく揃っているとはいえない(1960年代の英語文献でもマイクロフィルムでしか参照できない場合があるなど、妙なことが多い)。
パスポートさえあれば旅行者でも簡単に入館証を作ることができ、また外国人には誰であれ、ロシア人の博士号所有者などと同じ閲覧室が割り当てられるというのがうれしいところ(2004年8月追加――2004年8月現在、このシステムは既に廃止されたようである)。コピーセンターはいくつかあり、混み具合にも寄るが、いずれも比較的迅速にやってくれる(普通の書籍なら一枚3ルーブル50コペイカ)。また、マイクロフィルムのコーナーもあり、コピーも受け付けているが、資料が出てくるのは注文した翌日(その日が金曜ないし土曜の場合は次の月曜)の夕方4時以降になる。マイクロフィルムを扱う地下のコピーセンターの注文受付が4時半までであることを考えると、短期滞在者には不便この上ない。
なお、明らかに不完全なものであるが、インターネット上で蔵書検索をすることも可能である。詳しくは上記の図書館のホームページを参照。
書籍博物館 НИО редких книг (Музей Книги)
ул. Воздвиженка, 3, корпус "Г" (3-й подъезд, 4-й этаж); Метро "Арбатская", "Александровский сад", "Боровицкая", "Библиотека им. В.И.Ленина"
Пн-Пт: 10-17, Сб: 10-16, 毎月最終月曜は清掃日のため休館
http://www.rsl.ru/tot.asp?7_5.htm
レーニン図書館の分館であり、レーニン図書館の入館証があれば利用できる。グーテンベルグの活版印刷本や『死せる魂』初版本などが並んでいる展示室を抜けると、その奥が図書室になっている。カード目録に書かれた書誌情報を係員に渡せば、10分から20分くらいで図書が出てくる。18世紀から20世紀初めの書籍を数多く所蔵しており、この時代の文学・文化を専門にしているなら、ここは絶対に外せないだろう。閲覧したことはないが、17世紀以前の本もかなりあるようだ。18世紀の本などでも現物を素手でぽんと渡されるので、博物館とは言いながらメインテナンスは大丈夫なのかと心配になってしまう。
コピーはものによってできたりできなかったりする。19世紀後半以降の本は概ね可能なようだが、19世紀前半から18世紀あたりになると、さすがに本の保存状態を気遣っているようで、マイクロフィルムがある場合にのみ複写が可能。
ヒムキ(レーニン図書館学位論文・新聞部) Отдел газет и отдел диссертаций
г. Химки, ул. Библиотечная, 15; Метро "Речной вокзал" (駅前から出ている乗合バスNo.344-К あるいは368-Кに乗り、停留所Библиотечная улицаで降りるとすぐ前)
Пн-Сб: 9-18, 毎月最終月曜は清掃日のため休館
http://www.rsl.ru/tot.asp?7_18.htm (新聞部)
http://www.rsl.ru/tot.asp?7_19.htm (学位論文部)
これもレーニン図書館の分館で、学位論文、新聞を所蔵する。入館は、レーニン図書館の入館証があれば大丈夫。かつては印刷物を一切持ち込めなかったらしいが(自分のメモなどでも不可だったらしい。入って一体何をしろというのか)、現在はメモやノート、プリント程度なら持ちこみ可。資料請求の一般受付は2時などかなり早い時間に閉まるのだが、外国人(レーニン図書館閲覧室No.1の入館証を持っている人)に対しては待遇がよく、受付終了後でも行ってその日に資料が閲覧できることがある。ただし論文丸ごとのコピーは一日ではできないので、後日また来なくてはならない。
「ヒムキ」はモスクワ郊外の地名で、ここは既にモスクワ市ではない。とにかく、とてつもなく立地条件の悪いところである。
歴史図書館 Федеральное государственное учреждение культуры Государственная публичная историческая библиотека России (ГПИБ России)
Старосадский переулок 9, стр. 1; Метро "Китай-город"
Пн-Сб: 9-20, Вс: 10-18, 祝日、毎月最終金曜の清掃日は休館。また夏季(6-9月)には開館時間に変更あり(HPで確認してください)
http://www.shpl.ru/
入館証を作るには、大学などロシア国内の所属機関が発行した紹介状が必要。レーニン図書館が閉館していた期間は、代替施設として人文系の多くの学生に利用されていた。原則として、歴史を学ぶ人のための利便が図られた図書館。最初に申告すれば、辞書など自分の本も持ちこみ可。レーニン図書館の目録にない本もかなり所蔵している。コピーはかなり不便で、時間がかかる(場合によっては数日)上、フロントページならびに目次のページはコピー不可という規則がある。
この図書館は、歴史を専攻しているか否かによって割り当てられる閲覧室が異なってくる。入館証を作る際に、文学など歴史以外の分野を「専門」として申告すると、一般閲覧室という大きな部屋が割り当てられるが、時期によっては長い列が出来ていることが多く(特に学期末)、あまり使いやすいところではない。私はロシア史研究者を名乗って利用している。ただ、レーニン図書館がかなり使えるようになった今後はまた事情も違ってくるかもしれない。
イニオン Библиотека Института научной информации по общественным наукам (ИНИОН) РАН
Нахимовский просп.15/21; Метро "Профсоюзная"
Пн-Пт: 10-17
http://www.inion.ru
ロシア科学アカデミーの図書館。何と言っても、鞄など自分の荷物を持ち込めるという点が最大のメリットである。しかし、科学アカデミーの深刻な財政事情を反映して、この図書館は90年代のある時期以降、外国の図書の購入をやめてしまった。また、古い資料でもマイクロフィルム化されているものは少ない(つまり、古くて状態の悪い資料は複写不可ということ)。コピーもかなり不便で、その日に出来上がってくることはまずない。ここも、入館証を作る際には紹介状が必要。
外国文献図書館 Всероссийская государственная библиотека иностранной литературы им. М.И. Рудомино (ВГБИЛ)
Николоямская 1; Метро "Китай-город", "Таганская"
9-5月 Пн-Пт: 10.00-19.30, Сб-Вс: 10.00-17.30
6-8月 Пн-Пт: 10.00-19.30, Сб: 10.00-17.30
毎月最終木曜は清掃日のため休館
http://www.libfl.ru
外国の図書が多く参照できるという、ロシア在住者には貴重な図書館。ただし、例えばロシア文学の中の特定分野に関する欧米の最新の研究など、あまり専門的なものを求めて行くと、肩透かしを食らうかもしれない。4階には日本大使館文化広報部が置かれており、事典類から一般の文芸書、さらには雑誌や漫画に至る日本の図書を読むことができる。ここの開室時間は月-金が10時-19時半、土曜が12時―17時半。日曜は休み。
芸術図書館 Российская государственная библиотека по искусству
Большая Дмитровка, 8/1; Метро "Театральная", "Охотный Ряд", "Площадь Революции"
http://www.liart.ru/
主に美術関連の資料を集めた図書館。
モスクワ大学付属図書館
原則的に、モスクワ大学の学生であることが利用資格であり、私は利用したことがない。が、非常に充実した図書館であるという話はよく耳にする。
ロシア国立人文大学(РГГУ)付属図書館
РГГУの教官も「とても酷い図書館」と言うくらいの図書館であり、所蔵図書が乏しいのみならず、入館がやたらと厳しい上、学生のアルバイトと思われる館員の態度は無礼極まりない。РГГУの学生でなければ入館証が作れないが、まあ行くメリットは全くない。РГГУの学生であっても、新聞のバックナンバーが読みたい時にでも行けば十分。ただし、РГГУの大学院生には図書の館外持ち出しが許されているため、一般的な図書を手元にしばらく置いておきたいときは良いかもしれない。
ペテルブルクの図書館
モスクワはロシアの首都ですが、だからといって、ペテルブルクの図書館がモスクワの図書館と比べると全く見劣りしてしまうような存在かといえば、必ずしもそうではありません。確かに町の規模が大きく、情報一般が集中しているのはモスクワなのですが、こと文学・文化といった領域に関しては、モスクワとペテルブルクでほぼ拮抗しているような印象を受けます。図書館もその例外ではありません。また、帝政期の資料の中にはモスクワの図書館にないものも多く、特に19世紀から20世紀初頭を専門にしている場合は、ペテルブルクのほうがむしろ重要である場合が多いとすら言えます。
ロシア国民図書館(通称:シチェドリン図書館、公共図書館) Российская национальная библиотека
旧館:ул. Садовая, 18; Метро "Гостиный двор", "Невский проспект"
新館:Московский пр., 165; Метро "Парк победы"
http://www.nlr.ru
ペテルブルク最大の図書館。モスクワのレーニン図書館と同じく、パスポートを提示すれば旅行者でも入館証が作れるシステムであり、紹介状などは必要ない。(2004年4月追加――ただし、雑誌フォンドやゼームスキーフォンドなど、館内の部門によっては紹介状が要求されるところもあるので、注意が必要である) 旧館は、狭い敷地を目一杯使った迷路のような構造を持つ古い建物だが、新館は、「ロシアの図書館」へのイメージを根本から塗り替える、モダンな建物。
この図書館は、現在移転工事が行われているため、資料が旧館と新館に分散しており、その意味で様々な不便が付きまとう。例えば、マイクロフィルムの注文、閲覧は新館だが、マイクロフィルムの印刷の注文は旧館で行う。仕上がりには、建物が分かれていることもあり、今のところ早くても1週間かかるようである。普通の図書も両館にかなり分散している。
少し前までは、1930年代以前の本が館内のカード目録にないため、自分で別の本などを見て書誌情報を調べ、請求するというシステムであったらしい。しかし今では、館内の蔵書の書誌情報を記したカードは全てスキャナで取り込まれており、インターネットを通した蔵書検索が可能である。館内にもコンピュータ室(レーニンスキー・ザール)が設けられており、図書の検索ができる。図書館の電化を目の当たりにして、レーニン像もどこか感慨深げである。もちろん、カード目録も従来どおり利用できる。資料が出てくるのはほとんどの場合請求の翌日である。(2004年5月追加――資料は、平日は夕方5時、土日は4時までに請求すれば、その日のうち(2時間後)に見ることができる。この時間を越えると、資料が出てくるのは翌日となる。)
コピーが非常に迅速なのが、この図書館のすばらしいところである。たいていはその場でやってくれるし、特に新館のコピーセンターは数百ページの本でも10-20分ほどで丸ごとコピーしてくれる。 上に挙げた旧館、新館の他にも、この図書館には様々な分館があるが、ほとんどの用はこの二つで足りるだろう。他の分館に関しては上記の図書館HPを参照。
プーシキンスキー・ドーム図書館 Библиотека Института русской литературы
наб. Макарова; Метро "Василиеостровская" (ただし地下鉄駅からはかなり遠い。Университет方面行きのバスか乗合バスを利用するとよい)
http://www.pushkinhouse.spb.ru/structure/unit9.shtml
ロシア科学アカデミー・ロシア文学研究所(通称:プーシキンスキー・ドーム)の中にある図書館。この研究所所属でない人が利用する場合は、自分の所属機関が発行した紹介状が必要。紹介状を渡すと、同じ建物の2階に部屋を持っている担当者のサインをもらってくるよう言われる。ただし、入館にあたって何かが求められるわけではなく、カード目録を見るくらいならおそらく何も必要ではない。旅行者でも、普段から来ているような顔で澄ましてカードをめくっていればいい。良くも悪くもアバウトなところである。
本は、請求すればすぐその場で出してくれる。閲覧室は、通常の百科事典や各時代のロシア語辞典のみならず、作家事典をはじめとする数々の文学関連の事典や、有名作家の全集などが並び、ロシア文学を研究するための利便が最高度に図られたところである。コピーも、数ページならその場でお金を払ってすぐやってくれる。ただ、資料請求の受付時間が4時まで、閲覧室が開いているのが5時までとかなり早いので、できるだけ早めに行ったほうが良い。
科学アカデミー図書館 Библиотека Российской Академии Наук
Биржевая линия, 1; 交通機関に関してはプーシキン・ドーム図書館と同様
http://ban.ru/
有名なところですが、私は利用したことがなく、知り合いで利用したという人もあまり聞きません…。どうなんでしょう?
文責:鳥山祐介