2025年7月10日に井上幸義先生(上智大学名誉教授)による特別講義が開催されました
去る2025年7月10日、スラヴ語スラヴ文学研究室にて、上智大学名誉教授の井上幸義先生をお招きし、特別講義「ゴーゴリの鏡の世界 ― 『鼻』の中の鏡像」が開催されました。
井上先生は、ロシア語学の分野では数詞と名詞の結合関係や造格の用法、ロシア文学の分野ではゴーゴリを中心とした作品研究において、多くの優れた業績を挙げてこられ、2022年度には日本ロシア文学会大賞を受賞されています。
今回の講義では、ゴーゴリの代表作の一つである短編小説『鼻』において、入念に構築された語順、詩的なリズムや音、さらには作品内に張り巡らされた多様な引喩が、全体として「左右対称の鏡像」を形作っている点について、豊富な事例とともにご解説いただきました。
2時間近くにわたる密度の濃い講義の後には、1時間ほどの質疑応答が行われ、「鏡像」という現象はゴーゴリの他の作品にも見られるのか、また彼の文学的技法が後代にどのような影響を与えたのかなど、多岐にわたる問いが投げかけられ、活発な議論が展開されました。加えて、井上先生ご自身が研究を進める中で経験された貴重なエピソードも交えてお話しいただき、非常に有意義な時間となりました。
