映画「父、帰る」をめぐって――ロシア映画の最前線
ゲスト アンドレイ・ズビヤギンツェフ(Андрей Звягинцев)氏
テーマ 映画「父、帰る」をめぐって――ロシア映画の最前線
日時 2004年7月6日(火)午後7時~8時30分
場所 東京大学文学部3号館7階スラヴ文学演習室
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督は、1964年、ノヴォシビルスク生まれ。2003年に初めての監督作品「父、帰る」(Возвращение)によっていきなりヴェネツィア映画祭グランプリ(金獅子賞)の栄誉に輝き、「タルコフスキーの再来」とも呼ばれ、国際的に注目されている新鋭です。
『父、帰る』の舞台となるのは、現代ロシアの田舎町を。母と静かに暮らす二人の兄弟、アンドレイとイワンのもとに、ある日、突然父が十二年間の不在の後に帰ってきます。その後、この無口で謎めいた厳しい父と二人の息子たちの緊迫した関係が展開します。周到に張り巡らされた宗教的シンボルと巧みな物語の展開、二人の子役の天才的な演技、そして息をのむほど美しい北ロシアの夏の自然――このすべてがあいまって、欧米の基準では信じがたいほどの低予算映画ながら、近来稀にみるほど完成度の高い傑作が生まれました。日本で公開されれば、おそらく大きな話題となることでしょう。
この映画は日本では2004年9月に公開予定。今回の懇話会は、アスミック・エース社のご好意によるものです。映画の公開情報はhttp://chichi-kaeru.com/で見ることができます。懇話会は多数の新聞社や雑誌社からの殺到する取材申し込みで超多忙なスケジュールを縫うように行われ、日時を確定できたのも数日前でごく短い周知期間しかなかったのにもかかわらず、ズビャギンツェフ氏の話をぜひ聞きたいという熱心な聴衆が狭いセミナー室に40名以上も詰めかけ、一部の人は立ち見となりながらも、熱い雰囲気の中で対話が続きました。
懇話会後はさらに25名ほどの有志が夕食をともにしながら、さらに深夜までロシア映画をめぐって熱い談話が途切れることはありませんでした。
ズビャギンツェフ監督との談話のロシア語原文を、以下に掲載します。ロシア語テクストを準備してくれた、東京大学にロシアから留学中のマリヤ・レーベジさんに感謝します。
"Деньги решают многое, но не всё"
6 июля 2004 г.
Кафедра славистики, Токийский университет
Беседу вел Мицуёси Нумано
