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平成25(2013)年度 文化資源学講義・演習

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開講科目・担当者一覧
通年 月1(隔週) 修士論文指導 各教員
通年 月1(隔週) 博士論文指導 各教員
月2 博物館空間表現実習 遠藤秀紀、諏訪元、西秋吉宏、西野嘉章
月3 文書とその社会的役割 中村雄祐
月3 文化資源学入門(2):文系の学問とデジタル技術 中村雄祐
月4 日本とアメリカ万国博覧会 ウイリアム・コールドレイク
月4 日本とイギリス万国博覧会 ウイリアム・コールドレイク
月5 人文情報学(1)  中村雄祐、A.C.ミュラー
火1 文化施設経営論 小林真理
火1 文学部一般講義:法律学 小林真理
火3 東京大学の埋蔵文化財と文化資源学 木下直之、堀内秀樹、成瀬晃司
火3 博物館展示論 木下直之
通年 火4 文化政策の諸問題  小林真理
通年 火4・5 ミュージアムテクノロジー(1) 西野嘉章
火5 文化財保護の諸問題 木下直之
火5 展示物論  木下直之
通年 水2 明治期社会経済史演習 鈴木淳
水2 演劇学・舞踊学への招待 古井戸秀夫
水2 「江戸」の発見 岩淵令治
水3 歌舞伎を読む 古井戸秀夫
水3 感性文化とメディア論 渡辺裕
通年 水4 江戸を読む 長島弘明
水4 合唱と共同体 渡辺裕
水5 社会調査資料の二次分析実習  佐藤健二
水5 社会調査史 佐藤健二
木1 文化資源学入門(1):文化政策概論 小林真理
木2 海外の文化政策研究論文を読む 小林真理
通年 木3(隔週) 文化資源学フォーラムの企画と実践 木下・小林・古井戸・中村
木4・5(隔週) 文化資源学の原点(1) 木下・小林・中村
木4・5(隔週) 文化資源学の原点(2) 木下・小林・古井戸・中村
通年 金2(隔週) 展覧会の諸問題 村上博哉 
金2 社会意識論 佐藤健二
金2 原典を読む―河竹黙阿弥を読む 古井戸秀夫 
金3 近世日本の異文化交流とその資料 松井洋子
金3 文化資源としての日本建築 ウイリアム・コールドレイク
金3 中世文書の形態論的研究 林譲
金3 文化資源としての日本の住まい ウイリアム・コールドレイク
通年 金5 『高橋由一油画史料』を読む  木下直之
金5 ヨーロッパ書物史研究(4) 月村辰雄
金5 古代中国の文字と言葉1――漢字音入門 大西克也
金5 古代中国の文字と言葉2――上古中国語の姿 大西克也
夏冬 集中 特別演習:美術館における教育研究 寺島洋子、村上博哉
集中 漢籍入門  大木康
集中 アーカイブズ学 中村雄祐、渡辺浩一
集中 近代日本画の研究:技法と材料をめぐって 荒井経
集中 文化資源学特殊講義 黒田乃生

各コース共通科目

特殊研究

東京大学の埋蔵文化財と文化資源学

木下 直之、堀内 秀樹(埋蔵文化財調査室)、成瀬 晃司(埋蔵文化財調査室)

2単位 火3
 東京大学は、1983年に臨時遺跡調査室(現在の埋蔵文化財調査室)を開設して以来、本郷キャンパスの発掘を営々と続けてきた。東京でこれほど徹底的に掘られた場所はほかにない。かつての加賀藩上屋敷の敷地跡に、東京大学がほぼそのまま存在しているがゆえに、発掘の成果は近世考古学という学問領域の開拓に大きく貢献した。しかし、その視野は東京大学開学以前に止まる。本講義では、発掘の成果に加えて、地上(すなわち路上や建物内部)の「埋蔵文化財」にも目を向け、東京大学の「文化資源」を探ろうとする試みである。文化資源学研究室と埋蔵文化財調査室が組み、さらに史料編纂所、工学部建築史研究室、理学部植物学教室、総合研究博物館の教員が参加し、リレー形式で東京大学の姿を明らかにする。発掘現場の見学会も予定している。文化財に関心がある学生には同日5限の「文化財保護の諸問題」の受講も勧める。
博物館展示論
木下 直之 2単位 火3
 博物館における展示活動の本質を理解することを目標とする。言い換えれば、博物館における「展示」とは何かを正面から問い、展示活動を中核においた公共施設の日本社会における存在意義を理解することをねらう。そのために、受講者には、展示の歴史的な変遷を理解する一方で、現状を正しく分析することを求める。そのことにより、受講生は博物館の現状を自明の前提とせず、将来像を描き、改善に取り組む能力を身につける。
 博物館の展示活動がどのような理念にもとづき、どのような歴史的変遷を経て形成されてきたか、その大きな枠組みを開講から5回で把握する。展示活動を支える運営面と施設面の双方に注目し、3つの博物館(東京国立近代美術館、しょうけい館、井の頭自然文化園、)をケーススタディとし、博物館の歴史と現状と課題を論じる。「展示」に関心がある学生には同日5限の「展示物論」の受講を勧める。
古代中国の文字と言葉1―漢字音入門
大西 克也 2単位 金5
 古代の中国の言葉の特質に対する理解を深めるため、「古代中国の言葉1」では漢字の字音を取り上げ、日本漢字音のもとになった中国古代漢字音の復元方法や歴史について概説する。長い歴史を持つ中国音韻学には独特の用語も多く、入門段階で困難を感じる学習者が少なくないが、本講義では特に「中古音」と称される隋唐時代の音韻を主たる対象として、その基本的な概念や考え方を解説し、受講者が古代の漢字音について理解を深める一助としたい。
古代中国の文字と言葉2―上古中国語の姿
大西 克也 2単位 金5
 古代の中国人は、男も子どもを「生」むことができた。「愛」するとは感情だけではなく、行動を伴う必要があった。古代中国語には、私たちから見てちょっと不思議な表現が種々存在し、そこに古代の中国語の特質を理解する鍵が隠されている。「古代中国の言葉2」では文法や語彙など表現方法に着目して、古代の中国人は彼らの目に映る世界をどのように言語化していたのかを考える。
文化資源としての日本建築 Japanese Architecture as Cultural Resources

ウイリアム・コールドレイク

2単位 金3

 この講義は文化資源学の観点から日本建築を取り上げる。堂々とした伊勢神宮や絢爛豪華な日光東照宮のバリエーション豊かな日本伝統建築は貴重な文化資源である 。このコースでは、日本建築の様々な形態を調査し、各タイポロギー(社寺、城郭、書院、数寄屋と茶室、町家、民家、霊廟)を紹介して、それぞれの様式や用途を分析する。さらに東京都23区に 保存されている建物の実例を現地で見学する。
 講義は日本語で行う。
 This course examines Japanese architecture from the viewpoint of Cultural Resource Studies. From the subdued dignity of Ise Shrine to the sumptuous magnificence of the Nikko Toshogu, the richly varied historic architecture of Japan constitutes an indispensible cultural resource. The many and varied forms of Japanese architecture will be investigated. Each of the main typologies will be introduced: Shinto shrines, Buddhist temples, castles, palaces, tea-houses, vernacular architecture of city and country, and shogunal mausolea. There will also be field trips to assess first-hand actual examples of surviving historic architecture in Tokyo.
 The course will be conducted in Japanese.

文化資源としての日本の住まい

ウイリアム・コールドレイク

2単位 金3

 この講義は文化資源学の観点から日本の住まいを取り上げる。このコースでは、日本住宅の様々な形態を調査し、各タイポロジー(縄文、弥生時代の縦穴住居、古代の寝殿造り、近世の書院造り、数寄屋、町家や農家、明治期の洋館、1960年代以降のいわゆるマイホーム)を紹介して、それぞれの様式や用途を分析する。また1980年代以降の高齢化に伴う2世帯住宅はどのように日本人のアイデンティティを表しているのを明らかにする。日本の住まいは結局各時代にどのように環境、日常生活の移り変わりや海外からの影響に対応してきたのか?
 東京都23区に現存する建物の実例を現地で見学する。
 講義は日本語で行う。
 The Japanese House as a Cultural Resource
 This course examines the Japanese residence from the viewpoint of Cultural Resource Studies. The many and varied forms of the Japanese house will be investigated. Each of the main typologies will be introduced: pit dwellings of the Jomon and Yayoi eras, shinden palaces of the Heian aristocracy, warrior shoin-zukuri and tea-taste inspired sukiya, vernacular architecture of city and country, Meiji-period Western-style houses, maihomu from the 1960s. How the two-family multi-generation homes popular from the 1980s reveal Japanese identity will also be explored. Ultimately, this will be an exploration of how the Japanese house has responded to the environment, to changing patterns of life, and to influences from overseas。 There will also be field trips to assess first-hand actual examples of surviving historic houses in Tokyo.
 The course will be conducted in Japanese.

文化財保護の諸問題
木下 直之 2単位 火5
 文化財とは何かを考える。現代社会にあって文化財を否定することはほとんど困難だろう。「法隆寺も平等院も焼けてしまって一向に困らぬ」(『日本文化私観』)と豪語した坂口安吾は、あれは無頼作家の発言だからと退けられ、もはや誰も文化財を面と向かって否定できない。文化財保護法の制定から63年にわたって、文化財という不可侵の聖域が築かれてきたのである。近年では、これに文化遺産という新たな仲間が加わった。文化財保護法は全部で203条から成り、法律というものがそうであるように、すべての条文が整合され、法の内部に矛盾はない。しかし、一見堅固な文化財保護体制にほころびはないのか。「聖蹟」は戦後になって明白に否定された文化財だし、近年の「文化的景観」のような新たな文化財概念の導入は、実は旧来の文化財概念の否定であるという見方もできる。同法成立のはるか以前にさかのぼって、日本国がどのような理念からどのような保護政策をとり、何を守ろうとし、そのための仕組みをどのように築いてきたのかを検証しつつ、現行の文化財保護法体制への理解を深めたい。
展示物論
木下 直之 2単位 火5
 「展示」は博物館や美術館のような展示施設でのみ行われているわけではない。世の中のさまざま場所で、何者かにより何物かが何者かに向けて設置されている。展示の文脈を探り、展示物がどのような意味を有するかを明らかにする訓練をしよう。差し当たっては、横須賀市の諏訪神社裏山に立つ穴だらけの鉄板を提示する。その脇には、「教えてください!ここの、穴の開いた鉄板の記念碑?の情報を知っている方は、下記にご連絡ください。由来が分かりましたら、説明板を設置いたします」と記した横須賀市の札が立っている。こうしたものを考えることからはじめ、参加者がそれぞれに見つけた「展示物」を解読してゆく。
感性文化とメディア論
渡辺 裕 2単位 水3
 美術や音楽といった旧来の言い方に代わって「視覚文化 (visual culture) 」、「聴覚文化 (auditory culture) 」といった語が用いられる機会が多くなっていることからもわかるように、文化の多様化とともに、美や芸術に関わる研究は、従来の「芸術作品」モデルの考察にまとわりつく固定観念をあえて捨て、日常体験における感性的な文化のありよう全般を幅広く捉えることが求められるようになってきている。しかしだからといって、美学や芸術学がこれまで重ねてきた「芸術作品」モデルでの考察の蓄積が無効になったわけではない。むしろ現代の状況は、芸術体験のハードコアな場であった美術館やコンサートホールから流れ出した「芸術」のエキスが広く薄く広がってゆき、文化全体が「感性化」している状況であるとも言え、それを捉えるためには、「芸術作品」モデルが形作ってきた「芸術」と「非芸術」の境界を解体するのではなく、その両者の関係性自体を問い直すことこそが求められている。そのような方向で考えてゆく際に鍵となるのが「メディア」の概念である。声による語りにはじまり、活字本などの文字メディア、そして、映画などの視覚メディアやレコードなどの音声メディアといった、様々なメディア。人々の感性や心性は、それらを通して現実世界に流れ込んできた「芸術」のエキスとの間の様々な相互作用を通して、多様な世界像を作り出してきたが、他方で、それらのメディアの側も、こうした作用を通してそのあり方を変容させてきた。この講義ではそのような観点をベースに、できるだけ具体的な事例を題材にしながら、こうした作用のプロセスやそこにはたらくメカニズムのありようを明らかにしてゆきたい。
展覧会の諸問題
村上 博哉(国立西洋美術館) 夏冬 2単位 金2(隔週)
 展覧会とは実に効率の悪い事業である。貴重で壊れやすい美術品や資料をリスクにさらして世界中から運び、数ヵ月後にはまた元の場所へ返さなくてはならない。大量のヴァーチャルな情報をいつでも簡単に入手できる時代に、これほど非効率な事業を行う意義はどこにあるのか。展覧会の作り手は何を意図しているのか、そして人々は何を期待して展覧会へ足を運ぶのか。この授業では、いくつかの英文テキストを読みながら、今日における展覧会の諸問題を考える。
「江戸」の発見
岩淵令治(学習院女子大学) 2単位 水2
 「伝統的」とされる文化の中には、実は近代以降に発見され、創造されたものも少なくない。日本の「伝統文化」の場合、多くは古代の貴族文化と江戸の都市文化で語られることが多いが、本講義では江戸の都市文化と実態を比較し、「江戸」のイメージを相対化するとともに、各時代に何がいかなる過程で発見されのか、その社会的な背景も合わせて考える。また、その際には国民国家としての「伝統の創造」のみならず、大衆文化における発見も検討していきたい。

演習

文化資源学フォーラムの企画と実践
木下・小林・古井戸・中村 夏冬2単位 木3(隔週)
 フォーラムの企画から実践まですべての作業を学生が中心に行う実習であり、文化資源学修士課程1年生の必修とする。夏休みまでに企画会議を重ね、フォーラムのテーマと構成を決定し、夏休みから秋にかけて、テーマに関する理解を深めるための研究会・交渉・広報などの準備を行い、年度内に公開フォーラムを開催する。公開で行われることが条件で、規模とスタイルは問わない。終了後は報告書をまとめる。
文化資源学の原点(1)
木下・小林・中村 2単位 木4・5(隔週)
 文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)=原点を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。博士論文予備審査も、随時、この場で行う予定。
文化資源学の原点(2)
木下・小林・古井戸・中村 2単位 木4・5(隔週)
 文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)=原点を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。博士論文予備審査も、随時、この場で行う予定。
日本とアメリカ万国博覧会

ウイリアム・コールドレイク

2単位 月4

 There were three international expositions held in the United States in the Meiji period (1868-1912). This course examines Japanese participation at each of these exhibitions. Each had its own special characteristics: The Philadelphia Centennial Exhibition of 1876 marked a century since American independence; the 1893 World's Columbian Exposition in Chicago marked a high point of Japonisme; at the Louisiana Purchase Exposition held in Saint Louis 1904 the Japanese government actively promoted images of 'geisha girls' and Mount Fuji.
 The differences between these expositions will be identified using different types of cultural resources, including the works of fine art and decorative arts that were on display, written records and photographs. The tensions between official Japanese government policy to promote export art and the expectations of the American public will be explored.
 The course will be conducted in English.
 このコースでは、明治期にアメリカで行われた大規模な国際博覧会における、日本の参加の特性について考察する。1876年のフィラデルフィア万国博覧会は、アメリカ合衆国独立100周年を記念して催された。1893年のコロンビア万国博覧会では、ジャポニズムが高く評価された。1904年のセントルイス万国博覧会では日本政府は芸者の絵を用いるなど「フジヤマ ゲイシャ」の日本イメージの形成に積極的に関与した。これらの博覧会のそれぞれの特徴の違いを明らかにするため、展示された美術品・工芸品および 当時の史料や写真を分析する。また、日本政府による芸術の殖産政策と、アメリカの国民の期待との間にあった緊迫した対立関係についても取り上げる
 授業は英語で行う。

日本とイギリス万国博覧会

ウイリアム・コールドレイク

2単位 月4

 This course compares the objectives of the Meiji Government in participating at the international exhibitions in Britain with the actual reactions to Japanese culture by Western artists, collectors and the general public.
 Issues for consideration will include:
What works of art were selected for exhibition and why?
How was the art presented to the British audience?
How did the Meiji Government respond to the detailed rules for participating in the different categories of exhibits, especially the classification of 'decorative arts'?
How were large-scale replicas and precisely crafted models of historic architecture received by British audiences?
 Particular attention will be given to comparing Japanese policies and Western reactions at the Japan-British Exhibition of 1910. The official registers of objects displayed will be used to select specific works of art for case studies by students. The course will be taught in English.
 このコースでは、明治政府による万国博覧会参加の方針と、イギリスの芸術家・収集家・一般の人々が日本文化を実際にどのように受け止めたかを比較検証する。とりわけ以下の問題点に注目する。展示された美術品はどのように選ばれたか? それらは博覧会会場で、どのように展示されたか? 日本側の担当者は、各展覧会当局が決めた出品部門の規則、とくに美術工芸品部門に、どのように対応したか? 日本の伝統建築の大規模なレプリカやディテールの模型はどのように受け入れられたのか? 
 これらの問題を解明するため1910年の日英博覧会を中心に、明治政府の参加とイギリスの反応を比較する。受講生は博覧会展示目録を調べて、出品された実例を選んで報告する。授業は英語で行う。

『高橋由一油画史料』を読む
木下 直之 夏冬 4単位 金5
 『高橋由一油画史料』(全5冊、東京藝術大学蔵)とは、「鮭図」(同蔵、重要文化財)で知られる画家高橋由一(1828~1894)の足跡を示すスクラップブックである。やはり画家となった長男源吉の歿後、遺族から東京美術学校に納められた。それは、高橋由一の行動録であるとともに、発言録、あるいは提言集の性格を有する。高橋は単なる画家にとどまらない。油絵の普及を通して、新たな美術の構築(たとえば美術学校の開設や美術館の建設)を社会に向かって積極的に説いた。その提案の大半は実らなかったが、本史料集を読み解くことで、幕末明治前期の日本美術を取り巻く諸問題が明らかとなる。この授業では、近代日本美術史を(高橋由一から語り始めるということをも含めて)再考し、概観することを試みる。高橋由一とその周辺のひとびとにも注意を向けたい。夏休みには、高橋由一ゆかりの山形へ見学旅行を予定している。
合唱と共同体
渡辺 裕 2単位 水4
 「近代」は歌、とりわけ皆で歌うという合唱行為とともにあった。フランス革命時の革命シャンソン《ラ・マルセイエーズ》、ロシア革命時の《インターナショナル》など、政治的変革を求める運動に合唱はつねにつきものであったが、その一方で、国歌や国民歌などの団体歌が続々と制定され、共同体の成員に歌わせ、連帯意識の醸成をはかるための統治手段として用いられてもきた。日本でもうたごえ運動、フォークゲリラなどが「革命の系譜」を形づくる一方で、校歌、社歌といった様々な団体歌が、西洋にはない独自の「文化」を織りなしてきた。しかしこうした動きは日本に限られることではなく、西洋文化のグローバル化の中で、非西洋圏の各国では、合唱は共同体のあり方と様々な関係を取り結びながら、各地固有の様々な「近代化」の様相を作り上げてきている。この授業では、その諸相をいくつかの切り口を手掛かりに考えてゆきたい。
特別演習:美術館における教育研究
寺島 洋子(国立西洋美術館)・村上 博哉(国立西洋美術館) 夏冬 4単位 集中
 国立西洋美術館での活動を通して、美術館における教育の役割と意義について理解することを目標とする。国立西洋美術館のインターンシップに参加し、教育普及インターンとして同館の教育活動(独立行政法人国立美術館主催の指導者研修、夏期教員研修、FUN DAY、Fun with Collection等)の企画・実施を補助する。

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文化経営学コース

特殊研究

文化施設経営論
小林真理 2単位 火1
 文化施設には美術館、劇場、博物館、コンサートホール等様々なジャンルのものがあります。これらは、また国公立によるもの、あるいは民間によるものなど、設立や運営の形態も様々です。これらの施設を取り巻く社会環境について学び、よりよい運営のために必要な知識を身につけます。なお、この授業は具体的な文化施設の見学を行う場合があります。 
海外の文化政策研究論文を読む
小林真理 2単位 木2
 文化が属地性が強いものであり、それぞれの地域や国によって多様であるにも関わらず、対象とする問題領域には共通の課題がある。海外の文化政策の研究動向に着目しながら、具体的な論文(英語)や書物を講読し、日本の文化政策研究を客観化することを目的とする。 
ミュージアムテクノロジー(1)
西野嘉章(総合研究博物館) 夏冬 4単位 火4・5
 インターメディアテクにおける博物館工学の実践。ミュージアム学芸員、文化政策担当者、(ミュージアムを対象とする)専門研究者の育成
文化資源学特殊講義
黒田乃生(筑波大学) 2単位 集中
 世界遺産登録および文化財保護に関する事例をとりあげ、「保護」とは何をして、何をしないことなのか、考究する。「評価」や「保護」は、実際には試行錯誤の積み重ねであることへの理解を通して、実践的に検討できる知識を身につけることが目標である。

演習

文化政策の諸問題
小林 真理 夏冬 4単位 火4
 日本で自治体が文化行政の取り組みだしてからすでに30年の時を経た。当初自治体文化行政論で掲げられた原則である(1)市民主体の市民文化の育成、(2)基礎自治体主導の方法、(3)行政の自己革新、は達成されたのかという観点からこれまでの自治体文化行政を検証し、文化行政を実践する上での方法論を明らかにすることを目的としている。今年度は、改めて地域における公共ホールの運営について、具体的な地域に密着しながら検討を行い、これらのよりよい運営のための制度構築を検討する。今年度は、昨年度同様に長野県内の市町村における「文化によるまちづくり」の実践に関わりながら、まちづくりに文化を活用する事例について学ぶ。

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

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形態資料学コース

特殊研究

社会調査資料の二次分析
佐藤健二 2単位 水5
 昨年度に着手した川口の『鋳物の町』調査資料の入力作業を前提に、「二次分析」実習を継続する。昨年度に参加していなくとも履修できる。いわゆる『鋳物の町』調査の資料整理と分析、さらに関連文献の研究を行う。
近世日本の異文化交流とその資料
松井洋子(史料編纂所) 2単位 金3
 近世の長崎はオランダ船・中国船が来航し貿易を行なう唯一の港町であり、出島にオランダ商館が置かれ、ヨーロッパの文物の受容と海外情報取得の窓口となった。というのは高校の教科書でも語られる近世日本の異文化交流の姿である。その接点にいたのは、どのような人々だったのだろうか。何がどのように双方の間で伝えられたのだろうか。オランダ船が運んだヨーロッパ・アジア・日本の文物、ヨーロッパ人の残した絵画や叙述、異文化と出会った日本人たちの絵画や叙述、接触の現場での事件とその記録など、残された画像やモノ資料、文献資料を手がかりに、出島にやってきた異国人たち、彼等と関わりを持った様々な日本人たちに焦点を当て、現場の目から異文化交流の諸相を見ていきたい。
近代日本画の研究:技法と材料をめぐって
荒井経(東京藝術大学) 2単位 集中
 「日本画」という近代日本の国号絵画を成立させているものは何か。本講義の前半では、近代日本美術史による制度論を踏まえた上で、画家の視点(絵画技法と絵画材料)から新たな検証を展開します。また、修復現場の見学等を通して、絵画を物質的構造や作業から鑑賞します。本講義の後半では、東アジア(韓国、中国、台湾)における国号絵画の現況レポートから「日本画」の技法や材料、制度を相対的に評価することを試みます。

演習

演劇学・舞踊学への招待
古井戸 秀夫 2単位 水2
 近現代の演劇・舞踊に関する文献を読みます。
社会意識論
佐藤 健二 2単位 金2
 全体の題名は「社会意識論」だが、意識・心理の研究というより、社会研究の方法意識に焦点をあてたい。社会研究の方法についての私の基本的な考えは『社会調査史のリテラシー』(新曜社、1911)で論じてきた。そこでも述べているように、「社会意識」の観察を含む広い意味での「調査」は、社会学と呼ばれる想像力や読解力の歴史的・社会的な形態であると同時に、新しい認識を生みだす方法でもあった。この演習では、それぞれの研究素材のなかでの調査研究リテラシーのありかたを主題としたい。
社会調査史
佐藤 健二 夏冬 4単位 金2
 社会調査史の理解を深めると同時に、とりわけ「二次分析」データの活かし方についても取りまとめたい。中心的には「社会調査資料の二次分析」で作成したデータのアーカイブス化および公開について検討することをひとつの軸にするが、参加者が取り組んでいるテーマにもとづく報告などを織り交ぜつつ、広く調査研究の方法について学習したい。

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 隔月1
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 隔月1
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

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文字資料学コース(文書学・文献学)

特殊研究

江戸を読む
長島 弘明(国文学研究室) 夏冬 4単位 水4
 西鶴の書簡体小説『万の文反古』を取りあげ、注釈を施しながら読む。西鶴の他作品との素材上・表現上の共通点に留意しながら、正確な解釈をすることに努めたい。書簡体小説という形式の意義、往来物風の列挙の方法の意味等についても考えたい。テキストは、影印本を使用する。
漢籍入門
大木 康(東洋文化研究所) 2単位 集中
 中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。
 漢籍目録の原理、並びにその編纂の方法を教える。
中世文書の形態論的研究
林 譲(史料編纂所) 2単位 金3
 「花押と筆跡の史料学ーモノをみる・モノからみるー」をテーマに、古文書、特に中世武家文書の読解を講義と演習の形式で行う。本年度は、武家文書として『上杉家文書』と双璧をなす『島津家文書』を取り上げる。同文書群は、鎌倉幕府を開いた源頼朝が発給した文書も多いことで著名である。古文書の様式論的研究・機能論的研究とともに、花押や筆跡、また料紙の紙質などの形態論的研究について、写真版コピーに基づいた研究を進め、標記の課題の可能性を探ることとしたい。その結果として、古文書を史料として活用する上での基礎的な態度・技法を身につけること、各自の論文の作成に結びつく実践的な研究能力を養成することを目標とする。
ヨーロッパ書物史研究(5)
月村 辰雄 2単位 金5
 Graham Robb, "The Discovery of France" 講読 : 対象とする書物は、近代フランス文化の成立ないし統一化の過程を、パリ中心の文化国家フランス礼賛の視点からではなく、フランスの各地方の農村文化の観点からとらえ直そうとする珍しい労作である。著者は19世紀フランス文学の評伝作家。自身で自転車を駆ってフランスの僻地から僻地へ2万キロを走破した研究調査の成果は、私たちがフランスに対して抱く常識的理解を多くの点で覆すと同時に、私たちの文化資源学の参考となる研究手法を提示しているようにも思われる。この書物の輪読を通して、その手法を追跡する。

演習

明治期社会経済史史料演習
鈴木 淳(日本史学研究室) 夏冬 4単位 水2
 明治期の史料の読解、批判とそれに基づく実証研究論文執筆法を研鑽することを目標とし、参加者の発表とそれに関する討論を基本とする。発表は、1点の基本史料の徹底的な検討に立脚する史料検討の発表と、研究論文に近いまとまった研究成果を発表する研究発表の2種類を、各参加者がそれぞれ1回以上行う。
 史料検討は、発表の一週間前に、史料検討の発表であれば基本史料を提示した発表予告を行い、参加者はその史料を読解してくることを要求される。発表にあたっては、基本史料の性格を、その作成過程や、その史料が属する史料群の性格を含めて説明することを必須とする。
 研究発表は、発表の一週間前に、関連する先行研究を明示した発表予告を行う。
 発表内容は基本的に明治・大正期の日本を対象とした研究とするが、演習の性格を踏まえたうえで、前後の時期や関連の深い他地域に関する発表を希望する場合は、相談に応じる。
歌舞伎を読む
古井戸 秀夫 2単位 水3
 江戸歌舞伎の台本を読みます。
アーカイブズ学
中村 雄祐・渡辺 浩一(国文学研究資料館) 2単位 集中
 アーカイブズ(記録史料)とは、多様な組織体が授受・作成・保管してきた文書(ぶんしょ)のうち、その組織体の必要性または一般的な歴史的価値の観点から、永久に保存し公開すべきものをいう。または、アーカイブズを保存・公開する組織や施設(例えば文書館)をさす。そして、アーカイブズに関する科学をアーカイブズ学という。この講義では、国文学研究資料館(立川)で行われるアーカイブズ・カレッジ(史料管理学研修会)の全課程6週間を履修し、修了論文に合格することによって、アーカイブズ学を体系的に理解することを目標とする。
文書とその社会的役割
中村 雄祐 2単位 月3
 研究活動においては読み書きが中心的役割を占めるが,研究対象をやや幅広に捉える文化資源学的アプローチにおいては,研究課題をいかに設定し,何を調査対象とするか,つまり,そもそも何を読み書きの対象とするのか,という問いが極めて重要である.いかに調べ,いかに考え,いかに伝えるか.このゼミでは,これらの問いをワークショップ形式で一緒に考えていく.
人文情報学(1)
中村 雄祐・A. C. ミュラー(次世代人文学開発センター) 2単位 月5
 The is the first half of a two-semester course. The aim of this course is to introduce XML technology to humanities students as a means of enhancing their possibilities for research and publication in a systematic manner, while learning how to use non-proprietary software. We will begin by at a very basic level by reviewing the underlying HTML structure of web pages with a text editor. After students have gained a basic understanding of the concept of style markup through HTML, we will approach the tasks of web page creation and textual analysis through XML (eXtensible Markup Language). Students will learn the basic rules of XML syntax, soon after which they will learn how to analyze and publish documents using XSLT transformation. We will then gradually learn more sophisticated techniques using XML and XSLT, finally learning how to work through the TEI (P5) application model. This class is open to students with both beginning-level and advanced skills.

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

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参考:文化資源学共通講義、文学部原典を読む、一般講義(学部のみ)

文化資源学入門(1):文化政策学入門
小林 真理 2単位 木2
 文化政策は、使われる時代によりその意図する意味合いがかなり異なる概念です。まずはその理由や意味を十分に考えた上で、戦後日本が文化に対する施策や政策をどのように展開してきたかを知り、現在の課題を明らかにします。
文化資源学入門(2):文系の学問とデジタル技術
中村 雄祐 2単位 月3
 現代世界において、文書はありふれた、しかし、生活に必須の道具であり、学術研究(特に人文系)の最重要資源であり、さらにはその成果の共有・公表のための主要媒体ともなっている.この講義では、認知科学や歴史学の先行研究を踏まえながら、現代世界における文書という道具の特徴、また、研究現場における使い方について考える.
博物館空間表現実習
遠藤 秀紀(総合研究博物館)、諏訪 元(総合研究博物館)、西秋 良宏(総合研究博物館)、西野 嘉章(総合研究博物館) 2単位 集中
 博物館の展示場を創造できる人材を育てることを目的とする。ここでいう展示場の創造とは、知と美の飽くなき追究に根差した文化の広がりと継承を、個たる人間として負うことを意味する。そうした人材は、ただのプランナーでもなければ経営者でもない。それは、優れた芸術センスと知的論理構成力を備え、世界に恥じない表現力を磨くことでのみ育てられる。本実習では、受講者にその入り口とそれに続く思慮の手がかりを導入したい。
黙阿弥を読む
古井戸 秀夫 2単位 金2
 弁天小僧、三人吉三、河内山と直侍、髪結新三と魚屋惣五郎、茨木と船弁慶、黙阿弥の代表作を読みます。
法律学入門
小林 真理 2単位 火1
 文学部に入学してきた皆さんにとって法とはどのようなイメージのものでしょうか。法は裁判と結びつきやすく、罰する、罰せられる、あるいは堅いといったイメージが強いのではないでしょうか。たしかに私たちの生活は様々な側面で法から規制を受けてはいます。しかしながら、私たちの権利を守るため、あるいは私たちの権利を実現するための法もあります。私たちの生活に法は不可欠なものになっているということです。さらに、私たちは法の価値の創出に関わることもできます。ただそのことはよほどのことがない限り実感できないかもしれません。そこで、この講義では、文学部の学生なら関心を持つであろう「表現すること」あるいは「文化の創出」という側面から、法律学の特徴を見てみることにしたいと思います。

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