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平成23(2011)年度 文化資源学講義・演習

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各コース共通科目

特殊研究

日本演劇の歴史(1)
古井戸 秀夫 2単位 火3
 日本の演劇・舞踊は、何を描こうとしているのでしょうか。それを人々はどのように受け止めてきたのでしょうか。神楽や舞楽をはじめとする古代の演劇と舞踊、能に代表される中世の演劇と舞踊、それぞれの演劇や舞踊の誕生と伝承を振り返ることで、日本演劇の持つ普遍性と、それぞれの演劇・舞踊の特殊性について考えてみることになるでしょう。
日本演劇の歴史(2)
古井戸 秀夫 2単位 火3
 演劇の歴史は、神々を主人公とする古代から、中世の英雄を経て、近世には等身大の人間の喜びや悲しみを描くようになります。男と女の恋、親子の恩愛、義理と人情など、人間の織り成すドラマはどのように表現されてきたのでしょうか。モダニズムの洗練からポストモダニズムまで、日本の演劇や舞踊が探し求めてきた表現について考えることになるでしょう。
展示論
太田 泰人(神奈川県立近代美術館) 2単位 水3
 今日、美術作品はどのような条件の下で経験されているのでしょうか。かつては雑誌や画集のわずかな複製図版が大きな影響を与えた時代もありました。今後は、電子的な画像、映像によって美術を体験することが優勢となっていくのかも知れません。とはいえ本講義では、この問いに対する答えを、ミュージアムやギャラリーその他のいわゆる展示施設における「展示」という行為の考察によって探してみたいと思います。それは、作品をある空間にいかに配置するかという狭義の「展示」の問題ばかりではなく、これらの施設が必然的に孕むことになる戦略と経営、そしてこれらの施設を超えて社会的に拡がる政治と経済の問題にも関わってきます。現代の日本と世界におけるこの「展示の文化」はいかなるものか、現代美術の展示を中心にこの問題を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
文化財保護の諸問題

黒田 乃生(筑波大学)

2単位 月2

 失われそうなもの、価値があるものをまもるために、それらを文化財に指定したり世界遺産に登録したりすることがあります。
 文化財や遺産の概念は大きく広がり、田んぼや工場などさまざまなものが対象になっています。けれども田んぼは耕作しなければ田んぼではないし、使わない工場は朽ちていきます。田んぼをまもるためには誰かが耕作を続ける必要があるのです。工場をまもるためには、使わなくなった機械を展示したり、崩れた壁を修理したり、こわれないように維持しなければなりません。
 「文化財をまもる」とは一体、誰が、何をして、何をしないことなのでしょうか。どうすれば「まもった」ことになるのでしょうか。文化財や世界遺産の概念の拡大にともなって「まもる」ことにさまざまな問題が生じています。この問題について考えることが、そもそも文化財をなぜまもるのか、という問いへの答えの糸口になることを期待しています。

東京大学の埋蔵文化財と文化資源学

小林 真理・成瀬 晃司(埋蔵文化財調査室)・堀内 秀樹(埋蔵文化財調査室)

2単位 火3

 東京大学は、1983年に臨時遺跡調査室(現在の埋蔵文化財調査室)を開設して以来、本郷キャンパスの発掘を営々と続けてきた。東京で、これほど徹底的に掘られた場所はほかにない。かつての加賀藩上屋敷の敷地の跡に、東京大学がほぼそのまま存在しているがゆえに、発掘の成果は、近世考古学という学問領域の開拓に大きく貢献した。しかし、その視野は東京大学開学以前に止まる。本講義では、発掘の成果に加えて、地上(すなわち路上や建物内部)の「埋蔵文化財」にも目を向け、合わせて、東京大学の「文化資源」を探ろうとする試みである。文化資源学研究室と埋蔵文化財調査室が組み、さらに、史料編纂所、工学部建築史研究室、総合研究博物館の教員が参加し、リレー形式で東京大学の知られざる姿を明らかにする。 

展覧会の諸問題
村上 博哉(国立西洋美術館) 夏冬 2単位 金2(隔週)
 展覧会とは実に効率の悪い事業である。美術品という高価で壊れやすいものをリスクにさらして世界中から運び、数ヵ月後にはまた元の場所へ返す。大量のヴァーチャルな情報をいつでも簡単に入手できる時代に、これほど非効率な事業を行う意義はどこにあるのか。人々は何を期待して展覧会へ足を運ぶのか。この授業では、展覧会に関するいくつかのテキストを読みながら、今日における展覧会の諸問題を考える。

演習

文化資源学フォーラムの企画と実践
小林・古井戸・渡辺・中村 夏冬2単位 木3(隔週)
 フォーラムの企画から実践まですべての作業を学生が中心に行う実習であり、文化資源学修士課程1年生の必修とする。夏休みまでに企画会議を重ね、フォーラムのテーマと構成を決定し、夏休みから秋にかけて、テーマに関する理解を深めるための研究会・交渉・広報などの準備を行い、年度内に公開フォーラムを開催する。公開で行われることが条件で、規模とスタイルは問わない。終了後は報告書をまとめる。
文化資源学の方法
小林他 夏冬2単位 木4(隔週)
 文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、毎回、ひとりの教員による研究報告を受けて、議論する。本専攻は9人の教員から成る。その専門領域は多岐にわたっており、方法論も異なる。本演習は、第1にそれぞれの研究者としての研究方法を学ぶ場であり、第2に、文化資源学としての共通項を探り、その方法論の開発を目的とする。すなわち、「文化資源学的である」とは何か、について考える場となるだろう。
文化資源学の原点
小林他 夏冬 4単位 木5・6(隔週)
 文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)=原点を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。博士論文の予備審査も、随時、この場で行う予定。
特別演習:美術館における教育研究
寺島 洋子(国立西洋美術館)・村上 博哉(国立西洋美術館) 夏冬 4単位 集中
 美術館における教育の役割を現場での活動を通して確認することを目標とする。
 国立西洋美術館における教育普及のインターンシップが本授業となる。2011年度の教育普及インターンシップ・プログラムは、「びじゅつーる」(所蔵作品の鑑賞用補助教材)の評価・改善を行なう。「国立西洋美術館インターンシップ募集のお知らせ」(http://www.nmwa.go.jp/jp/education/internship.html)にしたがってあらかじめ応募すること。応募締切:2011年3月18日(金)。

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文化経営学コース

特殊研究

博物館学1
小川 義和(国立科学博物館) 2単位 月6
 博物館は展示や教育活動だけでなく、資料の収集、整理・保管、調査研究など多彩な機能を持つ社会に開かれた施設です。本講義では、博物館の目的と機能、種類、歴史と現状、さらに博物館を支える関係法規など、博物館に関する基礎的な知識を習得するとともに、博物館が抱える諸課題を認識し、博物館に対する理解を深めることを目標とします。 
博物館学2
金子 賢治(茨城陶芸美術館) 2単位 金2
 近代工芸を扱う美術館の特徴を、調査・研究、展示・収集、教育・普及・広報、予算形成などの側面から見ていく。それぞれの項目は近代工芸の歴史、美術との対比で工芸のおかれてきた状況と無関係ではいられない。近代工芸の歴史、工芸論の変遷、現代的工芸論の構築、これらとの関連で美術館での近代工芸を考えていきたい。また近代、特に現代工芸は重要無形文化財制度を軸とした文化行政と密接な関連がある。その点を、美術館活動を絡めながら、実際の作家の制作活動を実地に見聞しながら考える機会も持ちたい。またこうしたことを踏まえ、海外の美術館での工芸の扱われ方、工芸論との比較により、日本の工芸、美術館での工芸の扱われ方の特質を浮かび上がらせたい。
文化行政制度論(1)
伊藤 裕夫 2単位 火2
 本講義では、現在日本で議論になっている(仮称)劇場法を考察していくために、劇場やコンサートホールなるものが社会の中で制度化されていく歴史について学びながら、現代の日本の問題を考察する。劇場は、舞台芸術を行う文化施設として、俳優、歌手、演奏家等舞台上で活躍する生きた芸術家と、公演を背後から司る技術系の職人、そしてその舞台全体の統括をしていく芸術上の管理側、公演と観客を取り結び職種、さらに施設の管理、そして施設の設置者、そして観客で成り立っている。日本全国中にある舞台芸術向けの施設は2000以上と言われる。これらをそれぞれの関与者がより満足度の高い状態で活用していくためには、どのような法が、あるいは制度が必要とされるのかを検討する。夏学期は、日本で文化施設が建設されてきた経緯を知るとともに、関与者側の置かれた問題について、考察することにする。また夏・冬を通して海外の事例を参考に考察をする。
文化行政制度論(2)
伊藤 裕夫 2単位 火2
 本講義では、現在日本で議論になっている(仮称)劇場法を考察していくために、劇場やコンサートホールなるものが社会の中で制度化されていく歴史について学びながら、現代の日本の問題を考察する。劇場は、舞台芸術を行う文化施設として、俳優、歌手、演奏家等舞台上で活躍する生きた芸術家と、公演を背後から司る技術系の職人、そしてその舞台全体の統括をしていく芸術上の管理側、公演と観客を取り結び職種、さらに施設の管理、そして施設の設置者、そして観客で成り立っている。日本全国中にある舞台芸術向けの施設は2000以上と言われる。これらをそれぞれの関与者がより満足度の高い状態で活用していくためには、どのような法が、あるいは制度が必要とされるのかを検討する。夏学期は、日本で文化施設が建設されてきた経緯を知るとともに、関与者側の置かれた問題について、考察することにする。また夏・冬を通して海外の事例を参考に考察をする。
博物館表現論
西野 嘉章(総合研究博物館) 遠藤 秀紀(総合研究博物館) 夏冬 4単位 変則土
 総合研究博物館やいくつかの社会教育・生涯教育の現場に身を置き、博物館研究者の価値観、技量、能力を論議し、磨く。博物館と社会教育の創造のための基礎理論を討議し、自然誌学・解剖学を中心とした標本制作過程を学ぶ。多人数の受講は困難なので、希望者多数の場合には受講者の選抜を行う。
アートと公共経営と市民社会
曽田 修司(跡見学園女子大学) 2単位 月4
 本講義では、現代の日本社会におけるアートの社会的意義を市民社会論の視点から考察し、それを国や自治体の文化政策に反映させていく可能性とその方途を探る。改めて言うまでもなく、アートの価値基準は自明ではない。時代や国や地域やそのときどきの社会情勢によって、アートの経済的な成り立ち、政治的な位置(社会の中での扱われ方)はさまざまに変化しうるし、実際に変化してきた。このような視点からあらためてアートを見直すと、その存在のあり方がいかにも多様で変動性に満ちたものであることに気づくだろう。本講義では、近代以降、時代や社会のあり方によってアートの価値観がどのようにかたちづくられ受容されてきたのか、また、これからどのように変化していくのかを、個人の「自由」や国家や社会における「公共性」との関わりという視点から分析的に考察する。さらに、国家と市場と共同体とをつなぐ存在としてのNPOの特質に着目し、NPOと個人、企業、政府の協働によるアートの実践が「新しい公共」の創出にどのように関わっていくかを考える。
コンテンツ産業論
河島 伸子(同志社大学) 2単位 集中
 エンタテインメント、メディアを含む「デジタルコンテンツ産業」が経済政策、文化政策上大きな注目を集めるようになった。この経済的背景を探り、これらの産業がどのような環境変化におかれ、変容しつつあるかを理解すること、また、各産業個別の経営課題などについての基本的理解を持つことを授業の到達目標とする。

演習

文化政策の諸問題
小林 真理 夏冬 4単位 火5
 日本で自治体が文化行政の取り組みだしてからすでに30年の時を経た。当初自治体文化行政論で掲げられた原則である(1)市民主体の市民文化の育成、(2)基礎自治体主導の方法、(3)行政の自己革新、は達成されたのかという観点からこれまでの自治体文化行政を検証し、文化行政を実践する上での方法論を明らかにすることを目的としている。今年度は、とくに文化政策の評価の可能性と問題点を明らかにした上で、その方法について、検討することにする。

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

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形態資料学コース

特殊研究

文化資源としての音:音風景と聴覚文化
渡辺 裕 2単位 水4
 芸術をめぐる文化状況が変化する中、音についても「音楽」という狭い枠組みではなく「音の文化(sound culture)」、「聴覚文化(auditory culture)」といった枠組みの中で考える動きが広がっている。都市環境やメディア環境の中での聴覚的な感性体験の全体的なありようを広く捉えてゆくことにより、狭義の音楽だけではなく、これまで意識されなかった様々な「音の文化」が意識化され、その記録や保存といった新たな問題系が生まれてきているが、そのことはまた逆に、伝統的な「音楽」に関しても、これまでになかった新たな視点をもたらし、従来の音楽論ではなかなかみえてこなかった、「音」の文化の多様性や奥深さを照らし出すようになってきている。聴覚文化をめぐる最新の研究状況をふまえ、いくつかのトピックを取り上げながら論じたい。
感性文化と歴史認識
渡辺 裕 2単位 水4
 美学や芸術学の射程が、狭義の「芸術作品」をこえて、現実の時空間の中での感性体験全体に広がってきている状況の中で、われわれの美的体験や芸術体験が現実世界の環境や歴史の認識にどのように関わるかを考えることが重要になってきている。他方、歴史学の研究においても、記憶や表象といった問題が前面に出てくるとともに、ドキュメンタリー映像のみならず劇映画などについても、歴史資料としての可能性が議論されるようになってきている。この授業では、映像を中心に、文学、音楽などにも幅を広げながら、そこでの芸術体験や美的体験が、人々の歴史表象や歴史認識にどのように関わるかを具体的に論じてゆきたい。
映画と映像メディア-収集・保存と振興策の現在
佐伯 知紀(文化庁) 2単位 月5
 本講義では、今日の文化芸術の領域で比重を高めているわが国の「映画・映像」分野を概観する。まず、日本映画。「活動写真」と呼ばれたその成立期から、唯一の映像メディアとして大衆娯楽の王座につき、産業的な厚みと文化的な広がりを加えつつ、1939年の「映画法」の施行に示されるように、有意なメディアとして時の政府の戦時態勢へと組み込まれていくまでのプロセスを史的に把握する。また、終戦後の混乱期を経て、1950年代半ばに再び黄金期を迎えた同分野の今日までの消長(衰退、低迷、再生に至る)を素描することで「今日」に繋げたい。その際には、いわゆる名画を中心とした作品史ではなく、映画人の軌跡やプロダクション(製作会社)の興亡を概説するかたちで論じたい。大量の古典作品の鑑賞経験を前提にした、いわゆる映画史とは趣を異にする、いわば「簡約日本映画史」である。
 次いで、映画史上に名高い作品=フィルムが収集、発掘、復元される過程を追うことでフィルム・アーカイブの果たす役割を具体的に提示する。映画フィルムはどのように発見され、復元され、上映され観客にとどけられるのか?その事例を、プリントの所在が不明で、長く映画史上「幻の作品」と呼ばれていた伊藤大輔監督の「忠次旅日記」(1927年)の発見から復元、公開、そしてその後の反響を提示する。次に、プリントは残されているものの、それぞれ内容が異なるバージョンであった溝口健二監督の名作「瀧の白糸」(1933年)、その3種類のプリントを検証しつつ、最長版を作成する過程で明らかになった映画フィルムの流通と残存の関係について論じる。また、ロシア連邦共和国ゴズフィルモフォンドに残されていた戦前の日本映画の調査、確定、返還事業を通して、映画フィルムの「運命」について考察する。それらの日本映画の殆どは、旧満州国(1931-45)の満州映画協会(1937-45)に保管されていたもので、1945年に満州国に侵攻したソビエト軍の手で戦利品として持ち去られたものだった。なお、上記は論者が東京国立近代美術館フィルムセンター研究員在職中に担当した事例であり、当事者としての感慨を交えた「収集と保存・復元の映画史」となる。
 最後に、2002年の「文化芸術振興基本法」成立以降、近年顕著になってきた政府機関による「映画・映像」分野の振興策の流れを跡づける。その源流を旧文部省が終戦後の1946年に開始した「芸術祭」の開催に求め(映画は1948年から参加)、その後の同分野に関わる主として文部省・文化庁の顕彰・助成・支援制度の変遷を押さえる。その上で、2003年以降本格化した「日本映画・映像振興プラン」の政策形成の背景及びその実施と成果、また、文化庁メディア芸術祭(1996年開始、アート・エンターティメント・アニメーション・マンガの4部門からなる)の進展をもとに構想されたものの、2009年の政権交代により中止となったメディア芸術総合センターの位相を明らかにしたい。映画・映像の振興とメディア芸術の振興は底流において連動しており、これらを展望することで、ある大きな流れを感得することができるだろう。それはある意味で、最も大衆に親しまれる分野を国がどのように遇してきたかの歴史でもある。また、上記の流れとは異なる背景で1970年に東京国立近代美術館に設置された「フィルムセンター」についても、反省的な視点から考察する予定である。
「質的」調査研究の諸問題
祐成 保志(信州大学) 2単位 集中
 「質的」な社会調査研究方法の展開を、歴史的なパースペクティブにおいて理解すると同時に、その技法に含まれている可能性や注意すべき問題点、工夫などについて、先行する実際の調査実践などを事例にして考える。
近世日本の異文化交流とその資料
松井 洋子(史料編纂所) 2単位 金3
 長崎に来航するオランダ船を通した、ヨーロッパ及びアジアとの接触は、日本近世の異文化交流の主要なルートの一つである。出島のオランダ商館の文書、オランダ船によって日本から運び出された文物、出島にやってきたヨーロッパ人たちの残した叙述等からは、近世の日本がどのように見られていたのかを知ることができる。一方、異文化と出会った日本の人々が残した絵画や叙述、そして入手した文物からは、当時の日本人の異文化観を見ることができる。こうした史・資料をもとに、異文化接触の諸相を考えていきたい。

演習

演劇学・舞踊学への招待
古井戸 秀夫 夏冬 4単位 火4
 近現代の演劇・舞踊に関する文献を読みます。今年度は、明治の演劇改良運動に関する文献を中心に読む予定です。
 テキスト:日本近代思想体系18『芸能』
都市を読む
佐藤 健二 夏冬 4単位 水5
 今年度は「都市」に焦点をあてる。一方では、最近の都市社会学の議論や、都市文化研究の作品を取り上げてみたい、と同時に他方で、都市という場で起こっている現象を広く問題として考えてみたい。
形態資料学の諸問題(1):産業廃墟の美学
渡辺 裕 2単位 木2
 「廃墟ブーム」と言われる。ブームに乗って、長崎の軍艦島のように、観光資源として注目を浴びているところも出てきた。「廃墟」への関心は、西洋での遺跡や古城への関心などの形で古くからあり、美学の古典的なトピックでもあるが、今、日本で広がりつつある「廃墟ブーム」は、産業遺産への関心と結びつき、その保存や活用といった問題を提起する一方で、「工場萌え」といったオタク文化的な方向性とも重なり合い、文化への見方や接し方に関わる新たな視点を提供するなど、様々な社会的コンテクストの複雑な絡まり合いの中で成り立っている。多面的な切り口からこの現象に迫ってみたい。
形態資料学の諸問題(2):映像のなかの都市
渡辺 裕 2単位 木2
 近年、映画やドラマの「ロケ地めぐり」やアニメの「聖地巡礼」が盛んである。各地のフィルムコミッションが積極的にロケ地を誘致し、観光資源としても熱い視線を浴びている。映画に描かれた都市は、フィクションという性格上、現実の都市としばしば大きな齟齬をみせるが、「ロケ地めぐり」や「聖地巡礼」が盛んになる中、フィクションの都市と現実の都市とはいたるところで交錯し、かつて《北の国から》の舞台となった北海道の富良野市のように、現実の都市のまちづくりが、観光客に向け、フィクションを模倣する形でどんどん進んでゆくことすらある。「コンテンツ・ツーリズム」などと呼ばれるこの種の現象は、しかしながら、しばしば、その可能性を十分に検討されないまま、「町おこし」の安易な手段となっているきらいがある。この授業ではむしろ、芸術研究の側から、現実と非現実とが重なり合う虚実の皮膜に成り立つこれらの現象の中にある芸術作品特有の現実感覚や場所の表象のあり方を解明することを通して、その可能性を考え直してみたい。

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

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文字資料学コース(文書学・文献学)

特殊研究

江戸を読む
長島 弘明(国文学研究室) 夏冬 4単位 水4
 江戸時代における芭蕉七部集の研究書の一つである天堂一叟『七部十寸鏡』に注釈を付けつつ読む。稿本と版本を比較して本書が形成されてゆく過程を明らかにするとともに、江戸期の他の芭蕉七部集注釈と比較して、本書の芭蕉研究史上における位置を見定めたい。テキストは、原本の複写を用いる。
西洋文献学史研究
片山 英男(西洋古典学研究室) 2単位 金4
 Hardouin Prolegomena (London 1766) のラテン文を英訳を参照しながら読む
漢籍入門
大木 康(東洋文化研究所) 2単位 集中
 中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。
 漢籍目録の原理、並びにその編纂の方法を教える。
中世文書の形態論的研究
林 譲(史料編纂所) 2単位 金3
 「花押と筆跡の史料学ーモノをみる・モノからみるー」をテーマに、古文書、特に中世武家文書の読解を講義と演習の形式で行う。本年度は、中世文書のうちでも、鎌倉幕府を開いた源頼朝が発給した文書、ながらく信濃守護を務めた小笠原氏に伝来した『小笠原文書』、また室町幕府歴代将軍の花押と筆跡などに関する諸問題を小テーマとして設定する。源頼朝文書については、後世に大きな影響を与えているにもかかわらず、『小笠原文書』については、活字化されているにもかかわらず、また室町幕府歴代将軍の花押については、例えば上島有氏『中世花押の謎を解くー足利将軍家とその花押ー』などの先行研究がありながら、必ずしも十分な検討・研究がなされているとは言い難い。特に、花押や筆跡、また料紙の紙質など、古文書の形態論的研究については未解決の問題が多い。そこで、写真版コピーに基づいた研究を進め、標記の課題の可能性を探ることとしたい。その結果として、古文書を史料として活用する上での基礎的な態度・技法を身につけること、各自の論文の作成に結びつく実践的な研究能力を養成することを目標とする。
ヨーロッパ書物史研究(3)
月村 辰雄 2単位 月3
 ヨーロッパのレトリック教科書の歴史を概観した後で、それらがどのように明治初期の日本に移入され、教えられ、また誤解されて、自由民権運動期の政治演説の中に影響を及ぼしたのかという問題を、できるだけ実際の書物を参照しながら考察する。
漢字の歴史
大西 克也 夏冬 4単位 金5
 漢字の誕生から我々が使う楷書の成立に至る変遷を概観し、漢字の性質や変化のメカニズム等を考える。豊富な新出土資料、一次資料を利用して、各時代におけるさまざまな漢字のありさまを紹介する。

演習

明治期社会経済史史料演習
鈴木 淳(日本史学研究室) 2単位 水2
 史料の読解、批判とそれに基づく実証論文執筆法を修得する。参加者の発表とそれに関する討論を基本とする。各参加者は、基本的に史料の読解、批判を中心とする発表あるいは論文作成の前提となる研究発表を1回を行う。前者では、国立公文書館所蔵の史料をとりあげる。
歌舞伎を読む
古井戸 秀夫 夏冬 4単位 金4
 今年は、桜田治助の歌舞伎台本を読みます。
アーカイブズ学入門
中村 雄祐・渡辺 浩一(国文学研究資料館) 2単位 集中
 アーカイブズ学(archival science)とは、過去の古文書から現代の映像・電子記録まで、行政・企業・大学・個人などの記録史料(アーカイブズ資料)を文化情報資源として保存・活用するための専門科学である。本講義では、国際的な研究動向を踏まえつつ、日本のアーカイブズ(文書館・公文書館)やアーキビストのあり方について考えたい。 本講義の履修者は、7月と9月に国文学研究資料館において実施される「アーカイブズ・カレッジ」を受講する必要がある。「アーカイブズ・カレッジ」の案内と受講申込み用紙は文化資源学研究室にあるので、履修希望者は各自で国文学研究資料館に申し込むこと。ただし申込者多数の場合は選考を行うことになっている。選考にもれた場合は自動的に本講義の履修資格を失うので、あらかじめ了承されたい。なお本講義の履修は、文化資源学研究専攻所属の学生に限ることとする。
文書とその社会的役割
中村 雄祐 2単位 月3
 学術研究において言葉が重要であることはいうまでもないが、それでは図を使って考えるとはどういうことだろうか?日常生活や学術研究において、図を使った思考や表現はどのような特徴を持ち、どのような役割をはたしているだろうか?この授業では、先行研究をひも解きつつ、実例に即してこれらの問いを考えていく。
人文情報学
A. C. ミュラー(次世代人文学開発センター)・中村 雄祐 2単位 月4
 The is the first half of a two-semester course. The aim of this course is to introduce XML technology to humanities students as a means of enhancing their possibilities for research and publication in a systematic manner, while learning how to use non-proprietary software. We will begin by at a very basic level by reviewing the underlying HTML structure of web pages with a text editor. After students have gained a basic understanding of the concept of style markup through HTML, we will approach the tasks of web page creation and textual analysis through XML (eXtensible Markup Language). Students will learn the basic rules of XML syntax, soon after which they will learn how to analyze and publish documents using XSLT transformation. We will then gradually learn more sophisticated techniques using XML and XSLT, finally learning how to work through the TEI (P5) application model. This class is open to students with both beginning-level and advanced skills.
近世近代史料調査法入門
吉田 伸之(日本史学研究室) 2単位 集中
 現在も日本各地に厖大に残される地方(じかた)文書の調査法(現状記録調査法)・研究法の基礎を学ぶ。2003年度以来調査に取り組んできた長野県下伊那郡阿智村清内路(せいないじ)において、旧清内路村役場文書や松屋文書、土佐屋(原家)文書などの現状記録調査を実施する。現地に宿泊し、フィールド・ワークとして行う。受講希望者は6月10日までに、日本史学研究室、文学部教務係のいずれかに申し出ること。なお7月13日(水)4限にガイダンスを行う(場所は古文書学特殊講義「近世・近代初期文書を読む」の教室を使う)。参加者は必ず出席のこと。ガイダンスやフィールド・ワーク実施要項の詳細は、5月末に古文書学特殊講義において配布する。また日本史研究室でも配布し、同研究室掲示板と文学部掲示板に掲げる。

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

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参考:文化資源学共通講義(学部のみ)

文化資源学入門(1) 文化政策入門
小林 真理 2単位 火1
 文化政策は、使われる時代によりその意図する意味合いがかなり異なる概念です。まずはその理由や意味を十分に考えた上で、戦後日本が文化に対する施策や政策をどのように展開してきたかを知り、現在の課題を明らかにします。
文化資源学入門(2) 文書文化論
中村 雄祐 2単位 月4
 現代世界において、文書はありふれた、しかし、生活に必須の道具であり、学術研究(特に人文系)の最重要資源であり、さらにはその成果の共有・公表のための主要媒体ともなっている。この講義では、認知科学や歴史学の先行研究を踏まえながら、現代世界における文書という道具の特徴、また、研究現場における使い方について考える。

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