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平成19(2007)年度 文化資源学講義・演習 

各コース共通科目

特殊研究

日本演劇の歴史(1):古代・中世の演劇と舞踊
古井戸 秀夫 2単位 火3
 日本の演劇・舞踊は、何を描こうとしているのでしょうか。それを人々はどのように受け止めてきたのでしょうか。神楽や舞楽をはじめとする古代の演劇と舞踊、能に代表される中世の演劇と舞踊、それぞれの演劇や舞踊の誕生と伝承を振り返ることで、日本演劇の持つ普遍性と、それぞれの演劇・舞踊の特殊性について考えてみることになるでしょう。
 参考文献:河竹繁俊『概説日本演劇史』(岩波書店)
日本演劇の歴史(2):近世・近代・現代の演劇と舞踊
古井戸 秀夫 2単位 火3
 演劇の歴史は、神々を主人公とする古代から、中世の英雄を経て、近世には等身大の人間の喜びや悲しみを描くようになります。男と女の恋、親子の恩愛、義理と人情など、人間の織り成すドラマはどのように表現されてきたのでしょう。モダニズムの洗練からポストモダンまで、日本の演劇や舞踊が捜し求めて来た表現について考えることになるでしょう。
 参考文献:河竹繁俊『概説日本演劇史』(岩波書店)
展示論07〜博物館の歴史
木下 直之 2単位 火4
 博物館は自明な存在ではない。人間社会の中にもともとはなかったのだから、これからなくなることはありうるし、誤解を怖れずにいえばなくなってもよい。それが嫌ならば、博物館の存在理由とそのための方策を明らかにしなければならない。この講義の前半では、博物館が日本社会にどのように登場してきたのかを、「展示」の観点から検証する。不特定多数の人間に何らかの展示を行う場所が博物館の本質と考えるからだ。未来の博物館を構想するためには過去に学ぶことが有効である。講義の後半は、1951年に鎌倉鶴岡八幡宮境内に開館した神奈川県立近代美術館をケーススタディとし、現場の声を聞き、現地の見学を行い、現在の博物館が直面する課題を明らかにする。
陶磁器と日本文化:国際的アプローチ
ニコル・クリッジ・ルマニエール 夏冬 4単位 月4
 This course will examine both Japanese ceramic history and its historiography. In particular, the course will look at how the image of Japan and Japanese history has been constructed through the study of Japanese ceramics. Japan has one of the oldest ceramic cultures in the world. Throughout history ceramic played important roles as trade items and as luxury goods. Indeed, Japanese ceramics were among the first important export items for European and American markets during the Meiji era, which in turn helped to shape the image of Japan abroad. The image of Japanese ceramics, both internally and externally have changed with various periods. This course will examine these changes and their impact by focusing on extensive Japanese ceramic collection at the British Museum and related collections. The class will include study trips and viewing of ceramics in private collections.(授業は日本語でおこなう)
展覧会の諸問題
村上 博哉(国立西洋美術館) 夏冬 2単位 金2(隔週)
 今日の人々は何を求めて展覧会を訪れ、何をもって「良い展覧会」と評価するのか。豪華でありながら安価で気軽なエンタテインメントとしての展覧会への期待がある一方、高度な学術性を求める専門家や愛好者も少なくない。有名な傑作を見られることに価値を求める人々もいれば、斬新なコンセプトこそ大事だと主張する向きもある。また、興行としての採算性を問う関係者の声も無視できない。こうした多様な期待と要求を課せられながら、実施に伴う様々な現実的困難にさらされている展覧会の作り手は、何を拠り所としたらよいのか。
 この講義では今日の展覧会にまつわる諸問題を取りあげるが、美術館で展覧会の開催に携わっている講師の視点と、展覧会の受け手である受講者の皆さんの視点が交わることによって、議論が活性化するのを期待したい。参考文献や見るべき展覧会については、講義中に随時指示する。

演習

文化資源学フォーラムの企画と実践
木下・小林・古井戸 夏冬2単位 火2(隔週)
 フォーラムの企画から実践まですべての作業を学生が中心に行う実習であり、文化資源学修士課程1年生の必修とする。博士課程の学生の協力を得て、夏休みまでに企画会議を重ね、フォーラムのテーマと構成を決定し、夏休みから秋にかけて、テーマに関する理解を深めるための研究会・交渉・広報などの準備を行い、年度内に公開フォーラムを開催する。そのあとは報告書にまとめる。昨年度は、11月22日に「社会と芸術の結び目─アウトリーチ活動のこれから」を開催した。
文化資源学の原点
木下 直之 夏冬 4単位 水5・6(隔週)
 文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。
日本美術史と文化政策
木下 直之 2単位 金5
 美術作品を生み出すのは誰だろうか?少なくとも、それを制作する技術者(画家や彫刻家や工芸家)と注文者と鑑賞者は不可欠である。肖像の場合は、本人の生死を問わず、さらに像主がそこに加わる。しかし、彼らだけでは、美術作品を成立させることはできない。建築、教育、市場、展覧会、ミュージアムなどが美術を支えてきた主要な制度であるが、この演習では、毎回、日本美術の中から具体的な作品を1点選び、それを手掛かりに、それぞれの時代の文化政策との関係を探る。
日本を収集、展示する:国際的アプローチ
ニコル・クリッジ・ルマニエール 夏冬 4単位 水3
This course will examine the collecting of Japanese art and artefacts in Europe, the USA and Japan. The nature of collecting both private and public will be discussed, along with legislation and fiscal incentives. In particular specific collections will be selected and examined in detail, such as the William Gowland Collection of Kofun material, the Franks Collection of Japanese Art, the Anderson Collection of Japanese painting all housed at the British Museum, the Freer Collection at the Smithsonian Institution, Isabella Stewart Gardiner, The Museum of Fine Arts, Boston, and a few contemporary American collectors such as Bill Clark, Mary Burke and John Weber, and Japanese collectors and collections such as Hara Sankei(原三渓), Masuda Dono(益田鈍翁), Nezu Kaichiro(根津嘉一郎) and Idemitsu Sazo(出光佐三). Finally, the shifting aesthetics regarding the display of Japanese art in museums both private and public, in Japan and abroad will be examined to underscore the meaning of these assemblages and to highlight the varying roles of the collection and collector. (授業は日本語でおこなう)
美術館における教育研究
寺島洋子(国立西洋美術館)・村上博哉(国立西洋美術館) 夏冬 4単位 集中
 2007年度の教育普及インターンシップ・プログラムは、来館者調査とその結果を踏まえてのプログラム案の作成を行う。対象となる来館者は、美術館利用者の半数以上をしめる高齢者で、彼らの属性を把握することを活動の中心とする。「国立西洋美術館インターンシップ募集のお知らせ」(http://www.nmwa.go.jp/index-j.html)にしたがってあらかじめ応募し、採用された場合に単位として認定する。応募締切:2007年2月28日(水)。成績評価:各作業への参加、報告書作成

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文化経営学コース

特殊研究

博物館学T
清水 実(三井記念美術館) 2単位 月5
 古美術品を所蔵する美術館における保存管理・調査研究・展示公開・教育普及といった博物館の基本的な業務について、学芸員として長年携わってきた現場の経験から培った私なりの方法論をお話します。特に、本務である私立の三井記念美術館を事例の中心に据えて、実際に扱ってきた書画・茶道具・能面・調度品・刀剣など、日本・東洋の古美術品について多くのスライドでヴィジュアルにかつ具体的にお話し、また、都心の再開発に取り込まれ、重要文化財の建物の中に新しい美術館を創るという経験の中から学んだ多くの事がら、さらにその過程で突きつけられる様々な問題など、博物館・美術館の現状と課題、そのあるべき姿などについて、学芸員としての一経験者が「今考えていること」という切り口で講義をいたします。
博物館学U
金山 喜昭(法政大学) 2単位 木2
 これまでの「文化の殿堂」としての博物館から、「まちづくり」のための博物館のあり方を探究する。
@博物館とは A博物館の分類 B博物館学と地域博物館学 C地域博物館とは D地域博物館のパラダイムの転換 E博物館の歴史T(国立系博物館) F同上U(地域博物館) G博物館の経営 H博物館の機能T I博物館の機能U J地域博物館と学校の連携・融合 K博物館職員論(学芸員など) L海外の博物館事情 M博物館見学会T N博物館見学会U
 テキスト:金山喜昭2003『博物館学入門』慶友社。課題図書を指定する。
文化政策の実践
小林 真理 2単位 火5
 1970年代後半から始まった日本の自治体文化行政も30年を経過した。まずは自治体文化行政論について理解を深めた上で、この30年を振り返り、現在の自治体文化行政の課題を浮き彫りにする。今年度は、まずは文化政策領域の拡大ということを念頭に置いて、文化政策の実践について、芸術文化振興という狭い領域に止まることなく、都市政策全般から考えることにする。その際、文化政策を実践するにあたりその位置づけが曖昧で批判が多い都道府県の中から1つを選んで、検討することにする。
アート・マネジメント論を読む〜関連基本文献の講読
小林 真理 2単位 火5
 1960年代アメリカで発祥したといわれるアート・マネジメントは何を目指してきたのか。それは芸術創造団体の遅れてきた近代化を意味するものなのか。その手法は日本に導入可能であったのか。アート・マネジメントとアーツ・プロデュースは違うのか。日本におけるアート・マネジメント概念の受容と、その実践について、基本的な文献を講読しながら考える。なお、昨年度読んだ基本文献については、最初の授業で提示し、自主的な学習に委ねることにする。
ミュージアム・テクノロジー
西野 嘉章(総合研究博物館) 夏冬 4単位 木5
 平成19年度に総合研究博物館で行われる予定の展覧会、アーカイヴ事業、来館者調査、ミュージアム企画構想のいずれかのプロジェクトに参加し、そこでの具体的な体験を通じて学芸員、文化事業担当者としての専門的なスキルを修得する。それぞれのプロジェクトの活動内容と研究成果は、出版物(図録、報告書、目録など)のかたちで公刊される。初回に各プロジェクトへの振り分けを行うが、希望者多数の場合、人数制限を行う。
市民社会とアーツマネジメント
伊藤 裕夫(富山大学) 2単位 金4
 文化政策は、近代国民国家の成立過程で「国民」形成策の一環として誕生したものであるが、今日ポスト国民国家としての「市民社会」が展望される中でそのあり方が問われている。本講では、こうした市民社会における文化政策のあり方を、文化に関わる当事者たちの自己統治とネットワーク形成を軸とするアートマネジメントにアプローチすることで、これからの文化・芸術と社会の関わりを検討する。
 参考書:佐藤郁哉『現代演劇のフィールドワーク』(東京大学出版会)、熊倉敬聡『脱芸術/脱資本主義論』(慶應義塾大学出版会)、『なぜ、企業はメセナをするのか?』(企業メセナ協議会)、『社会とアートのえんむすび1996-2000』(ドキュメント2000プロジェクト実行委員会)ほか
文化と著作権
福井 健策(弁護士・ニューヨーク州弁護士) 2単位 水2
 「知的財産立国」のかけ声のもと、著作権にはかつてない程の注目が集まっている。「盗作」「ネットワーク化」「権利ビジネス」など、それが新聞紙面を賑わすことはまったく日常的な風景となった。一方では、「過剰な権利の主張は文化を殺す」という危機感を表明する言説も確実に増えている。講義では、文化と創造を守るための「壮大な社会実験」である著作権制度が、現在どのような形をとっているのか、実践的な知識をレクチャーする。あわせて、著作権が今度どのように変容を遂げて行くのか、さまざまな作品や話題になった事件をレビューしながら一緒に考えたい。
 参考文献:福井健策「著作権とは何か 文化と創造のゆくえ」(集英社新書、2005年)ほか、講義の最初に紹介

演習

戦後日本の文化政策を検証する
小林 真理 夏冬 4単位 木3
 昨年は国の文化政策の実践現場を、グループに分けて検証するという方法で、顕彰制度、国立国際美術館、新国立劇場、そして省庁横断的文化政策を対象とした。昨年度の成果を共有しつつ、新たな課題設定の下で、現行の国の文化政策について検証を行う。具体的に何を取り上げるかは、授業最初に履修者と相談する。その際、昨年度検討した現場を、再検討、あるいはより深く検証することも考える。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※博士課程のみ

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形態資料学コース

特殊研究

民謡の芸術学
渡辺 裕 2単位 木4
 民謡といえば、各地域に伝承された「オーセンティック」な地方文化というステレオタイプ的イメージで捉えられがちだが、そのような表象のあり方自体、民謡がその姿を様々に変えてきた歴史の一局面にすぎない。その歴史を再検討してみれば、国民国家形成、メディアの発達、旅行文化の展開といった多様な要因が絡まり合う中で民謡の「近代」が形作られてきた過程が明らかになり、そのことは、民謡の問題をこえて、近代的な芸術観の形成過程やそれを支えるイデオロギー構造や文化観のあり方を浮かび上がらせることになるだろう。講義形式。
歌本と歌集の文化史
渡辺 裕 2単位 木4
 「歌は世につれ、世は歌につれ」と言われるように、それぞれの時代の歌を集めた歌集は時代の社会状況を鋭く映し出している。しかしそれ以上に歌集を共有して皆で歌うという考え方自体、特定の思想と結びついている。この講義では明治以後の日本を中心に、座敷歌を集めた歌本、旧制高校の寮歌集、戦時期の歌謡集、戦後のうたごえ運動やうたごえ喫茶で使われた歌集等々、様々な歌集を取り上げ、それらが近代的国民意識の形成やそれに伴う日本文化の再編成とどのように結びついてきたかを考える。講義形式。
日本写真史研究
斎藤 多喜夫(横浜開港資料館・横浜都市発展記念館) 2単位 月2
 写真には時間を止める不思議な働きがある。すでに存在しない風景や人々が、それが存在した時点で切り取られ、眼前に蘇る。古文書や古記録が過去の社会の仕組みや出来事を伝えてくれるのに対して、古写真は人々の動作や表情、生活の舞台や環境、道具立てを伝えてくれる。しかし、写真を史料として読み解くためには、それが誰によって何のために撮影されたのか、どのように伝来したのかなどを調べること、すなわち“史料批判”が必要である。また、寡黙な写真を雄弁にするためには、文字史料と結び付ける必要もある。近年新たに発見されつつある写真や事実を紹介しつつ、その歴史を通じて“史料批判”に迫る。
舞踊と文化
尼ケ崎 彬(学習院女子大学教授) 2単位 水2
 詩歌が言葉に型を与えたものであるように、舞踊や礼法は身体の動作過程に型を与えたものである。この型は文化によって異なる。一般に歩行や労働などの実用的動作はどこも同じになりやすいが、機能を求めない舞踊は文化的社会的コンテクストへの依存度が高いからだ。この授業では舞踊のみならず立居振舞など身体の型一般を対象に、その文化的コンテクストとの関係を考える。各回の授業前半で尼ヶ崎が一つのテーマについて問題提起し、後半で参加者がそれについてディスカッションを行うというシンポジウム形式をとる。
近世日本の異文化交流とその資料
松井 洋子(史料編纂所) 2単位 水3
 長崎に来航するオランダ船を通した、ヨーロッパ及びアジアとの接触は、日本近世の異文化交流の主要なルートの一つである。出島のオランダ商館の文書、オランダ船によって日本から運び出された文物、異文化と出会った日本の人々が残した絵画や叙述、そして入手した文物、こうした史・資料をもとに、異文化接触の諸相を考えていきたい。今年度は、基礎的諸要素を概観するとともに、人と人との接触のあり方に焦点を当ててみる。授業の中では、史料編纂所にある史・資料の現物を見る機会も設ける予定である。
もうひとつの近代芸能史
京谷 啓徳(九州大学) 2単位 集中
 この講義では、うたと笑いによるハイカラ・モダンな大衆娯楽という点においてジャンルを超えた共通性を有する、明治末年より昭和戦前期にかけての諸芸能をまとめて取り上げ、近代日本におけるもうひとつの芸能の系譜を紡ぎだしてみたい。録音や映像など各種資料を用いて、幾世代か前の人びとが熱中した大衆芸能を、できるかぎり臨場感をもって追体験していただく。おおむね以下のような内容を予定している。(1)益田太郎冠者と帝劇女優劇(2)浅草のオペラ(3)「茶目子の一日」:佐々紅華とレコードによる笑い(4)レヴュー万華鏡(5)浅草六区と丸の内:ふたつの興行街 (6)P.C.L.とエノケン・ロッパ:戦前のミュージカル映画(7)寄席のモダン音曲芸 (番外)日本活人画小史:園遊会から額縁ショーまで

演習

演劇学・舞踊学への招待:演劇・舞踊における死の表現をめぐって
古井戸 秀夫 夏冬 4単位 火4
 演劇・舞踊では、人間の死をどのように表現しているのでしょうか。ギリシア悲劇「オイディプス王」、シェイクスピア「マクベス」、歌舞伎「四谷怪談」など古典作品を題材として、演劇・舞踊における死の表現について考えてみることになるでしょう。
音楽文化論研究(1)
渡辺 裕 2単位 木2
 西洋音楽研究、民族音楽研究、ポピュラー音楽研究を横断的に、文化人類学や社会学など学際的な領域からの寄与も加えつつ音楽と文化との関係を問おうとする論集である Martin Clayton, et al (eds.), ”The Cultural Study of Music: A Critical Introduction” (Routledge, 2003) の講読を中心とし、関連テーマによる自由発表などもからめながら進める。学部との共通授業なので、学部生の発表準備や資料調べなどのサポートにも積極的に関与することが自らの視野を広げる機会となることを期待している。
音楽文化論研究(2)
渡辺 裕 2単位 木2
 夏学期に行われる上記「音楽文化論研究1」の継続。引き続き、同じ文献の講読と関連テーマによる自由発表を行うが、徐々に自由発表の比重を高めてゆくつもりである。
食文化を考える
佐藤 健二 夏冬 4単位 木5
 文化であり資源であるものとしての「食」を、多方面から論じてみたい。食べるという行為は、人間という社会的動物の不可欠の実践であるため、食の文化は、日常生活文化の重要な領域を構成してきた。栄養学、家政学などで取りあげられただけでなく、国際政治や環境問題、階級、住空間等々のさまざまな主題領域を含むものとして、社会学・文化資源学の観点から取りあげたい。社会学との共同で行う。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※博士課程のみ

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文字資料学コース(文書学・文献学)

特殊研究

明治作文教科書研究
月村 辰雄 2単位 火5
 明治前期の各種の作文教科書を研究対象として、まず、1)江戸期の往来物との連続性の問題、2)江戸期の漢詩・漢文の手引書との連続性の問題、3)当時の初等・中等教育カリキュラムとの関連、4)文明開化の世相がどのように反映しているか、5)書簡術の教科書としての性格と作文の教科書としての性格の混在の問題、などについて講義する。受講者には、与えられた資料、ないしみずから蒐集した資料をもとに、各自新しい問題を設定し、研究の結果を発表することが求められる。成績評価:期末レポート、授業参加(発表など)
江戸を読む
長島 弘明(国文学研究室) 2単位 水2
 江戸時代の文学について概説する。小説と俳諧を中心に講義を進めたい。ジャンルの様式性に留意し、時代的な背景にふれつつ、前期・中期・後期のそれぞれの文学の特質について論じる。適宜プリントを配布する。
西洋文献学史研究:ハウスマン前後
片山 英男 2単位 金4
 古典文献学者ハウスマンの主著であるマニリウス校訂につき、辛辣なことで高名なその序文(英語)の講読を中心に、先人たちも含めたマニリウス校訂の歴史を概観する。ラテン文学への関心さえあれば、ラテン語の知識は必要としない。期末レポートもしくは授業参加により採点する。
漢籍入門
大木 康(東洋文化研究所) 2単位 集中
 中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。
(1)「中国版本目録学概説」(2)「四部分類について」(3)「漢籍目録法実習(カードの取り方)」(4)「朝鮮本について」の講義及び実習(講師の都合により若干の順序の入れ替わりあり)
 6月18日(月)から22日(金)までの集中講義(場所は東洋文化研究所会議室:工学部8号館7階を予定している)。実習の準備の都合上、受講希望者は、履修届とは別に6月8日(金)までに文化資源学研究室まで申し出ること(先着10名を限度とする)。
幕末外交史料論
保谷 徹(史料編纂所) 2単位 月4
 19世紀半ばに「開国」した日本は、世界資本主義市場へ強制的に編入されるとともに、近代的な外交関係の構築を迫られた。講義では、1)欧米やロシア、東アジアの史料保存機関(文書館)の役割や所蔵史料の構造などについてふれ、2)彼我の外交文書の様式や外務省史料の構造を比較検討する。さらに、3)国内史料のみならず、海外の文書館に所在する日本関係史料から幕末の諸事件を分析する。今年度も、史料編纂所が所蔵する幕末期の外交史料群(旧外国奉行所史料など)を取り扱うとともに、ここ最近の海外調査によって明らかになった外国語史料、画像史料などを随時紹介していきたい。
日本中世古文書学
近藤 成一(史料編纂所) 夏冬 4単位 金4
 一昔前までは「古文書学」といえば中世文書を中心に研究されてきたが、近年は古代あるいは近世・近代の分野においても研究されるようになってきている。また「文書」とは文字資料の中で典籍・記録とは区別される特定のものとして定義されてきたが、その狭い定義に属する古文書の範囲を超えて、多種多様な史料を扱う「史料学」が提唱されている。さらに文書を管理する実用の学としての文書学が求められている。そういうわけで、かつての中世文書を中心とする「古文書学」には「中世」の限定を付さなければならなくなった。そして「古文書学」は元来西欧起源のものであるけれども、ここで取り上げようとしているのは日本のものに限定されるので「日本」という限定も付さなければならない。要するに今日「文書学」が対象とすべきものが多様であるにもかかわらず、ここで「日本中世」の限定を冠して取り上げる対象は、従来の「古文書学」が取り上げてきたものとあまり変わらない。しかし対象に新味はないけれども、対象に接近する方法において新しい課題を追求していきたい。既知の材料の中に新しい切り口をみつけていくことに、実は学問の醍醐味がある。昨年度は史料編纂所において影写の仕事に従事している技術者の協力を得ることができたので、古文書の筆跡について考える方法を試行錯誤で始めたが、これは今年度においても試みたい。史料編纂所の架蔵する古文書の原本・影写本・写真等を利用するので、授業は史料編纂所内で行い、人数は20名程度までを上限に考えている。
近世都市と情報
渡辺 浩一(国文学研究資料館) 2単位 月2
 情報伝達の問題を歴史的に考える素材として、日本近世都市における法令・規則の伝達方法=情報様式について考える。その場合、近年の情報論やメディア論の方法を参考にする。具体的には、江戸における高札と町触を取りあげて、その情報様式の系統と展開を探る。第一の系統としては高札があり、情報様式としての形骸化と権威性を検討する。第二の系統としては町触の筆写と読み聞かせがある。これは文字と口頭の二つの媒体の組み合わせであるが、社会構造の変化により有効性がなくなり、末端では対面による口頭伝達から掲示による文字伝達に変化する部分が出てくる。第三の系統としては掲示による文字伝達の延長上に印刷(木版刷り)がある。これは非常に希に出現するものではあるが、一面では近代の公報につながるものでもある。以上のような内容を講義形式で行う。

演習

中世フランス語写本解読練習
月村 辰雄 2単位 火3
 中世の各種のフランス語写本のファクシミリをもとに、実際の解読・読解練習をおこなう。カロリング小文字書体以降の書体の歴史、書物におけるテクストのプレセンテーションの諸様態、また書物自体の形式の変遷についての解説を差し挟むが、主眼は、実際にテクストの内容を読み解くことにおきたい。成績評価:授業参加
明治期社会経済史史料演習
鈴木 淳(日本史学研究室) 2単位 水2
 基本的に毎回一人が明治・大正期についての研究発表を行い、それをめぐって議論する。日本史学と合同。発表は史料に基づくことが原則であり、発表者は前回(発表1週間前まで)に基本史料1点以上と発表の梗概800字を参加者に配布する。基本史料は、原史料の複写でも、活字史料あるいは史料に基づいて作成した表でもかまわない。
歌舞伎を読む
古井戸 秀夫 夏冬 4単位 金4
 昨年に引き続き、鶴屋南北の未翻刻台本を読みます。歌舞伎の台本は、文字資料としてどのような特色を持っているのか。それを最大限いかすには、どのような翻刻の仕方、紹介の方法が適しているのかなど、文化資源学の視点からも検討することになるでしょう。
段玉裁『説文解字注』講読(1)
大西 克也 2単位 金5
 後漢の許慎『説文解字』は全巻現存するものとしては最古の字書であり、篆書に基づき漢字の成り立ちを説いた文字学の基本文献である。清朝の段玉裁『説文解字注』はその注として最高峰との評価が定着している。緻密な思考の末に練り上げられた段玉裁の文章を精読することにより、中国文字学の精髄に触れる。授業冒頭で必要な知識を講義する。今学期は巻一を冒頭から読む。漢文が読めれば良く、現代中国語の能力は問わない。
段玉裁『説文解字注』講読(2)
大西 克也 2単位 金5
 段玉裁『説文解字注』講読(1)の続きであるが、学期単位の受講を可能とするため、夏学期と冬学期とに分割する。
アーカイブズ学入門
木下直之・渡辺浩一(国文学研究資料館) 2単位 集中
 アーカイブズ学(archival science)とは、過去の古文書から現代の映像・電子記録まで、行政・企業・大学・個人などの記録史料(アーカイブズ資料)を文化情報資源として保存・活用するための専門科学である。本講義では、国際的な研究動向を踏まえつつ、日本のアーカイブズ(文書館・公文書館)やアーキビストのあり方について考えたい。
 本講義の履修者は、7月と9月に国文学研究資料館において実施される「アーカイブズ・カレッジ」を受講する必要がある。「アーカイブズ・カレッジ」の案内と受講申込み用紙は文化資源学研究室にあるので、履修希望者は各自で国文学研究資料館に申し込むこと。ただし申込者多数の場合は選考を行うことになっている。選考にもれた場合は自動的に本講義の履修資格を失うので、あらかじめ了承されたい。なお本講義の履修は、文化資源学研究専攻所属の学生に限ることとする。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※博士課程のみ

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参考:文化資源学共通講義(学部向け)

文化資源学入門(1):文化政策概論
小林 真理 2単位 木4
 歴史的に芸術が社会の中で存在していくためには、様々な支援者がいたことはよく知られている。パトロンとしての役割が国家によって担われるようになってから、国家と芸術の関係は常に緊張状態にあるといってよい。第二次世界大戦以降、芸術文化政策に一定程度の原則を明らかにしながら政策を実行しているところもあれば、それを曖昧にしながら時流に乗って政策を展開しているところもある。その中に潜む危うさに注目しながら、文化政策全般の課題について考えてみたい。また、今ほど政府が文化産業に注目をしてこともなく、各国がしのぎを削って文化産業の育成に力を入れているところでもある。文化産業をめぐる問題は、知的財産戦略やユネスコの文化多様性条約にも関係するところである。これらの領域にどのような課題が存在するのかについても触れることになるだろう。
 参考資料・文献については、適宜指示する予定である。
文化資源学入門(2):文化財保護の諸問題
木下 直之 2単位 金3
 文化資源学研究室が学部向けに開設する「文化資源学入門2」で、演習形式の授業として開講する。「文化資源学入門1」(夏学期)は小林真理「文化政策概論」を参照。この演習では、文化財保護法が成立する以前に、日本国がどのような理念からどのような保護政策をとり、制度化してきたかについて理解を深める。文化財保護法が何を引き継いでおり、その限界や問題点がどこにあるかを明らかにし、これからの文化財保護と文化資源開発について考える機会としたい。参加者は開講日までに文化財保護法を熟読しておくこと。

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