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平成18(2006)年度 文化資源学講義・演習 

各コース共通科目

特殊研究

近代日本の文化政策
木下 直之 2単位 火4
美術作品を生み出すのは誰だろうか?少なくとも、それを制作する技術者(画家や彫刻家)と注文者と鑑賞者は不可欠である。肖像の場合は、本人の生死を問わず、像主がそこに加わる。しかし、彼らだけでは、美術作品を成立させることはできない。教育、市場、展覧会、ミュージアムなどが美術を支えてきた主要な制度であるが、この講義では、毎回、近代日本美術の中から具体的な作品を1点選び、それを手掛かりに、それぞれの時代の文化政策との関係を探る。
展示論06〜浅草細見
木下 直之 2単位 火4
重層化されたある土地の記憶を読み解くことを目的に開講した一昨年度の「上野細見」、昨年度の「皇居細見」に引き続き、今年度は、江戸の盛り場浅草に目を向け、そこが近代を迎えていかに変貌したかを検証する。では、なぜそれが「展示論」なのか。浅草は両国と並んで開帳や見世物のメッカであり、有数の展示空間であった。近代に入ると、両国は相撲を残すのみとなるが、浅草は変わらず興行の町であり続けた。とはいえ、上野のようにミュージアムは出現しなかった。現代を含め(すなわち見学会あり)、過去の浅草を丁寧に見て歩こう。開講日までに拙著『美術という見世物』(ちくま学芸文庫)を読んでおいてほしい。
戦争と博物館
木下 直之/アラン・クリスティ 2単位 金3
戦場に行かずに戦争を追体験するためには、映画館とともに、博物館ほど有効な場所はない。日本において、その嚆矢は1879年に開館した靖国神社の遊就館であり、最新のものには呉市の大和ミュージアムがある。アメリカでは、1854年に開館したウエスト・ポイント博物館が早く、一昨年にはラスベガスに原爆実験博物館が開館した。戦争を展示することが、どのような意図から、どのような装置を用い、どのような技術を駆使して行われてきたかを、日米の戦争について考えてゆきたい。木下が戊辰戦争から太平洋戦争まで、クリスティが独立戦争から冷戦までの戦争を対象とし、各地の博物館のそれぞれの戦争展示を紹介したうえで問題点を議論する。
文化遺産の保存と国際協力
稲葉 信子(東京文化財研究所) 2単位 集中
 国際的な枠組みにおける文化遺産の保存について、建築、都市や文化的景観など不動産文化遺産を中心に、動産文化遺産、無形文化遺産にも視野を広げながら、文化遺産の保存に関する国際的な理念の歴史、国際機関が行う活動から各国間の国際協力による文化遺産の保存の現場まで、今日の動向を展望し考察する。
 具体的には、ユネスコ世界遺産条約など文化遺産に関する国際法の運営の仕組み、各種の憲章を通じて保存の理念の構築に貢献してきたイコモスなど国際NGOの活動、各国のODAにより行われる国際協力の現場についての報告を含み、文化遺産の保存の現場が直面する様々な問題、民族間紛争、開発、観光などとの関係について考察する。
歴史遺産評価法:植民地期朝鮮の文化財
早乙女 雅博(韓国朝鮮文化研究室) 2単位 火2
過去の歴史のなかで人類が生み出したモノが、近代社会のなかで歴史遺産として位置づけられどのように保存されてきたか、また今後どのようにして残していくか、あるいは残していく必要はないかを考える。具体的には、植民地時代の朝鮮半島で行なわれてきた総督府による古蹟調査事業で集中的におこなわれた楽浪郡と高句麗の遺跡について考える。夏学期で扱った高句麗壁画古墳も題材として、近代社会のなかでどのような視点から調査され保護対策が行なわれて来たかを考える。
展覧会の諸問題
田中 正之(国立西洋美術館) 夏冬 2単位 隔金2
 本講義は、展覧会という事業が現在抱えている様々な問題について検討するものである。あまり意識されてはいないが、「展覧会」なるものは、現在危機的な状況にある。一方では制度としての展覧会に対するイデオロギー的批判が過去数十年にわたってなされおり、また他方では保険(補償)、作品借用、運営形態、保存等の実際的な側面からの困難にも直面している。これらの諸問題を整理し、検討を加えながら、「今後どのような展覧会を、どのように開催していけばいいのか」というテーマについて議論していきたい。
 議論の出発点となる文献、あるいは実際の展覧会については、講義中に指示をする。これらの文献を読み、展覧会を見てもらったうえで、議論を進めていく。したがって、受講者には、自分の見解をまとめ発言していく積極的な参加を求めたい。
祭礼文化論
福原 敏男(日本女子大学) 2単位 集中
 近代以降、祭礼の全体構造を構成している節制と禁欲の部分が簡略されていき、人々の目をひく祝祭と祝宴が肥大化する傾向にある。柳田国男による「祭りから祭礼へ」の変遷論を検討するために、賀茂祭などの王朝の祭礼から、現代のイベント(神なき祭礼)までを対象とする。
 特に近世中期以降に成立していった都市祭礼にみられる装飾シンボル(山車など)に焦点を据え、祭礼における風流の様相について考察する。また、江戸の天下祭りにおける附祭について検討し、江戸町人の感性について考える。
 神田明神における天下祭り祭礼資料の熟覧も予定している。
マネジメント事例研究〜日本海学の構築をめざして
中井徳太郎(東京大学医科学研究所)夏冬4単位火6
日本海を中心に南北を逆転させた「逆さ地図」をモチーフとし、「循環」「共生」「海」の視点から、日本・東アジアが直面する問題に総合的に切り込むべく生まれた「日本海学」。前財務省広報室長・企画調整室長であり、「日本海学」の立ち上げ当初からプロデュースする担当教官の経験も踏まえ、5年前に富山県の取り組みとしてはじまった「日本海学」が産学官との連携を図りつつ、全国区・国際的な取り組みとして認知されていく過程を事例として、文化経営戦略の実践につき考察する。

演習

文化資源学の原点
木下 直之 他 夏冬4単位 隔水5・6
文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。
文化資源学フォーラムの企画と実践
木下 直之/小林 真理 夏冬2単位 隔火2
フォーラムの企画から実践まですべての作業を学生が中心に行う実習であり、文化資源学修士課程1年生の必修とする。夏休みまでに企画会議を重ね、フォーラムのテーマと構成を決定し、夏休みから秋にかけて、テーマに関する理解を深めるための研究会・交渉・広報などの準備を行い、年度内に公開フォーラムを開催する。そのあとは報告書にまとめる。昨年度は、3月2日に「廃校の可能性─芸術創造の拠点として─」を開催した。
本郷キャンパスの文化資源
木下 直之 2単位 金5
東京大学がどのように出来上がってきたのかを、様々な遺跡・遺品を手掛かりに考える試みであるとともに、その先に、東京大学という得体の知れないものの姿を探り当てたいと考えている。私がこの問題に気付いたのは、本郷キャンパス内の肖像を調査した時で、そこからは、HPはもちろん、出版物ではなかなかわからない組織や構造が垣間見えた。そのためにはこの大学がどのように成立したかを知る必要があり、『東京帝国大学五十年史』が参考となるだろう。『東京大学本郷キャンパス案内』(東京大学出版会)も読んでおいてほしい。
記憶の資料論
アラン・クリスティ 2単位 火3
「記憶」(特に集合的記憶)を研究するためにどんな資料をどのように使うのかという問題を検討します。様々な文化資源─口述・印刷・文字・映像・物体・建築・身体的なパーフォマンス・空間─はどのように過去の経験を記録化するのか。そして、それはどのように流通され、解釈されるのかを問いながら、記憶の維持や伝承や変容の多様な次元や機能を考察します。学際的な方法を使って、記憶研究の既存の成果や今後の課題を議論します。
歌舞伎を読む
古井戸 秀夫 夏冬 4単位 金4
歌舞伎の戯曲を読むことになるでしょう。物語はどのように展開し、主人公はどのような行動をとるのでしょうか。芝居小屋の特徴、大道具・小道具、衣裳・鬘・化粧の拵え、下座音楽や舞踊の振付まで、歌舞伎の特色を読み解いてゆくことになるでしょう。。
特別演習・美術館における教育研究
寺島 洋子(国立西洋美術館)/田中 正之(国立西洋美術館) 夏冬 4単位 集中
2006年度の教育普及インターンは、基本的に半年を研修期間とし、内容はアートマネージメント関係の調査、資料収集および夏期プログラムの補助となります。
下記Webページ「国立西洋美術館インターンシップ募集のお知らせ」
にしたがってあらかじめ応募し、採用された場合に単位として認定する。
  (募集終了につきURLは省略)
応募締切:2006年2月28日(火)

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文化経営学コース

特殊研究

アートマネジメント論を考える〜関連基本文献の講読
小林 真理 2単位 火5
文化政策研究の範囲について論じた文献を素材にしながら、我が国における文化政策研究の可能性と、文化政策研究に関するインフラの整備について考察する。
1960年代アメリカで発祥したといわれるアートマネジメントは何を目指してきたのか。それは芸術創造団体の遅れてきた近代化を意味するものなのか。その手法は日本に導入可能であったのか。アートマネジメントを現実具体的に日本で実践していく上での課題は何か。以下の書物を手がかりに、考察する。
教科書:William J. Byrnes, Management and the Arts (Focal Press, 2003)
文化政策論を読む〜文化政策の実践を考える
小林 真理 2単位 火5
ヨーロッパ評議会は1949年に設立された国際機関であるが、加盟各国の文化政策についての報告書を作成するなど、文化政策研究に多くの情報を提供してきた。文化政策を現実具体的に実行していく際に、直面する問題をコンパクトにまとめたのが、Balancing act: 21 strategic dilemmas in cultural policy (Council of Europe Publishing, 1999) である。昨年度に引き続き、この中からいくつかのテーマを抽出し、日本の現実を具体的に捉えながら検討する。テーマについては、履修者と相談する予定であるが、現段階では以下のものを考えている。
Culture as a self-justifying value or Culture as development, Subsidy or Investment, Centralisation or Decentralisation.
ミュージアム・テクノロジー
西野 嘉章(総合研究博物館) 夏冬 4単位 木5
平成18年度に総合研究博物館で行われる予定の展覧会、アーカイヴ事業、来館者調査、ミュージアム企画構想のいずれかのプロジェクトに参加し、そこでの具体的な体験を通じて学芸員、文化事業担当者としての専門的なスキルを修得する。それぞれのプロジェクトの活動内容と研究成果は、出版物(図録、報告書、目録など)のかたちで公刊される。初回に各プロジェクトへの振り分けを行うが、希望者多数の場合、人数制限を行う。
文化と都市政策:文化経済学と文化政策の視点から
後藤 和子(埼玉大学) 2単位 水3
  文化は、1980年代以降、創造的で持続的な都市政策の重要な要素とみなされるようになった。特に、「文化と経済」との関係は、研究者のみならず、多くの政策担当者にとっても興味をそそられるテーマである。
 この講義では、文化経済学と文化政策の視点から、「文化と経済」をどのように捉えるのか、理論的な基礎について講義するとともに、それらをどのように、空間論や政策論へと繋ぐことができるのか、受講者とともに考えていきたい。現実の都市政策のケースや都市政策に関する文献についても、できるだけ幅広く取り上げる予定である。
 講義は、討論を中心にして行う。文献については、以下のものを基本とし、それ以外の文献については、講義の最初に適宜、指示することにする。
  • 後藤和子『文化と都市の公共政策―創造的産業と新しい都市政策の構想―』有斐閣、2005年
  • 後藤和子・福原義春編『市民活動論―持続可能で創造的な社会に向けて』有斐閣、2005年
博物館学 I
太田 泰人(神奈川県立近代美術館) 2単位 月5
今回の講義ではまず、ミュージアム、とくに美術館の活動について、蒐集保存、調査研究、展示、教育普及などその基本的な実践と理念を、具体的な経験に基づきながら、検討する。また、それに加えて「社会に生きるミュージアム」という視点から美術館活動の再検討を試み、ミュージアムの経営戦略(使命設定、施設設計、予算構成、人的組織、広報手法、評価形成など)は現実的にどのように形成すべきかを考えたい。
博物館学 II
金山 喜昭(法政大学) 2単位 木2
本講義は、これまでの「文化の殿堂」としての博物館から、「まちづくり」としての新しい博物館のあり方を探究する。
(1)博物館とは (2)博物館の分類 (3)博物館学と地域博物館学 (4)地域博物館とは (5)地域博物館のパラダイムの転換 (6)博物館の歴史 (7)地域博物館の歴史 (8)博物館経営論 (9)博物館機能論T (10)博物館機能論U (11)地域博物館と学校の連携・融合 (12)地域博物館のソーシャル・マーケッテング戦略と新しい地域文化づくり (13)海外の博物館事情 (14)見学会 (15)見学会
評価法:出席などの平常点とレポート、試験
教科書:金山喜昭2003『博物館学入門』慶友社
参考図書を随時指定する。

演習

写真を見る/読む
佐藤 健二/木下 直之 2単位 金3
写真を見る力を養うことを目的とする。木下が幕末・明治期の写真から、外国向けの日本風景・風俗写真と明治42年創刊の写真雑誌『グラヒック』(有楽社)を、佐藤が大正・昭和戦前期の写真から、社会調査や民俗学研究に使われたものを素材として提供する。写真からどのような情報を引き出すことができるかを、写真を成立させている条件やそれがもたらす影響など、いわば画面には写っていないものも含めて考える。
戦後日本の文化政策を検証する(2)
小林 真理 夏冬 4単位 木3
戦後、日本において文化政策という概念が行政レベルで導入されたのはそれほど古いことではない。しかしながら、文化に関する行政事務が行われてこなかったわけではない。消極的な、放任的な政策も政策の1つの選択である。文化行政概念から文化政策概念への組み替えが進行している現在の状況に注目しながら、戦後の文化政策を徹底検証する作業を行う。昨年度は、特定の自治体の文化政策について、仮説を立てて具体的な検証作業を行った。今年度は、世界的な文化政策の傾向を踏まえつつ、1990年代以降の日本の国レベルでの芸術文化振興政策について検証することにより、何が現在の課題なのかについて考えることにする。資料等については授業の中で、適宜配布する。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う 。※博士課程のみ

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形態資料学コース

特殊研究

メディアと記憶の美学
渡辺 裕 2単位 木5
デジタル機器やコンピュータの急速な発展に伴う芸術状況の変化を受けて、芸術とメディアについての議論が盛んであるが、これらの問題も、芸術的知覚や認識の構造に関わるより大きな問題系の中に位置づけて考えてゆく必要がある。この講義では、「メディアと記憶」という問題系を軸に、芸術作品の周辺にあってわれわれの芸術体験を支える役割を果たしている様々な活動に焦点をあて、それらが芸術作品を一方で社会の媒介作用のうちに置きつつ、他方で内面化された記憶としてわれわれの精神の内奥にまで浸透させてゆくメカニズムを明らかにしてゆきたい。文学散歩と名勝見物、景観保存と廃墟趣味、コレクション、メディアイベントといったトピックをとりあげながら、そのような活動に活字メディアや図像、音楽等のメディアがどのように関与しているか、逆にそれらが内面化された記憶としてわれわれの芸術体験をどのように規定しているか、といったことを具体的に考えてゆく予定である。
近世の異文化交流とその資料
松井 洋子(史料編纂所) 2単位 水3
長崎に来航するオランダ船を通したヨーロッパ及びアジアとの接触は、日本近世の異文化交流の主要なルートの一つである。出島のオランダ商館の文書、日本側に残る絵画や叙述、そして出入りした文物の記録や実物などの資・史料をもとに、近世の異文化交流の多様な具体像を見ていきたい。今年度は、ものと情報の流れ及びそれを示す史料について取り上げる予定である。資・史料等の現物を見る機会を何度か設けたいので、人数は20名位までとしたい。履修希望者はやむを得ない事情がない限り、初回の授業に出席のこと。
映画を文化資源化する
とちぎ あきら(東京国立近代美術館フィルムセンター) 2単位 月5
映画・映像をめぐるさまざまな学問・研究領域(映画理論、映画批評、映画技術論、映画史、メディア史、文化史など)の結節点としてある「映画の文化資源化」の問題を、主に戦前日本のニュース映画や文化記録映画を素材にしながら、その方法論的可能性を探っていく。また、映画フィルムや関連資料のアーカイヴィングが「映画の文化資源化」に果たす役割についても、併せて検討していきたい。

演習

柳田國男を読む
佐藤 健二 2単位 木5
柳田國男のテクストを集中的に取り上げたい。初期の農政学、産業組合論と、大正年代の郷土誌論、昭和初年の方法論的な著作など、社会認識の形成という観点から検討する。社会学との共同で行う。
音・環境・メディア─サウンドスケープ研究の現在
渡辺 裕 2単位 水2
作曲家マリー・シェーファーが、われわれの周囲にある音の環境を「音楽」という枠をこえて「音の文化」という観点から考えるべきであることを主張して、「サウンドスケープ(音の景色)」という概念を提唱してから20年あまりが経過した。しかしその後の音楽や思想をめぐる状況の変化の中で、機械や電気を介したメディアによる「環境汚染」を排して古き良き時代の音の秩序を取り戻そうとする志向の強いシェーファーの思想の限界もまた明らかになった。この授業では、その後のメディア論の進展なども視野に入れつつ、「音の環境」や「音の文化」の保存や利用といった問題をあらためて考え直してみたい。Michael Bull, Les Back(eds.), The Auditory Culture Reader, Berg Publishers, 2004 をテクストとして使用する予定。
写真を見る/読む
佐藤 健二/木下 直之 2単位 金3
写真を見る力を養うことを目的とする。木下が幕末・明治期の写真から、外国向けの日本風景・風俗写真と明治42年創刊の写真雑誌『グラヒック』(有楽社)を、佐藤が大正・昭和戦前期の写真から、社会調査や民俗学研究に使われたものを素材として提供する。写真からどのような情報を引き出すことができるかを、写真を成立させている条件やそれがもたらす影響など、いわば画面には写っていないものも含めて考える。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う 。※博士課程のみ

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文字資料学コース(文書学・文献学)

特殊研究

明治初期大学史研究:文学部の誕生
月村 辰雄 2単位 月5
明治10年4月、法科と理科の専門課程しかなかった開成学校が東京大学と改称されると、法学部、理学部と並んで新しく文学部が設けられていた。『東京帝国大学五十年史』はこの間の経緯を不明であるとしている。事実、文学部がなにを学ぶところであるかについて、当時の学生の間で戸惑いあり、関係者は躍起になって学生たちを勧誘したらしい。本講では、もっぱら明治10年代前半の教科書類の検討によって、文学部設立の理念を考える。
江戸を読む
長島 弘明(国文学研究室) 夏冬 4単位 水2
18世紀の文人であり、俳諧・片歌、和歌、国学、読本、南画・俳画などに多彩な才能を示した建部綾足の生涯と業績について概説する。いずれの分野においても時代に先駆けながら、すべて未完に終わったその文業の、文学史上・学芸史上の意義について考察したい。適宜、参考資料を配布する。
日本中世古文書学
近藤 成一(史料編纂所) 夏冬 4単位 金4
日本史学の補助学としての「古文書学」は中世を中心に研究されてきたが、近年は古代あるいは近世・近代の分野においても研究されるようになってきている。また「文書」とは文字資料の中で典籍・記録とは区別される特定のものとして定義されてきたが、その狭い定義に属する古文書の範囲を超えて、多種多様な史料を扱う「史料学」が提唱されている。さらに文書を管理する実用の学としての文書学が求められている。文化資源学・文字資料学コースにおいては、そういう学的状況を踏まえて、多様な内容が「文書学」を構成するものとして用意されている。私自身は中世日本を対象として、歴史認識のための方法論として「文書史」を考えているので、扱う内容としてはオーソドックスな「古文書学」に近いが、むしろその内容が「日本中世」に限定されるものであることを意識して、あえてその限定を冠した上で、しかしながら既知の知識を伝授するにとどまることなく、新しい課題を探求していく最先端の場としてこの授業を用意することにした。したがって単なる入門講義ではなく、あくまで大学院レベルでの授業として、先端の問題を参加者が講師ととともに考えていく場としていきたい。しかしこの授業は、学部課程の「文化資源学共通講義」および「日本史学特殊講義」としても認定されており、学部課程であっても意欲を有し努力する方の参加を歓迎している。また古文書学や日本中世史に関する予備知識は求めない。具体的には三つの内容を平行して進める。第一に私の講義、第二に参加者自身の研究の発表、第三に研究文献の紹介と討議である。この授業に限ったことではないが、授業の場は研究のスキル、研究者としてのスキル、あるいは将来の教師としてのスキルを身につける場でもあると考えるので、参加者全員に発言してもらい、発表の内容についてはもちろん、発表の仕方等についても議論したい。また講義や発表の材料として古文書の具体例を取り上げ、古文書を実際に読めるようになるための実習をも行う。したがって毎回の授業は講義ないし発表が1/3、古文書の読み方に関する実習が1/3、参加者全員による討議が1/3となる。史料編纂所の架蔵する古文書の原本・影写本・写真等を利用するので、授業は史料編纂所内で行い、人数は20名程度までを上限にしたい。
漢籍入門
大木 康(東洋文化研究所) 2単位 集中
中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。
(1)「中国版本目録学概説」(2)「四部分類について」(3)「漢籍目録法実習(カードの取り方)」(4)「朝鮮本について」の講義及び実習(講師の都合により若干の順序の入れ替わりあり)
6月19日(月)から23日(金)までの集中講義(場所は東洋文化研究所3階大会議室)。実習の準備の都合上、受講希望者は、履修届とは別に6月9日(金)までに文化資源学研究室まで申し出ること(先着10名を限度とする)。
幕末外交史料論
保谷 徹(史料編纂所) 2単位 月4
19世紀半ばに「開国」した日本は、世界資本主義市場へ強制的に編入されるとともに、近代的な外交関係の構築を迫られた。講義では、1)欧米やロシア、東アジアの史料保存機関(文書館)の役割や所蔵史料の構造などについてふれ、2)彼我の外交文書の様式や外務省史料の構造を比較検討する。さらに、3)国内史料のみならず、海外の文書館に所在する日本関係史料から幕末の諸事件を分析してみたい。今年度は戊辰戦争期の史料も取り扱い、史料編纂所が所蔵する幕末期の外交史料群(旧外国奉行所史料など)や最近の調査によって明らかになった外国語史料、画像史料などを随時紹介する。
近世都市と情報
渡辺 浩一(国文学研究資料館) 2単位 金2
情報伝達の問題を歴史的に考える素材として、日本近世都市における法令・規則の伝達方法=情報様式について考える。その場合、近年の情報論やメディア論の方法を参考にする。具体的には、江戸における高札と町触を取りあげて、その情報様式の系統と展開を探る。第一の系統としては高札があり、情報様式としての形骸化と権威性を検討する。第二の系統としては町触の筆写と読み聞かせがある。これは文字と口頭の二つの媒体の組み合わせであるが、社会構造の変化により有効性がなくなり、末端では対面による口頭伝達から掲示による文字伝達に変化する部分が出てくる。第三の系統としては掲示による文字伝達の延長上に印刷(木版刷り)がある。これは非常に希に出現するものではあるが、一面では近代の公報につながるものでもある。以上のような内容を講義形式で行う。

演習

甲骨文入門
大西 克也 2単位 金5
殷代に作成された甲骨文を取り上げ、器、文字、言葉などについて基本的な知識を概説した後、甲骨文を現代の漢字に置き換えて、文章として読む訓練を行なう。テキスト、参考書は講義の中で紹介する。
明治美文教科書研究
月村 辰雄 2単位 月5
本講ではまず、明治期に刊行された作文教科書の時代的変遷を跡付ける。次いで、30年代になって増加する「美文教科書」の類に注目し、そこに掲げられる模範文の類型化を考える。あわせて、いくつかの文章(たとえば、西南戦争の際の山県有朋の西郷隆盛宛降伏勧告状)が、どのようにして注目され、名文として評価され、模範文例するのか、その過程を追跡してみたい。
明治期社会経済史史料演習
鈴木 淳(日本史学研究室) 2単位 水2
基本的に毎回一人が明治・大正期についての研究発表を行い、それをめぐって議論する。日本史学と合同。発表は史料に基づくことが原則であり、発表者は前回(発表1週間前まで)に基本史料1点以上と発表の梗概800字を参加者に配布する。基本史料は、原史料の複写でも、活字史料あるいは史料に基づいて作成した表でもかまわない。
近世近代史料調査法入門
吉田 伸之(日本史学研究室) 2単位 集中(9月12日〜15日)
現在も日本各地に厖大に残されている地方(じかた)文書の調査法(現状記録調査法)・研究法の基礎を学ぶ。今年度は、2003年度以来取り組んでいる長野県下伊那郡清内路村下区区有文書の第4回調査を実施する。現地に宿泊し、フィールド・ワークとして行う。受講希望者は6月15日までに、日本史学研究室、文学部教務係のいずれかに申し出ること。参加者が30人を超えると、制限する場合がある。なお7月13日(木)4限にガイダンスを行う(場所は古文書学特殊講義「近世・近代初期文書を読む」の教室を使う)。参加者は必ず出席のこと。ガイダンスやフィールド・ワーク実施要項の詳細は、5月末に古文書学特殊講義において配布する。また日本史研究室でも配布し、同研究室掲示板と文学部掲示板に掲げる。
アーカイブズ学入門
木下 直之/渡辺 浩一(国文学研究資料館) 2単位 集中
 アーカイブズ学(archival science)とは、過去の古文書から現代の映像・電子記録まで、行政・企業・大学・個人などの記録史料(アーカイブズ資料)を文化情報資源として保存・活用するための専門科学である。本講義では、国際的な研究動向を踏まえつつ、日本のアーカイブズ(文書館・公文書館)やアーキビストのあり方について考えたい。
 本講義の履修者は、7月と9月に国文学研究資料館において実施される「アーカイブズ・カレッジ」を受講する必要がある。「アーカイブズ・カレッジ」の案内と受講申込み用紙は文化資源学研究室にあるので、履修希望者は各自で国文学研究資料館に申し込むこと。ただし申込者多数の場合は選考を行うことになっている。選考にもれた場合は自動的に本講義の履修資格を失うので、あらかじめ了承されたい。なお本講義の履修は、文化資源学研究専攻所属の学生に限ることとする。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う 。※博士課程のみ

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参考:文化資源学共通講義(学部向け)

文化資源学入門(1):比較文化政策概論
小林 真理 2単位木4
歴史的に芸術が社会の中で存在していくためには、様々な支援者がいたことはよく知られている。パトロンとしての役割が国家によって担われるようになってから、国家と芸術の関係は常に緊張状態にあるといってよい。第二次世界大戦以降、芸術文化政策に一定程度の原則を明らかにしながら政策を実行しているところもあれば、それを曖昧にしながら時流に乗って政策を展開しているところもある。その中に潜む危うさに注目しながら、文化政策全般の課題について考えてみたい。昨年度は日本の文化政策の現状と問題を概観することに焦点を当てたが、今年度は各国の文化政策との比較により、文化政策研究及び文化経営研究の課題について明らかにする。
参考書:伊藤裕夫、小林真理他『アーツマネジメント概論』(水曜社、2000年)
その他、適宜参考資料は配付する予定である。
文化資源学入門(2):文化財保護の諸問題
木下 直之 2単位 金5
文化資源学研究室が学部向けに開設する「文化資源学入門(2)」で、演習形式の授業として開講する。「文化資源学入門(1)」(夏学期)は小林真理「比較文化政策概論」を参照。この演習では、文化財保護法が成立する以前に、日本国がどのような理念からどのような保護政策をとり、制度化してきたかについて理解を深める。文化財保護法が何を引き継いでおり、その限界や問題点がどこにあるかを明らかにし、これからの文化財保護と文化資源開発について考える機会としたい。募集定員は20人程度とする。参加者は開講日までに文化財保護法を熟読しておくこと。

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