97、98、99年度の活動報告

  

活動の総括

 

研究会報告

<1997年度>

   

<1999年度>

出張報告

<1999年度>

 

<1998年度>

 

<1997年度>

 


1997年度活動の総括         

本研究班は、「イスラーム地域研究の基礎資料の収集と図書館ネットワークの構築」をねらいとし、5年間にわたって次の3つを計画の柱としている。

 1)イスラーム地域の現地語資料の収集
 2)図書情報のデータベース化とオンライン・サービスの充実
 3)収集資料の公開と利用

これにそって、1997年度の研究活動と今後の課題について、報告する。

1)イスラーム地域の現地語資料の収集

イスラーム地域研究の基礎となる現地語資料の日本における所蔵状況は、近年急速に増加しているとはいえ、欧米の比ではなく、また各機関においてバラバラに進められているため、重複や偏りが見られる。本班では、「幅広く、効率的かつ重点的な」収集を行うことを基本し、収集方法については、東洋文庫において、すでに継続的な資料収集が行われている地域・言語(アラビア語、ペルシア語、トルコ語)とそれ以外の地域・言語(中央アジア、南アジア、東南アジア、中国)に分けて策定した。前者については、東洋文庫において収集方法も整備され書誌情報のデータベースが作成されていることから、従来の資料収集活動を継続するとともに、これまで弱かった分野について重点的な補強をすること、後者については、現地に資料調査・収集のための派遣を行うこととした。97年度は、前者については、@アラビア語:宗教・思想関係Aペルシア語:雑誌資料Bトルコ語:地方出版物の補強を行い、後者については、中国と南アジアに専門研究者を派遣し、ムスリム関係資料を収集した。中国でのアラビア語出版物や南アジアのペルシア語出版物など、これまでほとんど招来されていなかった資料を収集し、これらは、今後の両地域の研究の足がかりを築くものである。また、中国資料調査については、詳細な出張報告をホームページに掲載し、南アジア資料調査については、調査報告会を開催した。

98年度以降も上記の方針に基づき、効率的な収集活動を続ける予定である。

2)図書情報のデータベース化とオンライン・サービスの充実

図書館ネットワークの構築の前段階として、国内の図書館・研究機関における現地語資料の所蔵および整理状況の調査を行った(1997年7月ー12月)。大学図書館および研究機関446機関にアンケートで調査を依頼し、271機関からの回答をえた。これによって、アラビア語をはじめとする現地語資料の所蔵機関数、蔵書の種類と量、整理と利用方法などの概要がはじめて明らかとなった(たとえば、アラビア語資料の国内所蔵総量は約4万冊と推計されるが、これは米国プリンストン大学の12万冊に遠く及ばない)。アンケートの集計と分析を和文報告書にまとめたほか、英文報告をWorking Paper Seriesとして刊行し、国内・国外の外国人研究者の案内とした。

東洋文庫で開発を進めていた多言語書誌データベース方式を用いて、今年度収集した中国ムスリム関係、南アジア関係の資料データベースの作成を開始した。また、東洋文庫蔵書CD-Romカタログ(The Toyo Bunko Multilingual Database CD)の刊行に伴い、モニターによる試用を進めるとともに、東京大学東洋文化研究所などとデータベース方式の共用についての司書担当者レベルでの協議を開始した。98年度は、さらに関係機関の担当者との連絡会議を組織化する予定である。

3)収集資料の公開と利用

収集した資料を死蔵するのではなく、迅速かつ有効な利用を図ることが第三の目標である。購入後1年以内に目録をコンピュータを用いて作成し、インターネットなど電子メディアを通じて公開することとし、98年1月から、東洋文庫内の特別室(イスラーム地域研究室)において閲覧を開始した。。97年度購入図書の70%は、東洋文庫の書誌データベースを用いて、書誌情報を入力済みであり、さらに98年度に、インターネットによる速報(略式情報)の提供を行う準備を進めている。

 


1998年度の活動の総括

本研究班は、「イスラーム地域研究の基礎資料の収集」と資料利用のための「図書館ネットワークの構築」および「収集資料の利用」を柱として活動している。今年度は、現地語資料の収集とその図書情報のデータベース化については、軌道ののせることができ、第3の目標である、収集資料の利用に関する先端的な研究活動を開始した。

(1)現地語資料の収集

a.中東地域の資料
アラビア語は、政治・経済分野の強化を目的とし、その基礎となる雑誌資料のバックナンバーの購入を行った。ペルシア語は前年に続き雑誌資料に重点をおき、トルコ語は、地方史、会議録、経済、トルコ国内の少数民族の歴史資料を中心に収集した。
 
b.派遣による資料調査・収集
中央アジア(カザフスタン、ウズベキスタン)と東南アジア(マレーシア)に若手研究者を派遣し、イスラーム関係資料の収集と資料状況の調査を行った。両地域とも、イスラーム関係の現地語資料は、日本ではまとまった資料を所蔵する機関がなく、今回の収集によって基本資料の収集の基礎ができた。

(2)図書情報のデータベース化

前年度につづき、東洋文庫で開発した多言語書誌データベース方式を用いて、アラビア語、ペルシア語、トルコ語、南アジア諸語(ウルドゥー語など)、ウイグル語、中国語などの収集資料の書誌データベースの入力を行った。97年度収集分については入力と校正を終え、98年度分についても98年12月までに収集した分については、入力を終えた。通常のアラビア文字以外の文字を使用するシンディー語などについては、文字フォントと検索について研究の余地が残された。なお、東洋文庫の主な事業としてすすめていた所蔵ペルシア語データベースが本年度末に完成し、利用に供せられる。

書誌情報のインターネット上での検索システムの構築は、大きな課題であるが、最大の問題は現在のインターネット上では、アラビア文字など非ラテン文字を表示・検索することができないことである。アラビア語圏のウェッブサイトでは、アラビア文字を表示したホームページ(とくに新聞など)が登場しているが、現在のところは、画像またはPDFファイル方式をとっており、ユーザーのパソコン機種、ソフトいかんにかかわらず非ラテン文字を表示・検索できるような文字コードや検索のシステムは開発途上にある。

その点では、インターネット上では、当面はラテン文字による情報検索に依存せざるをえない。学術情報センターのNacsis-webcatでは、アラビア文字特有の転写記号を省略したかたちで書誌情報を掲載し、これに参加する機関の蔵書を一気に検索できる点ではきわめて有益ではあるが、文字転写の方式の統一などの問題が残されている。本班では、インターネットによる書誌情報の検索の実験として、収集資料の一部(アラビア語)については、ラテン文字による収書速報(略式情報)を、99年3月までに、第6班ホームページに掲載する予定である。

(3)資料の利用

中東研究では、刊行史料に加えて、写本や文書史料といった手書きの史料の利用が近年増大している。本研究班では、このような史料の先端的な利用に先鞭をつけることを任務としているが、今年度は、これに関する3つの研究活動を行った。

a.ペルシア語写本史料の講読会
E・ エシュラーギー教授(テヘラン大学文学部)を招聘、5回にわたり写本の講読セミナーを開催し、多くの若手研究者(院生など)の参加を得た。
 
b.シンポジウム「イスラーム地域研究における写本・文書史料の可能性」(九州大学)の開催
アラビア語、ペルシア語、トルコ語、および中央アジアに関する写本・文書史料の研究状況とその可能性について、シンポジウムを開催し、40数名の参加者をえた。ヨーロッパ史、日本史などの研究者も参加し、イスラーム研究の史料学の必要が共通に認識された。
 
c.テメッテュアート(資産台帳)研究
97年度に総括班パイロット研究としてスタートしたが、これを6班において継続し、本年度は、資産台帳作成に関する史料調査のために、トルコに派遣を行った。

99年度からは、このような写本・文書史料を用いた研究活動、および資料データべースの構築に関する活動を強化するために、班の名称を「イスラーム関係史料の収集と研究」と改める。

 

 


1999年度の活動の総括 

研究報告要旨

平成9年度、10年度において「イスラーム関係史料の収集」を課題とした第6班は、平成11年度よりその課題を「イスラーム関係史料の収集と研究」に変更した。過去2を年間の活動の結果、拠点機関である東洋文庫に「イスラーム関係史料収集」の体制が確立したことをうけ、研究課題に「史料研究」を加えることになったものである。史料の収集と並行して史料研究活動を同時に遂行することにより、イスラーム関係史料への理解と、収集史料の有効な利用や情報の公開のための手法の開発をめざす。組織も若手中心のメンバーへと交代し、プロジェクト3年目にあたる平成11年度の活動は、次の3つの分野を中心に行った。

 

(1)イスラーム関係史料の収集
第一の分野は、6班の本務ともいえる史料収集である。本年度は、全2年に引き続き、アラビア語、ペルシア語、トルコ語の図書購入を行った。アラビア語図書は、モロッコおよびエジプトより単行本375点460冊、雑誌6点173冊、ペルシア語図書については、単行本382点467冊、雑誌67点164冊を購入した。トルコ語図書に関しては単行本446点495冊、雑誌5点51冊を選書・購入した。購入された図書は、ただちに整理され、文献情報データベースに入力後、随時、閲覧者の利用に供されている。拠点機関である東洋文庫には、6班収集図書の公開のため新プロ閲覧室が開架方式で設置されており、閲覧者はそこで実際に収集図書を利用することが可能となっている。広報不足もあって平成11年度の利用者数は多いとは言えないものであったが、平成12年度以後は、文献情報データベースのインターネット公開やCD-Rom 配布、その他の広報活動を通じて、6班収集図書への利用者のアクセスを増やす活動を行う予定である。また、平成11年度の活動の一環として、12年3月に近藤信彰・磯貝健一両氏をサンクトペテルブルクの東洋学研究所に派遣し、ペルシア語写本に関して、東洋文庫が東洋学研究所と行っているマイクロ・フィルム招来計画に協力することになった。サンクトペテルブルクの東洋学研究所は、点数は3000点あまりであるが、良質のペルシア写本を有することで知られている。今回は、(a)ナクシュバンディー教団、ジュバイリー教団等中央アジアのスーフィー教団に関する文献、(b)イランサファヴィー朝期の書簡集等文書に関係する文献、(c)17世紀以降の中央アジア史に関する文献を中心に史料収集を行う。(a)のなかには、17世紀のジュバイリー教団史であるMatlab al-talibin、同じく17世紀のナクシュバンディー教団のシャイフたちの逸話集Hasanat al-abrar、さらにジュバイリー教団関連の文書の集成などが含まれており、中央アジアのスーフィー教団に関する第一級の史料である。(b)には、maktubと呼ばれる書簡集数種の他、サファヴィー朝下のアスタラーバード州、シルヴァーン州で発行された行政文書の謄本が含まれている。他に類書は見つかっておらず、行政文書の書式、発行の手続きを知る上で貴重である。(c)は具体的にはウズベク支配期、すなわちブハラ、コーカンド両ハーン国に関するものであるが、大多数が写本のままである両ハーン国に関する基本史料を東洋文庫にそろえることで、栄光のティムール時代とロシア支配期の間の研究史上の空白を埋める研究が日本で可能になると考えられる。

 

(2)コンピュータ利用

6班の活動の第二の分野は、イスラーム地域研究へのコンピュータ利用に関する研究である。東洋文庫では数年来、アジア諸言語を対象とした多言語文献データベースの構築にとりくんでおり6班による収集図書もその技術によりデータベース化されている。この過程で、アラビア語、ペルシア語、オスマン・トルコ語、ウルドゥー語、ウイグル語などアラビア文字で書かれた文献を扱うデータベース・フォーマットが完成し、それを他の研究機関へも提供できる段階にいたった。現在、東京大学東洋文化研究所、中近東文化センター、東京外国語大学総合図書館に技術提供を開始しており、その対象機関は今後ふえていく見込みである。6班ではこの活動をオーガナイズし、東洋文庫方式によるアラビア文字文献データベースの紹介と諸機関でのアラビア文字文献の整理の支援を行っている。この活動は、さらに、全国のアラビア文字文献の総合データベース構築構想へと発展しつつある。従来、全国の大学図書館等の多くでは、アラビア文字文献に関し、翻字ローマ字によりデータベース入力を行ってきた。これは、全国の大学等図書館をつないで総合図書目録システム(NACSIS-CAT)の運用し
ている文部省学術情報センターの方針にそったものであり、具体的にはアメリカ議会図書館の入力規則にそった複雑な翻字方式を採用するものであった。しかし、近年の技術革新にともない、コンピュータ上でアラビア文字などの多言語を扱う条件は整いつつある。NACSIS-CATの多言語化も中国漢字、ハングルを対象に始まりつつあり、アラビア文字文献についても、固有文字への対応は技術的に可能な段階に至っている。6班では、全国12の機関の参加を得て、平成11年12月に第一回アラビア文字文献データベース連絡会を開催し、アラビア文字文献のデータベース化に関する全国的なネットワークの構築にすすめた。この連絡会には、文部省学術情報センターの協力も得られており、今後、東洋文庫方式や複数の翻字方式など別々のルールで整理されてきたアラビア文字文献の整理方法を統合し、全国共通データベース構築にむけて活動していく予定である。この他、6班では、各種フォントや個人向きペルシア語文献データベース・フォーマットの配布など、イスラーム地域研究に有用なリソースの提供につとめた。
 
なお、この活動の一貫として、1班と合同で次の研究会を実施した。

第1・6班合同研究会「デジタル情報化時代の研究作法」の報告(1999年11月6日)

於 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・連環地域論講座
第1部(報告):
赤堀雅幸「窓の中技・小技―Windows環境での論文作成効率向上をめざして」
林佳世子「Mac多言語環境下の研究技法」
保坂修司「HTMLによる学術論文の技法」
第2部(座談会):「快適な研究環境を構築するために」
赤堀雅幸、林佳世子、保坂修司、小杉泰(司会)

 

(3)史料研究

6班の活動の第三の分野は、歴史史料を対象とした史料研究会の活動であった。史料研究会は、ア.オスマン文書研究会、イ.ペルシア語文書研究会、ウ.アラビア語写本史料研究会の3つの分科会からなっている。いずれも、平成11年度に新規に発足したものであるが、活発な研究会活動を展開し着実に成果をあげつつある。
 
 ア.オスマン文書研究会  詳しい内容についてはここを click!!!
 

平成11年度には3回の研究会(5月29日、6月19日、11月20日)を開催し、4名(高松洋一、大河原知樹、ステフカ・ペルヴェヴァ、清水保尚)が報告を行なった。初年度の今年は、研究者相互の情報交換と共通認識の形成に重点がおかれ、文書とは何か、古文書学とは何を研究する学問なのか、といった基本問題をオスマン朝研究の文脈で考える報告(高松)、シリアおよびブルガリアの文書館の現状と由来、そしてそこに所蔵されるオスマン文書の紹介(大河原、ペルヴェヴァ)が行われた。また清水報告は、文書の様式から、文書を作成した行政機関における文書処理手続きの復元を目指したが、これは次年度以降に当研究会が進むべき方向につながるものと評価できる。またイスタンブル大学助教授のマーヒル・アイドゥン氏を迎えて3回(7月6日、8日、13日)にわたりオスマン文書史料講読セミナーを実施し、実例に則して文書史料読解の手ほどきも行われた。このセミナーには、東京・京都から10数名の大学院生が参加し好評を博した。

オスマン文書研究会の活動には平成9年度に総括班パイロット計画としてスタートし、10年度以後は6班の活動として継続してきたオスマン帝国資産台帳研究も含まれる。当研究は、前2年の活動を受けて、現在は成果公表準備の段階に入っている。(イスラーム地域研究欧文叢書の一冊として2001年度に出版予定。)共同研究メンバーの一人であるマーヒル・アイドゥン氏の来日中の7月9日には、東京において「オスマン帝国資産台帳に関するラウンドテーブル」を開催し、高松洋一、マーヒル・アイドゥン、江川ひかりが中間報告を行った。さらに、8月29日にイスタンブルにて第2回目の研究会をひらき、トルコ人共同研究者(3名)との研究打ち合わせを

行った。

 
 イ.ペルシア語文書研究会  詳しい内容についてはここを click!!!
 

2度の研究会(6月12日、10月11日)と5班と共催の国際ワークショップ(12月4日)、および5班と共催の研究会(12月9日)を行った。当研究会の目的は、第1に研究の遅れているペルシア語古文書学に関する情報・知識を交換する点にあるが、最終的にはこれらの文書を生み出した多様な歴史的な社会の比較研究を目指している。ペルシア語文化圏の内部の比較、あるいはアラブ圏やオスマン朝の比較を通じて、特定の形式・内容を持つ文書が発達したのかを問い、その文書を生み出した社会の構造・制度・慣習を明らかにすることを目標とする。今年度第1回の研究会においては、イラン、中央アジア、インドにおけるペルシア語文書研究および文書史料の保存状況について報告がなされ、研究会の出発点が確認された。第2回からは地域・時代の異なった文書の書式や内容の比較を目指す方針が固まった。

国際ワークショップは、ドイツ、イラン、ウズベキスタンから研究者を招聘して行われた。6班の招聘者としては、クリストフ・ヴェルナー氏(バンベルク大学)、バフティヤール・ババジャノフ氏(ウズベキスタン東洋学研究所)が参加した。本ワークショップの目的は、研究が遅れているペルシア語文書史料に関する情報交換を行うことであったが、新しい類型の文書史料の紹介や、イラン史研究における文書史料利用の有用性が様々な角度から具体的に示され、レベルの高い報告をえることができた。また、オスマン朝研究者、アラブ研究者、インド研究者をも交えて活発な議論が行われたことも、成果のひとつといえる。このワークショップの内容は、イスラーム地域研究欧文叢書の一冊として公刊予定である。

 

1999年12月4日 国際ワークショップ

International Workshop on Persian Archival Sources
December 4, 1999
at Institute of Oriental Culture, the University of Tokyo

 

10:00-10:20

Opening Session

10:20-11:00

ISOGAI Ken'ichi (Kyoto University)

"Hanafite waqf theory reflected in waqf deeds from 16th and 17th century Bukhara".

11:00-11:40

Christoph WERNER (University of Bamberg)

"The Winners of Qajar Social Transformation: a Case Study in Landownership"

11:40-12:20

KONDO Nobuaki (Tokyo Metropolitan University)

"The Vaqf of Ostad `Abbas: The Revision of Deeds in Qajar Tehran"

13:20-14:00

Mansur SEFATGOL (University of Tehran)

"Majmu'eha: An Important and Unknown Sources of Historiography of the Last Safavids: the Case of Majumu'-e Mirza Moina"

14:20-15:00

Hashem RAJABZADE (Osaka University of Foreign Studies)

"Irrigation Examined through Documents of Qajar Iran"

15:20-16:00

YAMAGUCHI Akihiko (The University of Tokyo)

"On the Term 'Resm-i cift' in Ottoman Tax Registers on Iran"

16:00-16:40

Bakhtiyar BABADJANOV (Institute of Oriental Studies, Tashkent)

"Uncatalogued Irshad-nama from funds of the Institute for Oriental Studies named after al-Biruni (Tashkent)"

16:40-17:20

General Discussion

本ワークショップの目的は、まず研究が遅れている文書史料に関する情報交換を行うことであったが、セファトゴル報告およびババジャーノフ報告は現地の学者ならではのこれまで学界にあまり知られていない新しい類型の文書史料の紹介であり、その意味で有意義であった。これに対して磯貝報告は、古文書学とイスラーム法学を繋ごうとするユニークな研究であり、オスマン朝の課税台帳のタームを検討した山口報告とあわせて、我が国の研究が着実に進展していることを感じさせた。ヴェルナー報告は文書を利用してカージャール朝期の土地所有の問題に本格的に取り組んだものであり、ワクフ文書の更新問題を扱った近藤報告、水利権を扱ったラジャブザーデ報告とともに、文書史料の利用によって何が可能かを示した。

レベルの高い報告が続いたが、全体的には発表内容のばらつきが見られ、ペルシア語文書研究が分野として未成熟であることが計らずも明らかとなった。しかし、オスマン朝研究者、アラブ研究者、インド研究者をも交えた活発な議論が行われ、ペルシア語文書研究の世界の水準を明らかにすると同時に、我が国の中東研究の水準の向上をも示すことができたと考えられる。

 

1999年12月9日
5班・6班合同研究会(於:京都大学文学部)

第一報告
Mansur SEFATGOL (テヘラン大学)
「サファヴィー朝後期(1666-1736)の宗教・社会構造」

サファヴィー朝後期の宗教・社会上、3つの顕著な潮流が認められる。第一にタサッヴォフとスーフィーたちの弾圧、第二に宗教指導者内部のアフバリー派とオスーリー派の対立、第三に法学者と哲学者の対決である。これらの潮流は、コム、イスファハーン、マシュハドという3つの都市の三角形の中で展開された。サファヴィー朝がイランにおける12イマーム派最初の本格的政権であったこととあいまって、これらの潮流は、当時の政治的・思想的状況を規定し、複雑化した。

第二報告
Bakhtiyar BABADJANOV(ウズベキスタン東洋学研究所)
「現代ウズベキスタンのスーフィズムをとりまく諸問題」

現代のウズベキスタンでは、スーフィズムは極めて重要な政治的問題である。ソヴィエトの崩壊以降、各地でイスラーム、スーフィズムの復興が見られるが、これに関する正確な情報はウズベキスタンにおいても欧米においても非常に少なく、政策決定や現実の対応において困難が生じることが少なくない。スーフィズムの歴史・伝統をふまえつつ、信奉者の発行するビラや教義書等の一次資料に基づいた研究が今こそ必要であり、これなくしては、ウズベキスタン社会は非常な困難に直面するであろう。

 

 
 ウ.アラビア語写本史料研究会  詳しい内容についてはここを click!!!
 

アラビア語史料を扱う上でのさまざまな問題点を検討することを目的に発足したものである。具体的な作業としては、10世紀イラクの文人ヒラール=サービーが著した『カリフ宮廷の儀礼』を読み進め、最終的にはこの作品の日本語訳注を出版することを目指している。平成11年度中には15回の研究会を開催した。毎回の研究会は、『カリフ宮廷の儀礼』に関する輪読会形式で進められた。その際、テキストを読み解く上で問題となる重要な用語や固有名詞などに関して活発な議論がおこなわれた。各回の訳注担当者は、研究会での検討結果を踏まえて日本語訳注の改訂版を作成し、順次ウェブサイト上で公開している。物理的に研究会に出席できない研究者も、このウェブサイトを参照することにより当研究会の活動に参加することが可能であり、研究過程および成果の同時公開という意味で、当研究会の試みは新機軸を打ち出したといえよう。なお、11年末時点で、作品全体の約4割についての作業を終えたところである。

 


研究会報告(1997、1998)

 

  • 「南アジア資料収集報告会」(1998年1月23日)
       1月23日に東洋文庫において、「南アジア資料収集報告会」を開催し、多忙な時期にもかかわらず、南アジア研究者を中心に15名が参加しました。さる12月から1月にかけて、小名康之(青山学院大学、6班)と露口哲也(立教大学大学院、6班協力者)の2名が、パキスタンに資料調査および収集に出張し、現地の研究と資料の状況について報告しました。収集した資料は、ペルシア語、ウルドゥー語をはじめ多岐にわたり、また19世紀末の古書が含まれ、参加者からは、よくぞ収集できたと歓声にちかいため息がもれました。ムガル朝時代は、南アジア史にとってはもちろん、イラン史や中央アジア史にとっても重要な時代ですが、これまで資料が手薄であっただけに、今回の資料収集は、将来の研究の飛躍のきっかけになると思われます。

      資料の詳細については、近日中に6班のホームページに出張報告 が掲載されますので、それをごらんください。なお、6班で収集した資料は、毎週水 曜日に閲覧・公開しております。東洋文庫3階のイスラム地域研究室をお訪ねくださ い(9:30-16:30)。

  • ペルシア語写本講読セミナー報告(1999年1月21日〜2月4日)於 東京大学東洋文化研究所
      イスラーム地域研究第6班は、さる1月21日、26日、28日、2月2日、4日の5回にわたり、それぞれ2時間強のペルシア語写本講読セミナーを開催した。講師にはテヘラン大学教授、イラン・イスラム共和国科学アカデミー終身会員のエフサーン=エシュラーギー氏を迎えた。氏はサフヴィー朝期の数々の史料を校訂してきた「現地」の著名な専門家であり、このような講師を迎えてともに写本講読を行いえたことは多くの参加者にとって貴重な体験となった。中には遠く北海道からの参加者もおり、ペルシア語写本については初の試みであるこのような講読セミナーへの関心と期待の高さをうかがわせた。

      セミナー初回は、参加者の自己紹介などの後、まず及川秀和氏(北海道大学・院)によって、講読史料である『Safwa al-Safa』(14世紀イランの聖者伝)の様々なヴァージョンに属する写本の伝来状況が明らかにされた。その後、講師エシュラーギー氏によりこの作品の成立史、特徴などに関する講義が行われた。

      第2回以降は実際の講読に費やされた。数多く残る『Safwa al-Safa』の写本のうち最古のライデン写本を主に用い、参加者が読み上げる発音を直し、書体などの筆記法、文法から神秘主義の諸概念にいたる多様な内容の解説を加えるという作業を、講師は忍耐強く、しかも幸運なことに、どうやら楽しみながら行った。参加者の多くにとっては、ペルシア語を母語とする歴史学者と歴史史料を読み合わせるということ自体初めての体験だったので、この作業は写本講読の能力向上という意味においてのみならず、「イラン人はこう読むのだ!」という意外な発見をも多分に含んでいたようである。結局初回を除いた4回で15頁(8葉)ほどを講読した。会の参加者は総勢16名、各回の参加者は10名ほどであった。

      今回のセミナーは短期のものであったこともあり、それ自体で目に見える成果があがったといえば誇張になろう。しかし、すでに記したように、学部生まで含んだ多くの参加者が、一流とされる現地の専門家と直接向き合い、写本講読についての知識と技術をましたのみでなく、いわば現地の風を吸ったことは、留学先の選定なども含め、参加者各人の今後の研究生活の設計の上で有益だったのでないだろうか。

      講師のエシュラーギー氏は、参加者の関心の高さと熱心さ、また、「文中の一語一語の意味まで、登場人物一人一人の素性まで知ろうとする日本人の熱心さと忍耐強さ」に感銘を受けたと述べていた。ともすると雑な仕事が見られないでもない近年のイランで多くの人々を指導する氏が、このような印象をもとに「日本式」のやりかたを推奨するようなことになれば、このセミナーの意味もまたいやますことになるだろう。

      なお、参加者の皆様には、イスラーム法上の禁忌を気にされる講師をエスコートして夕食のお供をしていただくなど、多大な協力をいただいた。オーガナイザーとしてあらためて謝意を表したい。ありがとうございました。 (文:森本一夫 東京大学東洋文化研究所・助手)
                                    
  • 第6班研究会・第40回羽田記念館講演会の報告(1999年1月23日(土)午後2時−6時)
    於 京都大学羽田記念館
    報告:近藤信彰(都立大学人文学部史学科・助手)

      モハンマド・レザー・ナスィーリー(パヤーメ・ヌール大学)

        アク・コユンル朝からガージャール朝に至る6世紀にわたって、イランの諸国家はオスマン朝と戦争や外交等さまざまな関係をもち、その結果イラン史に関する多くの文書史料が現在のトルコ共和国の諸文書館に残されることとなった。イラン史に関する文書史料の残存状況を勘案すれば、これらの史料は非常に貴重であり、にもかかわらずこれまで十分に研究されているとは言い難い。トプカプ宮殿博物館文書館および総理府オスマン朝古文書局を中心に、さまざまな文書のコレクションの成り立ちについて説明し、イラン史関係の文書史料の種類と残存状況を明らかにした。

      エフサーン・エシュラーギー氏(テヘラン大学)

       都市ガズヴィーンに残る古い建築物である古金曜モスクにはセルジューク朝期以降の銘文がいくつか残されている。これらはワクフ文書や勅令の写しであり、歴史史料としても価値の高いものである。最初にセルジューク朝のアミール、フマルタシュの12世紀初頭のワクフ文書を紹介し、その歴史的背景を明らかにした。また、サファヴィー朝のシャー・アッバース2世の勅令を紹介した。サファヴィー朝期にはガズヴィーンは一時首都となったため、重要な遺跡が存在するが、それらの一部についてもスライドを使って説明を加えた。
       

  • Efim Rezvan博士(St.ペテルスブルク東洋学研究所副所長)
    講演「St.ペテルスブルク東洋学研究所の写本史料について」(1998年12月3日)

    於 東洋文庫 3階会議室
    1. St.ペテルスブルク東洋学研究所は、旧ロシア帝国以来の収集資料を所蔵する。
      写本 約10万点(65の言語による)。アラビア語5000点、ペルシア語1万点ほか。
      図書 100万冊(特に帝政時代の中央アジアでの刊行物については納本制度があり、すべて納められている。目録カードしかないため、今後、冊子体または電子メディアによる目録整理が望まれている)
      および、雑誌類。
    2. 10の研究部門に分かれ、120名の研究者が従事。詳しくは、ホームページ参照(http://www.thesa.ru)
    3. 1995年より、Manuscripta Orientalia: International Journal for Oriental Manuscript Research(Helsinki)を季刊で刊行中。所蔵する写本の研究・紹介を行っている。
    4. 写本の校訂刊行を行っており、最近の刊行物として、以下のものを東洋文庫に寄贈された。
      • Rasa'il al-hikma(ドルーズ派の教典)
      • Abu Bakr Muhammad al-Suli, Kitab al-awraq
      • また、CD-Rom形式での写本の刊行も開始し、現在まで10点がリリースされている。
    5. 挿絵の多い写本の例として、マムルーク朝時代の武芸書Ibn Abi Khazzam, Kitab al-makhzunをビデオを用いて紹介した。
    6. 研究所の歴史は、帝政期、ロシア革命とソ連邦時代、ペレストロイカ・ソ連崩壊後と、ロシアとムスリム諸国との生きた歴史を反映している。これについては、研究所の紹介を含め、Asian Research Trends(ユネスコ東アジア文化研究センター刊)に寄稿を予定している。
      なお、東洋文庫では、同研究所の所蔵史料のマイクロ・フィルムによる収集事業を進めており、これについては、6班のシンポジウム(1998年12/13開催、九州大)において、梅村坦氏による報告が行われた。(文責 三浦 徹)

  • シンポジウム「イスラーム地域研究における写本・文書史料の可能性」(九州大学イスラム文明学科と共催、九州史学会シンポジウム)
      日時:1998年12月13日
      場所:九州大学箱崎文系キャンバス(法文講義棟)
      [趣旨]
        近年、日本のイスラーム史研究において、写本や文書史料など手書き史料を利用した研究が、盛んになっている。これは、現地の図書館や資料館などでの閲覧・複写がオープンになってきていることも大きな支えとなっている。その反面、これらの史料の利用は、入手から解読まで研究者個人の努力に負うところが大きく、写本や文書の利用・保存についての系統的な情報収集がたち遅れているともいえる。

        イスラーム地域研究「イスラーム関係史料の収集」班では、九州大学イスラム文明学科研究室との共催により、下記のようなシンポジウムを企画し、アラブ、ペルシア、トルコ、中央アジア史の各分野の第一線でこれらの史料の利用に奮闘している研究者から、写本や文書史料を用いる意義と利用法について、実践的な情報を提供していただくとともに、系統的な史料学の未来について議論を行う。

       
      司会:三浦 徹(お茶の水女子大学)
      報告:
      佐藤 次高(東京大学)
       「イクター制の写本史料を求めて」
      岩武 昭男(関西学院大学)
       「イラン史における文書史料と写本史料:ワクフ文書研究を中心とした概観」
      高松 洋一(東京大学大学院)
       「オスマン朝史研究における文書・記録史料と典籍」
      梅村 坦(中央大学)
       「ペテルスブルク東洋学研究所所蔵資料の研究と利用:とくにウイグル文献を中心にして」
      堀川 徹(京都外国語大学)
       「ヒヴァ・ハン国のカーディー文書史料について」
       
      [シンポジウム概要]
      佐藤報告では、校訂本はもちろん写本自体にも多くの誤記があること、写本自体を見なければ確認できない情報があり、しかもそれが決定的な事実に関わる場合があることを自身のイクター制の研究を例に示した。岩武報告では、ペルシア語写本は17世紀以来、善本がヨーロッパ諸国に将来され、目録も完備されており、マイクロフィルムなどの入手も容易で、写本にあたることは必須となっているとし、今回の報告では、文書史料の種類や校訂出版について報告した。ワクフ文書については、法手続きを経た生きた法文書としての「写し」(正本および謄本)や、ワクフの調査報告が原本とは独立した史料価値をもっていることを指摘した。高松報告は、史料のカテゴリーを文書、記録、典籍の3種に整理したうえで、それぞれの史料のもつ性格や情報の長所・短所があること、手書き史料は記述内容以外に書体、筆跡、料紙、すかし、製本などの情報をもち、これらが年代特定に有効であることを自身の経験を例に提起し、また史料整理・保存における「出所原則」の重要性を指摘した。梅村報告と堀川報告は、中央アジア関係の史料利用に関する現在進行中のプロジェクトについての報告である。梅村は、サンクト・ペテルスブルク東洋学研究所の所蔵する中央アジア諸言語資料の概要と東洋文庫による同資料の調査とマイクロフィルムによる収集事業について報告した。堀川は、自らがウズベキスタンで収集し、同東洋学研究所と共同事業として進めているヒヴァ・ハーン国のカーディー文書コレクションの目録作成と今後の研究の展望について報告した。

      質疑では、谷口淳一(京都大学)が、京都外国語大学所蔵アラビア語写本目録の整理と目録作成に携わった経験の報告があった。遠隔の福岡の地であったにもかかわらず、40数名の参加があり、特に、写本や文書史料に挑んでいる若手研究者がめだった。また、イスラム史の分野を越え、日本の近世史の渡辺浩一(国立史料館)やヨーロッパ中世史城戸照子(大分大学)からも史料の形態に関する質問が出され、「歴史史料」という共通性が強い関心を呼んでいた。この意味では、九州史学会という場のなかで開催したことが、分野をこえた交流を促していたといえる。史料学のフィールドで仕事をされている渡辺氏は、「日本史でも西欧史でも、古文書学は歴史の補助学から独立の領域として認識されるようになっており、図像や口承を含めて、文書史料を情報のひとつのあり方としてとらえるような情報史の視点が必要となってくる」と提言された。

      各報告については、当日配布されたレジュメ(概要)を、以下に掲載する。

      [報告者レジュメpdf ファイルです。読むためには、Acrobat Reader が必要です。]

      なお、シンポジウムの開催・運営にあたっては、九州大学文学部イスラム文明学科の大稔哲也助教授をはじめ、同学科の院生・学生の方々の全面的なご協力を頂いたことに、謝意を表します(文:三浦 徹)。


在外研究者の招聘

Christoph WERNER
 
所属:バンベルク大学講師
期間:1999年12月2日〜7日
活動:
12月3日 東京大学東洋文化研究所訪問
12月4日 「ペルシア語文書国際ワークショップ」において、報告 "The Winners of Qajar Social Transformation: a Case Study in Landownership". 他に、セッションの司会も務める。(於:東京大学)
12月6日 講演 "What is a Mujtahid? Functions and Stratification of Tabrizi Ulama in the Early Qajar Period".(於:東洋文庫)
概要:
ヴェルナー氏は、「ペルシア語文書国際ワークショップ」参加のため来日した。ワークショップでは報告のほか、午後のセッションの司会をつとめた。このほか、12月3日は東京大学東洋文化研究所を訪問、ダイバー・コレクションを見学、6日には財団法人東洋文庫を訪問、6班収集のペルシア語文献を見学ののち、同所で "What is aMujtahid? Functions and Stratification of Tabrizi Ulama in the Early QajarPeriod".という題で講演を行った。滞在はごく短期間であったが、日本の研究者・大学院生と活発な交流が行い、双方にとって有意義な機会となった。
 

 Bakhtiyar BABADJANOV

所属:ウズベキスタン東洋学研究所研究員
期間:1999年12月4日ー10日
活動:
12月4日 「ペルシア語文書国際ワークショップ」において、報告"Uncatalogued Irshad-nama from funds of the Institute for Oriental Studies named after al-Biruni (Tashkent) "(於:東京大学)
12月6日 東洋文庫を訪問、6班収集のペルシア語および中央アジア関係文献を見学
12月7日 1班・中央アジアネットワーク主催の研究会で報告 ""The Great Schisim" among the Moslems of Ferghana Valley"(於:東京大学文学部アネックス)
12月9日 5班・6班共催の研究会で報告「現代ウズベキスタンのスーフィズムをとりまく諸問題」(於:京都大学文学部)
 
概要:
「ペルシア語文書国際ワークショップ」参加のため来日した。本人の多忙とウズベキスタンの諸事情のため来日スケジュールがなかなか確定せず、また、わずか1週間弱の短い滞在で厳しい日程となったが、短い時間のなかで活発に研究報告を行い、学術交流を果たした。 まず、12月4日には、成田から直接会場に駆けつけ、ワークショップで報告を行った。これは、新発見の史料に関する報告で、現地研究者ならではの内容であった。6日には財団法人東洋文庫を訪問、6班収集のペルシア語および中央アジア関係文献を見学、7日には1班・中央アジアネットワーク主催の研究会(於:東京大学文学部アネックス)で、""The Great Schisim" among the Moslems of Ferghana Valley"という題で報告を行った。さらに関西にうつり、12月9日、5班・6班共催の研究会(於:京都大学文学部西南アジア史学資料室)で、「現代ウズベキスタンのスーフィズムをとりまく諸問題」という題で報告を行った。いずれの会にも、多くの研究者・大学院生が参加し、活発に討論が行われた。


収集図書・公開情報

 

収集図書は、すべて、東洋文庫4階のイスラム地域研究6班図書室において公開中。コピーサービスもあります。どうぞご利用ください。また、収集図書の書誌情報データベースを作成中。まもなく、ホームページ上にて、公開します。

[97年度新着資料]

中国ムスリム関係資料 梅村坦氏が現地にて、中国語、アラビア語、ウイグル語など資料657点を購入。(詳細は、出張報告参照

南アジア資料 小名康之、露口哲也両氏をパキスタンに派遣し、ペルシア語、ウルドゥー語、パンジャーブ語など、ムガル朝時代の基本資料630冊を収集した。(『アクバル会典』(1892)、Nawar Kishore 版ペルシア語原典の『聖者伝』、『チシュティの研究(ラホール史)』など。(詳細は、出張報告参照)また、萩田博氏(東京外国語大学)の協力により、文献目録類約90点をパキスタンより入手した。

アラビア語資料 カイロより日本学術振興会カイロ連絡センター駐在の中田考氏(山口大学)のご協力により、思想・宗教関係を中心に(とくにコーランの各種の注釈書類=タバタバーイー21巻、イブン・カスィール10巻、近年の思想研究所など)、約600点(1078冊以上)の図書を購入。また、近年はアラブ世界でもコンピュータを用いた出版により、大型の歴史書が続々と刊行されており、イブン・アサーキル『ダマスカス史』(50巻)、バグダーディー『バグダード史』(24巻)などを購入した。また、モロッコより留学中の佐藤健太郎(東京大学大学院)氏のご協力により、同地の出版物を中心に、約200点の図書を購入。

トルコ語資料 高松洋一(東京大学大学院)氏のご協力により、歴史・言語を中心に約720点の図書を購入。トルコでは、新刊の出版が盛んであるが、いずれも少部数のため刊行時をのがすと良書であるほど、購入が難しくなる傾向があり、今年度はとくに、地方出版物などの近年の新刊書の補充を中心に行った。

ペルシア語資料 イランより、辞書類・雑誌を中心に57点211冊(内雑誌10点、117冊)の図書を購入。主な雑誌としては、『アルマガーン』、『イーラーンシャフル』、『ヴァヒード』、『バハール』、『ナシュリーイエ イエ・ヴァザーラテ・オムーレ・ハーレジェ』など。他にアゼルバイジャン語の辞書1点(3冊)と雑誌1点(15冊)。

 

[98年度新着資料]  

中央アジア諸語資料 坂井弘紀(研究協力者)をウズベキスタンおよびカザフスタンに派遣し、ウズベク語、カザフ語、ロシア語などによる文学・歴史・言語関係の資料(新刊書・古書・辞書・雑誌など)266点296冊を収集した(『カザクタル』『タヴァーリーヒ=グジーダ・ヌスラット=ナーメ』などの書籍、『アリシェル=ナヴァイーの著作の言語詳解辞典』などの辞典、『サヤサト』などの雑誌等)。

アラビア語資料 長沢栄治(東京大学、在学術振興会カイロ研究連絡センター)の協力により政治・経済研究の基礎となる次の雑誌資料7点を購入した。『社会問題雑誌』(1940-46、20巻)『フスール』(1980-88、27巻)『カイロ』(1985-97、55巻)『作家』(1961-80、63巻)『法判決』(1985-97、12巻)、『ヒラール』(1951-98、146巻)および『民衆文化』(1965-96、52巻)。

トルコ語資料 高松洋一(研究協力者)の協力により、地方史、会議録、教育、経済、トルコ国内の少数民族の歴史資料を中心に、558点610冊を収集した。『オスマン朝メドレセにおける教育』(マフメット・ギュル著)、『オスマン朝ヨーロッパ金融資本』(ハイダル・カズガン著)、『イスタンブール農業史』(アフメット・タバックオウル他編)など。

ペルシア語資料 教育、宗教、政治、経済、芸術など諸分野の雑誌19点216冊を収集。パフラヴィー朝時代に刊行された『アームーゼシュ・ヴァ・パルヴァレシュ』『エッテラーアーテ・マーハーネ』、『ネギーン』、第二次世界大戦中(1941-45)にロンドンで出版された『ルーズギャーレ・ノウ』。革命後の新聞(月刊)『ケイハーネ・ファルハンギー』(1984-97、1-14号)など。

東南アジア資料 東南アジアのイスラーム世界、すなわちマレー世界に関する基礎文献を、西尾寛治(サバ・マレーシア大学講師)の協力によって収集した。『イスラーム百科事典』(7巻)、『イスラーム百科』(6巻)、『マレーシア百科事典』(17巻)などの事典類、『ムハンマド伝』(10巻 )、『コーラン訳』(11巻)、『コーラン注釈』(3巻)などの宗教書、聖者伝、年代記など計346点を収集した。

 

[99年度新着資料]

アラビア語資料 私市正年氏(第2班)および、大稔哲也氏(九州大学)の協力をえて、今年度は、モロッコとエジプトから単行本375点460冊、雑誌6点173冊を購入した。数点をあげると;マクリージー『諸王朝の知識の旅』ベイルート、1997、全6巻。アル・ムスタファ・グマーヒリ『命の樹 小説』カサブランカ、1998。アリー・ホスニ『憲法と政治学』マラケシュ、1998。ムスタファ・アッスバーイ『東洋学と東洋学者,正と負の遺産』カイロ、1998。ムハンマド・クトゥブ『コーラン研究』ベイルート、1993など。

ペルシア語資料 東洋文庫研究員八尾師誠氏の協力をえて、単行本382点467冊、雑誌67点164冊を購入した。数点をあげると;エズトッラー・ネギャフバーン『イラン考古学の50年』、メフターフ・エルハーメ『バルフ地方とオクセス河地方の歴史地理』、アブドッラー・アンヴァール『世界征服者ナーデル・シャー』、雑誌『ファスルナーメ?イェ・テアートル』(1ー16号、1988-1992)、雑誌『カーヴェ』(1ー70号、1963-1978)など。

トルコ語資料 6班研究協力者高松洋一氏の協力をえて単行本410点458冊、雑誌5点51冊を購入した。数点をあげると;ベトゥル・オズチェレビ『共和国時代の文学批評』(全2巻)、トゥルグト・アクプナル『トルコ人の宗教と法の歴史』、ネシェ・イェシルカヤ『人民の家ーその立役者とイデオロジー』、メフメト・カラ『トゥルクメン語』、メファーイル・フズル『オスマン朝時代のブルサのマドラサ』など。

 

 


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