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1997年度新プロジェクト・イスラム地域研究の一環として、1997年12月から1月にかけて、パキスタンにでかけ、南アジアの歴史(ムガル時代)研究資料の収集につとめ、同時に研究機関を訪ね研究者との交流につとめた。その概要を報告します。
パキスタンでは、おもにラーホール、カラチに滞在し、イスラマーバードの研究機関にもたちよった。
ラーホールで、はじめに訪ねた研究機関はPanjab Universityで、市内のもとのキャンパスにあるOriental Collegeである。Department of Persianの現在の学科長を訪ね、研究状況をきき、図書館を案内してもらった。もとあった図書の多くは現在は新キャンパスにある図書館に移され、ここにはほとんどめぼしいものはみあたらなかった。
つぎに、ラーホール郊外の新キャンパスを訪れ、Department of HistoryやDepartment of Library Sciencesを訪ね、それぞれの学科長に会い、研究状況や資料について話を聞いた。 ここの図書館はかなりの蔵書数をほこり、ムガル時代の歴史、とくにアウラングゼーブ期の歴史書の写本を保管していた。この図書館に保管している写本類についてはあとにふれるカタログが参照になる。
ラーホールではPanjab Universityのすぐ前にあるLahore Museumをおとずれ、とくに副館長に会い、Lahore Museum所蔵のムガル時代資料、研究状況について話をきいた。蔵書数は多くないが、ここは当時の歴史に関する貴重な資料を保管していた。また、のちの収集した資料の項で掲げたように、ここはMuseumの紀要をだしており、現在の研究状況についてはそれが参考になる。
ラーホールではGovernment CollegeのDepartment of Persianをも訪ねたが、ここは主としてペルシア文学研究を中心としている機関で、今回のムガル期の歴史研究を中心とするプロジェクトにはさしあたってあまり参考に はならなかった。
イスラマーバードにはInternational Islamic University のIslamic Research Instituteとペルシア研究センターにいき、主としてカタログ類を買い求めてきた。それらはのちのカタログ類の項に掲げてある。
カラチでは、University of KarachiのMain LibraryやInstitute of Central and West Asian Studies、また郊外の伝統医学研究で有名なHamdard Universityを訪ねた。とくにInstitute of Central and West Asian Studiesは近年、歴史研究ですぐれた研究書をだしており、今後、東洋文庫はこの機 関と交流をふかめ、そこで出版されている研究書をすべて入手する予定でいる。
また、今回、Pakistan Historical Societyの事務局をおとずれ、そのJournalを入手したので、東洋文庫は同様に同協会との交流を深め、その紀要を入手していく予定である。
収集資料総数は、約450点(寄贈本を含む)で、その言語は英語、アラビア語、ペルシア語、ウルドゥー語、パンジャビー語、スィンディー語、パシュトゥー語に及んでいる。
収集にあたっての基本的方針は、現地語資料に重点を置き、ムガル期(後期ムガル期をも含む)に関わる資料を収集するというものであった。しかし同時に、収集にあたった地域の場所柄の利点を生かして、現地の地域研究に関わるものまでその対象に含められるところとなった。 従って、収集資料の中にも幾つかの英語文献が見受けられるところである。ただ、実際の収集にあたっては、これまでこの方面の研究がほとんど未開拓であったわが国の現状、及び、その点で、当東洋文庫における当該資料の手薄な所蔵状況をも十分に考慮の対象とし、まずは、この地域における写本その他、根本史料の所在状況の把握の一環として、文献目録の収集に力を入れるとともに、その理解の基礎となる辞書、辞典類、或いは、年表等、参考資料の充実に力点を置くところとなった。また、こうした主旨の収集作業の中で、多少目を引くのが、イスラーム法学関係の資料の収集に力を注いだ点であろう。
さて、実際の収集資料に目を移し、その主要なものに解説を加えると、上記の項目以外には、数々のウルドゥー語訳を含めて年代記等歴史資料がまず挙げられる。これにおいては、かつてのNawar Kishore版Ain-i-Akbariをはじめ幾つかめぼしいものも散見されるが、この点では、むしろ雑誌の項で挙げたOriental CollegeMagazineの収集バック・ナンバーが、より大きな成果として挙げられるであろう。特に、様々な史料の校訂テキストの掲載に満ちた貴重な歴史資料の宝庫でもあるこの雑誌の、特にその編集者であるM.Shafiの最も油ののった時期である1928-1938のバック・ナンバーは特筆に値する。
そして 、次に挙げられるのは、それ自体当地における過去の重要な営みを構成し、その足跡の記録であると同時に広く一般の歴史理解にも大きく資するスーフィー文献である。これも、Nawar Kishore版ペルシャ語原典のSafinat ul-Auliyaをはじめ、Siyar ul-Auliya,Khadhinat ul-Asfiya等主要な聖者伝( tadhkirah )を中心に数々のものが収集されている。
また、そうした中で、これに関連して、収集資料の中で特徴的な一項目を構成しているのは、地方史資料であろう。これには、主に、現在のパキスタン地域を中心として、その現地語に根ざした数々の貴重なものが含まれている。
以上のように、今回は、歴史資料、或いは、歴史関係資料の収集に力点を置いて収集は行われた。そしてその与えられた予算の中で、当初の目的は一応達成されたものと信ずる。ただ、その主眼の1つである現地語資料重視の立場からは、それに応じた見地から、文学などの文献も併せて収集されていることをつけ加え ておきたい。
以上、 Markaz-i-Tahqiqat-i-Farsi-i-Iran wa Pakistan.
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