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中央アジア出張報告

ウズベキスタン・カザフスタンにおける資料収集

(1998年8月30日〜9月25日)

坂井 弘紀(千葉大学非常勤講師)

 

今回の中央アジア、ウズベキスタン・カザフスタン出張の目的は、現地で出版された 、イスラームおよび中央アジア研究に関する新刊書および古書等の資料の収集にあった 。現地の研究機関や研究者の協力もあり、貴重で有益な書籍の収集ができた。今回の出 張で行った資料収集について、現地の出版事情や資料の輸送方法にも触れながら、国別 に報告する。

  1. ウズベキスタン共和国(タシュケント、サマルカンド、ブハラ)
  2. カザフスタン共和国(アルマトゥ)

 

1.ウズベキスタン共和国

    1.ウズベキスタンにおける出版状況
      様々な面で変動の激しいウズベキスタンであるが、かつての優良店が閉店するなど、書店の数が以前とくらべ激減していた。その一方で、新しく出店した本屋もあり、教科書やロシア語のペーパーバックとともにウズベク語で書かれた人文科学系の新刊書が売られていた。

      古書を扱う書店はたいへん少なく、学術関係の古書は主に、街頭や地下通路の露店で売られているが、それらのほとんどは、教育および学術関係に従事していた人などが個人的に所有していた蔵書のようである。

    2.ウズベキスタンでの資料収集

      ウズベキスタンでは、ウズベキスタン共和国科学アカデミー歴史学研究所のリナート=シィガブディノフ氏を通じて書籍の購入を行った。これらの書籍は、Alisher Navoy, Layli va Majnun, Tashkent, 1941. など文学関係やXiva davlat khujjatlari, Tashkent, 1960. Ubaydulla-name, Tashkent, 1957. などの歴史学関係の書籍をはじめ、民族学、言語学など多伎にわたる人文系諸分野の書籍であり、その多くが1950年代から80年代にかけて出版された希少本である。それらは、日本国内の学術機関、図書館には所蔵されていないものがほとんどで、現在では海外の古書を取り扱う書店を通じても購入が容易でないため、今回の出張では大きな収穫があったといえよう。

      またshark出版書籍販売店など一般書店でも、多くの新刊書を購入した。

    3.ウズベキスタンからの資料の輸送状況について

      ウズベキスタンの郵便事情は必ずしも良好ではなく、同国から郵送したはずの郵便物が無事に届かないということは稀ではない。そのため万全を期して、収集した資料を郵送ではなく、輸送業者に依託した。費用は高くついたが、確実で安全な方法であったと思われる。しかし、国外持ち出しの許可を文化省から得るため、書名や発行地、発行年等を記載した所定の書類を作成するなど、煩雑な作業が要求された。国外持ち出し許可の基準は定まっているものの、その判断は担当者によって往々にして異なり、また今回は空港の税関担当者による確認がまったくされないなど、手続き上の不徹底さが痛感された。今後もウズベキスタンからの書籍持ち出しについては問題が生じることが予想されるため、輸送方法については十分考慮する必要がある。

     

2.カザフスタン共和国

    1.カザフスタンにおける出版状況
      カザフスタンでも、ウズベキスタン同様に書店の数が以前より少なくなっているようであった。古書を含み学術関係の書籍を扱う書店は少なくなっており、科学アカデミー書籍売店、BukinistやEkonomiksなど数カ所に限られている。

      同国では歴史学、文学、口承文芸などに関する新刊書も比較的多く出版されており、私見では、カザフスタンの出版事情は、ウズベキスタンに比べると良好であると思われた。

    2.カザフスタンでの資料収集

      カザフスタンでは、カザフスタン科学アカデミー東洋学研究所のアンワル=ガリエフ氏、およびカザフスタン発展研究所のアスカル=ショマノフ氏らの協力を得て、書籍を収集した。ガリエフ氏を通じてここ数年カザフスタンで出版された、歴史・言語・口頭伝承などに関する新刊書を、またショマノフ氏を通じて、カザフスタン発展研究所で出版された書籍を中心に、政治・歴史・民族学などに関する書籍やSayasat誌(1996.1-1998.7)などの雑誌、Qazaqtar : toghyz tomdyq anyqtamalyq, Almaty, 1998やQazaq tili enciklopediya, Almaty, 1998といった事典などを同研究所において購入した。Bukinist書店、Ekonomiks書店においては、Qazaqstan tarixi, Almaty, 1998.やM.O.Auezovting omir men shgharmashlyq shejiresi, Almaty, 1997.など歴史、文学関係を中心とする新刊書を購入した。

    3.カザフスタンからの資料の輸送状況について

      カザフスタンの場合は、ウズベキスタンとは異なり、郵便事情は良好である。カザフスタンで収集した資料はすべて郵送したが、どれもが一週間から十日で無事に日本に届いた。カザフスタンからの資料の輸送は郵送が最善の方法であろう。なお、ウズベキスタン同様、カザフスタンにおいても書籍によっては国外への持ち出し制限があり、業者による輸送に際しては文化省の許可を必要とする。