長寿社会が進展し慢性臓器不全を有する高齢患者が増加するなか、緩和ケアとACPの役割が一層重要性を増しています。
慢性呼吸不全では急性増悪と寛解を繰り返しつつ最期に至ります。軽症の段階では階段などで息切れを自覚する程度ですが、重症になると身の回りのことをするだけで息切れを感じ、日常生活が困難になります。本人は次第に悪化する身体状態に不安を覚え、スピリチュアル・ペインに苛まれる場面も出てきます。このように苦悩する本人を前に、家族も医療・ケア従事者も、どのように対応すべきか当惑することが少なくありません。
慢性呼吸不全を抱える本人は現在の症状に対応するための治療を受けつつ、家族等と医療・ケアチームとともに、将来の医療・ケアについて話し合いを繰り返すアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning: ACP)を行うことが重要とされています。しかし、どのようにACPの対話を開始し、そして進めるべきか、何をどのように話し合うべきか、その具体的な方法はまだ多くの医療・ケア従事者にとって困難な課題となっています。
そこで、AMED長寿科学研究開発事業の研究課題「呼吸不全に対する在宅緩和医療の指針に関する研究」(研究代表者 国立長寿医療研究センター 三浦久幸氏:2019~2021年度)では、これらの医学的および臨床倫理的な諸課題への対応を検討し研究成果を取りまとめました。
ここに公開しますのは、研究成果の1つである標題の「ACP支援ガイド」です。
ACPは患者さん/利用者さんが最期まで本人らしく生ききることができるよう、医療やケアの意思決定を支援するために行います。
本「ガイド」では各論として呼吸不全を取り上げていますが、ACPの考え方と進め方などに関しては、その他の疾患を有する患者さん/利用者さんの場合でもご参照頂くことができる内容となっておりますので、幅広い領域の医療・ケアの専門職の皆様にご覧いただければ幸いです。
東京大学 大学院人文社会系研究科 死生学・応用倫理センター上廣講座 会田薫子
2022年3月31日
※著作権に関するご注意
臨床現場においては、本「ACP支援ガイド」はご自由にダウンロードしてお使い頂くことができますが、本「ガイド」の著作権者は下記の研究班です。研究班の構成は本「ガイド」の巻末にも掲載されています。そのため、ご使用に際してはそのページまで合わせてご覧くださるようお願い致します。
また、学会発表や論文執筆等に関連してこの「ツール」を参照される場合は、研究倫理の一般的なルールに則って、引用されるようお願い致します。
構成メンバー
◎国立研究開発法人国立長寿医療研究センター | 在宅医療・地域医療連携推進部長 三浦久幸 |
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国立研究開発法人国立長寿医療研究センター | 理事長 荒井秀典 |
名古屋大学大学院医学系研究科 国際保健医療学・公衆衛生学 | 准教授 平川仁尚 |
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 緩和ケア診療部 | 西川満則 |
自治医科大学付属さいたま医療センター | 総合医学第一講座(呼吸器内科)教授 山口泰弘 |
東京ふれあい医療生活協同組合 梶原診療所研修・研究センター | センター長 平原佐斗司 |
東京大学医学部附属病院・医学系研究科 在宅医療学講座 | 特任准教授 山中 崇 |
東京大学大学院人文社会研究科 死生学・応用倫理センター上廣講座 | 特任教授 会田薫子 |
謝辞
本「ACP支援ガイド」に関しまして、下記の諸学会の先生方から貴重なご助言を頂戴しました。ここに深く感謝申し上げます。
外部委員(五十音順)
日本老年精神医学会推薦 | |
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粟田主一先生 | 東京都健康長寿医療センター研究所 認知症未来社会創造センター |
日本老年看護学会推薦 | |
石橋みゆき先生 | 千葉大学大学院看護学研究院 |
日本緩和医療学会推薦 | |
木澤義之先生 | 神戸大学医学部附属病院 緩和支持治療科 |
日本老年医学会推薦 | |
葛谷雅文先生 | 名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻 発育・加齢医学講座 地域在宅医療学・老年科学分野(老年内科) |
日本在宅医療連合学会推薦 | |
武知由佳子先生 | いきいきクリニック |
日本呼吸器学会推薦 | |
富井啓介先生 | 神戸市立医療センター中央市民病院 呼吸器内科 |
日本エンドオブライフケア学会推薦 | |
長江弘子先生 | 東京女子医科大学看護学部・大学院看護学研究科 |
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会推薦 | |
樋野恵子先生 | 順天堂大学医療看護学部成人看護学 |