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概要
こちらでは、当研究グループ「中央ユーラシアのイスラームと政治」のメンバー、研究課題、計画などについて紹介しております。当研究グループへのお問い合わせはこちらまでお願いいたします。

 メンバー
 研究課題
 第一次研究計画
 2010年度の研究計画
 2007年度の研究計画
 2008年度の研究計画
 2007年度の研究計画
 2006年度の研究計画

 メンバー

代表者
  • 小松久男(東京大学大学院人文社会系研究科・教授)
分担者
  • 新免康(中央大学文学部・教授)
  • Stephane A. Dudoignon(フランスCNRS: Paris)
  • Timur Dadabaev (筑波大学大学院人文社会科学研究科・准教授)
  • 濱本真実(東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センター・研究員)

 研究課題

中央アジア(東トルキスタンすなわち中国新疆を含む)とコーカサス、ヴォルガ・ウラル地方からなる中央ユーラシアは、一部を除くと1991年のソ連解体後にようやく研究が可能となった「新しい」イスラーム地域である。この地域は現在エネルギー資源やロシア、中国、中東の間に位置するその地政学的意味が注目を集めているが、地域それ自体に関する研究は世界的に見てもまだ始まったばかりであり、この地域の構造と動態に関する基礎研究の蓄積が不可欠である。

具体的なテーマとしては、帝政ロシア・ソ連および清朝・中国がこの地域のムスリム社会に独自の性格を付与したことに注目しつつ、政治権力とイスラーム、イスラームと社会秩序、民族の創成、そしてソ連末期からの再イスラーム化の潮流などを取り上げる。これらの問題は、中東など他地域との比較により、中央ユーラシアの特徴を明らかにすることができるだろう。中央ユーラシア地域研究の手法の開発を目標とし、成果としては「中央ユーラシア研究叢書」の刊行を予定している。

 第一次研究計画

研究グループでは次の5つのテーマを主要な研究課題として設定し、個々のテーマに即した研究会、国際研究セミナー、海外調査、国際シンポジウムなどを開催、実行し、その成果を順次発表する。
1.近現代中央アジアにおける再イスラーム化の展開
18世紀後半から現代までの中央アジアにおけるイスラーム復興運動をムスリム社会の再イスラーム化という視点から、ハンやアミールなどのムスリム政権、帝政ロシア、ソ連、そして独立後の共和国という当該時期の政治権力との相互関係を視野に収めて考察する。ここでは中央アジアに所在する未公刊史料や現代の多様な資料を活用し、現地の研究者と密接な連携をはかる。また、人類学的な手法によるイスラーム信仰実践の動態研究も視野に入れる。このテーマにおいては中東地域との連関と比較も重要な研究課題である。
2.20世紀初頭中央ユーラシアにおける定期刊行物の総合的研究
1905年のロシア革命から1917年のソビエト革命期にかけて、ロシア領内の中央ユーラシア地域では多数の新聞・雑誌が刊行され、それらはイスラーム改革思想や形成期のナショナリズムに関するムスリム知識人のフォーラムの役割を果たした。これらの定期刊行物は、1991年のソ連解体後その利用はきわめて容易になったが、それらを活用した研究はまだ端緒についたばかりである。この研究では、中東・ロシアを含む広大な知的空間の中で展開された議論を、比較と連関の観点から実証的に検討したい。
3.ウイグル人ナショナリストの思想と活動に関する総合的研究
第一段階として「20世紀前半期におけるウイグル人ナショナリスト・知識人の歴史叙述に関する基礎的研究」というテーマを設定し、彼らによる(東トルキスタンに関わる)主要な歴史書を対象として基礎的研究を行う。これには、写本に関する重要部分のテキスト確定、重要部分の翻訳・注、執筆状況も含む著者に関するデータの収集・整理、歴史叙述としての性格や著者の歴史認識に関する考究、史料価値の検討、などの作業を含む。次の段階として「ウイグル人ナショナリストの言説に関する総合的検討」という形で分析を行う。ここではロシア・ソ連領中央アジアをはじめとして他地域との比較研究も行う。
4.近現代フェルガナ地方の動態に関する総合的研究
現在、ウズベキスタン、タジキスタン、クルグズスタン3国の国境線が複雑に交わるフェルガナ地方(盆地)は、中央アジア近現代史を通してつねに政治・社会的変動の震源地の役割を果たし、またパミール高原を越えた東トルキスタンとの密接な関係でも知られている。18-19世紀のナクシュバンディー教団系シャイフたちの広域的な活動はその一例である。ここはまた現代におけるイスラーム復興運動の先進地域であり、現代中央アジアの動向を考える上でも無視することのできない地域である。この研究は、このようなフェルガナ地方の重要性に着目し、民間所蔵文書や聖者伝などの文献史料の分析に加えてフィールドワークやGIS(地理情報システム)研究の成果も取り入れながら、この地域の近現代史と社会変容を総合的に考察する。
5.ソ連時代の記憶プロジェクト
およそ70年にわたるソ連時代は、現代中央ユーラシア地域の基本構造が成立した重要な時代であり、現代中央ユーラシアの変容を見極める上でも重要な時代である。しかし、ソ連解体後、このソ連時代はともすれば否定的に扱われ、過去の政治的なイデオロギーに従ったソ連時代の研究をのぞくと、その研究は立ち後れていると言わざるをえない。一方、中央ユーラシアにはソ連時代を経験した多くの人々が存命しており、彼らの証言や記憶は重要な史料だが、それを記録することができるのは今しかない。本プロジェクトは、現地の研究者の協力を得て、可能な限り多様な人々に個別のインタビューを行い、これらの聞き取り調査の結果を整理、分析することを目的とする。それは、将来他の文献史料との比較検討によってソ連時代の中央ユーラシア史を再構成するための史料的な基盤を提供するはずである。

 2010年度の研究計画

 2009年度の研究計画

1. 国際会議の開催:
2009年9月5−7日、ウズベキスタン共和国タシュケント市において国際会議「中央アジア史研究の新地平」を、ウズベキスタン科学アカデミー東洋学研究所ならびにフランス中央アジア研究所(IFEAC)との共催で開催する。これは1991年のソ連解体以後、新たな展開をみている中央アジア史研究の最新成果を報告、討議する研究集会であり、日本のイニシアティブで開催する研究集会としては初の試みである。これには中央アジア諸国とフランス、日本の他、アメリカ、ドイツ、スイスなどからの報告者も予定されており、会議の成果は英語およびロシア語の論文集として刊行を計画している。

2. 国際共同研究の深化と拡大:
中央ユーラシア研究を遂行する上で現地の研究者との共同研究は不可欠であり、また重要な目標でもある。過去3年間の活動で培ってきたウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、ロシア、トルコなどの研究者あるいは研究機関との共同研究をさらに深化、拡大することを第二の目標とする。

3. Central Eurasian Research Series の刊行:
昨年度までに刊行した同シリーズの創刊号と2号は、幸いに内外の研究者から高い評価を受けることができた。今年度は、日本と海外とのバランスを取りながら、重要な史料の刊行を質量ともに充実させていきたい。

 2008年度の研究計画

 2007年度の研究計画

全体に関わることとしては、まず12月に中央アジア地域研究国際ワークショップを開催する。これは現在中央アジア地域研究において優れた成果を上げている研究者と若手の研究者とが、現在進行中の研究について報告しあい、方法論と今後の課題、さらには共同研究の可能性を検討する場を作ることを目的としている。これは、今年度の全体集会を兼ねている。ついで2008年1月には、近現代中央アジアにおけるイスラームと政治の分野で注目すべき研究を行っている Anke von K?gelgen教授(ベルン大学)を招聘し、講演会のほか、若手研究者を対象とする研究セミナーを開催する。また、最新の研究成果を報告する場としての中央ユーラシア研究会を年度内に5回程度開催する。

研究テーマ1「近現代中央アジアにおける再イスラーム化の展開」については、ウズベキスタン東洋学研究所のB.ババジャノフ研究員との共同研究「西トルキスタンにおけるイスラームと政治:19世紀−21世紀初頭」を継続するとともに、人類学的な手法によるイスラーム信仰実践の動態研究に着手する。今年度はクルグズスタンとウズベキスタンでの現地調査を予定している。研究テーマ2「20世紀初頭中央ユーラシアにおける定期刊行物の総合的研究」に関しては、現地における資料収集に努めるとともに、デジタル化された新聞・雑誌資料の活用を推進する。研究テーマ3「ウイグル人ナショナリストの思想と活動に関する総合的研究」については、トルコに亡命したウイグル知識人の残した資料のほか、新疆ウイグル自治区とカザフスタンに所在する関係資料の調査を行う。また、2006年度に開催した国際ワークショップの成果に基づく英文論文集の編集を進める。研究テーマ4「近現代フェルガナ地方の動態に関する総合的研究」については、ウズベキスタンのフェルガナ地方とタジキスタンで民間所蔵文書をはじめとする史料の調査・収集を行い、またフランス中央アジア研究所(IFEAC)が、9月にタシケントで開催する国際研究集会"Pilgrimages in Central Asia and between Central Asia and Hijaz"に参加を予定している。研究テーマ5「ソ連時代の記憶プロジェクト」については、これまでにウズベキスタンで収集したインタビュー・データの整理と分析を進めるとともに、方法論の鍛錬に努めたい。2007年度内には最初の成果として、ティムール・ダダバエフ『社会主義後のウズベキスタン−変わる国と人々の揺れる心−』(仮題)の刊行を予定している。また、コーカサス地域での可能性を探るために予備的な調査を実施する。

以上の他、日本における中央アジア史研究の国際的な発信を実現するためにインディアナ大学内陸アジア研究所(Research Institute for Inner Asian Studies)との共同によるTranslation Projectを始動する。また、Central Asian Research Series で刊行予定の史料については、編集作業を開始する。

  2006年度の研究計画

研究グループ1の初年度は、まず中央ユーラシア研究に関心をもつ国内の研究者・大学院生に広く本プロジェクトへの参加をよびかけ、7月中に全体集会を開催して研究協力者を募る。研究協力者が確定したところで、研究テーマごとの分担を決めるとともに、研究計画の細部を策定し、研究会を始動する。研究会やセミナーの開催にあたっては、北海道大学スラブ研究センターが推進している中央ユーラシア研究プロジェクトなどとの連携も考える。また、海外の研究者に対しては、9月にデトロイトで開催予定の第5回 Central Eurasian Studies Society 年次大会などの機会を利用して、本プロジェクトへの参加と協力をよびかける。

研究テーマ1「近現代中央アジアにおける再イスラーム化の展開」と研究テーマ5「ソ連時代の記憶プロジェクト」については、とくに現地の研究者との緊密な協力と連携を必要とするため、初年度から現地に入り、共同研究の打ち合わせを行うとともに現地調査に着手する。テーマ1に関しては、この分野の第一人者、ウズベキスタン東洋学研究所のB.ババジャノフ研究員とともに研究・出版計画を策定する。テーマ5に関しては、同じくウズベキスタンの世界経済外交大学に所属する研究者と共同して、インタビューの内容と方法、対象者の民族、地域、性別、職業などを含む具体的な計画を吟味し、予備調査の一環としてサマルカンドおよびブハラ地方で現地調査を行う。タジキスタンについては今回は相手先研究者の特定を第一の課題とする。

研究テーマ2に関しては、国内に所在する定期刊行物の調査を行い、史料の蓄積状況を確認する。とりわけ、島根県立大学には1935-1945年間に満州国の奉天で刊行されたタタール語の週刊新聞『民族旗Milli Bayrak』のほぼ完全なコレクションが存在することが確認されている。これは、ロシア革命後ここに成立した亡命タタール・ムスリム・コミュニティの動向のみならず、彼らのナショナリズムとイスラームとの関係、あるいは日本の対ムスリム政策を検討する上でも貴重な第一次史料であり、タタール人研究者と協力して調査と分析を開始したい。

以上に加えて拠点事務局の機能と設備を整え、研究班のウェブサイトの枠組みを構築する。 ウェブサイトには英文セクションを開設し、これを通して海外の研究者に向けて研究情報を発信する。
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