発刊:2018年3月31日
2017年度上廣死生学・応用倫理講座の研究成果の社会還元ないし社会貢献に該当する活動をここに報告する。2017年度は当講座第三期(2017年度〜2021年度)の1年目にあたる。
《医療・介護従事者のための死生学》基礎コースは、東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センターを実施母体とし、同センター上廣死生学・応用倫理講座が担当して行った。加えて、前期に引き続き同センターの池澤優センター長(兼担)、堀江宗正准教授、そして上廣講座総括監督者である榊原哲也教授(兼担)に協力教員として参画していただき、活動を進めた。
同基礎コースの中核の研修は夏季セミナー、冬季セミナーおよび春季セミナーである。夏季セミナーは2017年9月3日に東京大学にて実施し、同コースの担当教員が死生学と臨床死生学のコア講義および死生学と臨床死生学のトピック講義を行い、また、参加者が学んだことを活かすために、実際の事例の臨床死生学的問題をグループワークでディスカッションする事例検討も行った。夏季セミナーにおける事例検討は今回が初めてであった。参加者は医療・介護に関わる多職種に従事する専門職者を中心に約250名であった。
12月3日には大阪にて冬季セミナーを行った。同セミナーでは医療と介護に関してより良い意思決定を支援するための臨床倫理の研修を実施し、事例検討を行い、その成果を全体会で共有した。冬季のセミナーでは、約120名の医療・介護従事者にご参加頂いた。
また、春季セミナーとして、2018年3月18日に、「“引き算”の医療 ― 本当の手厚さへの模索:“足し算”と長寿時代のエンドオブライフ・ケア」シンポジウムを開催し、延命医療の終了および慢性疾患領域における緩和ケアの充実について、全国から参加した約650名の医療・介護従事者および市民とともに考え、明日の臨床を展望した。
さらに、同基礎コースの一環として、本学にて「臨床死生学・倫理学研究会」を1年間に11回開催し、延べ約1,000名の参加者とともに幅広い死生の課題について討論した。
この他に同コースの科目ともなるものとして、Oxford大学Uehiro Centre for Practical Ethicsの哲学研究者Joshua Shepherd博士の講演会を8月31日に開催し、日英の若手の行為論研究者間における討論の機会を得た。
上記に並んで上廣講座の主要な研究・実践活動は《臨床倫理セミナー》である。同セミナーでは本講座の教員が全国各地に赴き、臨床倫理の基本と事例検討法に関する講義を行い、事例検討の成果を共有しあうなど、各地域の医療・介護従事者と協働しつつ臨床倫理的な文化の創成に努めている。今年度は、札幌(2回)、盛岡、仙台、諏訪、佐久、金沢、大阪(3回)、東温、久留米で開催し、全国で合計約2,130名にご参加頂いた。
以上の各活動と関連する諸活動について、概要をここに報告する。
会田薫子 記(上廣死生学・応用倫理講座 特任教授 / リカレント教育担当)