趣旨と各講義の概要 | 講師プロフィール | 司会者プロフィール
コーディネーター: 沼野 充義(第9回ICCEES幕張世界大会組織委員長・東京大学教授)+野中 進(埼玉大学教授)
趣旨と各講義の概要
この【シリーズ2】は、ロシア東欧の文化と芸術に関する総合的な入門講座です。日本でも人気の高いロシアの文学・音楽・美術・バレエ・映画などを中心に、ロシアの歴史的背景や食文化も紹介し、さらにウクライナ・ポーランド・旧ユーゴスラヴィアなどのロシア以外のスラヴ諸国の文化・芸術のありかたも視野に入れ、講師陣にはそれぞれのテーマに関する第一線の専門家を揃えました。多様な分野をカバーするために、毎回2名の講師が登壇するという大変欲張った企画です(さらに最終回はシンポジウム形式で3名の講師が講義をします)。ロシア東欧の文化や芸術に関心をお持ちの方にとってはまたとない機会となることと思います。
講師1:望月 哲男(北海道大学特任教授・日本ロシア文学会会長)
ドストエフスキー『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフも、トルストイ『アンナ・カレーニナ』の主人公リョーヴィンも、それぞれ自分のいる世界を空間的・時間的なイメージとして捉え、その感覚の中で現在や未来について考えています。彼らはどんな風景の中で考え、どんな時間感覚にとらわれているのか。そんな観点から、ロシア文学と我々の世界との関係について考えてみたいと思います。
講師2:亀山 郁夫(名古屋外国語大学学長)
チャイコフスキーを筆頭に、ムソルグスキー、ラフマニノフ、ストラヴィンスキー、プロコフィエフ、そしてショスタコーヴィチ ——ロシアの作曲家たちはなぜかくも私たちの心を揺さぶるのか? エクスタシー(恍惚)とノスタルジー(郷愁)に満ちた、ロシア音楽の秘密に迫ります。
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講師1:鴻野 わか菜(千葉大学准教授)
ロシア現代美術の魅力について、多数のスライドと共に紹介します。ソ連崩壊後の文化の状況の変化や、モスクワ、ペテルブルクの美術館・ギャラリーについてもお話しします。
講師2:坂庭 淳史(早稲田大学准教授)
「詩の国」とも言われているロシア —この講座では現在でも人々に愛されている詩をいくつか紹介します。美しく、豊かに表現された自然、愛、自由、音の響きやリズムについて解説しながら、ロシアの詩の魅力に迫っていきます。
講師1:村山 久美子(舞踊史・舞踊評論家)
『白鳥の湖』ほか数々のバレエの名作を生み、スーパースターを輩出し続けているロシア・バレエは、長年、世界の賞賛の的であり続けています。そのようなロシア・バレエの歴史と現状のお話で、魅力を十分にお伝えします。
講師2:佐藤 千登勢(法政大学准教授)
ソ連・ロシア映画の伝統は、緻密なモンタージュや圧倒的な映像美、深い象徴性によって支えられてきたと言っても過言ではないでしょう。このたびは、『パパって、何?』、『父、帰る』、『夏の終止符』のソ連崩壊後に制作された三作品を通し、「父殺し」のテーマの変遷についてご紹介します。
講師1:池田 嘉郎(東京大学准教授)
戦争や革命の続く20世紀のロシアで、人々はどのような暮らしを送っていたのだろう。また権力者と人々の関係はどのようなものだったのだろうか。スターリン時代を中心に考えてみよう。
講師2:沼野 恭子(東京外国語大学教授)
ロシアの食文化の歴史を絵画や文学や写真によってたどりながら、西欧化による貴族の食と農民の食の分離、ロシア古来の料理と外来の料理、お茶とサモワールの意義、ソ連時代と現代の食生活などについてご紹介します。
講師1:V・スロヴェイ(翻訳家・通訳)
ウクライナの伝統的な模様に組み込まれたウクライナ人の文化と世界観、特にイースターエッグ(ピサンキ)や刺繍の色、模様に込められた意味をご紹介します。
講師2:松尾 梨沙(東京大学大学院博士課程)
世界中で愛される作曲家ショパン。一方、あまり知られていない彼の祖国ポーランドの音楽史。ショパン以降現代に至るまで、ポーランドの作曲家たちは彼とどう向き合ったのか。楽曲分析を交えて検証します。
講師3:亀田 真澄(東京大学助教)
社会主義ユーゴスラヴィアは自主管理社会主義に基づき、ソ連陣営と西側陣営のあいだでハイブリッドな文化を発信していました。本講義では、そんな時代のことを懐かしむ、「ユーゴノスタルジー」の様々なあり方についてご紹介します。
講師プロフィール
望月 哲男(もちづき てつお):北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター特任教授、日本ロシア文学会会長。ロシア文学。編著書『創像都市ペテルブルグ——歴史・科学・文化』(北海道大学出版会)、訳書トルストイ『アンナ・カレーニナ』(光文社)、ドストエフスキー『白痴』(河出書房新社)など多数。2010年、ロシア文学翻訳賞をロシア科学アカデミーより授与される。
亀山 郁夫(かめやま いくお):東京外国語大学学長を経て、現在、名古屋外国語大学学長。ロシア文学・芸術・音楽。著書『甦るフレーブニコフ』(平凡社)、『磔のロシア』(岩波書店、大佛次郎賞)、『謎解き「悪霊」』(新潮社、読売文学賞など。訳書ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』(光文社)など多数。2008年、ロシア政府よりプーシキンメダルを授与される。
鴻野 わか菜(こうの わかな):千葉大学文学部准教授。ロシア文学・芸術。特にカバコフなどの現代美術に詳しく、日本での展覧会組織にも貢献してきた。訳書にイリヤ&エミリア・カバコフ『プロジェクト宮殿』(共訳)、レオニート・チシコフ『かぜをひいたおつきさま』他。
池田 嘉郎(いけだ よしろう):東京大学大学院人文社会系研究科准教授。専門は近現代ロシア史。主な仕事は、著書『革命ロシアの共和国とネイション』(山川出版社)、訳書シュテュルマー『プーチンと甦るロシア』(白水社)、編著『第一次世界大戦と帝国の遺産』(山川出版社)。
司会者プロフィール