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千葉市民教養講座 【シリーズ2】ロシア東欧文化と芸術

【シリーズ1】今後のユーラシア動向

コーディネーター:下斗米 伸夫(第9回ICCEES幕張世界大会組織委員長・法政大学教授)


 

趣旨と各講義の概要

本市民教養講座は、本年8月3日から一週間にわたって幕張メッセと神田外語大学を舞台として行われる第九回ICCEES(国際東欧・中欧研究協議会)幕張世界大会を行うに際してご協力いただいている千葉市や千葉商工会議所、とりわけ千葉市民の皆さんにこの大会が45年の組織の歴史で初めてアジア・日本の幕張で行われることの意義をご理解していただくための市民向け公開講座です。
特に水曜夜の四回連続講座は、組織委員会事務局長の松里公孝教授(東京大学)を始め、最後の回を担当するアジア経済研究所の岡奈津子氏など組織委員会メンバーだけでなく、朝日新聞の大野正美氏や蓮見雄教授(立正大学)など、本大会にご理解ご協力いただいている外部の専門家の方にもご参加いただき、現在のユーラシアで起きている様々な事象をわかりやすくご解説いただきます。
松里教授は、ユーラシア入門的な話を危機のウクライナを中心に予定され、二回目の大野元特派員は30年にならんとするユーラシア取材の様々なエピソードからこの変化の時代を読み解いていただきます。世界は今、アジアの時代、そしてユーラシアの時代になってきましたが、その割にわかりにくい問題への日本を代表する専門家の集中講座、ふるってご参加ください。(文責・下斗米 伸夫)

 

 

第1回】ウクライナ動乱後のユーラシア——秩序回復は可能か?
松里 公孝(東京大学法学部教授)
日時:5/20(水)18時30分〜20時30分(開場18時)

ウクライナ内戦の犠牲者は3万人を超えたといわれる。これは、1979—89年のアフガン戦争でソ連がこうむった犠牲者数役1万人4千人を倍以上超える数である。
本講義は、ソ連崩壊後の20余年間に先送りされてきた諸問題がウクライナ内戦に集約的に現れたと考える。逆に言えば、この内戦を考察することは、旧ソ連圏全体の秩序維持・回復への糸口をもたらすかもしれない。以下のような論点が、単にウクライナだけでなく旧ソ連圏全体に影を落としている。

1. ソ連のような巨大国家が解体した場合に、どうやってその継承国家を承認し、それら国家間の国境線を画定するのか。これは、1990年代前半の非承認国家(アブハジア、カラバフなど)をめぐる内戦の際にすでに問われた問題である。
2. 国際社会は、1990年代前半の内戦を、単に旧ソ連諸国の内部紛争とみなしていた。2003—2004年に状況は著しく変わり、2008年の南オセチア紛争、今回のウクライナ内戦に見られるように、旧ソ連圏・環黒海地域の地域紛争は、欧米・対・ロシアの地政学的競争の文脈で解釈されるようになった。これはどこまで正しい見方か。また、「地域紛争の代理戦争化」は、紛争を拡大する方向で作用しているのではないか。
3. クリミアやドネツクの地方政権は、ロシアの傀儡なのか。また、ウクライナに介入しているのはロシアだけなのか。G7はロシアを制裁するだけでなく、これら非承認国家・地域の住民を説得すべきではないか。

本講義では、こうした問題をわかりやすく解説したい。

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第2回】ユーラシア取材30年—旧ソ連の激動と日ロ関係を追い続けて
大野 正美(朝日新聞機動特派員)
日時:5/27(水)18時30分〜20時30分(開場18時)

朝日新聞の記者として1986年に当時のソ連第二の都市レニングラード(現サンクトペテルブルク)に留学していらい、モスクワ支局の特派員として3度、さらに論説委員などとして、足かけ30年にわたってロシアと旧ソ連のできごとを追いかけてきた。
その間、ゴルバチョフによるソ連共産党の一党独裁放棄と大統領制の導入、ソ連保守派のクーデター未遂、ソ連そのものの崩壊、新生ロシアの経済危機、チェチェン紛争、エリツィンの引退とプーチンの登場、メドベージェフとのタンデム(二頭)体制とグルジア紛争、プーチンの大統領復帰、さらには現在進行形のウクライナ危機まで、世界を揺るがしてきた様々な問題を現場で取材した。
身近に見てきたゴルバチョフ、エリツィン、プーチンといったそれぞれの時代を主導した指導者たち、さらには彼らを助け、時には対抗したシェワルナゼ、プリマコフ、ネムツォフといった名脇役たちは、どんな個性を持ち、それがどんな形で現実の政策の中に反映されていったのか。講義ではまず、こうした人物たちについて具体的な例にも触れつつ、この30年の歩みをわかりやすく振り返りたい。
さらにロシアと世界との関係を、安全保障や経済、エネルギー協力の分野を中心に、取材の経験を織り交ぜながら読み解くことを試みる。
とりわけ、ウクライナ危機の後でプーチンの対外政策は、米欧に対してだけでなく、世界的な全方向的な形で大きく展望しつつある。そして、そのことは日本とロシアの関係についてどのような影響を及ぼしていくのか。プーチンの訪日問題や北方領土交渉の行方も含め、みなさんと一緒に考えて行きたい。

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第3回】ウクライナ危機とロシア経済の展望——ロシア・EU関係の変化とロシアの東方シフト
蓮見 雄(立正大学経済学部教授)
日時:6/3(水)18時30分〜20時30分(開場18時)

ロシアとEUは、経済的に見れば相互依存関係にある。今でも、EUは、石油、天然ガスの輸入の3割前後をロシアに依存しつつ、ロシア市場に機械工業製品を輸出し、他方でロシアは、石油、天然ガスの輸出の6割以上をEU市場に依存している。この関係は、ソ連時代から40年以上にわたり安定していた。
しかし、2006年、09年のロシア・ウクライナのガスパイプライン紛争、そしてウクライナ危機は、EUとロシアの政治・経済関係に暗い影を落としている。

Q1. ウクライナ問題は、ロシア経済にどのような影響を与えているのだろうか。
Q2. ロシアとEUの政治・経済関係はどうなるだろうか。
Q3. ロシア—EU 関係の変化は、日本にとってどんな意味を持つのだろうか。

これらについて、以下の点に留意しながらお話しする。

(1) ウクライナ危機は、ロシアが一方的に介入したという単純な話ではない。少なくとも、この背景には、(a)ウクライナの政治・経済不安定、(b)独立後、ウクライナがEU・ロシア間のガスパイプラインをほぼ独占してきたこと、(c)EUの対ウクライナ政策の失敗、(d)EUのエネルギー市場統合、があることを理解しておく必要がある。
(2) 欧米の対ロシア経済制裁とロシアの経済制裁の応酬、これに加えて原油価格の急落から、ロシア経済の破綻、プーチン大統領の終わりといったイメージが拡がっている。だが、こうした言説は、概してロシア経済に関する基礎的なデータを踏まえておらず、冷静な議論を妨げている。
(3) ウクライナ危機は、ロシアが進めてきた「東方シフト」というアジア市場重視の政策を加速させており、例えば中ロ間で天然ガス供給の長期契約(30年)が締結された。そこで問われているのは、日本の選択である。

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第4回】新興国カザフスタンの光と影——贈収賄の蔓延と人々の暮らし
岡 奈津子(日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員)
日時:6/10(水)18時30分〜20時30分(開場18時)

中央アジアの資源大国カザフスタンは近年、目覚ましい発展を遂げている。ソ連解体後、1990年代には深刻な経済的・社会的混乱に直面したが、21世紀に入ってからは高成長を続け、その一人当たり国民総所得は1万ドルを突破した。こうした経済発展の恩恵を全国民が等しく享受しているとはいえないものの、生活水準が全体として向上したのは確かだ。
本講義がとりあげるのは、その影で深刻化している贈収賄である。賄賂のやり取りはソ連時代にもあったが、計画経済の下ではカネよりもコネが重要であり、なかでも不足する商品やサービスを知人・友人のつてで入手するのは、ごくありふれた行為であった。しかし市場経済導入後は、かつてコネが担っていたことの多くがカネで解決できるようになっている。それは単に物不足が解消され、店頭に豊富な商品が並ぶようになったというだけではない。交通違反の見逃し、公的機関や民間企業への就職、保育園への入園や学校・大学への入学、学業成績、裁判所での有利な判決、公費負担の治療など、ありとあらゆる「サービス」が現金と引き換えに取引されているのである。カネさえ使えば何事もすばやく達成できるという現実は、中でも若い世代の価値観の形成に大きな影響を与えている。本講座では、カザフスタンの人々が日常生活あるいは仕事上の問題を非公式に解決している実態を、現地でのインタビューと独自の世論調査を用いて紹介し、なぜ賄賂が例外ではなく多くの人々が熟知し実践する「ルール」となったのか、その理由と背景を解説する。

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