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平成20(2008)年度 文化資源学講義・演習

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各コース共通科目

特殊研究

日本演劇の歴史(1)
古井戸 秀夫 2単位 火3
 日本の演劇・舞踊は、何を描こうとしているのでしょうか。それを人々はどのように受け止めてきたのでしょうか。神楽や舞楽をはじめとする古代の演劇と舞踊、能に代表される中世の演劇と舞踊、それぞれの演劇や舞踊の誕生と伝承を振り返ることで、日本演劇の持つ普遍性と、それぞれの演劇・舞踊の特殊性について考えてみることになるでしょう。
 参考文献:河竹繁俊『概説日本演劇史』(岩波書店)
日本演劇の歴史(2):近世・近代・現代の演劇と舞踊
古井戸 秀夫 2単位 火3
 演劇の歴史は、神々を主人公とする古代から、中世の英雄を経て、近世には等身大の人間の喜びや悲しみを描くようになります。男と女の恋、親子の恩愛、義理と人情など、人間の織り成すドラマはどのように表現されてきたのでしょう。モダニズムの洗練からポストモダンまで、日本の演劇や舞踊が捜し求めて来た表現について考えることになるでしょう。
 参考文献:河竹繁俊『概説日本演劇史』(岩波書店)
展示論08〜展覧会評価
木下 直之 2単位 火4
 博物館/美術館が社会に対してどのような有効性を有しているのかを考えることが、この授業の大きな目標である。そのためには、活動歴の検証と現状分析が欠かせない。博物館/美術館における「展示」はその活動の1部ではあるが、本質に関わる。博物館/美術館は、自然物にせよ人工物にせよ、それらを不特定多数の人間に公開することから始まったからだ。しかし、そこには関与する人間の解釈がかならず加わる以上、展示はつねに開かれた可能性とともに限界を抱え込む。この講義では、東京都内で開催される3つの「展示」(博物館常設展示、美術館常設展示、美術館特別展示)をケーススタディにし、それぞれに3回の講義を通し、受講生全員で分析を進める。各展示の担当者をゲストに迎えることも予定している。
陶磁器と日本文化
ニコル・クリッジ・ルマニエール 2単位 月4
 This course will focus on 400 years of porcelain production in Japan from the early 17th century to the present day. Japanese porcelain production began quite late for East Asia in 1610, centuries after China, Korea and Vietnam. Yet within five decades Japanese porcelain dominated for a number of years the international markets, and adorned banquets from the Shogun to merchant households. The sudden development of porcelain in Japan is intimately tied to the economic realities of certain domains, international trade and the art historical aesthetic of the Edo period. Two distinct currents can be seen in Edo and Meiji porcelain that of wares made for the domestic market and those for the export market. The picture becomes more complicated in the end of the Meiji era to the present day. This course will examine the complexities and the reality of Japanese porcelain in the current day and in historical perspective. The archaeological uncovered porcelains from the Hongo Tokyo University campus will one focus of this course. There will be a study trip to the Arita area as part of the course. The course will be given in Japanese.(授業は日本語で行います)
展覧会の諸問題
村上 博哉(国立西洋美術館) 夏冬 2単位 金2(隔週)
  英文テキスト数本を講読しながら、美術展の歴史、作品の公開と保存、キュレイターの役割、展示の空間、展覧会の評価などの問題について考察する。
 参考書:David Dean, Museum Exhibition: Theory and Practice, Routledge, London andNew York, 1994; Reesa Greenberg et al. (eds.), Thinking about Exhibitions, Routledge, London and New York, 1996; Paula Marincola (ed.), What Makes a Great Exhibition? Philadelphia Exhibitions Initiative, 2006. など。

演習

文化資源学フォーラムの企画と実践
木下・小林・古井戸 夏冬2単位 木2(隔週)
 フォーラムの企画から実践まですべての作業を学生が中心に行う実習であり、文化資源学修士課程1年生の必修とする。博士課程の学生の協力を得て、夏休みまでに企画会議を重ね、フォーラムのテーマと構成を決定し、夏休みから秋にかけて、テーマに関する理解を深めるための研究会・交渉・広報などの準備を行い、年度内に公開フォーラムを開催する。そのあとは報告書にまとめる。昨年度は、12月14日に「1000円パトロンの時代」を開催した。
文化資源学の原点
木下 直之 夏冬 4単位 木5・6(隔週)
 文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。
近代日本の文化政策〜城下町の文化資源
木下 直之 夏冬 4単位 金5
 城郭の評価を基軸に、近代日本の文化を捉えうることを、昨年、拙著『わたしの城下町』(筑摩書房)で示した。明治維新によって、ほとんど無価値(無用の長物)と化し、その多くは破却の憂き目を見た城郭が、いつどのような基準から再び評価を与えられ、今日なお存在しているのか。その評価の歴史には紆余曲折があり、決して一直線ではない。夏学期は、その推移を丹念に追いかけてみる。冬学期は、現代の城下町が有する文化資源を検証する。たとえば「築城400年」という記念事業に、いったいどのような意義があるのか。参加者は少なくともひとつの城下町を担当し、調査し、発表する。7月末には、大阪天神祭を見学する予定。
日本を展示する
ニコル・クリッジ・ルマニエール 2単位 火2
 This Course examines the fundamentals of creating a Japanese art exhibition for international audiences. Emphasis will be placed on how the exhibition attempts to reach out to an international audience and on the methods of display and didactics. There are three components to this course, the first being a critique of current exhibitions of Japanese art in the Kanto and Kansai area. In particular, the Yakushiji exhibition at the Tokyo National Museum, the Kawanabe Kyosai exhibition at the Kyoto National Museum and the Yosa Buson exhibition at the Miho Museum in Shiga are exhibitions that will analysed in depth. The second component is to work on the currently proposed Bunkacho sponsored Dogu (Jomon figurines) exhibition for the British Museum planned for Autumn 2009. The third component focuses on how to present ideas for an exhibition to an international audience. To that end, a sample exhibition prospectus and a 20-minute exhibition plan representation both in English will be part of the course. The class will work together to construct these English documents and learn how to present with clarity specific ideas in English. The course will be given in Japanese with English exercises.(授業は日本語で行います)
美術館における教育研究
寺島洋子(国立西洋美術館)・村上博哉(国立西洋美術館) 夏冬 4単位 集中
 2008年度の教育普及インターンシップ・プログラムは、主に当館の建物に関する資料収集と整理を行ない、あわせて建築物を文化財として活用(教育・普及)している国内組織の事例調査を行う。「国立西洋美術館インターンシップ募集のお知らせ」(http://www.nmwa.go.jp/jp/education/internship.html)にしたがってあらかじめ応募し、採用された場合に単位として認定する。応募締切:2008年2月29日(金)

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文化経営学コース

特殊研究

博物館学T
清水 実(三井記念美術館) 2単位 月4
 古美術品を所蔵する美術館における資料の保存管理・調査研究・展示公開・教育普及といった博物館の基本的な業務について、学芸員として長年携わってきた現場の経験から私なりに培ってきた方法論をトータルに講義する。講義は本務の三井記念美術館を事例の中心に据え、実際に扱ってきた書画・茶道具・能面・調度品・刀剣など日本・東洋の古美術品についてPCスライドでヴィジュアルにかつ具体的に紹介する。また、三井文庫別館という小さな博物館類似施設が、都心の再開発に取り込まれ、重要文化財の建物の中に新しい美術館として再出発するという経験のなかから学んだ多くの事がら、その過程で突きつけられる様々な問題など、さらに新美術館が開館して二年半余り、この間における取り組みについて、なかでも教育普及活動について、博物館・美術館の現状と課題、そのあるべき姿などについて、学芸員としての一経験者が「今考えていること」という切り口で講義をする。
博物館学U
金子 啓明(東京国立博物館) 2単位 金3
 現在、日本の博物館・美術館が置かれる状況は、2001年度からの国立機関の独立行政法人化以後、政府の行政指導による市場化テスト導入や民営化の是非をめぐる議論、地方自治体の公立博物館・美術館における指定管理者制度の導入等々、さまざな課題に直面している。また、独法の博物館・美術館では、年度ごとの予算縮小や人員の削減が定率的に定められるという厳しいものとなっている。こうした状況の下、博物館・美術館はそもそもなぜ必要なのか、何をめざすのかという根本的な問題も改めて問われている。本講義では、私の所属する東京国立博物館の独法化以後の問題点を指摘し、博物館の未来像についても触れたいと思う。
文化政策の実践
小林 真理 2単位 火3
 「文化政策」という言葉を発したときに、そのイメージするところが多種多様であることに驚かされることがあります。また、時代によってその意味は異なります。この授業では、戦後の日本において、文化施策と語られる施策がどのようなものであったか、文化政策と語られるようになった転換点は何か、文化政策は教育政策同様、そもそも所与の価値として規定できるものなのか、所与の価値としての転換はどのように起こるのかといった原理的な問題を捉え返しつつ、現実具体的に、公共政策の一環として文化政策を行うとすると、国や地方自治体でどのような手続を経なければならないのか。これらについて講義を行うとともに、毎回学生とのディスカッションを通じて検討します。
芸術支援学
小林 真理 2単位 火3
 いやしくも人文社会系研究科に入学してきた者であれば、現代社会における芸術文化の重要性やその意味を青臭く、真正面から議論することが憚られるかもしれない。しかしながら、もし限られた資源を配分するという条件の下で行わなければならない「政策」を、具体的に行うとすれば、「芸術」を支援・振興することの意味や重要性を語らなくてはならない。個人、国家、企業、現代行政は、それをどのように根拠づけてきたのか、また明確にできなかったのか。現代の文化政策において、芸術支援を政策の一部に位置づけるにはどのような根拠が必要なのか。またその根拠は、真の意味での芸術支援となってきたのかどうかについて検討する。
ミュージアム・テクノロジー
西野 嘉章(総合研究博物館)・藤尾 直史(総合研究博物館) 夏冬 4単位 金5
 平成20年度に総合研究博物館で実施予定の各種ミュージアム事業のいずれかのプロジェクトに参加し、そこでの 具体的な体験を通じて学芸員、文化事業担当者としての専門的なスキルを修得する。なかで小石川分館を拠点とするデジタルアーカイヴ・プロジェクトについては、藤尾直史が中心となり、それを指導する。事業それぞれのプロジェクトの活動内容と研究成果は、出版物(図録、報告書、 目録など)のかたちで公刊される。初回に各プロジェクトへの振り分けを行うが、希望者多数の場合には、受講者の制限を行う。
アートNPOと公共経営
曽田 修司(跡見学園女子大学) 2単位 金4
 全国各地で活動しているアートNPOの中で特に注目される事例について、その具体的実践を学び、国や地方自治体の文化政策や企業メセナ等との関連においてアートNPOの社会的役割と意義、今後に向けての課題を考える。とりわけ、アートの変化や公共概念の問い直し、官民の役割分担の見直し、NPOの活動基盤の強化のための諸課題(税制改革、公的支援システムの充実、NPOファンド、雇用促進政策、等)とそれらのアートNPOへの適用可能性について考える。
文化と著作権
福井 健策(弁護士・ニューヨーク州弁護士) 2単位 水2
 「知財立国」のかけ声のもと、著作権にはかつてない程の注目が集まっている。「盗作」「エンタ・ビジネス」「You Tube」「ウィニー」など、それがメディアを賑わすことはまったく日常的な風景となった。一方では、「過剰な権利の主張は文化を殺す」という危機感を表明する言説も確実に増えている。講義では、文化と創造を守るための「壮大な社会実験」である著作権制度が、現在どのような形をとっているのか、実践的な知識をレクチャーする。あわせて、さまざまな作品や最近の事件をレビューしながら、現場を動かす創造と協働のメカニズムから立ち上がる、「やわらかい法律」としての著作権の未来像を考える。
 参考文献:福井健策「著作権とは何か 文化と創造のゆくえ」(集英社新書、2005年)ほか、講義の最初に紹介

演習

戦後日本の文化政策を検証する
小林 真理 夏冬 4単位 水4
 日本の地方自治体で文化行政が始まってすでに30年以上を経過しました。その実践の取り組みも、いまや文化行政から文化政策構想・実現へと変化しています。「文化」というものの特殊性に留意しながら、文化政策実現のための計画を策定するというのは、どのような問題が内在しているのか。それを政策として実現していくためにはどのような課題が生ずることになるのか。この演習では、具体的に、東京都内のある地方自治体との共同調査研究を通じて芸術文化振興計画策定を実際に行います。なお、今年度からでも履修できますが、07年度に文化経営学特殊研究「文化政策の実践」を履修していない者は、今年度併行して履修してください。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※博士課程のみ

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形態資料学コース

特殊研究

芸術と場所の記憶
渡辺 裕 2単位 水4
 大著『記憶の場』の刊行以来,「記憶」は人文学研究全体にかかわる大きなテーマになっている。われわれが住んでいる場所やその歴史が何らかの形で表象され,それが伝承されてゆく過程でも,それを媒介し,記憶として定着させてゆくための様々な装置が作動しており,芸術作品もその中で不可欠の役割を果たしてきた。この講義では,紀行文学,風景画など,特定の土地と結びつく作品や,歌枕,音楽散歩,ロケ地めぐりといったもののあり方にも目を向け,それらが人々の空間表象やアイデンティティ意識の形成にかかわるメカニズムを考えたい。
「芸術作品」とその保存・伝承・活用
渡辺 裕 2単位 水4
 「芸術作品」といえば,その本来のあり方を損なうことなく「保存」することを是と考えるのが普通だろう。だが他方で,歴史的過去や異文化に属するような「作品」を自分たちにとってアクチュアルな意味をもつような形で「活用」したいという欲求もつねにあり,それを両立させることはほとんど不可能にみえる。だがそれが二律背反にみえるのは,われわれが特定の芸術観に囚われて思考停止に陥っているからではないか。芸術作品をめぐる言説や実践の歴史を再検証することを通して,「保存」や「活用」をめぐる問題系自体を問い直してみたい。
近代日本美術史
木下 直之 2単位 集中
 日本美術史および近代日本美術史がどのように語られてきたかを理解したうえで、高橋由一と河鍋暁斎のふたりの画家に注目し、従来の美術史ではとらえきれない問題を明らかにする。美術と社会の関係を考えることになるだろう。9月第4週に開講、うち1日は河鍋暁斎記念美術館への見学会を予定。
映画フィルムの保存とその活用について
とちぎ あきら(東京国立近代美術館フィルムセンター) 2単位 月5
 戦前日本の文化記録映画やニュース映画をケーススタディにしながら、映画フィルムの安全な保護と保存、復元を旨とするフィルム・アーカイブの仕事と、作品としての映画やその製作・上映等に係る多様で重層的な歴史的、文化的、技術的文脈との接点を確認する作業を通して、文化資源としての映画フィルムの可能性を探っていく。
茶道文化論
田中 秀隆(財団法人三徳庵) 2単位 木4
 茶道を「喫茶という行為を文化として認めさせた形態」ととらえた時、それがいかにして可能であったのか、と問いかけることで、茶道文化の形成と「伝統」としての存続を明らかにしていきたい。茶会記等の史料を分析すると同時に、理論的文献も紹介する。また、茶道の残した文化資源である茶道具等にも触れる機会を作って、多角的に理解を深めてもらいたいと考えている。
 参考文献:熊倉功夫・田中秀隆編『茶道文化論 茶道学大系第一巻』(淡交社)、田中秀隆『近代茶道の歴史社会学』(思文閣出版)
近世日本の異文化交流とその資料
松井 洋子(史料編纂所) 2単位 水3
 長崎に来航するオランダ船を通した、ヨーロッパ及びアジアとの接触は、日本近世の異文化交流の主要なルートの一つである。出島のオランダ商館の文書、オランダ船によって日本から運び出された文物、異文化と出会った日本の人々が残した絵画や叙述、そして入手した文物、こうした史・資料をもとに、異文化接触の諸相を考えていきたい。今年度は、「異国人と長崎の社会」をテーマに接触の現場のあり方に焦点を当ててみる。

演習

演劇学・舞踊学への招待
古井戸 秀夫 夏冬 4単位 火4
  近現代の日本の演劇論・舞踊論を読みます。具体的なテキストについては、受講生の皆さんと相談をして決めるつもりですが、たとえば小山内薫の「演劇美術問答」などを考えています。ゴードン・グレイグの『劇場芸術』の紹介を通して、演出という概念について考えた最初の文献になります。
音楽と著作権
渡辺 裕 2単位 水2
 森進一の《おふくろさん》問題に象徴されるように,著作権は音楽の世界でホットなテーマとなっている。著作権問題は法律上の問題をこえて,ネット配信の出現など,現代のメディア状況をめぐる問題はもとより,近代的芸術作品や作者の概念の確立にかかわる美学史的な問題,さらには諸民族の文化が西洋と関わることによって生じる音楽上の南北問題など,きわめて広範な問題への糸口を提供してくれる。ポピュラー音楽研究者サイモン・フリスらの編纂した論文集 “Music and Copyright”(2nd edition, 2004) を講読しつつ,それらの問題を考える。
映画から都市を読む:ベルリン
渡辺 裕 2単位 水2
 都市のイメージはどのように形成され,またどのように変化するのか。そこに芸術はどのように関わっているのか。東西ドイツの合同以来,壁が崩壊し,巨大な再開発プロジェクトが進行する中,今度はOstalgieと呼ばれる「東回帰」ブームが起きるなど,ベルリンはそのプロセスやメカニズムを考える上で絶好の対象である。ベルリンを舞台にして作られたこの時期の映画は,単にその状況を描き出すだけでなく,それ自体が都市イメージを変容させる原動力ともなった。英語文献を主体に,それらを分析した研究をいくつか取り上げて読み進めてゆく。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※博士課程のみ

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文字資料学コース(文書学・文献学)

特殊研究

江戸を読む
長島 弘明(国文学研究室) 2単位 水2
 文化資源学研究専攻の学生にのみ履修を認める。近世(江戸時代)の様々な種類の版本や写本をとりあげ、ジャンルと本の様式の関係について考察を加える。また、くずし字読解の訓練を行いつつ、江戸時代のテクストの現物に触れ、本文の生成・変容の具体的様相をうかがう。参考資料を適宜配布する。
西洋文献学史:マニリウス研究
片山 英男 2単位 金4
 マニリウスの天文学・占星術詩『星辰譜』のテクストについて、ルネサンスにおける再発見から現代までの、近代的校訂の歴史を原資料を用いながら概観する。ラテン語の知識はかならずしも必要ではない。
漢字の歴史
大西 克也(中国語中国文学研究室) 2単位 金5
 漢字の誕生から我々が使う楷書の成立に至る変遷を概観し、漢字の性質を考える。豊富な新出土資料、一次資料を利用して、各時代におけるさまざまな漢字のありさまを紹介する。
芸能のアーカイブズ
織田 紘二(国立劇場) 2単位 集中
 <現代と歌舞伎>というテーマで話をしたいと思います。国立劇場で40年間制作と演出に関わってきました。その経験の中で見えてきた歌舞伎の現状と問題点について考えてみたいと思います。伝統芸能に限ることではありませんが、日本伝統文化の衰退は目を覆うばかりです。そうした中で歌舞伎は何を目指しているのか。制作・演出の現場から見た歌舞伎の現状と問題点を、オンタイムの情報も交えながら考察してみたいと思います。芸能は世相を写す鏡とも云われますが、歌舞伎というキーワードを通して何が見えてくるでしょうか。国立劇場の舞台や舞台裏を通して現代に生きる歌舞伎の問題点を探り、将来を占うという時間にしたいと思います。
漢籍入門
大木 康(東洋文化研究所) 2単位 集中
 中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える
(1)「中国版本目録学概説」(2)「四部分類について」(3)「漢籍目録法実習(カードの取り方)」(4)「朝鮮本について」の講義及び実習
  6月16日(月)から20日(金)までの集中講義(場所は東洋文化研究所3階の会議室を予定している)。実習の準備の都合上、受講希望者は、履修届とは別に6月6日(金)までに文化資源学研究室まで申し出ること(先着10名を限度とする)。
幕末外交史料論
保谷 徹(史料編纂所) 2単位 水5
 19世紀半ばに「開国」した日本は、世界資本主義市場へ強制的に編入されるとともに、近代的な外交関係の構築を迫られた。講義では、1)欧米やロシア、東アジアの史料保存機関(文書館)の仕組みや役割についてふれ、2)幕末外交の担い手や彼我の外交史料(外務省史料)のあり方について比較検討する。さらに、3)外国史料(在外日本関係史料)を実際に取り上げて、日本と諸外国双方の視点から幕末外交史の理解を深めたい。講義はプリント配布とプロジェクターを用いておこない、とくに最近の海外調査によって明らかになった18世紀末以来の外国史料(画像史料含む)も随時紹介していきたい。
日本中世古文書学
近藤 成一(史料編纂所) 夏冬 4単位 金4
一昔前までは「古文書学」といえば中世文書を中心に研究されてきたが、近年は古代あるいは近世・近代の分野においても研究されるようになってきている。また「文書」とは文字資料の中で典籍・記録とは区別される特定のものとして定義されてきたが、その狭い定義に属する古文書の範囲を超えて、多種多様な史料を扱う「史料学」が提唱されている。さらに文書を管理する実用の学としての文書学が求められている。そういうわけで、かつての中世文書を中心とする「古文書学」には「中世」の限定を付さなければならなくなった。そして「古文書学」は元来西欧起源のものであるけれども、ここで取り上げようとしているのは日本のものに限定されるので「日本」という限定も付さなければならない。
 「日本中世」の限定を付された古文書学において近年顕著なのは、古文書学的知見を歴史認識に活かそうとする志向である。古文書から歴史を読み取るといえば当たり前のように聞こえるが、古文書のテキストではなく、様式や形態から、それが作成された政治構造を読み取ろうというのである。最近は古文書の書かれている紙や文字の形(筆跡)が注目されるようになっている。
 本授業が「日本中世古文書学」の題目を掲げて3年目に入るが、過去2年間は鎌倉時代後期の院宣・綸旨や鎌倉幕府発給文書の筆跡を取り上げてきた。これらについても継続して取り上げるが、さらに新しい題材についても考えている。
 古文書学や日本中世史に関する知識を受講する前提とはしない。博士課程以上の専門研究者も参加し、高度な議論も行われるが、専門度の高い参加者ほど初心者に対する丁寧な説明を心がけているので、物怖じせずに積極的に参加してほしい。

演習

ヨーロッパ図書館史演習
月村 辰雄 2単位 水5
 フランス国立図書館(いわゆるBN)の歴史を、レオポルド・ドリールやアルフレッド・フランクリンなどの古典的な図書館史、17世紀のアンリ・ソヴァルのパリ案内記である『パリ史』中の関連記述、18世紀のガイド本である『王立図書館案内』など、各種の資料の講読を通じて研究する。
明治期社会経済史史料演習
鈴木 淳(日本史学研究室) 2単位 水2
 基本的に毎回一人が明治・大正期についての研究発表を行い、それをめぐって議論する。日本史学と合同。発表は史料に基づくことが原則であり、発表者は前回(発表1週間前まで)に基本史料1点以上と発表の梗概800字を参加者に配布する。基本史料は、原史料の複写でも、活字史料あるいは史料に基づいて作成した表でもかまわない。
歌舞伎を読む
古井戸 秀夫 夏冬 4単位 金4
 今年は、江戸時代の歌舞伎の舞踊台本を読もうと思っています。長唄や浄るりの正本など関連の資料と比較しながら読んでいきたいと思います。
甲骨文入門
大西 克也 2単位 金5
 殷代に作成された甲骨文を取り上げ、器、文字、言葉などについて基本的な知識を概説した後、甲骨文を現代の漢字に置き換えて、文章として読む訓練を行なう。テキスト、参考書は講義の中で紹介する。
アーカイブズ学入門
木下直之・渡辺浩一(国文学研究資料館) 2単位 集中
 アーカイブズ学(archival science)とは、過去の古文書から現代の映像・電子記録まで、行政・企業・大学・個人などの記録史料(アーカイブズ資料)を文化情報資源として保存・活用するための専門科学である。本講義では、国際的な研究動向を踏まえつつ、日本のアーカイブズ(文書館・公文書館)やアーキビストのあり方について考えたい。
 本講義の履修者は、7月と9月に国文学研究資料館において実施される「アーカイブズ・カレッジ」を受講する必要がある。「アーカイブズ・カレッジ」の案内と受講申込み用紙は文化資源学研究室にあるので、履修希望者は各自で国文学研究資料館に申し込むこと。ただし申込者多数の場合は選考を行うことになっている。選考にもれた場合は自動的に本講義の履修資格を失うので、あらかじめ了承されたい。なお本講義の履修は、文化資源学研究専攻所属の学生に限ることとする。
近世近代史料調査法入門
吉田 伸之 2単位 集中
 現在も日本各地に厖大に残されている地方(じかた)文書の調査法(現状記録調査法)・研究法の基礎を学ぶ。今年度も、2003年度以来取り組んでいる長野県下伊那郡清内路(せいないじ)村の下区区有文書、及び原家文書(予定)の調査を実施する。現地に宿泊し、フィールド・ワークとして行う。受講希望者は6月13日までに、日本史学研究室、文学部教務係のいずれかに申し出ること。なお7月16日(水)4限にガイダンスを行う(場所は古文書学特殊講義「近世・近代初期文書を読む」の教室を使う)。参加者は必ず出席のこと。ガイダンスやフィールド・ワーク実施要項の詳細は、5月末に古文書学特殊講義において配布する。
 また文化資源学研究室でも配布し、同研究室掲示板と大学院掲示板に掲げる。

論文指導

論文指導 修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※修士2年のみ
論文指導 博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。 ※博士課程のみ

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参考:文化資源学共通講義(学部向け)

文化資源学入門(1):芸術支援の国際比較
小林 真理 2単位 水3
日本において、文化政策研究が始まったのは最近といえるが、ヨーロッパにおいては、文化政策のあり方に関する議論が戦前から始まっている。この授業では、これからの日本の芸術文化支援政策を考えていく上で、参考になる事例として、ヨーロッパやアメリカにおける実践ついて、それがどのような思想や仕組みによって行われ、変容してきているかを概観することにする。
 (1) 国家と文化政策の悲劇的な関係
 (2) 戦後の文化政策の出発点:文化権とは
 (3) イギリスにおける文化政策1:ケインズの思想と芸術支援制度としてのアーツ・カウンシル
 (4) イギリスにおける文化政策2:アーツ・カウンシルの創成期、官僚化
 (5) イギリスにおける文化政策3:構造改革と官から民へ・現状
 (6) ドイツにおける文化政策1:戦争における構造転換、と新しい原則
 (7) ドイツにおける文化政策2:「新しい文化政策」の提唱へ
 (8) ドイツにおける文化政策3:統一後の傾向と現在の状況:文化高権から文化連邦主義へ
 (9) アメリカにおける芸術支援の誕生1:ニューディール政策期
 (10) アメリカにおける芸術支援の誕生2:NEAとアートマネジメント−
 (11) EU統合による各国への影響:文化政策の強化と多様なヨーロッパの構築
 (12) これまでのケースを通じて:芸術支援政策の諸課題
 (13)〜(15) 日本における芸術支援の現状と課題
文化資源学入門(2):文化財保護の諸問題
木下 直之 2単位 火4
 文化資源学研究室が学部向けに開設する「文化資源学入門2」で、演習形式の授業として開講する。「文化資源学入門1」(夏学期)は小林真理「芸術支援の国際比較」を参照。この演習では、文化財保護法が成立する以前に、日本国がどのような理念からどのような保護政策をとり、制度化してきたかについて理解を深める。文化財保護法が何を引き継いでおり、その限界や問題点がどこにあるかを明らかにし、これからの文化財保護と文化資源開発について考える機会としたい。今年度は、保護制度の濫觴期に重要な役割を果たした蜷川式胤(1835〜82)の日記『奈良の筋道』(中央公論美術出版から翻刻)を読むこともあわせて行う。参加者は開講日までに文化財保護法を熟読しておくこと。

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