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平成12(2000)年度文化資源学専攻講義

文化資源学特殊研究 「文化資源学原論」
青柳 正規 2単位集中
言語・音声・画像・形象、文字・文書・刊本、出土品・美術作品、民族・習俗、電子記録など文化資料は有形無形の属性をもち、変化に富んだ特徴を有している。これらの文化資料を現代社会と近未来社会において有効な活用が出来るよう資源化の方策を研究するのが文化資源学であり、そのための調査、発掘、考証、評価、保存、公開の技術を開発し、戦略的かつ構築的な文化のあり方を考察する。
文化経営学演習 「文化経営論演習1」
青柳 正規 2単位月6
国際社会、アジア・ヨーロッパなどの地域、日本、日本国内の地域社会などさまざまな範囲における文化のあり方を研究すると同時に、グローバル化や大衆化などの過程の特徴を分析し、それぞれの範囲や組織体制の文化システムを構築するためのケース・スタディを行う。
文化経営学演習 「文化経営論演習2 芸術団体・施設運営研究」
高萩 宏2単位月6
現在の日本の社会における芸術団体・施設の運営について研究する。主に演劇に関連する団体、施設を取り上げ、日本における「現代演劇」の歴史的な背景、公共劇場が林立する現在の問題点、手厚い文化政策に支えられた欧米各国との比較をまじえて、国際化に向かう日本の社会のなかで、舞台芸術の創造行為がどのように守られ、鑑賞活動・教育普及活動の促進がどのようにはかられているかを考察する。参考書:佐藤郁也『現代演劇のフィールドワーク 芸術生産の文化社会学』東大出版会
コース共通特殊研究 「文化経営論研究総論 文化施設運営の法と政治」
木下 直之 2単位火5
美術館・博物館に代表される文化施設がどのような法律にもとづいて運営されているかについて理解し、博物館法、文化財保護法、美術品公開促進法、著作権法など重要な現行法規の問題点を探る。また、そこでの活動、あるいは文化交流がいかに政治的なものであるかについて、とくに展示という問題に注目しながら、考えていきたい。
文化経営学演習 「文化資源情報学 ミュージアムの成功と失敗」
木下 直之 夏冬4単位金5
これまでにどのような美術館・博物館建設の構想があり、そのうちの何が実現し、何が実現しなかったか、挫折にはどこに問題があり、また運営上ではどんな問題を抱えているかなど、個別に探っていく。たとえば、松方コレクションで名高い松方幸次郎には「共楽美術館」建設の夢があったが実現しなかった。しかし、それは姿を変え、「国立西洋美術館」という名で実現する。参加者が1構想案、あるいは1館を担当する。
文化経営学特殊研究 「文化資源評価法 博物館工学」
西野 嘉章 夏冬4単位水5
人間は古くから優れた美術品、稀少な標本、重要な事物等を保存、普及、公開、取引するため、それらの代替物を拵えてきた。それらを欧米ではコピー、レプリカ、イミテーション、フェイクなどと呼び、われわれはそれらに写、模、倣、贋、偽、擬などの漢字を充てる。ニセモノはホンモノを超えないというのが一般の通念であるが、現実には両者の境界はおよそ曖昧なものにすぎず、ニセモノにも思いがけぬ効用がある。本講義は、平成13年度秋に総合研究博物館で予定されている実験展示「真と偽のはざま」展の準備をなすものであり、文系・理系を問わず、受講者はテーマに関する展示物・展示解説の作成を課せられ、それらのなかで優れたものは実際に展示公開の予定。学外での調査、展示物のマケット制作などの実習とディスカッションを中心とし、すべて実践通りに行う。
文化経営学特殊研究 「文化資源調査法I」
山梨 俊夫 2単位月5
われわれは、実作者と違って、創造された美術を受容する側にいる。絵や彫刻、インスタレーションなどという形をとって実現された美術の仕事は、見られることによってはじめて成立するのは言うまでもない。ではどんな場で、どのような状況のもとで美術は見られるか。実作者が美術を制作する現場のつぎに、受容する側の現場がある。画廊で、美術館で、一般の建築物のなかで、「作品」は見られる。そして見られる場と作品は、必ず歴史的、社会的、経済的に条件付けられている。その条件付けのなかで受容される美術の現場を視野に入れながら、とくに美術館での美術のあり方を中心に、見ることがどのように実践されているかを実際的に考察する。
文化経営学特殊研究 「文化資源調査法II 現代の美術館の機能分析と現場体験」
勅使河原 純 2単位月5
現代社会における美術館の多様な機能を、主に学芸員の役割という側面から解明する。(1)学芸員の諸活動のなかで展覧会の企画立案・作品収集を担うキュレイター、教育普及を担うエデュケイターの活動に焦点を合わせて紹介し、分析していく。(2)学生自身による作品資料収集委員会を開き、日本の美術館制度を模擬体験する。あわせてその問題点を探りたい。(3)美術館に場を移し、展覧会の仕組み、作品収蔵のあり方、鑑賞教育などについて、できるだけ現実に近い体験をする。テキストは特に使わず、講義のなかで適宜紹介する。
文化経営学演習III 「日本の古典文化における意味生成過程のパターン」
ツベタナ・クリステワ2単位火6
現代の主導的な文化論(ヨーロッパ中心主義的なものから反ヨーロッパ中心主義的なものまで)は、いずれも多かれ少なかれ西洋の文化的実践を踏まえているので、異なる文化の分析に応用された場合、限界を示していると思われる。構造主義、文化記号論、脱構築などの見地から日本の古典文化の特徴を吟味することによって、それらの文化論の応用性を問うてみるとともに、日本の古典文化における意味生成過程のパターンを考察する。具体的な分析のなかで、和歌や物語などの文学ジャンル、絵巻物、衣装、建築など、古典文化の様々な体系を取り上げて、それらの関連性や意味作用の共通点を探求する。
文化資源学共通演習 「ディスカッション・プログラム」
ツベタナ・クリステワ2単位水6
修士論文作成指導を兼ねた演習で、各自の修士論文のテーマによる発表をし、ディスカッションする。
文化経営学特殊研究 「文化政策概論」
田村 泰一2単位木6
文化振興は、国として取り組むべき政策分野の一つであるが、近年、経済原理と補完しながら、文化振興の目的を達成することが、政策としても求められている。本講は、文化と経済を関係付け、文化政策の機能、意義を論じ、文化政策を担当している主要官庁(文部省、外務省、通商産業省など)の性格と施策形成プロセス(法律、機構、制度、予算)について解説し、主要国の文化政策と比較しながらの我が国の現状と問題点について論じていく。さらに、文化政策を補完している企業メセナ等の動きについても併せて解説する。
コース共通特殊研究 「形態資料学研究総論 芸能資料研究」
長島 弘明 2単位木5
芸能資料について考察する。『東海道四谷怪談』の台帳をとりあげ、歌舞伎の脚本の構造を解説し、文字資料がいかに音声・音曲やパフォーマンスの要素を表現しているか検討する。テキストはプリントを配布する。
形態資料学演習I 「浄瑠璃研究」
長島 弘明 2単位木4
浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵』を注釈をつけながら講読する。合作浄瑠璃の作劇法、史実の改変の方法、「世界」と趣向との関係、などに注意を払って読んでいきたい。テキストは影印本を使用する予定。
形態資料学演習II 「民俗学の方法意識」
佐藤 健二 2単位木4
非文字文化・口承・形態資料にもとづく民間学的な研究運動として展開してきた「民俗学」を再検討する。思想家としては、私がこれまでに扱ってきた柳田国男を軸としながらも、折口信夫や南方熊楠、渋沢敬三、宮本常一、今和次郎らの思想や実践、有形文化/言語芸術の資料論などについて取り上げる予定である。
形態資料学特殊研究 「画像資料学II」
小佐野 重利 2単位集中
画像資料(絵画、素描、版画、写本や書物の挿絵、地図、ポスター、漫画など)は、美術史学の研究にとっては必須ともいえる一次資料である。長年、美術史研究に携わっている経験を踏まえ、他の人文社会学領域の研究における画像資料の有効利用や、研究上の貢献と意義について考察する。できるだけ古書籍もしくはそのファクシミリ版、絵画作品の写真、ビデオ、デジタル化した画像資料等を使いながら、実習形式の講義を行なう。
特殊研究 「画像資料学I イタリア・マニエリスム時代における版画の役割」
越川 倫明 2単位集中
ルネサンス時代における版画の著しい発展は、絵画や彫刻の歴史に比べてマイナーな事象とみなされがちだが、視覚的イメージの伝達性の点で、革命的な出来事だった。この講義では、イタリア16世紀に、芸術家達の活動にとって版画が果たした役割を検討する。著名な絵画の複製版画の成立について、ヴァザーリの『芸術家列伝』における版画の扱いについて、ケース・スタディとしてエル・グレコの制作プロセスにおける版画の機能について、といったトピックを取り上げたい。
形態資料学特殊研究 「造形資料学 西アジア石器文化研究」
西秋 良宏 夏冬4単位水4
旧石器時代の研究には石器の研究が欠かせない。様々な方法論を用いて石器から最大限の情報を抽出することが必要である。この講義では、西アジア旧石器時代の資料を使って石器研究の具体的なプロセスを説明する。受講者は、石器の分析を実際に体験することになる。参考書:『西アジアの考古学』大津忠彦・常木晃・西秋良宏、同成社、1997。『石器研究入門』M.-L.Inizan, H. Roche and J. Tixer著・大沼克彦・西秋良宏・鈴木美保訳、クバプロ、1998。
形態資料学特殊研究 「民族資料論 狩猟の民族考古学」
佐藤 宏之 2単位金4
民族学は、民族文化に基層「伝統」を仮設し、「伝承」という時間の抽象化を通して濾過された理想態として提示することを専らとしてきた。しかしながら、近年の歴史主義的研究の進展や科学社会学の立場からの相対化の過程を通して、時間軸への配視を迫られている。本講義では、考古学の立場から、民族社会・文化に表れてきた諸事象を、適応と技術の観点から解きほごしていく。具体的には、最近調査を実施している東北日本のマタギやロシア極東先住民社会における狩猟の意味と歴史的意義を取りあげる。授業は、講義と演習形式で行い、受講者には課題発表を義務づける。
形態資料学特殊研究 「芸能論 物語られる近代―〈声〉の文学史」
兵藤 裕己 2単位集中
近世末から近代にかけて流行した声の文学 (oral literature) の歴史について考察する。浪花節に代表される近代の物語芸能が、わが国の大衆社会や、国民的心性の形成にどのように関与したかを考え、あわせて、日本近代のもう一つの文学史の可能性について探ってみたい。つぎのようなテーマを予定している。序.国民国家と浪花節/1. 貧民窟の芸人/2. 祭文から浪花節へ/3. 講談から浪花節へ/4. 物語の流通/5. 仇討物とは何か/6. 物語のモラルと「家」/7. 声のユニゾンと「国民」/8. 日本近代の解体
コース共通特殊研究 「文字資料学研究総論」
月村 辰雄 2単位月5
デジタル化された各種の文字資料をCDーRomあるいはインターネットのサイトを通じて調査し、その構造、利用法などについて比較検討する。さらにデジタル化資料体を活用すればどのように新しい研究テーマや研究法を開発できるか、考察する。
文字資料学演習 「文字資料学演習I」
月村 辰雄 2単位火5
東京大学総合図書館には、関東大震災で焼け残った開成学校や大学南校の旧蔵書(洋書)が千冊ほど、未整理未分類のまま保管されている。内容自体にさほどの価値は認められないが、これらがいずれも19世紀後半の西欧の学芸を明治の日本に伝えた書物であることを考えると、その資料体としての価値ははかりしれない。本演習ではこれらの書物をまず目録化し、明治期の日本の学芸との関連を調査する。
文字資料学演習 「文字資料学演習II 近世近代史料調査法入門」
吉田 伸之 2単位集中(7月24日〜27日)
現在も日本全国各地に膨大に残されている地方(じかた)文書の調査・研究法(現状記録調査法)の基礎を学ぶ。素材は、日本史学研究室所蔵の駿河国駿東郡本宿村高田家文書である。実習は文学部で行うが、現地のフィールド・ワークも実施する予定。教室や集合時間の詳細については、文学部掲示板と日本史学研究室掲示板に掲げる。
文字資料学特殊研究 「文書館学 アーカイブズ研究」
安藤 正人 2単位集中
アーカイブズ(記録史料、文書館)について考える。進め方は受講者と相談して決める。そのために次の文献はあらかじめ読んできていただきたい。(1)安藤正人・青山英幸共編『記録史料の管理と文書館』(北海道大学図書刊行会、1996)(2)安藤正人『記録史料学と現代―アーカイブズの科学をめざして―』(吉川弘文館、1998)(3)歴史人類学会編『国民国家とアーカイブズ』(日本図書センター、1999)
文字資料学特殊研究 「文書解読学 中国古文字の変遷とその解読」
大西 克也 2単位木5
中国文字学に於ける「古文字」とは、秦の始皇帝による文字統一以前に行なわれていた文字を指す。殷周時代の甲骨文、金文から春秋戦国時代に到る文字の変化を概観するとともに、文字資料の拓本、写真を見ながら現行の楷書体の文字に同定する作業を行ない、文字資料を扱う能力を養成することを目的とする。
文字資料学特殊研究I 「写本刊本伝承史」
片山 英男 2単位金4
西洋の古典写本伝承の歴史と理論を概観した後で、実際に西洋近代の書物に接しながら、書籍出版の事情を通観する。さらに、各人の研究対象に応じて、和洋華などそれぞれ異なる書物の成立事情を調査する。
文字資料学特殊研究II 「校訂学」
片山 英男 2単位金4
実際に校訂版を編纂する作業を通じて、伝承史と校訂の関わりあい方を研究する。作業を通じて知見を得ることに主眼を置き、近代のテクスト校訂の理論は最後にまとめとして略述する。
文字資料学特殊研究 「書誌学I 平安朝文学の文献学と書誌学」
藤原 克己 2単位金3
はじめに近世の国学から今日の国文学にいたるまでの学問史を、文献学の視座から捉え直し、次に『源氏物語』『白氏文集』等を例に、書誌学・文献学に関する諸問題を解説しながら、「善本」とは何か、本文校訂はいかにあるべきか、といった問題について考察する。
文字資料学特殊研究 「書誌学II 日本書誌学の諸問題」
落合 博志 2単位水4
書誌学は、本という〈物〉に即した学問である。書物の形状、料紙、書写や印刷の様式、書写または開版・摺印の年代、分類、本文の系統、製作環境、伝来や流通、などの事項について適確に把握することがその基礎となるが、個々の資料から得られるそれらの知見を総合し、「書物の学」として体系化して行く際に、どのような点が問題となるか。具体的な事例を材料に、古典籍の書誌学の方法について考えて行きたい。

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