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平成13(2001)年度文化資源学専攻講義

各専門分野共通科目 「文化資源学原論」
青柳 正規2単位木4
言語・音声・画像・形象、文字・文書・刊本、出土品・美術作品、民族・習俗、電子記録など文化資料は有形無形の属性をもち、変化に富んだ特徴を有している。これらの文化資料を現代社会と近未来社会において有効な活用が出来るよう資源化の方策を研究するのが文化資源学であり、そのための調査、発掘、考証、評価、保存、公開の技術を開発し、戦略的かつ構築的な文化のあり方を考察する。
各専門分野共通科目 「日本文化の発信と受容」
ツベタナ・クリステワ夏冬4単位火6
日本人が自分の文化を宣伝するのは下手だ、とよく言われるのだが、その理由はどこにあるのだろうか、また、こうした“欠点”を簡単に乗り越えることができるのだろうか。 確かに自動車や電気製品など、現在の日本の産業物が全世界でよく知られていて、それも「文化」の一つであろうが、こうした経済的な側面だけを優先することによって、日本文化の「歪んだイメージ」を作ることになるのではないだろうか。  他方、浮世絵は代表的な例であろうが、日本の伝統的な文化の普及は、主として「内」からの「発信」ではなく、「外」からの関心の結果であると言える。それもいいことであろうが、こうした関心を支えたり、さらに増やしたりしようと思えば、どのような戦略をたてなければならないだろうか。 文化理論を踏まえながら、また、あらゆる具体的な例を考慮することによって、上のような問題の答えを追究し、海外における「日本文化週間」の計画など、実用的な課題を取り上げてみることにしたい。
各専門分野共通科目 「文化理論の研究・枕草子の詩学」
ツベタナ・クリステワ夏冬4単位水3
古典文学の研究をめぐる問題が数多くあるのだが、中でも特に重要に思われ るのは、伝本の問題と、研究の長い歴史において定着してきた「既定の解釈」 という二つである。こうした視点から日本の古典文学を見てみると、何よりもまず浮かび上がってくるのは、『枕草子』であろう。その伝本が根本的に異なっ ており、その解釈が主として物語や日記文学など、他のテクストの規準に即して行われてきたからだ。 U.エーコの『開かれた作品』を初めとして様々な文化理論を踏まえ、『ピーター・グリーナウェイの枕草子』など、“変わった” 解釈を考慮しながら、『枕草子』のテクストを分析し、再解釈の可能性を追究してみる。
各専門分野共通科目 「ディスカッション・プログラム」
ツベタナ・クリステワ夏冬4単位水6
修士論文作成指導を兼ねた演習であるので、前期は、文化的なアイデンティティ、文化資源の意味など、一般的な問題を取り上げて、修士論文のテーマの 選択を手伝い、後期は各自による修士論文のテーマについての発表を中心にする。いずれの場合においても、授業の基本的なパターンになるのは、全員によ るディスカッションである。
文化経営学専門分野 「文化経営学演習」
青柳 正規夏冬4単位木3
国際社会、アジア・ヨーロッパなどの地域、日本、日本国内の地域社会などさまざまな範囲における文化のあり方を研究すると同時に、グローバル化や大衆化などの過程の特徴を分析し、それぞれの範囲や組織体制の文化システムを構築するためのケース・スタディを行う。
文化経営学専門分野 「近代日本の文化政策」
木下 直之夏冬4単位金5
夏学期は、日本における1850年代から1950年代までの文化政策を概観する。とくに1868年と1945年のふたつの「終戦」の時点で(さらに1895年と1905年のあとふたつの「終戦」を視野に入れて)、それぞれ何が断絶し何が連続してい たかを検証した上で、近代日本を離れ、「敗戦下の勝者(占領者・植民者)による文化政策」「文化立国を標榜することの有効性」など他の時代、他の地域 にも適用可能な問題を抽出する。冬学期は、参加者の報告を中心に政治と文化の問題を広く討議してゆきたい。
文化経営学専門分野 「展示論2001」
木下 直之2単位火5
数年前に東大博物館で小津安二郎愛用の単なる湯呑み茶碗が展示されたことがあった。変哲もないものがなにゆえに展示に値するものへと変わるのかを考えることから始めよう。それは宝物論であり、遺品論でもある。社寺や宝物館は宝物や遺品を収集・保管・展示する装置として機能し、近代に入ると博物館や美術館が登場した。現代日本の社会が有する博物館・美術館とは何であり、誰のためのものであり、それを機能させるためにはどんな技術と法律が求められ、どんな可能性と限界を持つのかを、2001年の現実(たとえば横浜トリエンナーレ)に照らしながら考えてゆく。あとから役に立つ、ボディ・ブローのような博物館学。
文化経営学専門分野 「アートマネージメント論 現代演劇と文化政策」
高萩 宏2単位月6
「現代演劇のフィールドワーク 芸術生産の文化社会学」佐藤郁也(東京大学出版会)をテキストとして、80年代以降の日本の「現代演劇」の発展の歴史をたどる。学生劇団から日本を代表する劇団まで大きくなった「夢の遊眠社」の制作、東京グローブ座の支配人、世田谷パブリックシアターの制作課長の経験を活かして、公共劇場が林立する現在の日本の文化政策の問題点、国際化に向かう日本の社会のなかで、舞台芸術の創造行為がどのように守られ、鑑賞活動・教育普及活動の促進がどのようにはかられているかを、欧米各国との比較をまじえて考察する。
文化経営学専門分野 「文化資源評価法・博物館工学」
西野 嘉章夏冬4単位水5
人間は古くから優れた美術品、稀少な標本、重要な事物等を保存、普及、公開、取引するため、それらの代替物を拵えてきた。それらを欧米ではコピー、レプリカ、イミテーション、フェイクなどと呼び、われわれはそれらに写、模、倣、贋、偽、擬などの漢字を充てる。ニセモノはホンモノを超えることがないというのが一般の通念であるが、現実には両者の境界はおよそ曖昧なものにすぎず、ニセモノにも思いがけぬ用途や効能がある。本講義は平成12年度の講義の延長としてあるもので、本年度秋に総合研究博物館で予定されている実験展示「真と偽のはざま」展の準備をなす。文系・理系を問わず、また昨年度の講義の参加者であるとないとを問わず、受講者全体をいくつかの作業班に分け、展示物の選択、展示のマケット(雛型)の製作、展示解説の作成、展示図録の編集などを行うこととし、それを通して美術館・博物館での実践知を身につける。なお、受講者には拙著「二十一世紀博物館」(東京大学出版会、2000年)の購読を奨める。
文化経営学専門分野 「博物館学I・運営論」
竹内 順一2単位月5
博物館・美術館の運営について、建前論や抽象論ではなく、実践例を中心に以下の項目に従って考察する。 (1)ポスター200例に見る館の「新旧」(2)パブリシティ戦略とC I (3)チラシとフロアープラン (4)美術館印刷物の誤植例 (5)ブロックバスター・エキシビション(大動員展)対策(6)ミューゼアム・カッフェとショップ (7)ギャラリー・トークとツアー (8)美術館建設と立地条件(9)常設展と歴史環境展示 (10)特別展実施マニュアル(海外展実践例を含む)
文化経営学専門分野 「博物館学II・企画論 ミュジアムを動かす」
太田 泰人2単位月5
現代社会の中でミュジアムは、保存の「器」であると同時にひとつの「メディア」として機能しなくてはならない。本講義では、ミュジアムの中でもとくに「近代美術館」という機関を中心にとりあげながら、その設立から運営に至るさまざまな過程に関して、歴史的、理論的、実践的に考察を行う。なかでも「テンポラリーな展覧会」という活動については、その企画立案から現実化まで過程を実際に応じて考察する予定である。 参考書:太田泰人ほか著『美術館は生まれ変わる 21世紀の現代美術館』鹿島出版会
文化経営学専門分野 「文化政策概論」
田村 泰一2単位木6
文化振興は、国として取り組むべき政策分野の一つであるが、近年、経済原理と補完しながら、文化振興の目的を達成することが、政策としても求められている。本講は、文化と経済を関係付け、文化政策の機能、意義を論じ、文化政策を担当している主要官庁(文部科学省、外務省、経済産業省、総務省など)の性格と施策形成プロセス(法律、機構、制度、予算)について解説しながら、主要国の文化政策と比較しながらの我が国の現状と問題点について論じていく。さらに、文化交流、芸術文化振興、文化財保護、著作権、放送・通信などの個別政策分野についても解説する。さらに、文化政策と同様に重要な要素となる企業メセナ等の動きについても触れ、新世紀のアートマネージャに求められる必要な知識体系を構築していく。
形態資料学専門分野 「モノとメディアの文化分析」
佐藤 健二2単位金3
講義として行なう。本年度は歴史社会学の分析のうち、モノに焦点をあてた議論をとりあげる。事件・できごとではない「事物」を社会学がどのように分析してきたか。モノのなかに社会や歴史を読むとはどのようなことかについて、いくつかの具体的な事例を取り上げながら考えてみたい。
形態資料学専門分野 「近代事物起源〜モノ文化の分析」
佐藤 健二2単位木6
事物に焦点をあてた文化研究をとりあげたい。石井研堂の『明治事物起原』が記述した領域から現代のウォークマン分析まで、モノに焦点をあてて歴史と社会の動態を論じてみたい。参加者は一つのモノに徹底的にこだわって、そこから新しい関係性の誕生や、意味の変容をとりだしてほしい。何を素材にし、主題とするかについて、持ち寄ること。社会学専攻との共同演習である。
形態資料学専門分野 「日本絵画の調査・研究・保存」
佐藤 康宏2単位集中(9/13,14,19,20,21)
日本絵画を〈物〉として把握する過程を再検討してみたいと考えている。たとえば作品記述(description)の問題。それは何の目的でどうなされるべきかといったこと。修理についてはヴィデオも用いた説明と工房の見学を行う。できるだけ現場に足を運びたい。基礎理論と実務教育の間を揺れ動く内容になるだろう。9月に2週に分けて5日間の集中講義となる予定。詳細な日程は掲示する。文学部の「美術史調査方法論」と共通。
形態資料学専門分野 「見立て絵本研究」
長島 弘明2単位木5
江戸時代には、ある物をまったく別種のものに見立て、滑稽をねらう見立て絵本が数多く出版された。絵に長文の文章が添えられるもの、題のみのものと様々であるが、絵が主体になりながらも、ことばとの組み合わせで滑稽を醸し出すことを原則とする。 まず見立ての本質について考察した後、見立て絵本の具体的例を検討していく。
形態資料学専門分野 「考古学資料論」
西秋 良宏夏冬4単位月5
石器を適切に分析すると先史人類の行動や思想がみえてくる。この講義では、西アジア旧石器時代の出土資料を使って、石器分析の具体的なプロセスを説明する。受講者は、石器の分析を実際に体験することになる。参考書:『西アジアの考古学』大津忠彦・常木晃・西秋良宏、同成社、1997。    『石器研究入門』M.-L.Inizan, H. Roche and J. Tixer著・    大沼克彦・西秋良宏・鈴木美保訳、クバプロ、1998。
形態資料学専門分野 「民俗学資料論・狩猟の民族考古学」
佐藤 宏之2単位水4
民俗学は、民俗文化に基層「伝統」を仮設し、「伝承」という時間の抽象化を通して濾過された理想態として提示することを専らとしてきた。しかしながら、近年の歴史主義的研究の進展や科学社会学の立場からの相対化の過程を通して、時間軸への配視を迫られている。本講義では、考古学の立場から、民俗社会・文化に表れてきた諸事象を、適応と技術の観点から解きほごしていく。具体的には、最近調査を実施している東北日本のマタギやロシア極東先住民社会における狩猟の意味と歴史的意義を取りあげる。授業は、講義と演習形式で行い、受講者には課題発表を義務づける。
形態資料学専門分野 「画像資料学」
小佐野 重利2単位集中
画像資料(絵画、素描、版画、写本や書物の挿絵、地図、ポスター、漫画など)は、美術史学の研究にとっては必須ともいえる一次資料である。長年、美 術史研究に携わっている経験を踏まえ、他の人文社会学領域の研究における画像資料の有効利用や、研究上の貢献と意義について考察する。できるだけ古書籍もしくはそのファクシミリ版、絵画作品の写真、ビデオ、デジタル化した画像資料等を使いながら、実習形式の講義を行う。
形態資料学専門分野 「西洋服飾文化史」
深井 晃子2単位月4
西洋服飾文化史の見地から、女性の身体と社会性について考察する。フランス19世紀以降から日本の現代まで、すなわちボードレール、マネのモードへの視線からファッション化する現代のボディまで、文化の表象としての服飾流行を手がかりとして、そこに投影された近・現代の女性を身体性・社会性という視点から考察する。
形態資料学専門分野 「ムーヴィー映像の文化資源学・『日本映像の20世紀』制作の中で」
吉田 孝弘2単位集中
都道府県ごとに20世紀の日本の歩みを貴重な映像で綴ったNHK「日本 映像の20世紀」。この番組を制作するために記録事業「各県版・映像の20世紀」プロジェクトがNHK各放送局に作られ映像の発掘・収集が行われた。日本の近・現代史を“映像歴史学”的にアプローチしたこの番組は失われゆく映像を文化資源として捉え、評価・保存していく“文化資源学”の試みでもあった。日本および海外のアーカイブ映像や一般に埋もれた映像をいかに収集・検証・権利処理をして番組化したのか、「日本映像の20世紀」の制作プロセスを通して考察する実践的映像アーカイブ論。※集中講義の日程は変則的なため、詳細については4月開講時に説明する。
形態資料学専門分野 「江戸見世物研究」
長島 弘明2単位木5
江戸時代には、例えば煙曲・曲屁・籠細工など、今日では見ることができない様々な見世物が存在した。それらを同時代資料によって復元し、見世物の芸能の中における位置、近代とは異なる江戸の観客の意識などについて考察する。
文字資料学(文書学専門分野) 「ヨーロッパ古文書学史・図書館史研究」
月村 辰雄2単位月6
ヨーロッパの中世以降の書物史、図書館史から問題を拾って講義する。本年度は中世の修道院、大学、国王という3つ蒐書機関を取り上げ、それぞれにおける蔵書の構成、図書館の運営法などの問題を取り上げる予定。
文字資料学(文書学専門分野) 「19世紀在外日本関係史料論」
保谷 徹 2単位水5
世界各地の文書館に膨大な量の日本関係史料(外国語史料)が存在する。その概要を紹介し、史料群の成立過程とその秩序、構造を検討する。19世紀半ば、欧米列強の軍事的圧力(外圧)によって開国・開港を余儀なくされた日本は、国際資本主義市場へ強制的に編入されるとともに、近代的な外交関係の構築を迫られた。講義では、尊王攘夷運動に揺れる1860年代前半期をとりあげ、在外日本関係史料(主に外交・軍事史料)から実際にどのような歴史が見えてくるのか、論じてみたい。
文字資料学(文書学専門分野) 「中国古文字の変遷とその解読」
大西 克也2単位金5
中国文字学において「古文字」とは、秦の始皇帝による文字統一以前に流通していた文字を指す。本講義ではこれらの文字の変遷と解読方法を概説した後、実地に読解を行ってみる。本学考古学研究室のご協力により、その所蔵する甲骨を資料として使用する。
文字資料学(文書学専門分野) 「漢籍入門」
宮嶌 博史2単位集中
漢籍の伝統的な分類方法である四部分類について基礎的な知識を学ぶ。(聴講希望者が多数の場合は人数を制限することがある)
文字資料学(文書学専門分野) 「文書館学『現代アーカイブズ論』」
安藤 正人2単位集中
アーカイブズ(文書館)を民主主義社会の基盤システムとしてとらえる立場から、20世紀とくに戦争期を中心にその歩みを振り返り、ついで21世紀の新しいアーカイブズのあり方を考える。都内近県のアーカイブズを数カ所見学する予定。なお出席者には、あらかじめ参考書のいくつかを読み最初の時間に問題関心をレポートしてもらう。参考書:安藤正人『草の根文書館の思想』岩田書院    高野修『日本の文書館』岩田書院    安藤正人『記録史料学と現代−アーカイブズの科学をめざして』吉川弘文館    安藤正人・青山英幸編著『記録史料の管理と文書館』北海道大学図書刊行会    歴史人類学会編『国民国家とアーカイブズ』日本図書センター
文字資料学(文書学専門分野) 「大学南校・開成学校洋書教科書調査」
月村 辰雄2単位火5
幕府の洋書取調所を起源とする明治初年度の洋学の教育機関は、大学南校、開成学校など何度か名称を変化させ、明治10年4月、ついに東京大学法理文学部となった。この間、我が国唯一の高等教育機関といいながら、実際に教場で教えられていたのは、欧米の中等教育課程の教科書であった。本演習では、総合図書館に2000冊ほど残されたそれら英独仏の洋書教科書を実地に調査し、印記やノートのたぐいまで記載する目録作りを目指すとともに、当時の教育カリキュラム、洋書輸入事情など、付随する諸問題を各自調査していただく。
文字資料学(文書学専門分野) 「近世文書を読む」
吉田 伸之2単位木5
江戸町奉行所や寺社奉行などの基礎史料である「旧幕府引継書」を素材に、近世文書読解の基礎を学ぶ。テキストは毎回コピーを配布する。参加者はグループに別れてテキストを共同で読解し、その内容を読み取り、論点を考える。別掲の集中講義「史料調査実習」も併せて受講することが望ましい。
文字資料学(文書学専門分野) 「近世近代史料調査法入門」
吉田 伸之2単位集中(9月17日〜21日)
現在も日本全国各地に膨大に残されている地方(じかた)文書の調査法(現状記録調査法)・研究法の基礎を学ぶ。素材は、(1)日本史学研究室所蔵・駿河国駿東郡本宿村高田家文書、(2)静岡県諸子沢・佐藤家文書である。前半は文学部で行うが、後半は現地のフィールド・ワークを2泊3日で実施する。フィールド・ワークの宿を確保する都合上、受講希望者は5月末迄に、文学部教務掛か日本史学研究室、あるいは吉田まで申し出ること。9月17日10時20分から、ガイダンスを実施する。教室等の詳細については、6月末までに文学部・大学院人文社会系研究科掲示板と日本史学研究室掲示板に掲げる。
文字資料学(文献学専門分野) 「ヨーロッパ古文書学史・図書館史研究」
月村 辰雄2単位月6
ヨーロッパの中世以降の書物史、図書館史から問題を拾って講義する。本年度は中世の修道院、大学、国王という3つ蒐書機関を取り上げ、それぞれにおける蔵書の構成、図書館の運営法などの問題を取り上げる予定。
文字資料学(文献学専門分野) 「西洋文献学史」
片山 英男2単位金6
西洋の古典写本伝承の歴史と理論を概観した後で、実際に西洋近代の書物に接しながら、19世紀に発展した西洋文献学の理論と実践を検討する。
文字資料学(文献学専門分野) 「校訂論」
片山 英男2単位金6
実際に校訂版を編纂する作業を通じて、伝承史と校訂の関わりあい方を研究する。作業を通じて知見を得ることに主眼を置くが、近代校訂論の理論的背景も随時参照する。
文字資料学(文献学専門分野) 「『四庫全書総目提要』子部小説家類」
大木 康夏冬4単位木4
清代学術の精華とされる『四庫全書総目堤要』を読む。文言文読解の訓練であるとともに、そこに引用される書物の原典、言及される版本などに当たることを通して、漢籍に親しむ機会でもある。本年は子部小説家類の書物の堤要を扱う。最初に子部小説家類叙を読む。出席者各自の関心のある書物の堤要を選んで、発表の準備をしてもらう。
文字資料学(文献学専門分野) 「日本文献学 新しい古典学のために」
藤原 克己2単位木6
社会全体の書物離れが急激に進行するなかで、近年では、日本の「古典」に対して、<カノン形成>という方法概念を用いた批判的再検討の動きも強まっている。そのような動向をも念頭に置いて、日本における人と書物の関わりの歴史をたどりなおし、新しい古典学を模索したい。高校生・大学生や社会人のための「教養としての古典」を普及させる方法についても考える。
文字資料学(文献学専門分野) 「書誌学II 日本書誌学の諸問題」
落合 博志2単位水4
書誌学は、本という<物>に即した学問である。一つ一つの書物について、形状、料紙、書写や印刷の様式、書写または開版・摺印の年代、分類、本文の系統、製作環境、伝来や流通の経路、などの事項を的確に把握することがその基礎となるが、個々の資料から得られるそれらの知見を総合し、「書物の学」として体系化して行く際に、どのような点が問題となるか。書誌調査の実習を交えながら、具体的な事例を材料に、日本古典籍の書誌学の方法と今後の方向について考えて行きたい。
文字資料学(文献学専門分野) 「大学南校・開成学校洋書教科書調査」
月村 辰雄2単位火5
幕府の洋書取調所を起源とする明治初年度の洋学の教育機関は、大学南校、開成学校など何度か名称を変化させ、明治10年4月、ついに東京大学法理文学部となった。この間、我が国唯一の高等教育機関といいながら、実際に教場で教えられていたのは、欧米の中等教育課程の教科書であった。本演習では、総合図書館に2000冊ほど残されたそれら英独仏の洋書教科書を実地に調査し、印記やノートのたぐいまで記載する目録作りを目指すとともに、当時の教育カリキュラム、洋書輸入事情など、付随する諸問題を各自調査していただく。
文字資料学(文献学専門分野) 「近世文書を読む」
吉田 伸之2単位木5
江戸町奉行所や寺社奉行などの基礎史料である「旧幕府引継書」を素材に、近世文書読解の基礎を学ぶ。テキストは毎回コピーを配布する。参加者はグループに別れてテキストを共同で読解し、その内容を読み取り、論点を考える。別掲の集中講義「史料調査実習」も併せて受講することが望ましい。
文字資料学(文献学専門分野) 「近世近代史料調査法入門」
吉田 伸之2単位集中(9月17日〜21日)
現在も日本全国各地に膨大に残されている地方(じかた)文書の調査法(現状記録調査法)・研究法の基礎を学ぶ。素材は、(1)日本史学研究室所蔵・駿河国駿東郡本宿村高田家文書、(2)静岡県諸子沢・佐藤家文書である。前半は文学部で行うが、後半は現地のフィールド・ワークを2泊3日で実施する。フィールド・ワークの宿を確保する都合上、受講希望者は5月末迄に、文学部教務掛か日本史学研究室、あるいは吉田まで申し出ること。9月17日10時20分から、ガイダンスを実施する。教室等の詳細については、6月末までに文学部・大学院人文社会系研究科掲示板と日本史学研究室掲示板に掲げる。

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