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平成16(2004)年度 文化資源学講義・演習 

各専門分野共通科目

文化資源学特殊研究「原典を読む−幕末明治期の美術論」
木下直之2単位火4
幕末から明治前期に活躍した洋画家高橋由一と、少し遅れて登場し明治期の文化行政、美術史学をリードした岡倉天心のそれぞれが書き残した言葉を読む。明治期の日本で、美術がどのように方向付けられたかを明らかにしたい。テキストは『高橋由一油画史料』(中央公論美術出版)と『岡倉天心全集』(平凡社)を主に用い、適宜、その周辺の美術家や美術評論家の美術論を参照する。とくに、高橋由一と交遊のあった亀井茲明の動向には注意を向けたい。
文化資源学特殊研究「展示論2004−上野細見」
木下直之2単位火4
近代日本の最大の展示空間ともいうべき上野公園の歴史と構造、現状と課題を徹底的に検証する。前近代、上野には東叡山寛永寺が置かれ、徳川将軍家にとっての聖地であった。その記憶を消し去ることから、明治政府の文化政策は展開したといえるだろう。併せて、浅草と本郷を視野に入れる。寛永寺、東照宮、公園、博覧会、博物館、動物園、美術学校、図書館、パノラマ、祝祭、銅像、美術館、文化会館、大学、浅草寺、大道芸などが考察の対象となる。何度か見学会を実施するので、5限にかかる場合もある。
文化資源学特殊研究「文化資源学原論」
木下直之通年2単位火6(隔週)
既存の学問領域を越え、かつ横断的であることを目的に生まれた文化資源学という学問の可能性を探る。文化資源学研究室の教員全員が参加し、年間に4つのテーマを設定し、それぞれの研究の立場と関心から問題を解明する。学生もこの議論に参加する。森羅万象のあらゆるもの、あらゆることがテーマたりうる(それについて考えてはいけないというものはない)が、今年度は何について論じるかを、参加者全員が顔を揃えた時に決めたい。4月はその議論から始まる。
文化資源学特殊研究「植民地期朝鮮の文化政策」
金英順2単位 火3
植民地期朝鮮において、朝鮮總督府を中心にして展開された日本帝国主義の文化政策とそれに従う朝鮮文化の変容を論じる。具体的な検討の対象となるのは「古蹟調査事業」「博覧会」「博物館」「朝鮮美術展覧会」である。朝鮮文化の歴史的伝統と当時の内地日本の文化政策とのコンテキストを複合的に考察しながら、1900年から1910年代、1920年代から30年代、植民地末期、脱植民地以後の変様と持続の事例を提示する。古蹟調査事業と朝鮮美術史の成立や総督博物館のコレクション、博覧会における美術展示と<美術>や西洋画、東洋画という言説としてのジャンルの誕生などを論じ、具体的な文献や作品に反映された造形的変貌の様相を画像で提示する。
文化資源学演習「文化資源学フォーラムの企画と実践」
木下直之夏冬4単位金3
近年、フォーラムやシンポジウムなどの開催が当然のごとく行われるが、議論を深め、問題を解明するためには、かならずしも有効な方法とはいえない。その問題点と可能性を探りながら、実践を試みる。昨年は夏に東京国立近代美術館フィルムセンターと組んで、フォーラム「関東大震災と記録映画」を実現させた。今年度の計画は未確定だが、参加者とともに具体化させたい。教室に全員が集合するのは隔週とし、あとは各現場での作業となる。
文化資源学演習「近代日本の文化政策−文化財保護の諸問題」
木下直之夏冬4単位金5-6
近年、文化財に対して文化資源という概念が提唱された。よく似た言葉として、ほかに文化遺産がある。財も遺産も保護と継承が前提になっているのに対し、資源はむしろ開発と活用に重心があるといえるかもしれない。この演習では、近代日本がこれら財や遺産や資源をどのように扱ってきたのかを検証し、今後の文化財保護の望ましい在り方を探る。社会人学生の参加を歓迎する。
文化資源学演習「美術館経営論」
金英順2単位水6
ものの保存と陳列を目的とした過去の美術館とは異なり、現代美術館は展示と教育普及などを中心において、自ら新たなアート思潮の創出とアーティストの輩出、そして大衆参加を積極的に働きかけることにより現代の文化を作り出し、それを歴史化する機能を強化している。特に最近のアートは文化と社会現実の境界を越え文化言説を形成し大衆化し社会改造まで図っている。展示においても、アートの表現形態が単体としての作品から大規模なインスタレーションとか高価の機材を必要とする先端情報技術による映像芸術の形態に変貌していく。これらの変貌は美術館の建築−展示空間と施設−の変化と先端情報や知識を身につけた学芸員や専門技術要員、そして大規模な展示予算の準備を求める。さらに大学や研究所等の専門研究機関とか関連企業との連携と協力とを不可避にしている。
こうした状況に応じる美術館経営に関して論じる。
対象としては、国家や地方自治体の文化政策や文化行政、財団と理事会や職員そして、美術館を囲む後援団体などの組織、資産−建物・空間・コレクション、国境を越えグロバル化していく欧米先進国の美術館経営プロジェクト、流浪する専門家グループの企画者やアーティスト達−グローバル化する展示、現代美術おけるアジア美術館のマネージメント、美術館経営の現状の評価と改革の課題などを検討する。
加えて、1980年代以後の現代美術批評と美術史、文化言説、ミュージオロジーの論文とデータを紹介する。
文化資源学演習「特別演習 美術館における教育研究」
幸福輝・寺島洋子夏/夏冬2/4単位集中
教育普及インターン
前期(2004年4月〜9月)
  • 小・中・高校生を対象としたギャラリートークとその評価調査
  • 夏期の教育普及プログラムの補助
後期(2004年10月〜2005年3月)
  • 当館の教育普及教材(びじゅつーる)の評価調査
応募締切 2004年3月12日(金)(必着)
*詳細は、国立西洋美術館のHPでご確認お願いします。
論文指導「修士論文指導」
各教員夏冬2単位月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。
論文指導「博士論文指導」
各教員夏冬2単位月1(隔週)
それぞれの指導教員により適宜個別的な論文指導を行う。

文化経営学専門分野

文化経営学特殊研究「博物館工学−メーキング・ミュージアム」
西野嘉章夏冬4単位 木5
企画展示、イヴェント、情報化、展示評価など、芸員、アーティスト、文化プロデューサー、文化行政官等に求められる高度専門的な職能を、総合研究博物館の活動に実践参加することで学ぶ。理系と文系の隔てを超えた「アートの実験場」としてのミュージアムの活動のありかたを探求し、その成果を展示図録、報告書など、出版物のかたちで具体化する。履修生はいくつかのプロジェクト班に分かれ、それぞれに課題をこなすことになるが、参加者希望者多数の場合、人数制限を行う。なお、本講義の活動については「真贋のはざま」「マーク・ダイオンの驚異の部屋」等の展示図録を参照のこと。
文化経営学特殊研究「歴史遺産評価法」
早乙女雅博2単位火2
人類が生み出した歴史遺産が、近代社会のなかでどのような視点から調査研究され、保護対策が行なわれて来たかを考える。また、今後どのような価値観のもとに残していくべきかを考える。具体的には、植民地時代の朝鮮半島で行なわれてきた古蹟調査のなかで重要な位置を占める高句麗壁画古墳を対象とし、実際に調査を担当した研究者が残した記録や論文などを読みながら進める。
文化経営学特殊研究「博物館学T」
金山喜昭2単位木2
本講義は、これまでの「文化の殿堂」としての博物館から、「まちづくり」としての新しい博物館のあり方を探究する。
@博物館とは A博物館の分類 B博物館学と地域博物館学 C地域博物館とは D地域博物館のパラダイムの転換 E博物館の歴史 F地域博物館の歴史 G博物館経営論 H博物館機能論T I同上U J地域博物館と学校の連携・融合 K地域博物館のソーシャル・マーケッテング戦略と新しい地域文化づくり L海外の博物館事情 M見学会 N見学会
評価法:出席などの平常点とレポート、試験
教科書:金山喜昭『博物館学入門』(慶友社、2003年)
参考図書を随時指定する。
文化経営学特殊研究「博物館学II」
那児耶明2単位月6
博物館の中でも、美術館の展示活動の実践を通じて得た、美術館活動の姿を、以下のいくつかの項目にわけて講義する。
美術館の種類と在り方・美術館の役割・美術館における鑑賞・特別展の実施例・美術館の広報活動・美術館の図録・美術館におけるさまざまな技術(美術品取扱・会場づくりと展示・スケジュール作り)等に関連する内容。これらについて、できるだけ自分の実体験の成功や失敗談を加え、時にはスライドを使用して講義し、机上の博物館学ではなく、実践的博物館学にしたい。
文化経営学特殊研究「文化経済学と文化政策」
後藤和子2単位 集中
現代における文化政策について、特に都市における文化と経済の相互作用に焦点を合わせて考察する。ヨーロッパやEUの都市政策の最新の動向にも触れる予定である。
文化経営学特殊研究「文化遺産の保存と国際協力」
稲葉信子2単位月6
国際的な枠組みにおける文化遺産の保存について、建築、都市や文化的景観など不動産文化遺産を中心に、動産文化遺産、無形文化遺産にも視野を広げながら、文化遺産の保存に関する国際的な理念の歴史、国際機関が行う活動から各国間の国際協力による文化遺産の保存の現場まで、今日の動向を展望し考察する。具体的には、ユネスコ世界遺産条約など文化遺産に関する国際法の運営の仕組み、各種の憲章を通じて保存の理念の構築に貢献してきたイコモスなど国際NGOの活動、各国のODAにより行われる国際協力の現場についての報告を含み、文化遺産の保存の現場が直面する様々な問題、民族間紛争、開発、観光などとの関係について考察する。
文化経営学特殊研究「文化政策論」
小林真理 2単位火5
文化政策研究の射程の広さを確認することをテーマとする。文化政策を単純に公共政策の一部として位置づけたとしても、実際の実施には多くの課題やジレンマが存在する。それを明らかにしながら、参加者それぞれの問題意識を文化政策研究の中でどのように位置づけるかを考察する。
資料等は必要な場合に授業中に配布する。
文化経営学特殊研究「文化行政論」
小林真理 2単位 火5
戦後の我が国及び各国の文化行政についての概要を学びつつ、現代の課題について検証することがテーマとなる。とくに今年度については文化施設(文化ホール、美術館、博物館等)における公共性の確保と民営化の問題を取り上げる。
資料等は必要な場合に授業中に配布する。
文化経営学特殊研究「公共ホール運営〜資源としての音楽芸術の活用〜」
中村晃也2単位 月5
本講座では、公共ホール運営にまつわる基本的諸要因を抽出し、研究と検討を加える。それを基に、総合的視点から公共ホールにおいて、いかに文化資源としての音楽芸術を活用するかを探る。
同時に、芸術の普遍的な社会的機能を探ることにより、日本文化の現況における、公による文化・芸術振興の必要性と、その説明責任の根拠を探る。
実習素材として、国内オーケストラの現状を研究し、それをいかに普及活性化していくか、また、公がいかに支援していくかを具体的な課題として設定し、擬似シンポジウムなどの企画を作成する。
文化経営学演習「文化経営学演習」
小林真理 夏冬4単位木6
文化政策研究は未だ新しい研究領域として、学として確立しているとは言い難い。
我が国におけるこれまでの研究成果を検証するとともに、各国における文化政策研究、文化経営研究の領域と比較しながら、分類を行い、学としての文化政策研究の可能性を探る。

形態資料学専門分野

形態資料学特殊研究「「芸術作品」の概念と原典・保存の思想」
渡辺裕2単位木3
音楽における「原典版」楽譜、民俗芸能などの「保存会」、歴史的街並みの保存など、文化を考えるとき、われわれはこうした「原典」や「保存」への志向を当然のことと考えてしまいがちである。しかし、「原典版」制作や「保存」の現場に一歩足を踏み入れてみるならば、様々な問題点がみえてきて、そのことによってかえって、この「原典」や「保存」を目指す思想そのもののうちにひそむイデオロギーが浮き彫りになる。本講義では、このような問題を、「芸術作品」の概念の盛衰といった美学上の問題と重ね合わせつつ、さらに都市計画、廃墟趣味、観光といったトピックを織り込みながら多面的に考えてみることによって文化の「近代」を見直してみたい。
形態資料学特殊研究「「文化」の収集と展示:博物館・美術館の詩学(1)」
渡辺裕2単位水2
文化観の大きな変化の中で、文化の内実と、その収集や展示のありようとは別々に論じられるものではなくなってきている。さらに、博物館や美術館といった制度も、単に事物や作品を展示する場であることをこえて、「文化」そのものを展示する場という観点から捉え直すことが必要になってきている。そのような認識をふまえてここでは、英米での博物館・美術館や文化展示をめぐる最近の研究を読むことにしたい。今予定しているのは、Ivan Karp and Steven D. Lavine(eds.), Exhibiting Cultures: The Poetics and Politics of Museum Display (Smithsonian Institution Press, 1991)の講読であるが、受講者との相談で変わることもありうる。
形態資料学特殊研究「「文化」の収集と展示:博物館・美術館の詩学(2)」
渡辺裕2単位水2
夏学期の授業をふまえて、文化展示の問題を、さらに具体的な形で考えてゆきたい。音楽や映画、演劇といった、狭義の美術館や博物館の射程にはいってこないジャンルの芸術にも同様な問題はみることができようし、最近の博物館や美術館での具体的な実践例を検討してみれば、一般的な議論には解消しきれない様々な問題がみえてくるだろう。冬学期は、各人にそれぞれの専門の立場からこのテーマに関連する発表と、それに基づくディスカッションを中心にすすめてゆきたい。
形態資料学特殊研究「写真の文化史」
生井英考2単位木2
19世紀中葉に開発・実用化された近代写真術の歩みは、産業革命の進展による急速な社会変容のなかで、アマチュアとプロフェッショナルの二分化や写真術の産業化から芸術諸分野における写真の応用、女性写真家の抬頭、知識人による写真批判まで、さまざまな現象に見舞われた。この科目では英米写真の最初の100年間を主な事例として、写真の社会的位置づけと文化的地位の移り変わりを考察する。授業にあたっては通常の講義形式と並行して、できるだけ講読や演習に近い授業形態も採り入れたい。履修人数によっても変化するので、詳細は開講後ただちに決定する。
形態資料学特殊研究「個人の系譜学−近代日本における形態としての個人」
小林康正2単位月4
この講義では「擬似科学」の一つである「姓名学」を取り上げる。姓名学は明治後半から大正初期にかけて成立したと考えられるが、ここでは、その近世的前駆から戦時体制下の皇道化にいたるまでの過程を、近世期の「秘伝」的版本・近代の姓名学専門書および機関誌・新聞・一般雑誌などの諸資料の解読から辿り、その言説の系譜を明らかにする。その際、@「皆姓」・戸籍制度などの「国民」統治の政治テクノロジー、A「立身出世主義」に代表される社会進化論的イデオロギー、B写真・活字・書字技術などの新しい形態のメディアの出現、C大正期に始まる「大衆」の創出と「家庭」の発見などの諸事象と「姓名学」との関わりに注目したい。
形態資料学特殊研究「服装文化論」
小佐野重利・深井晃子2単位火3
ボードレールは変貌する当時のフランス社会を“モデルニテ”として捉える。彼の文章表現を受けそれをキャンバスに凝縮していった印象派の画家たち。流行は新しいテーマとして躍り出る。服飾流行を含め流行という視点に着目しつつ、マネ、モネ、ルノワール、スーラ、ホイッスラーら19世紀後期の絵画を考察する。
形態資料学特殊研究「近世の異文化交流とその資料」
松井洋子2単位水3
長崎に来航するオランダ船を通した、ヨーロッパ及びアジアとの接触は、日本近世の異文化交流の主要なルートの一つである。出島のオランダ商館の史料には、商館長の日記や書翰、貿易の記録など、物や情報の移動の出入り口としての実態を具体的に示すものが多く含まれている。一方、長崎で、あるいは江戸参府の機会に道中や江戸で、異文化と出会った日本人たちの絵画や叙述、そして入手された文物の記録や実物もかなりの数が残っている。そうした資・史料をもとに、近世の異文化交流の多様な具体像を見ていきたい。本年度は、交流の場 としての出島、商館長の江戸参府などを主なテーマとして取り上げる予定である。
形態資料学特殊研究「考古資料論」
後藤直2単位木3
考古学資料(遺跡・遺物)から社会をどのように考え復元するかがテーマである。弥生時代とその併行期の朝鮮半島、中国との交渉を示す考古学資料によって、交流の実態、文物の受容と変容、対外交渉と弥生社会の動向を具体的に考えることをとおして、考古資料の可能性と限界を論じる。
形態資料学演習「形態資料学の諸問題」
渡辺裕・佐藤健二夏冬4単位木5
形態資料学とは何か、形態を文化の資源として論じていくことにどのような可能性があるのかという基本的な問いを、それぞれが設定したテーマの相互の発表と討議を通じて深めていきたい。演習参加者一人一人が、自らの論文主題や対象資料、あるいは重要な動向の紹介、先行研究の整理などの素材を出し、それに対して参加者相互での批判的討議を軸に演習を進める。二人の担当教員の何回かの連続講義も交えて、日程を組み立てる予定である。
詳細は開講時に相談したい。

文書学専門分野

文書学特殊研究「中国古文字史」
大西克也2単位金5
中国における古文字とは、紀元前13世紀の甲骨文から概ね漢初に至る約1000年間に渡って使用された文字を指す。現代の楷書の祖先である篆書・隷書の形が定まる以前に行なわれた様々な文字とその変遷について概説し、受講者が更に進んで自ら古代の漢字を扱いつつ学習・研究を進める基礎を習得することを目標とする。
文書学特殊研究「明治期ヨーロッパ文学移入史」
月村辰雄2単位火5
今年度は明治期におけるヨーロッパ修辞学の移入史に焦点をあてる。初めに、19世紀ヨーロッパの修辞学教科書の内容・構成を紹介し、次いでそれに影響を受けた日本の修辞学書を順次検討する。
文字資料学特殊研究 書誌学「日本古典籍の書誌学」
落合博志2単位水4
書誌学は、本という<物>に即した学問である。一つ一つの書物について、形状、料紙、書写や印刷の様式、書写または開版・摺印の年代、分類、本文の系統、製作環境、伝来や流通の経路、などの事項を的確に把握することがその基礎となるが、個々の資料から得られるそれらの知見を総合し、「書物の学」として体系化して行く際に、どのような点が問題となるか。書誌調査の実習を交えながら、具体的な事例を材料に、日本古典籍の書誌学の方法と今後の方向について考えて行きたい。
文字資料学特殊研究「アーカイブズ学−戦争とアーカイブズ Part2」
安藤正人2単位水5
日本のアジア侵略は、人々の生命や財産に多大な損害を与えただけでなく、アーカイブズ資源(記録史料)の略奪、押収、焼却といった行為によって人々の「記憶」の拠り所を破壊し、日本自身を含むアジア太平洋の国々や地域に深刻な歴史の空白を生むことになった。その実態を明らかにし、アジア太平洋の国々と協力して失われた「記憶」の再生に取り組むことは、日本のアーキビストや歴史研究者に課せられた大きな責任だと思う。昨年度に続いて、中国、韓国、マレーシアなどの具体例をとりあげ、ナチス支配下ヨーロッパの事例などとも比較しながら考えてみたい。
文字資料学特殊研究「幕末外交史料論」
保谷徹2単位水4
19世紀半ばに「開国」した日本は、世界資本主義市場へ強制的に編入されるとともに、近代的な外交関係の構築を迫られた。講義では、尊王攘夷運動に揺れる1860年代前半期をとりあげ、国内史料のみならず、世界各地の文書館に所在する日本関係史料(外国語史料および画像史料)から幕末の諸事件を分析する。またその前提として、欧米や東アジアの史料保存機関(文書館)の意義と役割、所蔵史料の秩序と構造などについてふれ、彼我の外交文書の様式や外務省史料の構造を比較しながら検討する。
文字資料学特殊研究「明治期社会経済史史料演習」
鈴木淳2単位水2
明治期の史料を用いて研究発表し、討論する日本史学の演習と合同である。文化資源学の参加学生は、討論に参加するとともに、明治期の史料を用いた発表を行うか、あるいは明治・大正期の近代遺跡・近代化遺産についての研究発表を行う。
文字資料学特殊研究「漢籍入門」
大木康2単位集中
中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。
@「中国版本目録学概説」A「四部分類について」B「漢籍データーベースの利用と構築」C「漢籍目録法実習(カードの取り方)」D「朝鮮本について」についての講義及び実習。
6月21日(月)から25日(金)までの集中講義(場所は東洋文化研究所3階大会議室)。実習の準備の都合上、受講希望者は、履修届とは別に6月11日(金)までに文化資源学研究室まで申し出ること(先着10名を限度とする)。
文字資料学特殊研究「書物論」
月村辰雄・片山英男2単位火5
書物の形態また役割の変化について、日本・中国・ヨーロッパの書物史を辿りながら検討してゆく。詳しい日程は授業初日に説明する。
文字資料学特殊研究「古文書の使い方」
近藤成一2単位金5
「古文書を使う」というのは、歴史を研究するためかもしれないし、博物館の展示のためかもしれないし、あるいは商売のためかもしれない。くずし字を読むこと、内容を読解することから古文書学・古文書データベースの方法論まで様々のレベルの内容を用意することができるが、参加者の問題意識が多様であることを前提として、参加者と相談して具体的な内容について決めたい。このコースに参加する条件として歴史や古文書に関する予備知識は一切求めないが、このコースに何を求めて参加するかという問題意識(それがどのような方向のものであるかは問わない)と、それを達成するための努力、さらにそれを他の参加者に理解してもらうための努力は求める。史料編纂所の所蔵史料と施設を利用するので、古文書をガラス越しでなく熟覧し議論する貴重な機会を提供できると考えている。
文字資料学演習「アーカイブズ学入門」
安藤正人・木下直之2単位集中
アーカイブズ学(archival science)とは、過去の古文書から現代の映像・電子記録まで、行政・企業・大学・個人などの記録史料(アーカイブズ資料)を文化情報資源として保存・活用するための専門科学である。本講義では、国際的な研究動向を踏まえつつ、日本のアーカイブズ(文書館・公文書館)やアーキビストのあり方について考えたい。
本講義の履修者は、講義の一部として、7月と9月に国文学研究資料館において実施される「アーカイブズ・カレッジ」(計6科目)のうち、「アーカイブズ総論」(7月5日〜9日)を含む2科目以上を受講する必要がある。「アーカイブズ・カレッジ」の案内と受講申込み用紙は文化資源学研究室にあるので、履修希望者は各自で国文学研究資料館に申し込むこと。ただし申込者多数の場合は選考を行うことになっている。選考にもれた場合は自動的に本講義の履修資格を失うので、あらかじめ了承されたい。なお本講義の履修は、文化資源学研究専攻所属の学生で、過去に本講義を受講したことがない者に限ることとする。
文字資料学演習「近世近代史料調査法入門」
吉田伸之2単位集中(9月13日〜16日)
現在も日本各地に膨大に残されている地方(じかた)文書の調査法(現状記録調査法)・研究法の基礎を学ぶ。今年度は、昨年度に続き、長野県下伊那郡清内路(せいないじ)村下区区有文書を調査する。現地に宿泊し、フィールド・ワークとして行う。受講希望者は6月18日までに、文化資源学研究室、日本史学研究室、大学院係のいずれかに申し出ること。参加者が30人を超えると、制限する場合がある。なお、7月15日(水)4限にガイダンスを行う(場所は文学部・古文書学特殊講義「近世・近代初期文書を読む」の教室を使う予定)。参加者は必ず出席のこと。ガイダンスやフィールドワーク実施要項の詳細は、5月末に古文書学特殊講義において配布する。また文化資源学でも配布し、同研究室掲示板と大学院掲示板に掲げる。

文献学専門分野

文献学特殊研究「江戸を読む」
長島弘明夏冬2単位木4
山東京伝の読本『桜姫全伝曙草紙』を、注釈を付けつつ読解する。先行する演劇・仏教長編小説や京伝自身の考証随筆類との関係、また挿絵の機能等について留意しながら、江戸の読本の特質について考察する。テキストは、写真版を用いる。
文献学特殊研究「テクスト校訂の諸問題」
片山英男2単位月5
西洋近代の古典文献学におけるテクスト校訂論の変遷を跡づける。対象となる文献は主にラテン語であるが、聴講にあたってラテン語の知識は必ずしも必要ではない。
文字資料学特殊研究 書誌学「日本古典籍の書誌学」
落合博志2単位水4
書誌学は、本という<物>に即した学問である。一つ一つの書物について、形状、料紙、書写や印刷の様式、書写または開版・摺印の年代、分類、本文の系統、製作環境、伝来や流通の経路、などの事項を的確に把握することがその基礎となるが、個々の資料から得られるそれらの知見を総合し、「書物の学」として体系化して行く際に、どのような点が問題となるか。書誌調査の実習を交えながら、具体的な事例を材料に、日本古典籍の書誌学の方法と今後の方向について考えて行きたい。
文字資料学特殊研究「アーカイブズ学−戦争とアーカイブズ Part2」
安藤正人2単位水5
日本のアジア侵略は、人々の生命や財産に多大な損害を与えただけでなく、アーカイブズ資源(記録史料)の略奪、押収、焼却といった行為によって人々の「記憶」の拠り所を破壊し、日本自身を含むアジア太平洋の国々や地域に深刻な歴史の空白を生むことになった。その実態を明らかにし、アジア太平洋の国々と協力して失われた「記憶」の再生に取り組むことは、日本のアーキビストや歴史研究者に課せられた大きな責任だと思う。昨年度に続いて、中国、韓国、マレーシアなどの具体例をとりあげ、ナチス支配下ヨーロッパの事例などとも比較しながら考えてみたい。
文字資料学特殊研究「幕末外交史料論」
保谷徹2単位水4
19世紀半ばに「開国」した日本は、世界資本主義市場へ強制的に編入されるとともに、近代的な外交関係の構築を迫られた。講義では、尊王攘夷運動に揺れる1860年代前半期をとりあげ、国内史料のみならず、世界各地の文書館に所在する日本関係史料(外国語史料および画像史料)から幕末の諸事件を分析する。またその前提として、欧米や東アジアの史料保存機関(文書館)の意義と役割、所蔵史料の秩序と構造などについてふれ、彼我の外交文書の様式や外務省史料の構造を比較しながら検討する。
文字資料学特殊研究「明治期社会経済史史料演習」
鈴木淳2単位水2
明治期の史料を用いて研究発表し、討論する日本史学の演習と合同である。文化資源学の参加学生は、討論に参加するとともに、明治期の史料を用いた発表を行うか、あるいは明治・大正期の近代遺跡・近代化遺産についての研究発表を行う。
文字資料学特殊研究「漢籍入門」
大木康2単位集中
中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。
@「中国版本目録学概説」A「四部分類について」B「漢籍データーベースの利用と構築」C「漢籍目録法実習(カードの取り方)」D「朝鮮本について」についての講義及び実習。
6月21日(月)から25日(金)までの集中講義(場所は東洋文化研究所3階大会議室)。実習の準備の都合上、受講希望者は、履修届とは別に6月11日(金)までに文化資源学研究室まで申し出ること(先着10名を限度とする)。
文字資料学特殊研究「書物論」
月村辰雄・片山英男2単位火5
書物の形態また役割の変化について、日本・中国・ヨーロッパの書物史を辿りながら検討してゆく。詳しい日程は授業初日に説明する。
文字資料学特殊研究「古文書の使い方」
近藤成一2単位金5
「古文書を使う」というのは、歴史を研究するためかもしれないし、博物館の展示のためかもしれないし、あるいは商売のためかもしれない。くずし字を読むこと、内容を読解することから古文書学・古文書データベースの方法論まで様々のレベルの内容を用意することができるが、参加者の問題意識が多様であることを前提として、参加者と相談して具体的な内容について決めたい。このコースに参加する条件として歴史や古文書に関する予備知識は一切求めないが、このコースに何を求めて参加するかという問題意識(それがどのような方向のものであるかは問わない)と、それを達成するための努力、さらにそれを他の参加者に理解してもらうための努力は求める。史料編纂所の所蔵史料と施設を利用するので、古文書をガラス越しでなく熟覧し議論する貴重な機会を提供できると考えている。
文字資料学演習「アーカイブズ学入門」
安藤正人・木下直之2単位集中
アーカイブズ学(archival science)とは、過去の古文書から現代の映像・電子記録まで、行政・企業・大学・個人などの記録史料(アーカイブズ資料)を文化情報資源として保存・活用するための専門科学である。本講義では、国際的な研究動向を踏まえつつ、日本のアーカイブズ(文書館・公文書館)やアーキビストのあり方について考えたい。
本講義の履修者は、講義の一部として、7月と9月に国文学研究資料館において実施される「アーカイブズ・カレッジ」(計6科目)のうち、「アーカイブズ総論」(7月5日〜9日)を含む2科目以上を受講する必要がある。「アーカイブズ・カレッジ」の案内と受講申込み用紙は文化資源学研究室にあるので、履修希望者は各自で国文学研究資料館に申し込むこと。ただし申込者多数の場合は選考を行うことになっている。選考にもれた場合は自動的に本講義の履修資格を失うので、あらかじめ了承されたい。なお本講義の履修は、文化資源学研究専攻所属の学生で、過去に本講義を受講したことがない者に限ることとする。
文字資料学演習「近世近代史料調査法入門」
吉田伸之2単位集中(9月13日〜16日)
現在も日本各地に膨大に残されている地方(じかた)文書の調査法(現状記録調査法)・研究法の基礎を学ぶ。今年度は、昨年度に続き、長野県下伊那郡清内路(せいないじ)村下区区有文書を調査する。現地に宿泊し、フィールド・ワークとして行う。受講希望者は6月18日までに、文化資源学研究室、日本史学研究室、大学院係のいずれかに申し出ること。参加者が30人を超えると、制限する場合がある。なお、7月15日(水)4限にガイダンスを行う(場所は文学部・古文書学特殊講義「近世・近代初期文書を読む」の教室を使う予定)。参加者は必ず出席のこと。ガイダンスやフィールドワーク実施要項の詳細は、5月末に古文書学特殊講義において配布する。また文化資源学でも配布し、同研究室掲示板と大学院掲示板に掲げる。

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