本稿は熊本博之著『交差する辺野古――問いなおされる自治』(2021年、勁草書房)の書評論文である。本書は、沖縄の米軍基地負担を辺野古に生きる人びとがいかに経験してきたのかを描写することで、普天間基地代替施設という新たな基地負担を容認する、辺野古の人びとの決断の理由を探ろうとする研究である。とくに本書は… 続きを読む(pdf)
シカゴ学派の社会学は都市社会学や社会病理学の古典として重視されてきた。特に現代日本におけるその受容は、それを異なる形で発展させてきた2 人の論者に大きな影響を受けている。その一人は宝月誠である。シカゴ学派の学説研究に取り組みつつ、自身も逸脱ビジネスの… 続きを読む(pdf)
本稿が書評の対象としてとりあげるのは、小山裕『市民的自由主義の復権——シュミットからルーマンへ』(勁草書房、2015年)である(以下、同書への参照は括弧の中に該当するページ数のみを記す形で行う)。本書は2016年に第15回日本社会学会奨励賞【著書の部】を受賞している(小山… 続きを読む(pdf)
近年、社会学において、政策形成に資する知識をいかにして提供するかという点に関する問題関心が高まりつつある。2015 年に公刊された『社会学評論』66巻2号では、「社会学は政策形成にいかに貢献しうるか」が特集され、さまざまな世代の社会学者からの論考が計7本寄せられている... 続きを読む(pdf)
日本国内の産業・労働社会学は、経済学・社会政策学・経営学などほかの労働研究内部での独自性を模索してきた。例えばその一例として労働社会学を日本的経営の学であるとする見方や、労働社会学が質的研究を基礎とした「実証」研究の学であるという見方が存在する…続きを読む(pdf)
本書評論文では、有田伸(2016)『就業機会と報酬格差の社会学――非正規雇用・社会階層の日韓比較』(東京大学出版会)をとりあげる(以降、本書と示す)。周知のように、著者は地域研究・比較社会学において既に評価を得ている研究者であり… 続きを読む(pdf)
本稿は、Nick J. Fox and Pam Alldred, 2017, Sociology and the New Materialism, London: Sage(以下、引用に際してはSNMと略記)の書評をとおして、社会学的研究に新しい物質主義(New Materialism) を適用すること…続きを読む(pdf)
社会科学では実験室をベースとする自然科学的な研究とは異なり、研究者の側が原因(変数X)を操作して結果(変数 Y)に与える影響を特定することが難しく、主に調査観察データを用いて因果関係を特定しようとしてきた。続きを読む(pdf)
よく考えてみれば「書評論文」とは不思議な言葉である。論理性や学術性が重んじられる「論文」という言葉と、長めの「評論」とは異なり書物を紹介し所感を述べるといったことを行うための軽い文章であることが多い… 続きを読む(pdf)
本論文では、Kemeny J.,1992, Housing and social theory, London: Routledge.(=祐成保志訳,2014,『ハウジングと福祉国家――居住空間の社会的構築』新曜社.)、以下便宜上「本書」と表記するが、を対象とした書評を行う。 続きを読む(pdf)
その昔、東京大学駒場キャンパスにおける大学1,2 年生向けの、見田宗介による社会学入門講義は、その渦の中から巣立った幾人かの著名な社会学者が語り継ぎ、半ば伝説と化している。しかし、その講義は、当時も今も書籍化されていない。続きを読む(pdf)
『戦略的連携――連携形成と社会運動』(原題:Strategic Alliance: Coalition Building and Social Movements、以下SA と略記)は、社会運動組織の〈連携 coalition〉をテーマとした社会運動論初の論文集である。続きを読む(pdf)
本稿の目的は、〈性暴力サバイバー〉と〈性産業従事経験〉の主に日本の研究動向を対象に、その方法上の隘路を指摘し、その隘路を突破する手段として質的分析法「MDSO-MSDOアプローチ」の導入を提唱することである。続きを読む(pdf)
本稿は開沼博『「フクシマ」論』の書評論文である。本書は3.11以前になされた「最後の学術論文」(開沼2011: 15)として、一般にも広く読まれ、第65回毎日出版文化賞(人文・社会部門)を受賞するなど、学術的にも避けて通ることのできない研究書であると言えよ続きを読む(pdf)
波に乗るサムライたち。バブルという波に乗りながら、現地の日本人、進出した日本企業は何を見たのか。波にのまれる町、ゴールドコーストの住民は何を経験したのか。続きを読む(pdf)
本稿は、従来の「社会政策研究」と「社会政策が対象としてきた領域(労働・福祉・医 療・家計など)の社会学研究」の研究動向を簡略に振り返りながら、『社会政策の社会学』(武川正吾著;ミネルヴァ書房 2009)の書評を行 い、今後の「社会政策の社会学」という領域の課題の提起を試みるものである。続きを読む(pdf)
感動しました。とてもすばらしいです。でも私には何もないの。それでは闘ってはいけないのでしょうか? 始点と終点を結ぶ少女の小さな問いかけ。本書『1968』は、問いかけに捧げられた、膨大な注釈である。続きを読む(pdf)
土屋雄一郎『環境紛争と合意の社会学――NIMBY が問いかけるもの』は、迷惑施設問題における合意形成のあり方を主題とした著作である。 続きを読む(pdf)
近年、あらゆるもののデザインがよく論じられるようになった。デザイナーによるデザイン論だけでなく「デザイン」概念の美学・芸術学的、思想史的考察も深められはじめている。そこでは、かつてデザインは美学・芸術学における基礎概念のひとつであったことが指摘され、続きを読む(pdf)
『デザインと装飾』(山崎正和)の魅力は著者独自の社会学的・美学的視点に基づいて具体的 なものに寄り添った洞察を展開している点にある。たとえばギザのピラミッドと古代中国の青銅器を比較し、前者の三角形の反復が規則性を生み、それが普遍性と無限の世界への親和性を 続きを読む(pdf)
「人類最後の難問 ナショナリズムを解く!」(帯より)――本書『ナショナリズムの由来』は、社会学者の大澤真幸による877ページにおよぶ大著である。その大著ぶりも含め、2007年の大きな話題作となった。続きを読む(pdf)
『加害者は変われるか? ‐DVと虐待をみつめながら‐』は、原宿カウンセリングセンターの所長として、またカウンセラーとして、DVや虐待の問題に取りくんできた信田さよ子氏(以下、信田とする)が、ちくま書房の広報マガジン・Webちくまに連載したエッセイをまとめたものだ。続きを読む(pdf)
本書評論文では佐倉智美氏(以下敬称略)の『性同一性障害の社会学』(現代書館、2006)を取り上げる。トランスジェンダー〈当事者〉であり、日本のトランスジェンダーの運動を間違いなく牽引してきた佐倉が、「社会学的な立場からトランスジェンダーに注目し、学究的な分析・考察に取り組んでみたい」(p.13)と宣言した上で書いたこの著作は、日本のトランスジェンダー運動の蓄積の上に立ち、さらにその蓄積を学問に接続させていく、重要なものである。続きを読む(pdf)
本稿の目的は、韓国の(家族変動論の文脈における)家族意識に対する新しい研究動向を紹介することにある。日本と同様、韓国では、「核家族化」論では説明できない家族意識の実態に直面し、これをどのように解明するかが家族社会学の大きな課題となってきた。続きを読む(pdf)
社会学という学問は、肯定的な表現を使えば啓蒙的、否定的に言い換えると暴露的な傾向を上可避的に持ってしまう。これは、社会学的研究に先行して、社会を生きる人々自身が社会について、自分たちが何をしているかについて、何らかの知識や理論をすでに持っていることによる。続きを読む(pdf)
19 世紀のドイツは、現代へと繋がる歴史的慣行の始まりを画す事象の多く存在する社会学的に興味深い対象である。本書において取り上げられるその現代的な問いとは、トリアーデを形成する副題と主題とが体現するように、市民と呼ばれる階層の出現、自律性を獲得するに至る芸術の一分野としての音楽、そしてそれらをドイツという特殊歴史的な文脈で結びつける教養という理念である。まずは、これらのテーマにおいて、本書が既存の研究に付け加える新たな視野を確認しておこう。続きを読む(pdf)
一読しただけでは分かりやすい本のように思える。しかし、どこか理解に抗 うようなところもあり、それを明確にしようとした途端に、非常に難しい本となっ てしまう。結局、この書評を書くために何度も本書を通読することになってしまった。続きを読む(pdf)
社会学と実践現場との対話。そこにどのような可能性があるのだろうか。これは、社会学的知と言語を用いて現実社会を分析する社会学にとって普遍的なテーマである。医療現場での濃密な聞き取り調査の成果である本書にも、「臨床現場との対話」という明確な役割が与えられている。続きを読む(pdf)
一読して、「アメリカ」がもつ逆説を、あらためて強く感じた。本書は、『単一民族神話の起源』(小熊1995)『〈日本人〉の境界』(小熊1998) 『「民主」と「愛国」』(小熊2002)といった一連の大著で知られる、小熊英二のアメリカ研究である。続きを読む(pdf)
2001年9月11日、アメリカで「同時多発テロ」が引き起こされた。それに対してブッシュ政権は、一月と間を置かず、アフガニスタンへの「報復戦争」を開始した。これらの 出来事について、日本国内でもさまざまな議論がなされた。続きを読む(pdf)
本書は、イギリスのカルチュラル・スタディーズを牽引するポール・ドゥ・ゲイが、サッチャー政権下において大きく変動した労働アイデンティティのありよう を、同時期に生じた小売業の変容から分析したものである。続きを読む(pdf)