文化資源学 (美術史学)教授
髙岸輝 TAKAGISHI Akira
日本美術史を専門とし、なかでも中世の絵画を主たる対象としています。現代に遺された古い絵画を観察し、史料の読解とあわせて、中世社会における美術品の制作・技法・表現・注文・流通・鑑賞・蒐集・評価の実態に迫ることで、この時代を生きた人々の美的な感覚を把握したいと考えています。しかし調査・研究を進め、情報を蓄えるほど、それは現代人にとって容易ではないこともわかってきました。そもそも、現代に生きているだけでは、今日の美的な感覚を理解していることにはならず、現代の美術に対する日頃の観察や読解が欠かせません。そして、現代から中世美術を展望するなかで、その間にある近世・近代に何が起こったのか、中世に先立つ古代はどうなっているのか、という具合に視野が広がってきました。最近、ますます専門外の展覧会に刺激を受けることが増えています。また、日本を知るのも同様で、国内のさまざまな地方を訪ねること、海外における日本研究を理解することが必要です。文化資源の発見・研究・活用を目指すにあたっては、複数の時代や地域に足場を築き、時間と空間の距離感覚をいかに磨いていくかが重要だと考えています。
- 『室町王権と絵画―初期土佐派研究―』(単著)(京都大学学術出版会、2004年)
- 『摂津尼崎大覚寺史料』1 槻峯寺建立修行縁起絵巻 大覚寺縁起絵巻(編著)(月峯山大覚寺、2005年)
- 『中世文学研究は日本文化を解明できるか』(共著)(笠間書院、2006年)
- 『イメージとテキスト―美術史を学ぶための13章』(共著)(ブリュッケ、2007年)
- Asian Art History in the Twenty-First Century(共著)(Yale University Press、2007年)
- 『室町絵巻の魔力―再生と創造の中世―』(単著)(吉川弘文館、2008年、日本学術振興会賞)
- 『お伽草子百花繚乱』(共著)(笠間書院、2008年)
- 『イメージとパトロン―美術史を学ぶための23章』(共著)(ブリュッケ、2009年)
- 『王朝文学と物語絵』平安文学と隣接諸学10(共著)(竹林舎、2010年)
- 『中世絵画のマトリックス』(共著)(青簡舎、2010年)
- 『修験道の室町文化』(共著)(岩田書院、2011年)
- 『論集・東洋日本美術史と現場―見つめる・守る・伝える』(共著)(竹林舎、2012年)
- 『お伽草子―この国は物語にあふれている―』(共著)(サントリー美術館、2012年)
- 『別冊太陽 やまと絵―日本絵画の原点』(共著)(平凡社、2012年)
- 『アメリカに渡った物語絵 絵巻・屏風・絵本』(共著)(ぺりかん社、2013年)
- 『近世やまと絵再考―日・英・米それぞれの視点から』(共著)(ブリュッケ、2013年)
- Archaism and Antiquarianism in Korean and Japanese Art(共著)(The Center for the Art of East Asia, University of Chicago、2013年)
- Japanese Visual Culture: Performance, Media, and Text(共著)(National Institute of Japanese Literature、2013年)
- 『図像解釈学―権力と他者』仏教美術論集4(共著)(竹林舎、2013年)
- 『絵が物語る日本 ニューヨーク スペンサーコレクションを訪ねて』(共著)(三弥井書店、2014年)
- 『日本美術史(美術出版ライブラリー歴史編)』(共同監修)(美術出版社、2014年)
- 『岩波講座 日本歴史』第8巻 中世3(共著)(岩波書店、2014年)
- 『日本美術全集』第9巻 水墨画とやまと絵(共著)(小学館、2014年)
- Between East and West: Reproductions in Art(共著)(IRSA Publishing House、2014年)
- 『東大教師が新入生にすすめる本2009-2015』(共著)(東京大学出版会、2016年)
- 『尼崎市制100周年記念 新「尼崎市史」 たどる調べる 尼崎の歴史』下巻(共著)(尼崎市、2016年)
- 『絵巻マニア列伝』(共著)(サントリー美術館、2017年)
- 『病草紙』(共著)(中央公論美術出版、2017年)
- 『天皇の美術史』第3巻 乱世の王権と美術戦略(編著)(吉川弘文館、2017年)
- 『道成寺と日高川―道成寺縁起と流域の宗教文化―』(共著)(和歌山県立博物館、2017年)
- 『日本文学の展望を拓く』第2巻 絵画・イメージの回廊(共著)(笠間書院、2017年)
- 『西湖憧憬―西湖梅をめぐる禅僧の交流と十五世紀の東国文化―』(共著)(神奈川県立金沢文庫、2018年)
- 『室町将軍―戦乱と美の足利十五代―』(共著)(九州国立博物館、2019年)
- 『中世やまと絵史論』(単著)(吉川弘文館、2020年)
- 『「月次祭礼図屏風」の復元と研究―よみがえる中世京都の輝き』(共編著)(思文閣出版、2020年)
- 『日本美術のつくられ方―佐藤康宏先生の退職によせて』(共編著)(羽鳥書店、2020年)
- 『国宝粉河寺縁起と粉河寺の歴史』(共著)(和歌山県立博物館、2020年)
- 『〈作者〉とは何か:継承・占有・共同性』(共著)(岩波書店、2021年)
- Art et Diplomatie: Œuvres Japonaises du Château de Fontainebleau (共著)(Éditions Faton、 2021年)
- 『文化資源学 文化の見つけかたと育てかた』(共著)(新曜社、2021年)
- 『ボストン美術館 日本美術総合調査図録』(共同監修)(中央公論美術出版、2022年)
- 『万物流転―語られるイメージと時間―』(監修)(高松市歴史資料館、2023年)