文化資源学 (美学芸術学) 准教授
吉田 寛 Yoshida Hiroshi
これまでもっぱら「美学」という訳語が与えられてきた「エステティクス(aesthetics)」を、その本来の語義へと連れ戻し、「感性の学」として「再起動」することを目指しています。「美学」の考察対象が美と芸術であるとすれば、「感性学」としてのエステティックスは、人間の感性の様態や働きを、認知科学や工学といった関連諸科学と連携しつつ、哲学的に探究する学問です。近年、私がゲーム(コンピュータゲーム、ビデオゲーム)の研究に取り組んでいる理由もそこにあります。技術やメディアが目まぐるしく変化する現代において、われわれの感性はいかなる変容をこうむっているのか。それを理解するうえで、ゲームはもっとも身近でもっとも効果的な事例を提供してくれます。ゲームにおいてプレイヤーはどのような世界をどのように経験するのか、それを記号論や物語論、心理学、認知科学、工学、社会科学の最新の知見を総動員して考察・分析しています。博士課程まで芸術学(とりわけ音楽学)を専攻していた経験も、そこでは大いに活きています。
なお私にとってライフワークと呼ぶべき究極的関心は、人間にとっての「想像力」と「自由」、および両者の関係にあります。ゲーム研究はそのための重要なステップです。
- 『ワーグナー事典』(共著)(東京書籍、2002年)
- 『演劇学のキーワーズ』(共著)(ぺりかん社、2007年)
- 『ヴァーグナーの「ドイツ」──超政治とナショナル・アイデンティティのゆく え』(単著)(青弓社、2009年)
- 『オペラ学の地平──総合舞台芸術への学際的アプローチII』(共著)(彩流 社、2009年)
- 『〈音楽の国ドイツ〉の神話とその起源──ルネサンスから十八世紀』(単著) (青弓社、2013年)
- 『民謡の発見と〈ドイツ〉の変貌──十八世紀』(単著)(青弓社、2013年)
- 『ゲーム化する世界──コンピュータゲームの記号論』(共著)(新曜社、2013年)
- 『子ども白書2013』(共著)(本の泉社、2013年)
- 『絶対音楽の美学と分裂する〈ドイツ〉──十九世紀』(単著)(青弓社、2015年)
- 『賭博の記号論──賭ける・読む・考える』(共著)(新曜社、2018年)
- 『教養としての 世界史の学び方』(共著)(東洋経済新報社、2019年)
- 『多元化するゲーム文化と社会』(共著)(ニューゲームズオーダー、2019年)