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Home > 講義・演習 >過去のシラバス > 平成27(2015)年度 講義内容

平成27(2015)年度 文化資源学講義内容(共通・コース別)

▼ 各コース共通科目

特殊研究

あらためて問う、「芸術とはなにか?」
渡辺裕 S1S2 2単位 月3
 テクノロジーやメディアの急速な発達にともない、われわれの日常生活はつねに、インターネットなどを通じて流される大量の映像や音声に囲まれるような状態になった。かつてわれわれが芸術体験を考えようとする際に、そのモデルとなっていたのは美術館やコンサート・ホールという非日常的な時空で現実を忘れて「芸術作品」を純粋に鑑賞するような体験であったが、そのようなものは確実に背後へと退いてしまった。それはまた、「芸術」や「芸術作品」が確固とした輪郭を失い、日常的な時空へと溶け出しているような状況でもあった。そのような状況の中で、「芸術」や「芸術作品」、さらにはその「オーセンティシティ(正統性)」といった、これまでの言説を支えてきた基本概念そのものの成り立ちにまで立ち戻って見直すことが求められるようになった。そして、こうした見直しを通じて、われわれがこれまで慣れ親しんできた芸術の歴史や、その周囲にあった文化的コンテクストについても、全く新しい景色がわれわれの眼前にひらけてきている。いまやかつてのような大文字の「芸術」や、絶対的な価値を保証された「芸術作品」、その不動の「オーセンティシティ」は見るべくもないが、それにもかかわらず、これらの概念は個々の具体的な局面ではそのたびごとに立ち現れ、機能している。「芸術とはそもそも何なのか」と大上段にふりかぶるのではなく、個々の歴史的現場や具体的事象に密着し、そこにはたらくさまざまな力学をきめ細かく解きほぐしてゆきながら、そこに「芸術」という概念がつねに形を変えながら立ち現れてくるさまを見極めることを通して、「芸術」とは何かということについて、あらためて考えてみよう。
埋蔵文化財と文化資源学―加賀藩邸&東京大学探索
木下直之、堀内秀樹、成瀬晃司 S1S2 2単位 火3
 東京大学は、1983年に臨時遺跡調査室(現在の埋蔵文化財調査室)を開設して以来、本郷キャンパスの発掘を営々と続けてきた。東京でこれほど徹底的に掘られ続けている場所はほかにない。かつての加賀藩邸跡に東京大学がほぼそのまま存在しているがゆえに、発掘成果は近世考古学という学問領域の成立に大きく貢献した。しかし、その視野は東京大学開学以前に止まる。本講義では、発掘の成果に加えて、地上に「埋蔵」されているものにも目を向ける。いわば東京大学の忘れられた「文化資源」を発掘しようとする試みである。今年度は、図書館前広場の再整備計画にも注目したい。文化資源学研究室と埋蔵文化財調査室が組み、さらに史料編纂所、大学文書館、総合研究博物館、理学部植物学教室、工学部建築学科、生産技術研究所、の教員が参加し、リレー形式で東京大学の姿を明らかにする。見学会もある。東京大学に入学しても、大半の学生は東京大学を知らずに卒業していく。それはいささかもったいない話だ。
芸能学特論(日本演劇の歴史Ⅱ)
古井戸秀夫 S1S2 2単位 金2
 演劇の歴史は、神々を主人公とする古代から、中世の英雄を経て、近世には等身大の人間の喜びや悲しみを描くようになります。男と女の恋、親子の恩愛、義理と人情など、人間の織り成すドラマはどのように表現されてきたのでしょうか。モダニズムの洗練からポストモダニズムまで、日本の演劇や舞踊が探し求めてきた表現について考えることになるでしょう。
考古学と現代社会1:縄文の物語
イローナ・バウシュ S1S2 2単位 金3
 物質文化は人々の行動や価値観に影響を与え、アイデンティティーのよりどころとなる。考古学は、物質文化の地理的・時代的背景を探り、遺跡を相互に比較しつつ過去の世界を復元しようとする。しかし、過去の物質文化に関わる人々は考古学者だけではない。例えば、一般大衆, 地方・中央の政治家、公務員、マスメディア、芸術家、事業家などさまざまな人々が過去の遺産に関わりを持ち、それぞれの立場から実に多様な意味や解釈を与えている。また、 時代が変われば、異なる意味付けがなされてきた。こうした過去の文化への多様な眼差しは、日常生活にどんな形で表れているだろうか。本講義葉は、縄文時代を対象にする。日本各地の事例を取り上げ、そこに向けられた「考古学的」知識や関心を紹介し、人々の多様な興味や解釈を紹介する。その上で、考古学的文化遺産に対する価値付けやアピールの特徴を具体例に即して考察する。本講義は日本語で行い、見学旅行も実施する予定である。
中国の漢字音
大西克也 S1S2 2単位 金3
 古代の中国の言葉の特質に対する理解を深めるため、日本漢字音のもとになった中国古代漢字音の復元方法や歴史について概説する。長い歴史を持つ中国音韻学には独特の用語も多く、入門段階で困難を感じる学習者が少なくないが、本講義では特に「中古音」と称される隋唐時代の音韻を主たる対象として、その基本的な概念や考え方を解説し、受講者が古代の漢字音について理解を深める一助としたい。
戦後日本を「聴く」:「記録の時代」のレコードとラジオ
渡辺裕 A1A2 2単位 月3
 「聴覚文化 (auditory culture)」という言葉が最近よく使われる。「視覚文化 (visual culture)」の研究が、「美術」という概念ではカバーできない広告図像や都市景観と社会の関わりといった問題圏を開拓したように、聴覚文化研究もまた、われわれの身の回りにある、「音楽」としては捉えきれないような多彩な音が醸し出す文化のありようを照らし出しつつある。この講義では、1950-70年代の日本に焦点を合わせ、この時代に数多く作られたドキュメンタリー・レコードを中心に、同時代のラジオやテレビをめぐる状況なども考え合わせつつ、「音の文化」の問題として考えてみたいと思う。そのことは、55年体制の確立と高度成長、都市環境問題や農村過疎化問題、反体制運動とレトロブーム、「国民文化」の変容と「ふるさと」志向の出現といった、現代社会の諸問題を集約的に詰め込んだようなこの時代の状況を、「音」という断面を通して、映像とはまた違った形で描き出すのみならず、この時代に生じた、ラジオやレコードというメディアのあり方自体の変化や、それと連動した人々の心性や感性の変化をもまた浮き彫りにしてくれることになるだろう。
博物館展示論
木下直之 A1A2 2単位 火3
 博物館活動の柱をなす「展示」とは何かを問い、日本社会における展示施設の存在意義についても考える。受講者には、展示の歴史的な変遷を理解する一方で、現状を適切に分析することを求める。そのことにより、博物館の現状を自明の前提とせず、将来像を描き、改善に取り組む能力を身につけてほしい。
終戦70周年にあたる本年は、戦争展示にテーマを絞る。日本が戦争を「放棄」(憲法第9条)して久しく、やがて戦争経験者はいなくなる。その経験と記憶を後世に伝える上で、博物館での展示が果たす役割は大きいが、一方で、限界も抱えている。「公正中立」な展示はありえず、「公正中立」という名の下に企図・企画された展示があるばかりだ。そもそも、明治初年に生まれた日本の博物館は、戦争とともに歴史を重ねてきた。靖国神社遊就館、広島平和記念資料館、昭和館、しょうけい館、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館、無言館、大和ミュージアム(この中に「国立ミュージアム」は4館あった(ヽヽヽ))など、戦争展示の現状を検証しつつ、その歴史と課題を考える。
オプションで、12月には広島の原爆関連施設の見学旅行を考えている。
文化財保護の諸問題
木下直之 A1A2 2単位 火5
 1950年に制定された文化財保護法とそれにもとづく文化財保護体制への理解を深める。その後の度重なる法改正は文化財概念の拡大の歴史でもあった。文化財保護法は全部で203条から成り、法律というものがそうであるように、すべての条文が整合され、法の内部に矛盾はない。しかし、一見堅固な文化財保護体制にほころびはないのか。美術品や歴史資料といった動産に比べると、建造物や町並みなど不動産の保存は、それが動かないゆえに安定しているかのようだが、実はより多くの困難な問題を抱えている。今年度は鎌倉鶴岡八幡宮境内の神奈川県立近代美術館(坂倉準三設計、1951開館、2016閉館!予定)をケーススタディとしながら、建築保存の現状と課題について考えたい。
美術館の諸問題
陳岡めぐみ(国立西洋美術館) A1A2 2単位 火5
 美術品の収集は、かつては王侯貴族や教会、一部の権力者による特権的な行為でしたが、近代以降、コレクターの裾野は広がり、さまざまなタイプのコレクションが生まれ、今日にいたります。関連する研究論文の精読を通じて、美術品の収集をめぐる問題を考えます。
考古学と現代社会2:古代の物語
イローナ・バウシュ A1A2 2単位 金3
 物質文化は人々の行動や価値観に影響を与え、アイデンティティーのよりどころとなる。考古学は、物質文化の地理的・時代的背景を探り、遺跡を相互に比較しつつ過去の世界を復元しようとする。しかし、過去の物質文化に関わる人々は考古学者だけではない。例えば、一般大衆, 地方・中央の政治家、公務員、マスメディア、芸術家、事業家などさまざまな人々が過去の遺産に関わりを持ち、それぞれの立場から実に多様な意味や解釈を与えている。また、 時代が変われば、異なる意味付けがなされてきた。こうした過去の文化への多様な眼差しは、日常生活にどんな形で表れているだろうか。本講義は、古代を対象にする。弥生時代から奈良時代にかけて、北海道文化や琉球文化も含めて、 日本各地の事例を取り上げ、そこに向けられた「考古学的」知識や関心を紹介し、人々の多様な興味や解釈を紹介する。その上で、考古学的文化遺産に対する価値付けやアピールの特徴を具体例に即して考察する。 本講義は日本語で行い、見学旅行も実施する予定である。

演習

Japanese material culture in Europe: ethnographic and archaeological collections
イローナ・バウシュ 通年 4単位 月4
 This course examines Japanese collections in Europe from the first interaction in the Edo period until today. After outlining the role of museums through time, as well as the motivations of private collectors, the course will focus on the history and aims of European collecting practices and related scholarship on Japan and Japanese culture.
For example, the acquisition of Japanese collections by the personnel of the Dutch trading post Dejima in Nagasaki (such as the physician von Siebold) between 1815 and 1830 will be examined.
For the modern context, case studies from various European museums will be presented, including both permanent collections and special exhibitions, in order to discuss the ways in which archaeological and ethnographic collections are presented to the public in exhibitions nowadays.
The course will be conducted in English.
文化資源としての東京(1)
渡辺裕 S1S2 2単位 木2
 近年、「文化資源」という語がいささか濫用され、地域おこしや観光的な活用の側面ばかりが強調される傾向がなきにしもあらずである。しかしそもそも、「資源」という語が、気づかれずに眠っていたものに潜在する価値を誰かが「発見」することによって、それらがまったく違うものにみえてくるという意味での、新たな認識の誕生ということと切り離せないものであったことを考えるならば、ふらふら歩きながらおもしろいものを発見するというところに「文化資源学」の極意があるともいえる。その意味で、いろいろな種類のものがアトランダムにころがっている「都市」は文化資源学的フィールドワークのための、まさに恰好の対象である。この授業のテーマは、われわれの足元にある「東京」に焦点をあわせ、そこで人知れず眠っている価値あるもの(?)を発見したり、そこで問題になる価値のありようについて考察したりすることである。もちろん、自分たちで見つけるばかりではない。1980年代あたりから赤瀬川原平らの提唱した「路上観察学」にはじまり、近年の「ブラタモリ」にいたるまで、東京での「おもしろいものさがし」は一大ブームを迎えるにいたっているが、ただおもしろがって笑い飛ばしているだけでは見えてこないこともある。古来、江戸や東京で、人々がこの街にどのようなまなざしを向け、どのような価値を見出してきたのかという問題系の中にそれらの動きを投げ返し、そうしたまなざしの変化の歴史や系譜を再構成してみるならば、そこを生活の場とした人々の感性や価値観がいかに変化してきたか、そして今もまた変化を続けつつあるかということを身をもって知ることになろう。そのような知見の広がりをもつことで、われわれの目の前にひらける東京の景色は、これまでと全く違った相貌をみせてくれるようになるのではないだろうか。
文化資源学フォーラムの企画と実践
木下直之、小林真理、古井戸秀夫 通年 2単位 木3
 フォーラムの企画から実践まですべての作業を学生が中心に行う実習であり、文化資源学修士課程1年生の必修とする。夏休みまでに企画会議を重ね、フォーラムのテーマと構成を決定し、夏休みから秋にかけて、テーマに関する理解を深めるための研究会・交渉・広報などの準備を行い、年度内に公開フォーラムを開催する。公開で行われることが条件で、規模とスタイルは問わない。終了後は報告書をまとめる。
文化資源学の原点
木下直之、小林真理、古井戸秀夫 通年 4単位 木4
 文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)=原点を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。博士論文の予備審査も、随時、この場で行う予定。 
近代日本の性表現(1)
木下直之 S1S2 2単位 金5
 社会は性表現をどのようにコントロールしてきたか、そして、なぜ今なおコントロールを必要とするのかを、主に明治以降の日本を対象として考えたい。開講のきっかけは2つある。1つは2013年秋に大英博物館で開催され、大成功を収めた「Shunga :sex and pleasure in Japanese art」展が日本巡回に際して大きな困難に直面した。日本の美術館や博物館が受け入れに難色を示したからだ。こうした現状はどのように形成されたのかという疑問。あと1つは、ヌード=裸婦、すなわち女性裸体表現であるという社会通念がどのように形成されたかという疑問。後者の疑問に答えるかたちで、私は男性裸体表現に光を当てた『股間若衆』(新潮社、2012)を上梓し、近著『銅像時代』(岩波書店、2014)でも、礼服や制服など着衣像の対極としての裸体像を問題にした。S1・2の「近代日本の性表現(1)」では、美術の領域での裸体表現を検証する。あからさまな性的表現を目にすることがあるので、この点を了解したうえで参加してほしい。
特別演習:美術館における教育研究
寺島洋子(国立西洋美術館)・陳岡めぐみ(国立西洋美術館) 通年 4単位 集中
 国立西洋美術館での活動を通して、美術館における教育の役割と意義について理解することを目標とする。国立西洋美術館のインターンシップに参加し、教育普及インターンとして同館の教育活動(独立行政法人国立美術館主催の指導者研修、夏期教員研修、FUN DAY、Fun with Collection等)の企画・実施を補助する。
文化資源としての東京(2)
渡辺裕 A1A2 2単位 木2
 東京を描いた絵画作品や、東京を舞台にした文学作品は数知れないほど多い。最近では、映画作品の中でロケ地として使われ、よく知っていた店を思わぬところで目にしたりすることも少なくない。芸術作品の中に登場する都市と現実の都市とはもちろん同一ではないが、そのことがかえって両者の相互作用を生み出し、われわれの想像力を刺激することでイメージの厚みや広がりをもたらしてきた。現実の都市を思い浮かべることで、芸術作品に描かれた都市のイメージが豊かな広がりをもつようになるのと同じくらい、現実の都市の側も芸術作品に描かれるなかでそのイメージを広げ、時には大きく変えたりしながら歴史を刻んできた。「コンテンツツーリズム」などと呼ばれる近年の動きは、まさに都市と芸術作品との関わりの中にあるこうしたダイナミズムに着目した現象であるはずなのだが、時としてこうしたイメージの広がりのありようや可能性を十分に捉えきれないまま、地域おこしの安易な手段になりさがっていることも少なくないように見受けられる。この授業では東京を事例として、文学、映画などの芸術作品に繰り返し描かれ、また「文学散歩」や「ロケ地巡り」といった活動を通して顕在化されることによって不断に変容してきたこの都市のイメージに焦点をあてて、そこに孕まれている豊かな広がりや可能性をみきわめ、その「活用」の可能性についても考えてみたい。
近代日本の性表現(2)
木下直之 A1A2 2単位 金5
 社会は性表現をどのようにコントロールしてきたか、そして、なぜ今なおコントロールを必要とするのかを、主に明治以降の日本を対象に考えたい。開講のきっかけについては「近代日本と性表現(1)」のシラバスに詳述した。「近代日本と性表現(2)」では、いわゆる猥褻裁判を検証する。検閲と表現の自由、芸術と猥褻、LGBTなどの問題に関心を有する学生の参加を待つ。(2)からの受講も可。

▼ 文化資源学コース

特殊研究

古都京都の創生とイメージ
岡田万里子 S1S2 2単位 月2
 このコースでは、日本の代表的な観光都市である京都の古都イメージ創出の背景を考察する。
京都は日本の代表的な観光都市として、国内外からの観光客を集めている。じっさいに首都圏と北海道に次ぐ観光客数を誇り、観光振興政策を次々に打ち出し、ブランド化にも成功しているといえよう。その京都の観光資源は、三方を囲んだ山々や鴨川、桂川といった自然もみとめられるが、やはり観光客を魅了する大半の要素は平安時代以来の文化財といってよいだろう。京都は、昭和25年「京都国際文化観光都市建設法」により指定され、文化観光を促進させてきたのである。
授業では、第二次世界大戦前後の京都における観光の実態を考察しながら、京都が戦後自画像を大きく転換させたことに注目する。すなわち、近代的な先駆的都市から古都への転身である。新聞記事や小説などの資料類にそのうつろいを追い、こうした変化を生み出した状況について検討する。その際には、近年明らかにされてきた京都における戦争被害や戦後の文化財保護法および「文化国家」に対する志向、また担当者の専門領域である京都の日本舞踊など無形文化財にも触れていく予定である。
江戸を読む
長島弘明 通年 4単位 水4
 鎌倉入りを頼朝から許されなかった源義経が書いたという「腰越状」等、歴史上の人物に仮託された創作書簡集である『古状揃』に詳注を付けつつ読む。この『古状揃』は、書簡体小説集の一種であるが、当時の人々にとっては同時に歴史書でもあり、歴史と文学の入門書としての役割を果たしていた。それを念頭に置きながら読解を進めたい。テキストは江戸時代の版本のコピーを使用する。
柳田国男の歴史社会学
佐藤健二 S1S2 2単位 金2
 民俗学・民間伝承の研究者として知られている柳田国男の業績を中心に、固有の歴史社会学の形成について講義する。加えて、日本における歴史社会学的な実践のさまざまな展開について概説し、社会学がどのような形で社会・文化の歴史性をとらえてきたのかについても理解を高める。
歴史学と画像史料
松井洋子、高橋敏子、金子拓、箱石大 S1S2 2単位 金3
  史料編纂所では、附属画像史料解析センターの研究プロジェクトとして、様々な絵画・絵図史料や古写真等の各種画像史料の歴史学的解析・研究を行なってきている。その中から、「中世荘園絵図の史料学:荘園絵図はなにを語ってくれるか」「戦国合戦図屏風(長篠合戦図屏風)を読む」「戊辰戦争研究のための官版日誌史料論」「画像史料に見る日蘭関係」という4つのテーマで、様々な画像をどのように歴史学の史料として用いるのかを具体的な事例に即して考えてゆく。
漢籍入門
大木康 S2 2単位 集中
 中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。漢籍目録の原理、並びにその編纂の方法を教える。
映画・映像アーカイブ論
岡島尚志 A1A2 2単位 月2
 本講義では、フィルム・アーカイブを、「映画を中心とするさまざまな映像の長期保存を行う、主として公的な文化拠点」として捉え、その機能・方法・歴史・現状を紹介し、将来を展望する。それはまた、映画保存とフィルム・アーカイブの立場から映画史を見直すことを意味する。したがって、これは文化財を保存する立場から映画史を学ぶ場ともなろう。
中世史料の形態論的研究
林譲 A1A2 2単位 金3
 鎌倉幕府を開いた源頼朝が発給した文書を中心とする『島津家文書』、ながらく信濃守護を務めた小笠原氏に伝来した『小笠原文書』、地頭領主から戦国武将へ発展した熊谷氏の『熊谷家文書』などの武家文書を主とする中世史料の様式論的研究・機能論的研究とともに、花押や筆跡、また料紙の紙質などの形態論的研究について、写真版コピーに基づいた研究を進め、講義題目に示した課題の可能性を探ることとする。特に、本年度は、中世史料を十全に理解し、総合的な判断力を習得するため、講義のみならず、実際の現場に臨むことが必要であると考え、史料編纂所において日常的に行われている調査・研究・制作の場に臨み、体験する機会を設定する。史料編纂所技術部史料保存技術室においては、修復・影写・模写・写真の担当に分かれ、それぞれ教員と協業・分担して研究・業務を遂行しており、これらの成果を紹介し、実際に体験する機会を含み込んだ授業を行う。それらの結果として、中世史料を活用する上での基礎的な態度・技法を身につけること、各自の論文の作成に結びつく実践的な研究能力を養成することを目標とする。
作文教科書研究(2)
月村辰雄 A1A2 2単位 金5
 古代から現代に至る、またギリシア・ローマの古典古代から江戸・明治に至る、あらゆる分野の作文教科書を取り上げて、その理念、目的、方法などを探る。練習問題の附属する教科書の場合には、実際に教科書にならって作文練習をおこない、その効用を実地に体験する。

演習

人文情報学(1)
A.C.ミュラー S1S2 4単位 月4
 The is the first half of a two-semester course. The aim of this course is to introduce XML technology to humanities students as a means of enhancing their possibilities for research and publication in a systematic manner, while learning how to use non-proprietary software. We will begin by at a very basic level by reviewing the underlying HTML structure of web pages with a text editor. After students have gained a basic understanding of the concept of style markup through HTML, we will approach the tasks of web page creation and textual analysis through XML (eXtensible Markup Language). Students will learn the basic rules of XML syntax, soon after which they will learn how to analyze and publish documents using XSLT transformation. We will then gradually learn more sophisticated techniques using XML and XSLT, finally learning how to work through the TEI (P5) application model. This class is open to students with both beginning-level and advanced skills.
明治期社会経済史演習
鈴木淳 通年 4単位 水2
 明治期の史料の読解、批判とそれに基づく実証研究論文執筆法を研鑽することを目標とし、参加者の発表とそれに関する討論を基本とする。発表は、1点の基本史料の徹底的な検討に立脚する史料検討の発表と、研究論文に近いまとまった研究成果を発表する研究発表の2種類を、各参加者がそれぞれ1回以上行う。
史料検討は、大隈重信関係文書を用いる、発表の一週間前に基本史料を提示した発表予告を行い、参加者はその史料を読解してくることを要求される。発表は、基本史料の性格を、その作成過程を含めてよく検討した上で、必要な関連資料を提示しながら行う。
研究発表は、発表の一週間前に、題目のみ提示し、初めて聞く参加者にも課題と発表者の発見の意味がよく伝わるように報告する。
発表内容は基本的に明治・大正期の日本を対象とした研究とする。
歌舞伎を読む
古井戸秀夫 通年 4単位 水3
 明治・大正期の歌舞伎について、考えてみたいと思います。
テキスト等は、参加する皆さんと相談して決める予定です。
なお、大学院のゼミですので、学部生は履修できません。
論文の書きかた/文化資源学篇
佐藤健二 通年 4単位 水5
 社会学・文化研究・文化資源学の論文の構成のしかた、資料やデータの活かし方を学ぶ。基本的には各自の問題や研究領域を尊重しつつ、論文の書き方を検討したい。担当者の専門のひとつは、社会研究の方法史であるので、方法論的な視点から参加者の発表・報告を論じ合う予定である。
アーカイブズ学
渡辺浩一 通年 2単位 集中
 アーカイブズ(記録史料)とは、多様な組織体が授受・作成・保管してきた文書(ぶんしょ)のうち、その組織体の必要性または一般的な歴史的価値の観点から、永久に保存し公開すべきものをいう。または、アーカイブズを保存・公開する組織や施設(例えば文書館)をさす。そして、アーカイブズに関する科学をアーカイブズ学という。この講義では、国文学研究資料館(立川)で行われるアーカイブズ・カレッジ(史料管理学研修会)の全課程6週間(2015年7月21日~8月7日、8月24日~9月11日)を履修し、修了論文に合格することによって、アーカイブズ学を体系的に理解することを目標とする。
人文情報学(2)
A.C.ミュラー A1A2 2単位 月4
 This is the second half of a two-semester course. Building on the basic knowledge of XML and TEI developed during the first semester, students will learn how to use CSS and XSLT to transform and publish XML documents. Students with programming skills might be able to take this course without having taken the first semester, but for most students, semester I will be necessary.

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 隔月1
 修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 隔月1
 博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

▼ 文化経営学コース

特殊研究

アートプロジェクト概論
熊倉純子 S1S2 2単位 月5
 日本全国で行われている様々な形態のアートプロジェクトの諸相を概観し、その特徴や社会的背景に関する考察を行う。西洋の文化事業や芸術表現との比較
文化施設経営論(制度編)
小林真理 S1S2 2単位 火1
 文化施設には美術館、劇場、博物館、コンサートホール等様々なジャンルのものがあります。これらは、また国公立によるもの、あるいは民間によるものなど、設立や運営の形態も様々です。これらの施設を取り巻く社会環境について学び、よりよい運営のために必要な知識を身につけます。なお必要に応じて見学を行います。
ミュージアムテクノロジー(2)I
西野嘉章(総合研究博物館) S1S2 2単位 火3・4
 インターメディアテクにおける博物館工学の実践。ミュージアム学芸員、文化政策担当者、(ミュージアムを対象とする)専門研究者の育成
ミュージアムテクノロジー(2)II
西野嘉章(総合研究博物館) A1A2 2単位 火3
 インターメディアテクにおける博物館工学の実践。ミュージアム学芸員、文化政策担当者、(ミュージアムを対象とする)専門研究者の育成
文化施設経営論(応用編)
小林真理 A1A2 2単位 水5
 具体的な中小規模の市町村の公立文化施設の運営に注目し、その施設が抱える問題を明らかにしながら、よりよい運営に向けての解決方法を探り提案することを目的としている。また可能な限り、その提案を実践できるように検討する。2014年度は、科学系博物館を対象に検討を行ったが、今年度の対象施設については第1回目の授業で提示あるいは相談を行う。

演習

文化政策の諸問題(1)
小林真理 S1S2 2単位 水4
 日本で自治体が文化行政の取り組みだしてからすでに30年の時を経た。当初自治体文化行政論で掲げられた原則である(1)市民主体の市民文化の育成、(2)基礎自治体主導の方法、(3)行政の自己革新、は達成されたのかという観点からこれまでの自治体文化行政を検証し、文化行政を実践する上での方法論を明らかにすることを目的としている。日本における文化行政の発展の経緯と、諸外国における文化政策の実践は共通点もあれば、相違点もある。よりよき実践のために、どのような方法があるのかを模索する。
文化政策の諸問題(2)
小林真理 A1A2 2単位 水4
 日本で自治体が文化行政の取り組みだしてからすでに30年の時を経た。当初自治体文化行政論で掲げられた原則である(1)市民主体の市民文化の育成、(2)基礎自治体主導の方法、(3)行政の自己革新、は達成されたのかという観点からこれまでの自治体文化行政を検証し、文化行政を実践する上での方法論を明らかにすることを目的としている。日本における文化行政の発展の経緯と、諸外国における文化政策の実践は共通点もあれば、相違点もある。よりよき実践のために、どのような方法があるのかを模索する。なお、この演習は、S1タームの「文化政策の諸問題(1)」を履修していることが望ましい。

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
 修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
 博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

参考:文化資源学共通講義、原典を読む、一般講義、多分野講義

文化資源学入門(1)
木下 直之 S1S2 2単位 火5
 城下町、すなわち城を中心にデザインされた都市ととらえるならば、本質的にそれは近世のものであり、明治維新後はその存在意義を失ったはずだ。しかし、それにもかかわらず、1世紀半が過ぎた今日なお「城下町」は全国いたるところにあり、城下町であることを町づくりの柱としている。「名古屋おもてなし武将隊」にはじまり、今は多くの城で、戦国武将に扮した若者がパフォーマンスを繰り広げている。もちろん、現時点では、彼らの芸能が文化財指定を受ける可能性は微塵もない。城下町の文化財を考えることと城下町の文化資源を考えることとを比べながら、文化資源学へと案内したい。城下町への見学旅行あり。
文化資源学入門(2)
小林真理 A1A2 2単位 火4
 文化政策は、使われる時代によりその意図する意味合いがかなり異なる概念です。まずはその理由や意味を十分に考えた上で、戦後日本が文化に対する施策や政策をどのように展開してきたかを知り、現在の課題を明らかにします。
博物館空間表現実習
遠藤秀紀(総合研究博物館)、諏訪 元(総合研究博物館)、西秋良宏(総合研究博物館)、西野嘉章(総合研究博物館) S1S2 2単位 集中
 博物館の展示場を創造できる人材を育てることを目的とする。ここでいう展示場の創造とは、知と美の飽くなき追究に根差した文化の広がりと継承を、個たる人間として負うことを意味する。そうした人材は、ただのプランナーでもなければ経営者でもない。それは、優れた芸術センスと知的論理構成力を備え、世界に恥じない表現力を磨くことでのみ育てられる。本実習では、受講者にその入り口とそれに続く思慮の手がかりを導入したい。
法律学入門
小林真理 A1A2 2単位 火1
 文学部に入学してきた皆さんにとって法とはどのようなイメージのものでしょうか。法は裁判と結びつきやすく、罰する、罰せられる、あるいは堅いといったイメージが強いのではないでしょうか。たしかに私たちの生活は様々な側面で法から規制を受けてはいます。しかしながら、私たちの権利を守るため、あるいは私たちの権利を実現するための法もあります。私たちの生活に法は不可欠なものになっているということです。さらに、私たちは法の価値の創出に関わることもできます。ただそのことはよほどのことがない限り実感できないかもしれません。そこで、この講義では、文学部の学生なら関心を持つであろう「表現すること」あるいは「文化の創出」という側面から、法律学の特徴を見てみることにしたいと思います。
歌舞伎の所作事を読む
古井戸秀夫 A1A2 2単位 金2
 歌舞伎の代表的な舞踊曲を読みます。


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東京大学大学院人文社会系研究科 文化資源学研究室
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